2003年にノーベル文学賞を受賞した南アフリカの作家J・M・クッツェーは、『タタール人の砂漠』のプロットに触発され、1980年に出版された小説『野蛮人を待ちながら』を書いた。
ディーノ・ブッツァーティの幼いころに過ごした故郷ベッルーノという町は、すぐ北に奇峰やのこぎり状の尾根が連なった特異な姿を見せるドロミテ・アルプスが聳え、山並みの向こうはオーストリアとの国境。ベッルーノはナポレオン戦役の19世紀前半オーストリアの支配下であったし、第一次大戦中は、ベッルーノは一時オーストリア軍に占領され、郊外のブッツァーティ家の屋敷も一部損害を被っている。こうしたドロミテの独特の山々の姿と、山並みの北はもう他国であるという事実が、幼いブッツァーティの心になにか神秘的な印象を深く刻みこんだであろう・・・作品群。
1942年それまでに新聞に発表した短編作品をまとめたもの
- 『七人の使者』
第二次世界大戦時の『タタール人の砂漠』や『七人の使者』は受けなかった。時も場所も架空の、幻想的な雰囲気の中で展開される彼の作品群を現実から遊離した文学、イデオロギー的なものを拒否した、〈現実不参加〉の文学と見なして、批判した。
彼は当時の潮流に迎合、妥協することなく自己の文学を貫きとおした。
- 『スカラ座の恐怖』(1949)
- 『バリヴェルナ荘の崩壊』(1954)
1950~1960年代にかけて、一世を風靡したネオ・リアリズムが行き詰まり、ブッツァーティの作品を戦後いちはやく翻訳、出版したイギリス、フランス、ドイツでの彼の高い評価が徐々にイタリアにも及び再評価された。
- 『六十物語』(1958)・・・『七人の使者』『スカラ座の恐怖』『バリヴェルナ荘の崩壊』の3つの短編集から選んだ作品に、それまで未刊だった短編を加えた60編を1冊にまとめたもの。イタリアで最も権威のあるストレガー賞を受賞。
- 『偉大なる幻影』(1960)・・・長編小説、SF小説的な手法
- 『ある愛』(1963)・・・愛がモチーフなのも、現実のミラノが舞台なのも初の試み。『タタール人の砂漠』と根本的なテーマが同じ。
- 『コロンブレ』(1966)・・・1960年以降の短編を収めたもの
タタール人の砂漠
Il deserto dei Tartari
タタール人
7 一
7 ジョバンニ・ドローゴ
- 中尉
- 士官学校をでて、ようやく将校になった。
- 好きになれない自分の顔
- 別れの時母親に笑顔を見せなかったのを後悔している。
7 9月のある朝
7 ・・・最初の任地バスティアーニ砦に赴くべく、町を出立した。
7 バスティアーニ砦
バスティアーニ砦
- 小説の舞台は架空の国の架空の砦。
- 王国の北の国境にある最後の前哨基地である要塞
- 辺境の砦
7 ジョバンニ・ドローゴの母
- 早朝に起きて、別れの言葉を言いに来てくれた。
- ジョバンニ・ドローゴの生家にて
9 フランチェスコ・ヴェスコーヴィ
- ジョバンニ・ドローゴの友人
- 途中まで馬で見送ってくれた。
- おなじものに情熱を注ぎ、おなじ友情を交わしあいながら、長年いっしょに過ごした友達で、以前は毎日のように顔をあわせていた。
- その後、ヴェスコーヴィは金持ちになり、ドローゴは将校になって、別世界に感じている。
9 バスティアーニ砦
- どこにあるのか?
- どのくらいの道のりがあるのか?
- 馬で一日行程だという者、そんなのはかからないという者もいた。
- ジョバンニ・ドローゴのたずねた相手は、誰も実際にそこへ行ったことがない連中ばかりだった。
10 町の出口
- あの草地になっている山のてっぺんに建物みたいなものが見えるだろう?
- あそこはもう砦の一部で前衛堡塁。
- 2年前、狩りに行く途中に、叔父さんと通りかかったことがある。
10 堡塁(ほるい)
10 轡(くつわ)を並べて、馬をすすめていた。
10 轡(くつわ)
11 坂の上に着いた
- 友人フランチェスコ・ヴェスコーヴィとの別れ
11 ・・・陽が真上に昇ったころ、
- 砦へ通じる谷の入り口に差し掛かった。
- 右手の山の頂きに、ヴェスコーヴィが指さした堡塁(ほるい)が見えていた。
- もうそんなにたいした道のりではない。
12 ・・・ドローゴは昼餉(ひるげ)のために馬を休ませもせず、
12餉
12 通りがかった馬車引きの男
- このへんに、砦はないという。
- 迷子
13 もう谷はすっかり菫(すみれ)色の夕闇に包まれていた。
- 夕暮れの住みきった空を背景にして、古びて荒れ果てた、軍事用の構築物とおぼしいものの黒々とした、巨大な影が目の前に現れた。
14 城壁の下に立ち込めた闇の中から現れた男
- 浮浪者とおぼしきみすばらしい風体
- 灰色の髭
- 手には小さい袋を持っていた。
- 砦はないという。
- 城壁はすっかり閉まっていて、人一人いなく、もう10年になる。
- ひょっとしてあれですか?と、男が指さした先に、裸の山の頂きに一種独特の黄味を帯びた規則正しい幾何学的な線が見えた。砦の輪郭だ。
15 二
16 ・・・なおも歩みつづける彼に、闇がおいついてきた。・・・
- 夜道の狭まる谷を、馬で進み、道端の木の幹に馬をつなぎ、休む。
16 夜が明けると
- 騎馬の将校が見えた。
- 大尉であることに気づいた。
- 声をかけ敬礼する。
- 谷を挟んでの奇妙なやりとり
18 オルティス大尉
- 谷を挟んでの奇妙なやりとり
- 大尉はドローゴ中尉を知らなかった。
- 40歳くらいかもう少し上
- 引き締まった、気品のある顔つき
- 軍服は粗末な仕立て
- 新任のバスティアーニ砦の常勤なら2年だと、ドローゴに話した。
- 砦に18年近くいる。
21 バスティアーニ砦の常勤
- 新任の中尉は必ず2年の常勤勤務
- 2年が過ぎればみんな出ていく
- 2年が、経歴上では4年に換算される
- これが肝心で、でなければ誰も砦勤務など申し出ない
- 早く昇進できるから
21 ドローゴは、バスティアーニ砦の常勤と昇進のことを知らなかった
- 志願もしていない
- ほんの2日前に砦に配属されたって知った
- オルティス大尉は、それは妙な話だなと言った
24 マグヌス大佐
24 ボスコ少佐
- まだ射撃教官をしているかと、オルティス大尉が尋ねるが中尉にいないといわれる。
24 ジルメルマン少佐
