「八咫烏シリーズ」の外伝第2弾
- <読む順番まちがえた・・・・
13 かれのおとない
- 北領の話
- 雪哉が頸草院から大猿との戦いまで
13 【🔎】おとない
15 みよし
16 垂氷(たるひ)の雪哉(ゆきや)
- 北領(ほくりょう)が垂氷郷、郷長家(ごうちょうけ)の子息
- 貴族の息子
- 茂丸(しげまる)の友人
17 茂丸(しげまる)
- 茂(しげ)と家族に呼ばれている
- みよしの一番上の兄
- 茂丸が雪哉を家に連れて来た当時、山内衆の養成所である頸草院(けいそういん)に在籍していた
- みよしは大兄ちゃんと呼び慕っていた
17 父親
- 茂(しげ)とみよしの父親
18 山内(やまうち)
- 八咫烏の一族の住まう場所
- 山内の地は、金烏(きんう)宗家のもと、東西南北の4つの領に分けられている
- 東家(とうけ)が治める東領:楽人を輩出する芸術の地
- 南家(なんけ)が治める南領:商人が力を持ち、たくさんの人と物が行きかう地
- 西家(さいけ)が治める西領:多くの職人を抱え、山内の美と文化を支える
- 北家(ほっけ)が治める北領:腕っぷしの良い武人であることが何よりの誉とされる土地
18 山内において最高の武人とは
- 金烏宗家を守る山内衆(やまうちしゅう)
18 頸草院(けいそういん)
- 山内衆の養成所である頸草院(けいそういん)
19 茂丸(しげまる)が17歳の時の大事件
- 近くの民家が、人喰い大猿に襲われた
- 茂丸の人生が変えられた。ご近所の安否確認に行った後、茂丸は山内衆に入るために、頸草院に行くことを希望した。
21 長期休みに入って最初に連れ帰った友達が、雪哉
- 当時、みよしは10歳
- たった3日間の滞在
22 弟や年少の村の子共達が、川遊びに行きたがりみよしがこまっていると、
- 雪哉が引率してくれ、谷川で一緒に遊んでくれた
- 子供達の人気者になった雪哉は、みよしを女の子として丁寧に接してくれ、みよしは夢中になった。
22 弟
22 次男
23 みよしが別れ際にあまりに泣いたせいか、それ以来、長期休暇の度に顔を見せてくれるようになった雪哉
- 茂丸は、雪哉の他にも貴族階級の出身者の友達を連れて来た
23 明留(あける)
- 貴族階級
- 郷長家よりさらに偉い四大貴族の一つ、西家のお坊ちゃん
- とびきり綺麗な美少年で、村の女達は黄色い声を上げた
- 桐箱のお菓子をお土産に、村人たちに手ずから配った
- 緊張して、気を使っている明留
27 みよしの淡い初恋
- 雪哉のことが好きだったが、叶わずあっさり終わった
27 茂丸達が無事に頸草院を卒院し、山内衆として若宮殿下に仕える身になった頃
- 大地震
- あちこちから火災
- みよしの村では、怪我人もなく、家の倒壊も免れた
- 村長の家の瓦は落ち、漆喰が剥がれ落ち、いくつかの納屋がくずれた
- 数日後、中央の被害がひどかった
28 気候変動
- 天候が悪くなり、作物は不作
- 断続的な地鳴りがおこり、中央の方は常にあやしげな暗雲が立ち込めた
28 中央山(ちゅうおうざん)に祀られている山神さまが、お怒りになったという噂
29 茂丸(しげまる)の死の一報
- 中央からやってきた羽林天軍(うりんてんぐん)の兵により一報
30 最初の知らせがあった翌々日
- 茂丸(しげまる)の無言の帰宅
30 茂丸(しげまる)の死亡の理由
- 若宮殿下の警護中に雷にうたれた
30 三番目の兄
- 棺桶の中の長兄の遺体を見ようとしたみよしを止めた兄
31 盛大な葬儀
32 茂丸(しげまる)が死んでから、数か月
- 山神の怒りが静まる
- 長年の懸案であった猿との戦いにも勝利した
32 若宮殿下の招待
- 戦で没した兵の遺族に、若宮殿下から直接お言葉を賜る機会
- 一家で中央へ
32 中央
- 蛟(みずち)の曳く船に乗る。茂丸がみよしにいつか見せてやりたいと言っていたもの。
32 【🔎】蛟(みずち)
32 寺院
- 中央城下から山の手を通り、たどり着く大きな寺院
33 奈月彦(なづきひこ)
- 茂丸が命に代えて守った若宮
- 美しいかんばせと輝く黒髪
34 奈月彦の護衛のまるで別人のような雪哉
34 「雪兄ちゃん」と小さな声を漏らすみよしを見た雪哉
35 若宮の約束した遺族への保証
- 莫大な恩給
- 恩給の宝物は、家族の不和のもとになった
36 恩給を受け取るか、返上するか、家族の意見がわかれる
38 末っ子の弟が、亡くなった茂丸のまねをしておどけてみせ、大人たちの紛糾を緩和した
- なごみ、笑い、泣く家族
- 恩給は一度受け取り、村全体で使い道を決めることにした
39 先祖代々の墓
- 不釣り合いに聳え立つ、茂丸の墓
- みよしは山から摘んできた白い百合を墓に手向けた
40 雪哉がみよしの家を訪ねてきたシーンにもどる
- みよしの結婚祝いを届けに来た雪哉
- 隣村の働き者であると評判の青年との縁談
- さ百合花、ゆりも逢(あ)はむと、思へこそ、今のまさかも、うるはしみすれ
44 【🔎】
44 【🔎】大伴家持(おおとものやかもち)
45 ふゆのことら
- 北領のはなし
- 雪哉がまだ北領にいて、奈月彦の側仕えが決まった頃
47 ・・・透き通った冬の蒼天に、・・・
47 市場から近い広野の一角で喧嘩
- 味方4人、敵10人
47 先日喧嘩を売ってきた総大将
- 市柳と同年代の割には大柄で太っている
- よっちゃんと仲間は呼んでいる