- ジルメルマン少佐ならいると、ジョバンニ・ドローゴ中尉は大佐にこたえると、名前は聞いたことがあると答えた。
25 ゆうべ遠くからバスティアーニ砦をみたというジョバンニ・ドローゴ中尉に大佐がいった砦の印象
- 砦は一番小さな部類
- 古臭い建物
- 古くて、時代遅れ
- 第二級の砦で、主要ではない
- 無用の国境線上にあるから、いっこうに修築されない。
- 1世紀前と同じ
- 前に大きな砂漠がある
- 砦は一度も役にたったことがない。
- 国境守備隊であることには間違いない
- なんでも第一級のものが揃っている
- 昔はバスティアーニ砦といえば名誉だったが、今では無用の国境よばわりされている。
- 砦の料理は第一級、とびきり上等だから、半月に一人の割合で将官たちが視察にやってくる。しょぅちゅう視察があるのは、料理はうまいから。
26 タタール人の砂漠
26 サン・ロッコ村
- 近くではないが、30キロほど離れた村がある。
- 楽しみなんかまるでない。
26 サン・ロッコ
- 聖ロッコ(聖ロクス)
- ペストなど伝染病の守護聖人
- ペスト大流行の時代に生きた人物である、ペスト患者の看護者である、さらには、自らもペスト罹患者で、かつ回復者であるという経歴
- 15世紀から19世紀初めにかけて、伊・仏・独を中心に人気の聖人
- ベネチアのサン・ロッコ教会には、サン・ロッコを祭る教会で、1520年にサン・ロッコの遺体が収められました。
32 北方の地
- いまだかつて誰ひとり渡った者のない石ころだらけの砂漠
- 地図では、国境のむこうには、ほとんど地名の記載がない広大な地域が果てしなく広がっているはず。
34 三
34 バスティアーニ砦到着
34 マッティ少佐
- 第一副官
- 小太りの男
- すこぶる人のよさそうな笑顔
- ジョバンニ・ドローゴ中尉の父親を知っているというが、職種を間違えた。
34 カルロ・モレル中尉
- 若くて屈託なない、親切な当直将校
- 砦の中心部を通って案内してくれた。
36 ジョバンニ・ドローゴの父
- 医者
36 ピエトロ三世陛下
- 《バスティアーニ砦はわが王冠の番人である》と言った。
38 ジョバンニ・ドローゴ中尉はすぐにでも村に帰りたい旨をマッティ少佐に告げる。
- マッティ少佐は病気のふりをして2、3日医務室で診断を受ければ、軍医が証明書をくれる。そのほうが万事簡単だとマッティ少佐は、アドバイスしてくれる。
- 病気のふりをしないと、転移の願書を書いて、その願書を最高司令部に送り、最高司令部からの返事をまたなければならないので、少なくとも2週間かかる。これはマッティ少佐は避けたい。なぜなら大佐の手をわずらわせるから。
40 軍医の証明書の方を選んだジョバンニ・ドローゴ中尉
- マッティ少佐は、4か月ここにいてもらわないといけない、それが一番いい方法だという。
40 4か月の理由
- 年に2回、全員の健康診断がある。
- 次の健康診断が4か月後。
- 勤務評定にも評価されるから、4か月は無駄でない。
41 ・・・砦の正面の城壁の上からわずかに覗いているあの絶壁が見える四角い窓に異様なほど気をとられ、マッティの説明をほとんど聞いていなかった。・・・
- なんとも言いようのない漠とした感情
- 他愛ない
- 馬鹿げたこと
- 無意味な暗示
41 漠とした
42 ・・・「北の方をちょっと覗いてもよろしいでしょうか、城壁のむこうになにがあるのか見てみたいですが」・・・
- 単なる好奇心
- 砂漠を見たことがない
43 やんわりと否定するマッティ少佐
- 城壁上や哨所(しょうしょ)に行けるのは、勤務についている将兵だけ。
- 合言葉を知ってなくてはいけない。
43 哨所(しょうしょ)
44 銃眼の場所
- 一つだけ大佐の執務室にある。
44 その夕方
44 モレル中尉
- 夕方、見張りの任務についた
- こっそりドローゴを城壁上に連れて行ってくれた。
45 グロッタ中尉
- 警備隊を指揮している
45 ・・・「後ろは、あの岩山の後ろは、どうなっているんだ?・・・
- モレル中尉も見たことがない。
- とがった山のてっぺんにある新堡塁まで行くと、そこから前方の平野がすっかり見渡せるらしい、話によると・・・とモレル中尉。
- 声が不安に震え、一面すっかり石だらけで、石に覆われた砂漠だという話だと答えた。
- わずかばかりの沼地
- 地平線にはいつも霧がかかっている。
47 見たものの証言
- 白い塔
- 煙を吐く火山があって、霧はそこから流れ出ている
- オルティス大佐も、5年程前に、黒くて長いしみのようなものを見た。多分、森にちがいないとのことだった。
49 四
49 自分の部屋
- ベッドの端にすわり、孤独をかんじていた。
- 南に面した部屋
- 窓から、砦に来た道中の方面が見えるはず
- 眠れない
- ぽとん、液の垂れる音
49 仁愛の人 フランチェスコ・アングロイスの徳のために
誰かわからなかった。フランチェスコは、フランスの・・・という感じなのかな?アッシジのフランチェスコならでてきた。
52 水音がいまいましくて、呼び鈴をならすジョバンニ・ドローゴ中尉
- 兵隊がやってきて、壁の向こうの水槽があると教えてくれた。
- 将校はみんなこぼしている
- フォンザーノ大尉は時々怒る
- どうしようもないこと
56 五
56 二晩のち、
- 3日目
56 ジョバンニ・ドローゴ中尉は初めて第三堡塁の勤務についた。
57 9月のある夕暮れだった
57 副司令官ニコロージ中佐
- 戦の古傷のせいで足を引きずっている
- 剣を杖に突っ立ていた。
58 モンティ大尉
- 大男
- その日の査閲(さえつ)当番の将校
- しわがれた声の命令・・・兵達はきびきびする
査閲(さえつ)
57 バスティアーニ砦の名高い銀のらっぱ
58 1時間後
- ジョバンニ・ドローゴ中尉は第三堡塁の城壁上にいた。
- 前夜、北の方を眺めたのと同じ場所。
58 歩哨任務の交代
- 規則に精通したトロンク曹長の監督下
58 トロンク曹長
- 規則の精通し、厳密。
- 砦に22年務めている。
- 休暇の時期でさえ、砦から動こうとしなかった。
- 砦の隅々まで知っている。
- 合言葉を守っている
- 小柄で痩せていて、頭は禿げ、年寄りくさい顔をしていた。
- 同僚と一緒にいても、口数が少なく、非番の時も一人きりで音楽の勉強をしていた。
- 軍楽隊長のエスピーナ准尉だけが、唯一の友人。
- ごく上等のアコーディオンを持っていて、名手だと噂だったが、弾いているところを見たことがない。
- 和声法を勉強していて、軍隊行進曲も何曲か作曲したらしい。
59 合言葉
- 「グロッタ」とトロンク曹長。「グレゴリオ」と歩哨。
- 実際には見張り勤務の将校や下士官は、自分の受け持ちの城壁上を、形式にこだわらず、歩いてまわるだけ。みんな顔みしりだから、合言葉などいらないから。
- トロンク曹長の時だけ、一言一句、規則通り。
グロッタ
- Grotta
- Gregorio
59 エスピーナ准尉
- 軍楽隊長
- トロンク曹長の唯一の友人
61 新堡塁の警備の交代時間を早めた方がいい、トロンク曹長の不満。
- 以前は、新堡塁の警備の交代は、2時間早く行われていた。冬でもまだ陽があるうちにすんでいた。
- 合言葉の規則も、もっと簡単だった。
63 北の方角からは、合言葉を言わないと、誰であろうと、決して入れない規則。
66 世の中からおいていかれている、トロンク曹長。
66 六
66 もうすっかり夜になった。
66 堡塁の飾り気ひとつない部屋で、ジョバンニ・ドローゴ中尉は、母に手紙を書く。
- 本当のことを書きたかった。
- 旅が苦しかったこと
- 陰鬱な城壁に圧迫されそうなこと。
- 孤独感にさいなまれていること。
- 手紙には、母に心配させないように、すべてを良く書いた。
- 家と母のことを思い出している。
70 夜の9時から明け方まで
- 谷の右端、城壁の尽きたところにある第四堡塁では、30分おきに鐘が鳴る。
- 小さな鐘が鳴ると、端から「警戒よし」と歩哨たちが呼びかけていき、堡塁から堡塁へ、砦全体に、さらに外側の稜堡(りょうほ)まで声がつたわっていく。
- 機械的に繰り返す。
- 制服のままベッドで横になるジョバンニ・ドローゴ中尉。
- 将校は制服のままなら眠ってもいいが、砦の若い将校は、夜通し起きているのが粋だと思っていた。
- 人生を考えるうちに、ジョバンニ・ドローゴ中尉眠ってしまう。
- 夢の世界へ
稜堡(りょうほ)
76 七
76 町からドローゴ中尉の衣類が届く
- 粋な真新しいマント
- 襟が低い・・・町の流行り
77 プロズドチモ
- 連隊付きの仕立て屋
- 仕事場は地下
- 兵曹長の位
- 15年、砦にいるのに、ここに居るのは臨時のことなんだといつも人に話す。
77 書類を書いている小柄な老人
- プロズドチモの事情を教えてくれる。
- プロズドチモや司令官の大佐みたいな病気にとりつかれないうちに、できるだけ早くここから出ていけとアドバイスする。
- フィリモーレ大佐が、重大な事件があると口火を切った。それを言い始めて18年たった。
- フィリモーレ大佐は、この砦は重要で、いずれ何かがおこると考えている。
- ドローゴ中尉は、暗示にかかりやすそうだから、気をつけてください、と伝える。
- プロズドチモの兄。
- 昔、兵隊だったが、足の怪我をした。
77 3人の若い助手
83 司令官のフィリモーレ大佐が考える事件とは
- 地図を調べて、タタール人がまだいるという。
- 昔のぐんぜいの残兵どもがまだあちこち出没していると言う。
- 司令官のフィリモーレ大佐、スティツィオーネ大尉、オルティス大尉、中佐どの(誰かな?)も、プロズドチモも、毎年きっとなにかが起こると言っている。退官するまで続くだろう。
87 八
87 外は雨、夜中
- 秋雨
87 ジョバンニ・ドローゴ中尉の新しい友人たち
87 食堂
- まわりの壁面に歴代の司令官の大佐たちの肖像画
- 友人達と食堂のテーブルに集まる
- マックス・ラゴリオ中尉のお祝いとみせて、本当はただひとりここに残るであろうピエトロ・アングスティーナ中尉のためだった。
- 他の者は順に出ていくつもり。
87 マックス・ラゴリオ中尉
- 2年間の砦勤務を終えて、翌日ここを出る。
- 2年間の砦勤務を終えたピエトロ・アングスティーナ中尉に、君も一緒に行くなら、3日くらいは待つよとつたえる。
- ピエトロ・アングスティーナ中尉の親友。
- それほど賢くなかった。
88 ピエトロ・アングスティーナ中尉
- 2年間の砦勤務は終えたが、砦を出る気がない。
- 蒼い顔をして、無関心。
- 日に焼けて色褪せた青色の軍服は、無造作さがなんとも粋な感じで、他の連中のよりもひときわ目立っていた。
- 口髭
- 女の子にもてる
- 垢ぬけした青年
- 咳(病気)
- マックス・ラゴリオ中尉の親友。
- 優秀
89 クラウディーナ
91 フィリモーレ大佐は、夏でも冬でも5時に起きている。
92・・・「あさっての晩、いまごろは、おれはコンサルヴィにいるかもしれないんだぜ。社交界、音楽、美しい女たち」・・・
92 コンサルヴィ
イタリア語で調べたけれど、詳しくわからなかった。カトリック教会の枢機卿・エルコール・コンサルヴィとか、人名の姓ででてくる。本当は何のこと?特定の場所か、地名か、なぞ。ローマに、ピアッツァ・カルディナル・コンサルヴィ庭園というのもある。
92 トロン家
- ピエトロ・アングスティーナ中尉の叔父さんの家
- すてきな人たちがいる
- ジャコモの言う《紳士の遊び》ができるから
ジャコモって誰?
92 マルティーニ
- 歩哨兵
92 ロザリア
- 明日の夜中の2時には、マックス・ラゴリオ中尉とベッドの中の娘。
- ラガリオが軽はずみに、何の気なしによく口にするむごい台詞。
93 オペラ座
- ローマ
95 翌日
- ピエトロ・アングスティーナ中尉はマックス・ラゴリオ中尉に挨拶しに出てきた。
- 二人の別れ
98 九
98 砦の露台は白かった、
- 雪
- 三度めか四度めの雪
- 冬
99 さらに三か月たった
- クリスマスも新年も過ぎ去った。
- ジョバンニ・ドローゴ中尉は、出発の準備にとりかかっていた。
- 軍医の診察待ち
99 1月10日の朝
99 砦の最上階にある軍医の部屋
99 フェルディナンド・ロヴィーナ
- 軍医
- 50の坂を超えた
- 皮膚はたるんでいるが、聡明そうな顔の男
- 軍服ではなく、判事のような黒っぽい長い上着を着ていた。
- 砦に25年いる。
100 夕刻で、警備隊の交代がはじまっていた
なんで、1月10日の朝、砦の最上階にある軍医の部屋に入っていて、すぐ窓から夕刻の警備隊の交代になっているの?