- 他領の子
47 市柳(いちりゅう)
- 日常、大人に混じって鍛錬している
- 2人の兄
- 北領の郷帳一族
- 三男
- 「風巻(しまき)の虎」と呼ばれている
50 市柳(いちりゅう)の父
- 山内(やまうち)は北領(ほくりょう)が風巻郷(しまきごう)を治める郷長
- 位階だけなら、中央の高級貴族に相当する
- 巌(いわお)のような体躯と強面の豪傑
50 北領(ほくりょう)
- 酒造と武人の地
- 大きな田畑はない
- 綺麗な水を使った酒造りが盛ん
- どの村にも最低一つは道場があり、普段は畑を耕している農夫も、有事の時は兵と化す。半農半士が占める土地柄
51 市柳の長兄
- 郷長の後継ぎとして既に働いている
51 市柳の次男
- 上級武官を養成する頸草院(けいそういん)を出た後、現在は中央で宗家近衛の任を与えられている
51 市柳は末っ子の問題児
- 将来を決めかね、同じような年頃の郷民と徒党を組んで遊び回っている
- 元服の時期
51 進路
- 父や長兄の手伝いのため郷吏(ごうり)になるか、次兄のように上級武官をけざすために頸草院か
54 市柳の母
- 市柳は「母ちゃん」と呼ぶが、「母上とよびな」と注意されている
- 忍(しのぶ)さんと、夫は呼ぶ
54 風巻郷(しまきごう)
- 垂氷(たるひ)郷とは隣り合う
55 垂氷(たるひ)郷
- 風巻郷(しまきごう)と同様に3人の息子たちがいた
- 長男・雪馬(ゆきま)と次男・雪哉(ゆきや)は年子で、市柳とほぼ同い年で市柳はよく比べられる
55 長男・雪馬(ゆきま)
- 頭よし、見目よし、性格よし、と三拍子そろった俊英
- 年に2回の北領の領主の前で行われる御前試合においても悪くない成績を収めているので、市柳も認めている
55 次男・雪哉(ゆきや)
- 兄と真逆
- 頭の出来は悪い、見目もよくない、とんでもない意気地なしという出来損ない
- 試合でも、手合わせが始まると同時に半泣きになって順刀(しない)を放り出すから、雪哉の相手はほとんど不戦勝
- 新年の挨拶のため、北領領主本邸に市柳たちが出向いた時、よくない相手と喧嘩して大敗を喫して、領主に呆れられたという噂を聞いた市柳
- 中央の宮仕えが決まったらしい。春から若宮殿下の側仕えになる
- 今はもう亡くなった次男の母親の方が、今の正室よりずっと身分が高い
56 若宮殿下
- 日嗣(ひつぎ)の御子(みこ)の座についていて、いずれはこの山内の地を統べる方
- しばらくは外界に遊学していたが、先頃帰還し、そろそろ有力貴族の四家から正室を選ぶ登殿(とうでん)の儀が始まる
58 市柳の父親は「りゅうくん」とよぶ
58 「山賊の根城」
- 風巻郷(しまきごう)の郷長屋敷を郷民は愛称で呼ぶ
59 忍(しのぶ)
- 市柳の母親で、郷帳の妻
- 貴族の生まれすらなく、武芸大会で並み居る敵をなぎ倒し、郷長家の正妻の座を腕力で勝ち取った女武芸者
- 小柄で目つきが悪くて罵倒の切れ味鋭い母
- 十人並みの容姿だが、父親には絶世の美姫に見えるらしい。父親とよくいちゃいちゃする
60 北領の武術大会
- 毎年2回
- 祈年祭(としごいのまつり)と新嘗祭(にいなめのまつり)に先駆け、北稜の一番大きな寺院で武術大会が開かれる
- 北領の各地から腕に覚えのある成人前の少年達が集められ、祭り当日に奉納試合をさせる
- 頸草院への峰入りを目指す平民の少年達には、自分の力を有力者に訴えるための良い機会であり、頸草院からも何人かの教員が見に来ている
- 北領の武家の子共には、叩きこまれた武術を披露するまたとない機会
60 【🔎】祈年祭(としごいのまつり)
60 【🔎】新嘗祭(にいなめのまつり)
62 市柳は、垂氷郷の雪馬(ゆきま)に勝つ
- 負けても爽やかで女性に人気のある雪馬
63 垂氷郷の雪哉(ゆきや)の試合
- 垂氷の三男の応援
- 負ける
64 雪哉が中央で、若宮の側仕えをすることになったいきさつ
- もともと若宮の側仕えになる予定だったのは他の貴族だったが、その貴族は平民と勘違いして雪哉と喧嘩し、雪哉に怪我させた罰で、お役目を譲ることになった
66 市柳は大会で3番手につける成績
66 【🍴】祈年祭(としごいのまつり)の楽しみ
- 北領の冬場に仕込んだ冬酒が最初に出回るのが祈年祭(としごいのまつり)・・・明日になれば出回る
- 晩秋に造った秋酒が振舞われている
- 寺院前の参道では、たくさんの出店が肴を売り出す
- 玉にした蒟蒻を甘辛く煮る大鍋から醤油の焦げる香りがぷんぷん漂い
- 味噌を塗って焼いた鶏の串焼きからは、金色の脂がとめどなく垂れていた
66 【🔎】丸い蒟蒻を食べる地域
- 山形県 玉蒟蒻
66 【🔎】味噌を塗った焼き鳥
67 雪哉は市柳に殊勝に手ほどきを乞う
- 打ちのめす雪哉、詫びる市柳
- 服の下に隠れる場所の打撃を受けていた市柳。慣れた手口。
- 原因は、雪哉が雪馬に成り代わり郷長の座を乗っ取るという噂を言いふらしたこと
76 雪馬が止めにはいった
- 複雑な家庭環境の雪哉
- 貴族という立場の言葉の重みと責任
78 市柳は自分の家は恵まれていると再確認した
- 頸草院へ行くことを決める市柳
- 家族が喜んでくれる。雪哉のいう「責任」を果たすことになるから。
- 『風巻の虎』を名乗るのはやめよう
79 ちはやのだんまり
- 千早と妹の話