104 ・・・「アングスティーナ中尉は唯一の例外だ。モレルにしたがって、間違いなく、来年には治療のために町へ下りて行くことになるだろうな。あの男もきっと病気ってことになるだろうよ・・・」・・・
- 軍医フェルディナンド・ロヴィーナの話。
106 ・・・「私は健康なんです、ここに残りたいんです」・・・
- 理由もわからないまま、砦にとどまりたくなるドローゴ中尉。
107 十
107 ドローゴ中尉の居残る決意
- 習慣のもたらす麻痺
- 軍人としての虚栄
- 日々身近に存在する城壁に対する親しみ
- 単調な軍務のリズムに染まってしまうには、4か月もあれば充分だった。
108 ジェロニモ
- 人のいいドローゴ中尉の従卒
- 次第に彼好みを呑みこんでいった。
108 習慣いろいろ
- 時々一番近くの村までカルロ・モレル中尉と一緒に外出する。
- 馬でたっぷり2時間
- 村の宿屋で新しい顔を見られる
- 豪勢な料理もありつける
- 娘たちの初々しい笑い声も聞けるし、恋の真似事もできる
110 区別のつかない同じ日々を繰り返す
111 手紙を書く
- 友人のヴェスコーヴィの妹のマリアに返事を出すため
- 2行ほど書くと、外をながめようと屋上へ
111 マリア
- 友人のヴェスコーヴィの妹
- マリアはいずれドローゴ中尉の妻になるはずだった。
111 ドローゴ中尉は初めて第四堡塁の警備についた。
114 ・・・「ジョバンニ・ドローゴよ、気をつけろよ」と彼に言う者は誰もいなかった。青春はもうしぼみかけているのに、彼は人生は長々と続く、尽きせぬ幻影のように見えた。
115 兵士が歌う挽歌
- 規則違反を中尉しようと兵士のそばへいくが、兵士の口元は閉ざされていたのに、挽歌は途絶えることがなかった。
- どこから聞こえてくるのか?
- 挽歌ではなく、滝の水音だった。
115 挽歌
117 十一
117 およそ2年後のある夜
- 22か月が過ぎた
118 子供のころの夢
125 十二
125 翌日
- ジョバンニ・ドローゴ中尉は新堡塁の警備隊を指揮することになった。
- 夕刻に70名ばかりの兵を率いて、砦を出た。
125 新堡塁
- 砦から45分の道のり
- タタール人の砂漠の上にのしかかるように屹立(きつりつ)した円錐形の岩山の上に位置する小さな堡塁。
- 孤立した、重要な防御陣地
- 事実上、国境の外。
屹立(きつりつ)
126 警備隊の交代後
- これから24時間、孤立した堡塁で、ドローゴ中尉が唯一の指揮官。
127 10月の夕暮れ
- 天気ははっきりとせず
- 夕暮れはいつも、ドローゴ中尉は心に一種詩的な興奮を覚える。
- 英雄的な空想の時間。
129 夜の8時
- ドローゴ中尉は、堡塁の真下、やや右手の地平に何か黒く小さなもが動くのに気づいた。
- トロンク曹長に確認すると、数分前から見えているとのこと。
- 謎めいた物陰、じっとしている。
135 長い夜
- ドローゴ中尉は、眠気に襲われた。
- トロンク曹長に起こされ、夜明けにめがさめる。
136 ・・・「中尉どの、馬です」・・・
- 謎めいた物陰は、馬。
- 奇妙に美しい馬。
- 輝くような黒毛。
- 野生の馬でない、えりすぐりの馬、軍馬。
- 鞍もついていた。
138 タタール人の馬は白馬
140 ジュゼッペ・ラッザーリ
- 砲手
- 最近砦勤務になったばかりの若い兵士
- 黒毛の馬を自分の馬で、馬の世話係が逃してのまったに違いないと言う。
140 【馬】フィオッコ
- ジュゼッペ・ラッザーリの馬の名前
140 抜け道
- 絶壁を超える楽な抜け道があるという話がある。
- もう忘れられた、古い道。
- 砦に伝わるさまざまな伝説の一つ。
141 別の警備隊との交代の時間
- 砦に帰途
- 大佐に、馬の件を報告
142 噂
- 岩山の下にタタール人の全部隊が野営している
142 砦に入るとき、ようやくジュゼッペ・ラッザーリの姿がないのに気づく
- 勤務を終えた警備隊が砦に戻る際に、誰にも気づかれず大岩に隠れ、あとで一人で馬のところまで下りて行き、砦まで連れて帰ろうとした。
- 黒毛の馬は、ジュゼッペ・ラッザーリ兵のものではなかった。
- トロンク曹長に知れると、2、3か月の営倉送りになるので、仲間が点呼のとき返事をした。
- ジュゼッペ・ラッザーリが、「合言葉」を知らないのに気づく仲間
145 モレット
- 馬を連れて砦まで戻って来たジュゼッペ・ラッザーリを砦から誰何した兵。
- ジュゼッペ・ラッザーリと同じ中隊の仲間。
146 ジュゼッペ・ラッザーリが同じ中隊のモレットだと思っていた歩哨は、モレットではなかった。
- 狙撃する。
148 十三
148 記憶すべき夜がはじまった。
- 一発の銃声
150 北側の城門は混乱状態
- 勤務外のトロンク曹長は、自分を待ち受けている罰を思って落ち着かなかった。
- 第一副官のマッティ少佐も姿を見せた。
150 メンターナ中尉
- その場に警備していた。
- マッティ少佐の命令で、死体を収容するように命じられる。
- 影ぼ薄い将校で、砦の中尉の中でもいちばん年嵩(としかさ)だった。
- 大きなダイアモンドのついた指輪
- チェスが上手
- いるのかいないのかわからない存在
- 死体回収の命令にまごつく
151 マッティ少佐はトロンク曹長にも命令する
151 マッティ少佐は直接、叱責するのが苦手
155 ジョヴァンニ・マルテッリ
- ジュゼッペ・ラッザーリを狙撃した兵士。
- 額が撃ち抜かれていた。
155 ジョヴァンニ・マルテッリの名前を聞いたマッティ少佐
- 聞いたことがある名。
- 射撃競技で受賞した兵隊のひとりにちがいない。
- 射撃訓練は、マッティ少佐みずから指揮するので、優秀な兵隊の名はおぼえていた。
- 「モレット」と呼ばれていつ兵
- 自分の教え子だから、エイムがよくてご満悦なマッティ少佐。
157 死んだジュゼッペ・ラッザーリの手
- 百姓の大きな手
159 十四
154 明け方
- 新堡塁から、北の荒野に、一筋の小さく黒い線が見えた。
- その細い線は、動いていた。
154 アンドローニコ
- 歩哨
- 最初に新堡塁から、北の荒野に一筋の線を発見した人物。
- 6時ごろ、最初の警戒の叫び声をあげた。
154 ピエトリ
- 歩哨
- 新堡塁から、北の荒野に、一筋の小さく黒い線が見た。
154 バッタ軍曹
- 最初は笑いとばしていた。
- 新堡塁から、北の荒野に、一筋の小さく黒い線が見た。
154 マデルナ中尉
- 新堡塁の指揮官
- 新堡塁から、北の荒野に、一筋の小さく黒い線が見た。
159 白い砂漠を背景に、こちらに進んでくる人の列がくっきりと浮かぶ。
159 数分後 砦
- ずっと以前からの朝の日課として、仕立て屋プロズドチモは屋上に出て、外を眺めた。
- 日課なので、警備兵たちも慣例として彼を自由に通す。
- 砂漠に正体不明の隊列を発見したが、若いころ夢想したのとまったく同じなので、夢ではなく、事実でもなく、自分が死んだのではないかと思う。
161 陽はもう地平線のふちに赤く輝き 朝
- 正体不明の列は、ごくゆっくりと近づく
- 徒歩の者と馬に乗ったものとが一列縦隊を組み、旗も見えるという者がいた。
- 一人がそういうと、他の連中もその気になり、歩兵、騎兵、軍旗、一列縦隊が見分けられる気みなった。実際は、ゆっくりと動く、黒く細い線が一本見えるだけ。
162 「タタール人だ」
- 歩哨のアンドローニコの生意気な冗談。
162 半時間後 新堡塁
- 新堡塁のマデルナ中尉は、正体不明の軍隊が接近してきた場合の規則どおりに、通報のための号砲を一発撃つよう命令。
- 何年来ぶりの堡塁での大砲の音。
165 司令官フィリモーレ大佐は、自分の執務室にじっとしたまま
- 窓から北の方を、わずかに断崖に遮られずに見えるあの狭い三角形をなした荒野の方を眺めていた。
- 蟻のような点々とした黒いものが列をなして、砦の方に動いて来るのを見つめていた。
- なんの命令もださない。今まで裏切られてきたので疑っている。
167 マッティ少佐いわく
- 新堡塁へ視察に行ったフォルツェ大尉いわく、もうひとりひとり見分けられるところまできている隊列は、銃を肩に、武装していることがはっきりしたとのこと。
- 猶予はない。
168 大佐の考察
- なぜ連中は砦を襲わなければならないのか?