81 ・・・つくばいの水は澄みきっており、秋の気配の濃い植え込みの草木はしとやかに葉先を濡らしている。・・・
- 大貴族西家(さいけ)の御曹司として生まれた明留(あける)の作庭
81 明留(あける)
- 大貴族西家(さいけ)の御曹司
82 千早(ちはや)
- 明留(あける)の数少ない友人
- 宗家の近衛である山内衆(やまうちしゅう)の一員
- 少女の兄
- 余計な装飾のない黒一色の装束に、赤い佩緒(はきお)が巻かれた大きな太刀という、戦装束。
82 【🔎】佩緒(はきお)
82 やわらかく目を瞑(つむ)った可愛らしい少女
- 目が不自由
- うっとりした表情を臨席の若者に向けている
- 千早の妹
- 今様(いまよう)色の着物は高級ではないが、清潔に整えられている
82 臨席の若者
- ふてくされたように明後日の方を向いて、時折じろじろぶしつけな視線を明留に向けてくる
- ほつれて見苦しい粗末な衣
- 髪は適当にくくっただけで、ひねくれた性根があらわになったような顔も薄汚い
- この場にいることが、不本意そう
- 千早の年頃の妹が、将来を考える相手
83 先頃、山内の地を統べる金烏(きんう)に、長子となる姫宮が誕生
83 真赭(ますお)の薄(すすき)
- 明留(あける)の姉
- 皇后付きの女房
- 姫宮の養育係
83 皇后
- 政敵ののさばる宮中を離れ、薬草園に囲まれた紫苑寺(しおんじ)で姫宮の養育をしている
84 紫苑寺(しおんじ)
- 薬草園に囲まれた場所
- 金烏陛下は足しげく紫苑寺の姫宮のもとに通う
- 金烏陛下の側近である明留も、一緒に紫苑寺にいくことになるので、姉の真赭(ますお)の薄(すすき)と顔を合わせることが多かった
- 少し様子のおかしい姉の真赭(ますお)の薄(すすき)が、金烏の護衛としてきている千早に声をかけた
84 千早(ちはや)
- 頭も身体能力も抜群
- 非常に優秀な護衛
- かなりの無口で愛想がない・・・面倒くさがっているだけ
- 過酷な幼少期を、目の悪い妹を守りながら生き抜いて来た
- 情緒の9割を妹に割いていた。妹に関わらないことは大抵どうでもよいと考えている
- かつて明留を苦労知ずの坊(ぼん)とあざけっていた千早が、心を許したのは、花街に身売り同然の形で引き取られた妹・結(ゆい)を、明留が大金を肩代わりしたことで話をするようになった
85 結(ゆい)
- 千早の妹
- 目が不自由
- 素直な気質と楽才に恵まれた才媛
- 琵琶と歌唱が得意
- 今は、琵琶と歌唱で身を立てることを目指し、師匠のもとに通っている
- 少し前には、修業のため治安の悪い谷間に住みたいと言い出した結と千早の間に兄妹喧嘩があったが、真赭(ますお)の薄(すすき)が、結の逗留先を都合することで仲裁してみせた。以来、真赭(ますお)の薄(すすき)は、結の相談にしばしばのってあげているので、千早は真赭(ますお)の薄(すすき)には頭が上がらない様子
85 姉・真赭(ますお)の薄(すすき)の話
- 結にいい人ができた様子
- 結が谷間に居を移したのは半年前
- 相手は谷間の男の子、お師匠さまのところへ行った帰りに声をかけられた
- 顔合わせの約束
88 顔合わせ
- 結局、明留が段取りすることになり、千早がすっぽかさないように引きずってきた
89 シン
- 結がお付き合いしている人
- 結はシンの優しいところが好きと紹介する
- 谷間で門番の仕事をしている
- 結の声と顔が好きという
- 明留にも千早にも不評な男
93 ずっと黙って明後日の方を見ている兄・千早に、結がきれて、最後はシンと一緒に出て行った
94 西家朝宅(ちょうたく)
- 顔合わせを心配して、真赭(ますお)の薄(すすき)が待っていた
94 顔合わせの後、結の世話になっている置屋に行って、シンの評判を調べて来た明留
- 酷い評判だった
- シンはもともと捨て子で、生まれも育ちも谷間の生粋の不良
- 谷間を治める親分衆が後見のような役目を果たしており、衣食住の代わりに、置屋や女郎宿の門番もどきの役割を与えられている
94 谷間
- 朝廷の支配から逃れた脛に傷を持つ破落戸(ごろつき)が多くのさばる場所
- 谷間には、谷間の規律がある
98 千早と結は兄弟さといっているが、血縁関係はない
99 西家朝宅(ちょうたく)の明留を訪ねてきたシン
- 明留か千早が結を奪われるのかと、訪ねて来た
- 千早が、結と血が繋がらいことを知ったシン
- 明留がシンにきれて、南庭(なんてい)で順刀(しない)で戦うことになる
103 山内衆にはなれなかったが、明留は頸草院で2年次まで武芸を叩きこまれた
- シンの敵ではない
- 千早はもっと強い
- 諦めないシンは、順刀(しない)を失い、2人は殴り合いになる
108 外唄(そとうた)
- 外界(がいかい)から輸入したもの
- 恋心を唄うものがほとんど
110 夜に結とシンは銀木犀を見に行った
110 【🔎】銀木犀
114 枢戸(くるるど)の陰で、千早と真赭(ますお)の薄(すすき)が、明留とシンの腹を割った話を立ち聞きしていた
- 真赭(ますお)の薄(すすき)に𠮟咤される千早
114 枢戸(くるるど)
115 7日後再び前回と同じ茶寮で顔合わせ
- 明留がシンに、きちんとした話し方と身のこなしを叩きこみ、体をみがきあげ、髪を整え、真新しい着物にきがえさせた
117 あきのあやぎぬ
- 西領の話
- 真赭(ますお)の薄(すすき)がもうすぐ登殿の頃