- タタール人の時代は、もう過去のことだ。彼らは遠い昔の伝説にすぎない。
168 北の王国
- ここ数年来、北の王国との間に根深い遺恨があり、幾度か戦さが人の口の端にのぼったことがあった。
168 武装兵
- 騎馬兵も徒歩の兵もいる。
- やがて砲兵隊もやってくるだろう。
171 時計の針が10時を告げた
- 将校連絡会の時間
- なんらかの決断を下す必要がある
- 三列体形が見える。
174 階段を駆け上がってくる足音
- ひとりの見知らぬ竜騎兵将校が現れた。
- 土埃にまみれ、疲労に息を喘がせていた。
175 第七竜騎兵連隊フェルナンデス中尉
- 町から参謀総長閣下の通達を持参した
- 封書
175 竜騎兵
176 正体不明の列と封書の内容
177 国境線の印の設置作業
- 先年設置した。
- 未確定部分が残っている。
- 大尉1名、将校1名の指揮下と若干名の兵を派遣し、完成させる。
- 未確認の地域は、山の尾根2、3本平行に走っている。
- 北の尾根を確保するために、国境線をできる限り前方に出すよう留意すること。
- 未確認の地域が重要地点だからではない、あの山地では戦闘や作戦行動を展開したりする可能性は皆無な場所。
- 容易ではない、北の王国の部隊よりかなりおくれているから。
177 大佐も将校たちも、戦がないこに落胆している。
179 十五
179 翌朝未明
11章でジョバンニ・ドローゴ中尉が子供のころの、アングスティーナと妖精の思わせぶりな夢をみたけれどたけれど、アングスティーナ中尉生きてるのか・・・。それとも同姓の別人の友人だったのかな。
179 合言葉
- 3人には、それぞれその日のと、以後4日間の合言葉が伝達された。
- 3人ともたおれるということもまずありえないが、その時は、生き残った兵の中から一番古参兵が、死んだ上官たちの軍服の上着の胸元の内ポケットから、砦の合言葉を収めた封書を取り出す権限がある。
180 ピエトロ・アングスティーナ中尉だけが長靴
- 足が痛くなる。
- モンティ大尉は気づいていたが、出発後にわざと注意する。
- モンティ大尉は、アングスティーナ中尉の気取っている態度が嫌いだった。
- モンティ大尉は、アングスティーナ中尉が丈夫でないのを知っていて、急な斜面を強行軍させた。
181 絶壁の基部に近づいた
- いつもは、この谷の口から、ひどい風が吹いている。とモンティ大尉。
- モンティ大尉は、逃げた兵を捜しに、一度きたことがある。
185 開けた広場で小休憩
- アングスティーナ中尉は体調が悪いが、モンティ大尉には弱音をはかなかった。
185 【🍴】モンティ大尉とアングスティーナ中尉の食事休憩
- パンと、一切れの肉と、チーズと、ぶどう酒1本
188 岸壁登り
190 すでに頂上付近に北の王国の兵士がいた
- 先にたどりついたのは、明らかに北の王国の兵たち。
- せめて頂上は、自分たちがとると、モンティ大尉。
- 北の王国の兵達の現在地から頂上までは、1時間くらいしかない。
- 敏速な兵士4名と、モンティ大尉だけで、先行隊として出発することしする。
- アングスティーナ中尉は、残った兵を指揮しながら、先行隊のあとに続いてのぼる。
193 垂直の岩壁に阻まれ、登りあぐねている先行隊に追いつく。
- 頂上まで数メートル。
- 岩壁の上の端から覗く2つの顔が見え、将校とおぼしきひとりがい大きな声で、そこらではのぼれない、屋根の方からでないと無理だと伝えた。(北の王国の兵士が頂上もおさえたということ。)
194 雪がふりはじめた
- 夜
195 岸壁から4つ、5つ顔がのぞいて、暗い中、崖を降りるのは危険だからと、ロープを使ってくださいと言って2本ロープが投げおろされる。
- 立ち退く北の王国の兵士は、ロープを温情で残しておいてくれる。
- まだ見える北の王国の兵士たちの手前、カードゲームに興じている芝居を打ち続けるアングスティーナ中尉の体調は最悪だった。
- 雪がまばらになった山頂から砦の明かりを見つめるアングスティーナ中尉。
198 トーニ
- 兵のひとり
- 雑用をしている
202 砦にて、山頂の明かりを目にするドローゴ中尉。
- 望めば自分も行けたが、タタール人のの脅威が消滅した今は、バカバカしくなっていかなかったが、後悔するドローゴ中尉。
- 戦以外の価値。
203 大きな石にもたれかかったアングスティーナ中尉の姿に、砦の広間の壁のセバスティーノ公の最後を描いた古い絵との共通点を見つけて、羨ましく思うモンティ大尉。
205 「あしたはきっと・・・」と言い残しアングスティーナ中尉が亡くなる。
11章でドローゴ中尉が見た子供のドローゴとアングスティーナと妖精の夢がここにさしこまれている。予知夢的な・・・。
206 十六
206 アングスティーナ中尉が埋葬されてから、以前とおなじように、砦の上に流れはじめた。
- オルティス少佐が「もう何年になるか」とドローゴにきき、「4年」と答える。
オルティスは、序盤で砦に向かうドローゴと出会って話をした人物で、その時の階級は大尉だった。一つ偉くなっている。
206 だしぬけに冬がきた
207 アングスティーナ中尉の墓
- 砦のかたわらの小さな囲いの中の土の下。
- その上には、名前を刻んだ、白い石の十字架。
- 兵のラッザーリのは、その少し向こうの、小さな木の十字架。
砲手のジュゼッペ・ラッザーリは内緒で黒毛の馬をとりにいって、撃ち殺された農民出身の兵隊。
208 二人は第四堡塁の一番上に座ってアングスティーナ中尉の死について話す。
- 自分たちは戦を望み、その好機を待ちながら、わが身の不運に腹をたてている。だが、アングスティーナ中尉には幸運など必要なかった。
- アングスティーナ中尉も我々と同じで、敵にも出会わなかったし、戦も経験しなかったが、それでも彼は戦で死んだのと同じ死に方をした。
- アングスティーナ中尉は死ぬ潮時を心得ていた。まるで銃弾でも浴びたみたいな英雄のような死。でもだれも発砲したわけではない、彼になにも特別な有利な条件があったわけではない。あったとすれば、死にやすい状態にあったことぐらい。ほかの連中にとっては、他の日と変わらぬ1日にすぎない。