- 真赭(ますお)の薄(すすき)の父親の話
119 環(たまき)
- 苦労してきた
119 楓(かえで)
- 山吹の襲(かさね)の豪奢な装い(春のかさね)
- 西本家の次期当主である顕彦(あきひこ)の正室
- 息子が2人いる
120 あまりに泣くので別室へ連れて行かれてしまった娘と2歳になった息子の騒ぐ物音
- 環(たまき)の子
120 18番目の側室におさまりたいので、楓(かえで)に嫌われるわけにはいかない
121 今から約半年前
- 朝廷に出仕している最中、環(たまき)の夫が死んだ
121 環の夫
- 環よりふたまわりも年の離れていた
- 腹回りにたっぷりと肉を蓄えていて、心の臓も随分弱っていたようで、文机(ふみつくえ)から立ち上がろうとした瞬間に胸を押さえ、そのまま帰らぬ人となった。
- 決して見目の良いほうでなかった
- 若い頃何か嫌な事を言われたとかで、女性に対して過剰に引っ込み思案だった
- 弱小貴族の次男坊で、40になっても嫁を貰わず、花街にも行ったことがないという筋金入りだった。(他にも縁談があった環は、そうした潔癖なところが気に入った)
- 羽振りもそこそこよく、当時、病床にあった母の面倒まできちんとみてくれたので、金銭的な問題があるとは知らなかった。(環に隠していた借金があった)
122 夫の訃報が入った時
- ようやく2番目の子が卵から孵ったばかりの頃だった
- 無我夢中の葬儀の手配
- 形式をきっちり整えた証文を携えた男達の訪問
- 賭け事でできた借金(すごろくやカナコロガシ、中でも目がなかったが、足揃えで行われる競馬(うまくらべ))
- 環と婚姻を結ぶ1年前にの競馬(うまくらべ)で大負けをしていた。誰も金子を貸してくれないので、屋敷を抵当に入れて商人に借金までしていた。
122 足揃えで行われる競馬(うまくらべ)
- 端午の節句の儀式では、同じ競馬(うまくらべ)の名で流鏑馬(やぶさめ)が行われる
- 端午の節句で使う馬を選出するため、足揃えでにおいて二頭の馬を競わせることもまた、競馬(うまくらべ)と呼ばれていた。
- 本番は宮烏しか観覧できないが、足揃えは里烏(さとがらす)にも公開されるので、山内で最大の賭け事となっている。
123 夫が借金していた相手
- 四大貴族の一、西家(さいけ)が後ろ盾となっている職人達の講(こう)であった。
123 【🔎】講(こう)
123 山内の地を四分する四家四領
- 東領(とうりょう)東家(とうけ):楽人の東
- 南領(なんりょう)南家(なんけ):商人の南
- 西領(さいりょう)西家(さいけ):職人の西
- 北領(ほくりょう)北家(ほっけ):武人の北
123 夫が死んで半年のも経たぬうちに、屋敷も財産も取り上げられ、生活の目処がたたくなった下人も、環のもとから去った。
123 環の身内たち
- 母親はすでに亡くなった
- 生前から関係が良いとは言い難い夫の生家は、自分たちまで西本家に睨まれてはかなわぬと、いたるところに穴の開いたあばらやを1つ寄越したのを最後に、一切の縁を切られた。
124 環は婚姻を結んでたった3年で寡婦となった
- 夫は高官ではなかったので、朝廷から贈られた見舞金は雀の涙
- 春を迎えたのは暦の上だけで、まだ冬
- 息子は遊びたい盛りで聞き分けがない
- 人の姿がとれるようになっていくらもしない娘は、夜泣きがひどい
124 【🔎】寡婦(かふ)
125 「お困りのようですね」と声をかけた綺羅綺羅しい装いの若い男
- 麗しい顔かたちだが、睫毛がやたらと長く、眉がはっきりとした八の字を描いているのが妙に情けない印象
- ひょうろりとした体躯にまとうのは、今まで見たことのないような深い赤の袍(ほう)
- 赤い袍(ほう)の染料の見事さ一つにしても、貴人であるのに疑いようがなかった
- 西家(さいけ)の顕彦(あきひこ)
- 亡くなった夫・健文(たけふみ)とは、少しだけ仲良くしていた。(美人の妻がいると、自慢されていた)
- 四大貴族の次期当主
- 私のところにくるかとさそわれるが、最愛の奥方を含め18人の妻たち全員に許しを得ないことには、19人目の側室にはにはなれない、と言われる。
129 西領の西本家本邸・『紅葉の御殿(おとど)』
- 敷地内においては比較的小さな御殿
- こちらの邸宅は、あまりに多い側室達のためわざわざ造られたもの
- ここで認められなければ、主殿には行けない
129 当主夫妻が住んでいる主殿
- たくさんの楓の木の植わった庭を越えた、はるか向こう側
- もうすぐ宗家の若宮への登殿(とうでん)を控えた一の姫、絶世美姫と名高い真赭(ますお)の薄(すすき)姫も、主殿に住んでいる。
130 足音も荒く、今退出したばかりの正室の部屋から、出て来た気の強そうな女
- 小柄で、ちょっと鼻に丸みがあって愛嬌のある顔立ち
- 見事な紅梅の襲(かさね)
- 少し幼く見えるが、年は20前後(環と同じくらい)
- 楓と彼女が歓談しているところへ、環が挨拶にいった(相手の立場がわからない環)
- 17番目の側室・つぐみの君
131 環を楓の方のもとまで案内し、ぐずる娘と息子を連れだしてくれた女
- 環を咎めたつぐみの君の立場を穏やかに語って教えてくれた
- 口調も顔立ちもぼんやりとしていて、影の薄い印象
- 涼しげな水色の襲(あわせ)は上質な絹特有の色の綾をなしており、小袿(こうちぎ)に刺繍されたごくごく淡い桜色の花びらとあわせ、まるで白い金魚のようだった