- ドローゴ中尉だって。申し出さえすれば行くことができた、そんな1日。
- オルティス少佐は、勤務中のドローゴ中尉に会いにきた。二人は日ごとに友情が深まっていた。
209 オルティス少佐の考え
- 我々にだって何かの価値あるものが常に巡って来ているんだ。
- アングスティーナ中尉はそれに高い代償を支払う覚悟をしていたのだろう。
- 我々は覚悟ができていないのが問題。
- おそらく我々はあまりに多くを期待しすぎるのかもしれない。
- 実際にはなにか価値あるものが我々も常に巡って来ているのに。
- まだ間に合ううちにここを出て、町へかえるんだ。
- 町んお駐屯部隊に転属するんだ。
- 君(ドローゴ)は人生の悦びを蔑む達とは思えないから、ここにいるよりずっと出世が早い。
- 誰もが英雄になるために産まれてきているわけでもないんだから。
- ここで4年過ごしたから、昇進のために点数をある程度稼いだ。町でいる方がずっと有利だ。
- 私はほかにも大勢、次第に砦暮らしに慣れてしまう者を見てきた。ここに囚われ、離れることができなくなってしまう。実際、30歳でももう年寄り。
- 君はまだ若い。
210 蔑む(さげすむ)
211 砦にいるのは、なにかもっとすばらしいことが望みうるから、ドローゴ中尉も、オルティス少佐も。
- 望みつづけてる
- 馬鹿げたことだと、考えればわかるのに。
- 北の王国から戦がやってくるなんてことは決してない。
212 十七
214 春
218 ジョバンニ・ドローゴを砦に引き留めるものはなにもない
219 バスティアーニ砦との別れ
220 十八
220 家
220 ジョヴァンナ
- 帰宅したジョバンニ・ドローゴをぼっちゃまと呼ぶ。
220 家族
- 母親がむかえてくれる。
- 兄弟はひとりは外国、一人はどこかに旅行で、3人目は田舎暮らし。
221 彼の部屋
- 出発したときのまま
221 ・・・さて、なにをしよう?彼は自問した。
221 まるでよその町をうろつくみたいに、ジョバンニ・ドローゴは昔の友人を探して歩いた。
- みんなまじめに働いて、忙しい
222 大きな舞踏会
- ただひとりもとどうりの友達いることのできたヴィスコーヴィと行く。
フランチェスコ・ヴェスコーヴィは砦にでかけるジョバンニ・ドローゴを送っていってくれた友人。
224 深夜にきたくするジョバンニ・ドローゴの足音で目覚めなくなった母親
226 十九
226 フランチェスコ・ヴェスコーヴィの妹のマリアに会いにいく。
- 二人の間に隔たりを感じるジョバンニ・ドローゴ。
- 三日後には、母親とジョルジーナと一緒にオランダ旅行へ行く予定
231 ミケーリのお嬢さん
- フランチェスコ・ヴェスコーヴィの部屋の上の階
- ピアノの調べ
233 2か月の休暇
233 ジョルジーナ
- フランチェスコ・ヴェスコーヴィの妹のマリアの友人
- 3日後にはオランダ旅行へ一緒にいく
236 4月にしては暑い日
- すべてが終わった二人
- 砦の生活を引きずるジョバンニ・ドローゴ
237 二十
237 砦で4年間勤務すれば、慣例として、新しい任地へ転任する権利が与えられる。
- ジョバンニ・ドローゴは、遠方の任地を避け、自分の町に残りたいので、師団長と個人的に面談できるよう頼みこんだ。
- この面談をしつこく言い張ったのは、むしろ母親。
- 知り合いに裏から手を回して、将軍が快くジョバンニ・ドローゴに会ってくれるように段取りをつけたのも、母親。
238 将軍
- 師団長
- 片眼鏡
- 将軍はかなり年
- フィリモーレ大佐は元気かとたずねた。
司令官のフィリモーレ大佐のこと
- アングスティーナ中尉を国境を危険にさらして、陛下にも心痛をかけたと言った。・・・よく覚えていないという。
242 将軍のいうバスティアーニ砦の弱点
- 兵隊が多すぎるということ
- 新たな編成替えがある
- 兵員の削減、駐陳兵はほぼ半数になる。
243 転任願いがない
- 通常は必要ないが、今回は大幅な兵員削減で、皆砦を出たがっているから、優先順位を配慮しなければならないからいる。
- 砦では、そんな情報は誰もしらない。
- すでに、20通の転任願いが砦からきていると副官。←出し抜かれた。
243 副官
244 ジョバンニ・ドローゴの勤務成績
- 《通常の説論》←たいしたことない。
- 過失により歩哨が1名死亡←間違い
- もう1か月早く願いが出ていれば、人事はなんとかなった。
- 人事削減のため、転任願いをださなければならないことを知らなかったことは、不思議で、不利なことだ。
245 ジョバンニ・ドローゴが仲間に出し抜かれ思ったこと
- 《軍隊をやめようか、辞職しようか》
- 《べつに食うのに困ることもあるまい、自分はまだ若いんだから》
246 二十一
246 砦に帰るジョバンニ・ドローゴ中尉。
- 反抗もせず、辞表も出さず、だまって不公平を吞み込んだ。
- 急激な生活の変化を避け、これまでどおりの慣れ親しんだ暮らしにもどれることを内心ひそかに喜んでいる。
- 日常生活の卑小な争いは放棄した。いずれすべてが充分に報われる日が来ると考えている。その間にも他の者に抜かれる。・・・戸惑い。
249 砦の変化
- フィリモーレ大佐も砦を去る。
- みんな浮足立っていた。
- 勤務のリズムは大いに乱れていた。
250 変わらないもの
- オルティス少佐
- 転任願いをださなかった。
- 熱心に砦で勤務していた。
251 モレルだけは、司令官のオルティス少佐の閲兵を受けたとき、目に光るものを浮かべ、号令をかけるその声を震わせた。
カルロ・モレル中尉は、ドローゴ中尉の陽気な友人
252 豪(えらが)った
252 ドローゴ中尉はモレル中尉が去っていったという思いに、自分の豪った不公平にようる心の傷が開いて、彼を苦しめ、オルティス少佐にそれをぶつける。
256 二十二
256 砦をさる最後の中隊
267 ジョバンニ・ドローゴ中尉のそばにヘシメオーニ中尉が妙な顔をしてやってきた。
- 第三堡塁で勤務中だったが、ちょっと抜け出してきた。
267 ヘシメオーニ中尉
- 3年前に砦に赴任してきた。
- 退屈な男
- まじめそうな青年
- 権威には柔順
- 体を鍛えることが好き
- とりたてて親しい友人はいない
258 陰鬱な9月のある日
258 ヘシメオーニ中尉とジョバンニ・ドローゴ中尉は第三堡塁へ
- 前方の山並みで遮られていない例の三角形をした砂漠を望遠鏡で眺めるようにいうヘシメオーニ中尉。
- 小さな斑点が動いているのが見える。
- ヘシメオーニ中尉は、黒いしみのようなものを見つけて5日になるが、誰にも言いたくなかった。自分たちを笑いものにした連中に知らせて居残られたくなかったから。
- 軍用道路を作っていると、ヘシメオーニ中尉。2年前には地勢を調べにきたから、今度こそ本気でやってくるつもりだ。
262 2年前のことがあるので、本気で取り合わない、ジョバンニ・ドローゴ中尉。
262 オルティス少佐と話して、ヘシメオーニ中尉の秘密は、衆知のことだったと知るジョバンニ・ドローゴ中尉。
- だが、誰もきにとめていない。
263 仕立て屋のプロズドチモも3人の助手をてばなした
264 それからしばらくたったある夜
264 第4堡塁の城壁の上から見る
- かすかな明かりが見えた。
- ジプシーか羊飼いの野営かもしれない。
- 新しい道路のための工事場の明かりだというシメオーニ中尉。
- 肉眼では見えないが、望遠鏡では、はるか彼方に明かりが見える。
268 ジョバンニ・ドローゴ中尉は、25歳になったばかり。
- かすかな不安が絶えずつきまとう。
270 1週間ほどたつと、
- 砦のみんなが無視している明かりが、動きだし、砦の方向に向かって進んで来ていると、シメオーニ中尉が言い出す。
270 二人で観測する
- 明かりに距離の変化が見られた。
- もしかすると、その現象は何年来、何世紀来繰り返されていたのかもしれない。そこには、村か、隊商が立ち寄る井戸があるのかも。
- 今まで、砦には誰もシメオーニ中尉のような強力な望遠鏡を持っている者がいまくてきづかなったのかも。
- その小さな斑点は、いつも同じ線に沿って往復していた。
- ドローゴ中尉の生活の中での唯一の関心事になる。
272 断層から新堡塁のある岩山の麓までの間の砂漠は一様に平たく、ところどころわずかに小さな溝や、葦の茂みがあるだけだった。
272 シメオーニ中尉の予想
- 断層の下まで道路が、6か月後にくるかも・・・。(状況しだいでは、7、8か月)
- 曇天の夜を利用すると、一気に残った距離を敵は詰めることができるようになる。
- 地面の具合もいいので、大砲を引っぱってくるのもたたすくなる。
274 まっすぐに砂利を敷いたあとがはっきり見えると断言するシメオーニ中尉。
- ジョバンニ・ドローゴ中尉には見えない。
274ある日、雪が降り始めた。
- 暦では11月25日
- もう50の坂を越したオルティス少佐
- 夜の明かりも消えていた。
277 二十三
277 砦に冬が襲来してしばらくたったころ、
277 掲示板に奇妙な布告がはりだされる
- ニコロージ中佐の署名
- 《遺憾なる動揺と根拠なき流言》
- 望遠鏡の回収
足を引きずっている副司令官ニコロージ中佐のこと。
278 将校たちは誰一人規則に反した望遠鏡で砂漠の方を窺わないだろう。
- 各堡塁に備え付けた望遠鏡は旧式で役立たず。
278 誰が町の上級司令部に密告したか?
- 誰もが直感的にマッティ少佐を思い浮かべた。
第一副官のマッティ少佐のこと。ドローゴ中尉が砦勤務をやめたいと最初に言ったとき、健康診断の件を持ち出して4か月引き延ばした上官。
- 大部分の将校はとりあわなかった。
- 上級司令部は、2年遅れで、再確認したにすぎないと思っていた。
- ドローゴ中尉とシメオーニ中尉以外、北からの脅威など誰も考えていなかったから。
- ジョバンニ・ドローゴ中尉だけは、直感的に布告は自分に向けられていると確信した。
- ジョバンニ・ドローゴ中尉が数時間砂漠を見ることに、何の不都合があるのか?
- シメオーニ中尉は小心者だから、望遠鏡の使用はしなくなるだろう。
281 シメオーニ中尉とこっそり話す
284 二十四
284 砦の単調な生活がつづく。
- ドローゴ中尉は、ひそかな希望があり、その希望のために人生の花の盛りをむなしく費やしている。
- 冬がおわった。
- 冬が終わったら連中(北の王国)はふたたび道路工事を始めるだろう。シメオーニ中尉の望遠鏡はもうないので確認できないが。
285 5月のはじめごろ
- 規定の望遠鏡で砂漠を窺うが、人間が活動している徴(しる)しは何一つなかった。
- 確信がうすれる、ジョバンニ・ドローゴ中尉。
- 人生の孤独を感じるジョバンニ・ドローゴ中尉。
287 7月7日の夜
- 望遠鏡のレンズの中に揺らめく明かりが現れた。
- みんなに知らせたい気持ちと明かりが消えるのではという怖れから、辛抱して秘密にした。
287 毎晩ドローゴ中尉は城壁の上に立って待った。
- 明かりは少しずつ近づき大きくなってゆくように思えた。
- ついに、歩哨のひとりが肉眼でそれをとらえた。
- やがて日中でも砂漠の上で前年と同様に小さな黒い点が動くのが見えた。
287 9月には工事現場の明かりとおぼしきものは、晴れた夜など、普通の視力の者もはっきり見て取れた。
- 次第に将兵たちの間でも北の荒野のことが、話題にのぼりだす。
- ある夜、言葉を濁しながら、戦のことを口にする者が現れた。奇妙な希望が再び城壁の中を駆け巡る。
288 二十五
288 北の砂漠を長々と走る断層帯の端、砦から1キロと離れていないところに、杭が1本立てられている。
- 杭の場所から新堡塁のある円錐形の岩山までの間は、地面が平で固いので、砲兵も容易に進める。それが、新堡塁の上から肉眼で見える。
- 北の王国の連中は、そこまで道路をすすめてきた。
- 15年かかった。
290 15年後のバスティアーニ砦
- 顔触れはいつもほぼおなじ、習慣も、警備勤務の当番も、毎晩将校たちの口にのぼる話題もいっこうに変わらなかった。
- なにも変わらないが、みんな年をとった。
- 守備隊はさらに兵員が減らされ、城壁の見張りも間引かれ、合言葉もなくなり、歩哨は重要な箇所だけの配置、新堡塁のの閉鎖が決定。
- 10日目ごとに一分隊が偵察に派遣されるだけになった。
- 参謀本部では、北の砂漠の道路工事を重大視していない。