- 環は、楓が寄越した自分付きの女房なのだと合点した
- 狭霧(さぎり)
132 【🔎】小袿(こうちぎ)
133 紅葉の御殿は子供が多くいた
134 10日後
- 環に是非話がしたいという側室4人から大広間で、挨拶することになる
- 環の子供と同い年くらいの子供を持つ側室たち
136 環にお茶を出してくれた10歳くらいの利発そうな女童(めのわらわ)
- ここ最近、狭霧(さぎり)といっしょに子供達の世話をやいてくれていた
- 初穂(はつほ)
137 ・・・菅草(かんぞう)のような色などお似合いになるのではないでしょうか」・・・
137 【🔎】菅草(かんぞう)色
137 玉菊(たまぎく)の君
- 菅草(かんぞう)色のような、良く晴れた日の夕焼けのような橙色の按排が好きだと、楓が言った
- 洒落者
- 2番目の側室
- 趣味が良く、殿からの信頼も厚い
- 春に萌え出づる柳の色を模した襲(かさね)
- 銀髪の老婆
- もともと、夫を亡くした玉菊は、女房の役目を辞した娘と一緒に中央で暮らしていたが、その娘に先立たれた。ほかに頼れる親戚もなく、困っていたところを、殿に声をかけてもらった
139 【🔎】柳色
140 初穂(はつほ)の君
- 13番目の側室
- 10歳の子供
- 下級貴族の生まれ
- 父が、朝廷でお世話になっている上級貴族から、縁談を持ってこられた。相手は幼女好きの中年男ののち添え。相手の身分は遥かに上だったので、断るにはお家断絶しかなかった。こまっていたところに、「初穂殿にひとめぼれした」と、顕彦(あきひこ)が間に入ってくれた。
141 菊野(きくの)
- 真赭(ますお)の薄(すすき)様付筆頭女房
- 玉菊(たまぎく)の孫
143 様々な理由で、顕彦(あきひこ)の側室となっている女達の幸福そうな顔をみて、正室でもないのにと、うっかり「気色の悪い」と心の声を口にしてしまう環。それを耳にしたつぐみの君が一騒動あった。
145 【🍴】つぐみの君との騒動のあと、環の君に狭霧(さぎり)が、気分転換にと出してくれた飲み物
- 柚子と花蜜を混ぜた葛湯
146 環の不安を狭霧(さぎり)にうちあける
- 憐れみが嫌
146 狭霧(さぎり)
- 10番目の側室
- 中央の貴族の正室だった
- 子供が生めなくて、二番目にやってきた妹に、その座を譲ってしまった
- 実家も夫も、狭霧(さぎり)を役立たずと言って憚らなかった。屋敷の下男下女からもないものとして扱われた。
- 自分は、顕彦(あきひこ)の憐れみに助けられた。
149 その夜
- この屋敷に来て初めて、顕彦(あきひこ)が環のもとを訪ねた
154 橙色の布を側室全員で縫ってゆく
- 西家(さいけ)の職人の手で作られた布は、山内中に流通するのだから、よりよいものを提供するため、新作の反物は西家全体で試すことが決まっている。
- 皆で意見を言い合い、初穂の君とつぐみの君が書き留めて行く。
154 職人の郷烏も真剣
- ある時期までに、何をどれだけ作るかを決めて、まとまった金子を用意しておかないと、綿や染料の買い付けを行えないから
- 大量の装束を作り、縫い心地や使いやすさを職人に伝えることで、西家の着道楽は歓迎される・・・みんな自分ができることをしているんだと、環の認識が変わった
155 つぐみの君が側室になった理由
- 弟が貢挙(こうきょ)を受ける
- 父親が、昇進する前に亡くなったから、弟は蔭位(おんい)の制(せい)で朝廷に入る資格を失ってしまった。
- つぐみは家を再興したくて、ここで援助を受ければ、弟が勉強できるから。
155 貢挙(こうきょ)
- 血筋による蔭位(おんい)の制(せい)が主体となっている昨今の朝廷において、ほぼ、形骸化しつつある官吏(かんり)登用の制。
- しかし任官のための試験は今も続いており、過去には貢挙(こうきょ)によって貴族としての身分を得た後、己の才覚で高官にまで上り詰めた例も皆無ではないと聞く。
157 ・・・いつものがとく、莞爾(かんじ)として笑う正室がいた。・・・
157 莞爾(かんじ)
158 昨夜泣かせてしまったことを気にしてか、その夜も、顕彦(あきひこ)が環のもとを訪ねた
- 昼間にあったことを話して聞かせる環
158 顕彦(あきひこ)
- 私は、政治のことは何もわからない。難しいことは全部、楓や優秀な臣下たちに任せているから、こうしろと言われた通りに行動するしか能がない
- 私は、ひたすら遊んで楽しく生きていたい
159 ・・・広縁(ひろえん)の向こうの庭は、美しい紅葉に覆われていた。・・・
- 秋
159 見事な紅葉の襲(かさね)を身にまとった女が、上座からこちらを見下ろしていた
- 環の君
160 桐葉(きりは)
- 20番目の側室候補
163 おにびさく
- 西領の話
- 大紫(おおむらさき)の御前(おまえ)が、血の繋がらない内親王・藤波の宮(奈月彦の妹)へ贈るための鬼火灯籠(どうろう)をつくる職人のはなし
- 「金魚好み」のはじまり
165 登喜司(ときじ)
- 職人
- 大貴族西家(さいけ)のお膝元で鬼火灯籠(どうろう)を作る仕事
- 捨て子。親については、顔も名前も知らない。
- 寺では、要領が悪いと呆れられ、手習いも物覚えが良いとはいえず、手先も不器用。
- 当時「お抱え」だった鬼火灯籠(どうろう)職人の後継者にもらわれた
- 養父を心から尊敬し、心から恐れていた
- 10年の修練を続けて、20歳を超えたが、養父が認める一人前にはなれてなかった
165 登喜司(ときじ)の養母
166 西領(さいりょう)
- 技量によって、山内(やまうち)の工芸全般を担っている
- 西本家(にしほんけ)の直轄地にあらゆる分野の職人が住み、絶えず職人同士腕を競い、技術を磨きあう環境が整えられている
- その中で、突出した腕の者だけが西家の「お抱え」となり、作品を宮中に納めることが許される
- 定期的に「腕比べ」が行われ、たとえ長年のお抱えだった者でも、他者に劣れば容赦なくその資格は剥奪される
167 登喜司(ときじ)の養父
- 「お抱え」の鬼火灯籠(どうろう)職人だった
- 普段は無口で、たまに落とす雷が恐ろしい人
- 職人としての腕は素晴らしく、22年もの間、ずっと「お抱え」であり続けた
- 妻との間に子共が出来なかったので、周囲の者がその技が失われるのを惜しみ弟子をとるように勧めたら、当時、寺で鼻水を垂らしていた登喜司(ときじ)を養子にした
167 鬼火灯籠(どうろう)
- 鬼火を中に閉じ込めて明かりを得る道具
- 鬼火の種は、それを捕まえ、育てることを専門としている者から買い取り、密閉された容器の中に入れておく。
- 容器の中央に安定した状態で休眠している鬼火に砂糖の塊を与えれば、明るく燃え上がり、砂糖の量に応じて光続けてくれる
- 炎と違い、熱を持たないので、うっかり倒しても火事にならない
- 貴族の必需品
- 大きさも用途により様々
- 明かりを透かす硝子玉と、それを固定する金属部分でできていて、硝子の透明さと金属部分の装飾の美しさで価値が決まる
169 養父の死
- 「よくやった」と養父に認められないまま、師匠たる養父が亡くなった
169 半年後の「腕比べ」で別の職人が「お抱え」の座についた
- 父の名で受けていた大口の仕事は、全て無くなった
- 無名の登喜司(ときじ)の作を買い叩いていくがめつい商人
- 登喜司(ときじ)が装飾の練習として作った簪(かんざし)をお小遣いでささやかに購入してくれる町娘
170 西本家からの珍しいお触れ
- 大紫(おおむらさき)の御前(おまえ)が、美しい飾り灯篭を所望している
- 急ぎで、一月後には完成品が欲しい
- 登喜司(ときじ)にとっては、千載一遇の好機
172 大紫(おおむらさき)の御前(おまえ)の好み
- 格調高く、雅なもの
- 時期的に、内親王への贈り物かもしれない
172 藤波(ふじなみ)の宮
- 大紫(おおむらさき)の御前(おまえ)の内親王
- お体の調子を崩して、もう随分長いこと経つ
- 本来なら降嫁(こうか)の話も出てくる年頃のはずだが、それも無理なくらい気鬱に悩まされている
- 藤波(ふじなみ)の宮と大紫(おおむらさき)の御前(おまえ)の間に血の繋がりはなく、政敵だった側室の娘だった
172 【🔎】降嫁(こうか)
173 大紫(おおむらさき)の御前(おまえ)が飾り灯籠(どうろう)に興味を持った理由
- 裕福な里烏出身の女官がいて、中央城下の旦那衆の間で鬼火変わりが流行っているとい聞いたから
173 鬼火変わり
- 鬼火に与える砂糖の量や種類により、変わる光の色の違いを楽しむ遊び
- 光の変化が分かるように、他に何の装飾もない大きめの硝子球を作り、それを支える台を設けたもの
174 薄く均一な硝子で完璧な球体をつくには、熟練の技がいる
- 当時、割れやすく大きな硝子の球体を作ったのは、登喜司(ときじ)の父
- 登喜司(ときじ)が、最も苦手としている硝子球の作製
174 中央へどんな色の鬼火を扱うのか、宮烏の奥方が普段どんな細工物を使うのか、リサーチにいこう
- 口下手な登喜司(ときじ)だけでは心配だから、養母もついていくことになった
- 前に鬼火灯篭を注文をくれた、大店(おおだな)の旦那を訪ね、灯篭の不具合がないか見に来たといってリサーチしよう
175 登喜司(ときじ)、2度目の中央
- 一度目は3年前、寺院に備え付けの灯篭の球の交換だった
- 今は季節は春
176 ・・・店舗を構えた八百屋など初めて見たし、変わった形をした看板を構えたかもじ屋や飴屋、鍵屋、足袋屋、醤油屋に蝋燭屋まで立ち並んでいる。・・・
176 【🔎】かもじ屋
177 呉服屋
- 養父の作った鬼火灯篭のメンテナンスを登喜司(ときじ)がしている間に、養母が情報収集
- 鬼火変わりの趣味が盛んで、特に最近はお上のほうから鬼火変わりに使う砂糖を献上するようにと声がかかった
- 色硝子で鬼火灯篭をつくる
178 色硝子の鬼火灯篭
- 登喜司(ときじ)は、慶事用の赤しか作ったことがない
- 塗ったものではなく、色硝子をたくさん使った鬼火灯篭が作れるかもしれないと、旦那が言った
- つい先日、西領の鬼火職人が、大量の素材を買い求めているようだと、旦那衆の間で噂になっていたので、宮中で色硝子の鬼火灯篭が流行るなら見てみたいと、旦那は思った。
180 山の手の貴族を相手にする店で、道具類の細工を見学する登喜司(ときじ)
181 養父に代わって「お抱え」になった職人が出て来た店は、螺鈿を取り扱う店だった
- 最高の鬼火職人が、最高の螺鈿職人の作ったものを組み合わせ、皇后にふさわしい品を作ろうとしている
181 【🔎】螺鈿(らでん)
183 帰宅して早々、布団に逃げ込む登喜司(ときじ)
183 【🍴】中央から帰って、泣き寝入りした登喜司(ときじ)がお腹をすかして目を覚ますと、養母がだしてくれた食事