290 無定見(むていけん)
- 砦の暮らしは、いっそう単調でわびしいものになっていった。
- ニコロージ中佐、モンティ少佐、マッティ中佐らは退官。
副司令官のニコロージ中佐、大男のモンティ少佐(最初、大尉だった。)、第一副官マッティ中佐(最初、少佐だった)
290 15年後の9月のよく晴れた朝
- ジョバンニ・ドローゴ大尉は1か月の休暇をとったが、20日でバスティアーニ砦に戻って来た。
- 町になじめなくなった。
- 昔の友達は出世して要職につき、ジョバンニ・ドローゴにぞんざいに挨拶した。
- 実家は母親がなくなった。
- 兄たちは、一人は結婚して家を離れ、もう一人は絶えず旅をしていた。
- モーロ中尉と出会う。ジョバンニ・ドローゴ自身が新任の時、オルティス大尉との出会いの既視感。
- ジョバンニ・ドローゴは、40代。
294 モーロ中尉
- バスティアーニ砦へ配属された新任の将校。
296 二十六
296 工事が完成したのに、北の連中は姿を消してしまった。
- 敵はやってこなかった。
- ジョバンニ・ドローゴ大尉を見つけて、大声で挨拶する。
298 モーロ中尉の不安
- マッティ少佐の代わりを務めているシメオーニ少佐のところにとんでいった。
- 4か月とどまるように言いくるめられ、罠に落ちた。
シメオーニは以前は少佐で、いい望遠鏡を持っていた人。
299 オルティス中佐が退官する日がやってきた
- 夏の晴れた日の朝
- ジョバンニ・ドローゴとオルティスとの別れの挨拶。
- 口とは裏腹な二人の思い。
- ほぼ30年の間、同じ城壁の中で暮らし、同じ夢を見てきた二人。
304 二十七
304 ジョバンニ・ドローゴ少佐、54歳
- 少佐に昇進、砦の貧弱な守備隊の副指令官
- 痩せて、顔色が黄ばんで、体力が萎え始めた。肝臓の機能障害と軍医のロヴィーナが言った。
- ドローゴ中尉はロヴィーナ軍医と親しかったのでシメオーニ少佐の休暇命令を断って、砦にとどまれるように計らってもらっていた。休暇をとると、二度と戻ってこられない予感がしていたから。
306 苛酷(かこく)
307 寒くて雨の降る3月のある日
- 山では大きな雪崩が次々起こった。
- 春
- ロヴィーナ軍医は回復を早めるために、ドローゴ少佐は1日中ベッドでにいて、仕事は寝室でするように忠告した。
- 毎日体調をだましだましに生きている。
309 ドローゴ少佐は、少佐になってからも、幸運が去るのを恐れでもするかのように居室(きょしつ)をかえようとしなかった。
- 今では水槽の水音もすっかり慣れて、気にならなくなった。
310 年老いた仕立て屋のプロズドチモが、ドローゴ少佐の部屋をたずねてきた。
- 仕立て屋のプロズドチモは、もう兵曹長ではないが、そのころの軍服をきている。
- 北の道路から兵隊が何大隊もやってくると報告する。
- 参謀本部も、増援部隊を送るという知らせがあった。
- 戦だ。
- 大砲も見える、十八門見えたそう。
- あの道路なら2日もすればすぐ近くまでやってくるだろう。
312 従卒のルカ
- ジョバンニ・ドローゴ少佐の従卒
314 支度をして、体調不良を誤魔化しながら砦の一番高いところにある露台に着いた。
- 部下たちの敬礼がぞんざいに感じた。
- 顔を真っ赤にしたシメオーニ中佐が急いでやってきた。ドローゴ少佐を半時間もあちこち探していたらしい。どうしていいかわからなくて、ドローゴ少佐の助言が欲しい。
316 援軍が2個連隊くる
- 敵の挑発行動の心配のため増援
- 歩兵第十七連隊
- 軽砲兵隊
318 体調不良で気絶するドローゴ少佐
318 二十八
818 一昼夜、ジョバンニ・ドローゴ少佐はベッドにじっと横たわっていた。
- 軍医のロヴィーナは数日すればよくなると言った。
319 11時ごろ、ジョバンニ・ドローゴ少佐の部屋にシメオーニ中佐が入ってきた。
- 北の王国の砲兵が断層のへりにとりついて、配置につこうとしている最中。
- 砦の中は火事場騒ぎ。
- 午後には増援部隊が到着する。
- 今日、ジョバンニ・ドローゴ少佐を迎えに馬車が来る。
- ロヴィーナ軍医が転地したほうがいいと言っていた。
319 ジョバンニ・ドローゴ少佐とシメオーニ中佐
- かつてオルティス中佐にしたみたいにシメオーニ中佐に心開いてはなそうとした。「君にもわかっているだろう、この砦には、みんな望みをつないで居残っているんだ、うまく言えないが、君にもよく分っているんだろう」。に対してシメオーニ中佐は「分からない」と返答。
- 「30年以上、敵を待ってきた、ここにとどまる権利があるはずだ」というジョバンニ・ドローゴ少佐に対しシメオーニ中佐は、「君のためにわざわざ2名も伝令をだして、馬車を通すために砲兵隊の前進を遅らせたのに」という。
- ジョバンニ・ドローゴ少佐がシメオーニ中佐に下手にでて説得しようとしたが、結局のところ、ドローゴ少佐のためではなく彼の悩みの種の増援の部屋の割り振りのため、ドローゴ少佐の部屋が空けば、ここに3人兵隊を割り振れる理由からだけだった。
- 立ち退きを軍人として命令されるドローゴ少佐。
シメオーニ中佐は、以前、望遠鏡をすぐに手放した人。小心者で人に好まれる性格者でないふうだった。腹を割れないタイプ。厄介ごとは手放したいと考えるタイプ。
327 二十九
327 豪奢な馬車の迎え
- モーロ中尉とほか数名、別れを告げに来る。
- シメオーニ司令官は今、多忙だが必ず挨拶にくるから待っていてほしいと伝言があったが、ドローゴ少佐は構わず馬車をだした。
330 5時ごろ
- 谷の横腹に沿って走る道端の小さな旅籠に着いた。
- 騎銃大隊が通りかかった。将校だけはドローゴ少佐に敬礼をして「年寄りはのんきなもんだ」と声がした。
- ひとけのない古い家に急いで帰りたくないので、旅籠で一泊。
- 赤ちゃんをみて、自分の人生をふりかえり《哀れなドローゴ》と呟く。
333 三十
333 うっとりとした夜
- 旅籠んの寝室
- 砦ははるか彼方
- 死の想念
336 死との戦い
341 訳者解説
- 1906年10月16日
- 北イタリアのヴィネト州の小都市ベッルーノの旧家 生まれ
- 幼少期をその地で過ごす