- 腹が鳴り、いただきますを言うこともなく箸を取る。里芋と山菜を煮込んだ白味噌の汁物は涙がでるほどうまかった
184 養父も養母も登喜司(ときじ)は才能があるとみこんでいた
- 養父たちが寺を訪ねた時、他の子が適当に掃除を終わらせて遊んでいる中、登喜司(ときじ)だけが一人気づかずに箒(ほうき)を動かしていたのを、真面目で一心に取り組む子だと、亡くなった養父は誉めていた。
- また、登喜司(ときじ)がまだお寺に居た時に、住職に話を聞くために講堂に入って出てくるまでの間、登喜司(ときじ)がずっと水鉢を見ていたので、何をしているのかと尋ねたら、「未草(ひつじぐさ)だよ。綺麗だよねえ」と答えたのが、亡くなった養父が登喜司(ときじ)の純粋な感性が得難いと思った。
- 養父は、登喜司(ときじ)は自分にはない美しさへの感度はある。技術を高めたうえで、その感性をはっきできれば、私以上に良い職人になれるだろうと言った。
186 【🔎】未草(ひつじぐさ)
187 一月後、登喜司(ときじ)は鬼火灯籠を無事完成させた
- 今回は、中央の紫雲院(しうんいん)にまで完成品を持ってくるように命じられた
188 紫雲院(しうんいん)
- 出家した女宮の預かる寺院
188 大紫(おおむらさき)の御前(おまえ)がお忍びで自ら発注した飾り灯籠を選びに来た
192 登喜司(ときじ)の回り灯籠
- 水面と金魚と未草(ひつじぐさ)
- 鬼火変わり
194 「お抱え」の職人のものと、登喜司(ときじ)のものが大紫(おおむらさき)の御前(おまえ)に選ばれた
194 ・・・講堂の外に出ると、さわやかな風が吹き、白壁に沿って植えられた泰山木(たいさんぼく)の花がほたりと落ちるのを見た。・・・
194 【🔎】泰山木(たいさんぼく)
195 西家「お抱え」の職人
- 登喜司(ときじ)に「お見事でした」と声をかける
196 登喜司(ときじ)の着想
- 技術は西家「お抱え」の職人に及ばない
- 中央城下で見た、放生会(ほうじょうえ)をもとにして、年頃の娘さんを思う母の気持ちになって、病床にあって、気鬱の娘を元気付けようとする作品にした
- 自由で、明るくて、見ているだけ元気になれそうな、美しいものを作りたかった
197 その後すぐ、「金魚好み」と呼ばれる回り灯篭は中央で大いに流行し、若き職人登喜司(ときじ)の名も大いに轟いた
- 大紫(おおむらさき)の御前(おまえ)が、血の繋がらない内親王へ贈ったものがその始まりと噂されたが、真実かどうかは、九重(ここのえ)の内以外知る人はいない
197 【🔎】九重(ここのえ)の内
199 なつのゆうばえ
- 南家の話
- 大紫の御前(おまえ)の子供の頃
201 母
201 南本家(みなみほんけ)の姫
202 八咫烏の一族が統べる宗家の金烏(きんう)のもと、山内(やまうち)を四分して統治する四家がひとつ、南家(なんけ)
- 朝廷の大勢力を担い、時に宗家よりも政治において幅を利かせることで知られる南家
202 南家の内情
- 南家系列の貴族たちは、お互いの利用価値でのみ団結し、それが失われると排除する
- 利用されてきた、表向きは南家の貴族たちの頂点に立つ南本家。
202 南本家(みなみほんけ)の当主に求められること
- 南家系列の宮烏の所有する利権を守ることだけ
- 分家貴族のいいなりになりつつ、朝廷では、他三家に出し抜かれないように振舞うこと
- 歴史書を紐解けば、それだけが出来ない無能が多くて、不自然な死を遂げた南家当主の例だらけだった
202 外界との交易を一手に握る南家
- 物品の売り買いにおいて巨万の富を得て来た
- 実質的には、管理と運営は南本家にほど近い分家が行っており、そこに南家当主が嘴(くちばし)を挟む隙などなかった
203 夕蝉(ゆうぜみ)
- 南本家(みなみほんけ)の姫
- 母は正室
203 夕蝉(ゆうぜみ)の母
204 南家は、いずれ宗家の若宮に輿入れし、皇后となる駒としての姫が必要だった
- もともと側室腹の夕蝉(ゆうぜみ)には、同じ立場の姉妹たちがいくらでもいた
- 皇后となるだけの能力がなければ、明日にでも殺されてしまうだろう。姉妹の中には実際不審な死を遂げる者もいる
205 10歳の頃の忘れられない父との思い出
- 父の気まぐれで、夕蝉(ゆうぜみ)を庭園の散歩に連れ出してくれたことが一度あった
- 父親が蜩(ひぐらし)が好きな事、夕蝉(ゆうぜみ)が生まれたのも美しい夏の夕暮れだったこと、夕蝉(ゆうぜみ)の仮名は父親がつけたことなど二人で話した思い出
206 夕蝉(ゆうぜみ)は、お妃教育全般を治める娘に育った
- 男の子以上に優秀な姫
207 山内を治める今上金烏には、多くの皇子がいた
- いずれも優秀だったが、却ってそれが災いし互いをつぶし合い、共倒れしていった
- 結局、皇子の中では最も凡庸で、目をかけられなかった末の皇子が日嗣(ひつぎ)の御子(みこ)、若宮となった。
208 若宮の母親は南家系列の宮烏だった
- 正室を選ぶ登殿(とうでん)の儀に先んじて、若宮と夕蝉(ゆうぜみ)の顔合わせが秘密裏に行われた
- 子供っぽく頼りない若宮は、「いや」といって脱兎のごとく逃げ出した
210 夕蝉(ゆうぜみ)の顔を見て逃げ出した若宮
- しとやかで美しい母とは違い、夕蝉(ゆうぜみ)の顔は南家の父親似で、男から好かれる容貌ではないと、生まれて初めて知った
- 鏡をじっと見つめる癖ができてしまった
211 夕蝉(ゆうぜみ)が裳着(もぎ)を迎えるよりも先に、完璧な当主であった父親が死んでしまった
- 胸の病という触れ込みだったが、そんなはずはなかった
- 父が死ななければならなかった理由が、次の当主となる兄と顔を合わせた瞬間にわかった
211 【🔎】裳着(もぎ)
211 煒(ひかる)
- かなり昔に亡くなった、前の正室の産んだ長兄
- 次期当主という立場でありながら、大きな儀式の際に姿をちらりとみつだけで、夕蝉(ゆうぜみ)は、それまでろくに言葉を交わしたことがなかった
- 長兄は俊英であると聞いていたが、葬儀の前に、初めて言葉を交わす蝉(ゆうぜみ)に、自分と一緒に南家を盛り立てて行こう、と親しみをこめて言って驚かせた
212 夕蝉(ゆうぜみ)は煒(ひかる)は、父のような賢い無能ではなく、愚かな有能だで、これは駄目だと思った。
- おそらく父は、兄の「賢さ」に殺された
212 兄と別れたその足で、母親をたよるべく向かうと、夕蝉(ゆうぜみ)の母親も亡くなっていた
- 薄い薬包紙が落ちていた
- 夕蝉(ゆうぜみ)は、薬包紙を袖に隠して人を呼んだ
213 父親が死んで以来
- 兄・煒(ひかる)の正室を出した一族が、徐々に大きな顔をするようになった
213 兄・煒(ひかる)の嫁取りの際のひと悶着あったこと
- 煒(ひかる)は、もともと決まっていた有力な分家の許嫁を蹴り、それまで候補にも挙がっていなかった末端の娘を選んだ。
- 特に力を持っている家ではなかったので、逆に大きな問題はないと言われていたが、末端であるがゆえに、南本家をとりまく状況を把握できていなかった
- 父親の死は、末端の家の誰かが、愚かにも余計な欲をだしたせいだ。きっと自滅する
214 夕虹(ゆうにじ)
- 兄・煒(ひかる)の正室
- 名前にふさわしく華やかな佳人(かじん)
- 兄は溺愛し、それを誰に憚(はばか)ることもしまかった
214 【🔎】佳人(かじん)
214 夕蝉(ゆうぜみ)に対し兄夫婦は、優しく、出来るだけ親しくなろうとしていた
- 親しくなると、夕虹(ゆうにじ)に名前えおなじられ、煒(ひかる)に容姿をなじられる
- 兄が外界からの手土産で、手鏡をもらうが、池になげいれる夕蝉(ゆうぜみ)
217 ゆるやかな絶望の中でで生きる夕蝉(ゆうぜみ)
218 しばらく中央にいた兄・煒(ひかる)が、久しぶりに南領の本邸に戻った
- 母屋で、お土産分配の席で、唯一の弟の、融(とおる)を見た
218 融(とおる)
- 娘の多かった父の授かった息子の2人の内のひとり
- 側室胎の融(とおる)は兄とは違い、滅多に自分から主張しない、大人しい少年
- いつも曖昧に微笑み、何を考えているのか判然としない子
- 下級貴族の出身で目立たなかった母親共々、特に良い噂を聞いたこともなければ、悪い噂をきいたこともない存在
- 普段は別棟で母親と共に大人しくしている
- 融(とおる)への文箱(ふばこ)が、最も立派なお土産だったので引きこもっていられなかった
219 文箱(ふばこ)
- 外界からの輸入品をもとにして中央山の手の職人達が作ったもの
- 金属で出来ているという変わった形の筆が入っていた
- その筆専用の墨壷は硝子製で、中の墨は青みを帯びた澄んだ色をしている
- 箱そのものは鈍い銀色をしていて、表面には鶴と亀が彫られている
- <万年筆かな
219 兄夫婦にはまだ後継ぎがいない
- 兄が亡くなれば、弟・融(とおる)が次の南家当主
- すでに有力な分家筋が、融(とおる)に怪しい接触を図ろうとしているという情報も入っているが、融(とおる)はどれに対しても、色よい返事をしていない
219 弟・融(とおる)が兄・煒(ひかる)と共倒れするなら
- 南橘(みなみたちばな)家か南一条(みなみいちじょう)家あたりの若君を次の当主に都合することになる
219 夕蝉(ゆうぜみ)へのお土産
- 紅
220 名目上、現在南本邸の家政を取り仕切っているのは夕蝉(ゆうぜみ)
- 実際には、経験豊富な女房達に任せておけば、夕蝉(ゆうぜみ)自身がやらなければいけない仕事はない
- 宴会の支度はまかせる
220 頭の悪い妹たちと話をしたくなかったので、理由をつけ席を立つ夕蝉(ゆうぜみ)
- 久しぶりに本当に一人きり
- いつかのような(父親との思い出)、美しい夏の夕暮れに、蜩(ひぐらし)の声
- 釣殿に、弟融(とおる)が兄・煒(ひかる)のお土産を、無造作に蓮池に向かって放り投げた
- あの子は、私だと夕蝉(ゆうぜみ)は理解した
220 【🔎】釣殿(つりどの)
223 大紫の御前(おまえ)
- 皇后の尊称
- 夕蝉(ゆうぜみ)
223 大紫の御前(おまえ)が懐かしい夢をみていた
- 今日は随分久しぶりに、弟融(とおる)が会いに来てくれたから昔の夢を見た
225 融(とおる)
- 現南家当主
- 大紫の御前(おまえ)こと夕蝉(ゆうぜみ)が愛する男
227 はるのとこやみ
- 東領の話
- 奈月彦の父親が若宮から金烏になるころ
- あせびの母親
229 師匠
- 伶(れい)の御神楽(みかぐら)の師
229 伶(れい)
- 竜笛(りゅうてき)
- 伶(れい)の喜怒哀楽を音に込める竜笛(りゅうてき)は、雅楽(うた)にあらず俗楽(ぞくがく)と注意される
229 ・・・春先の光は未だ固い。・・・
230 竜笛(りゅうてき)
- 天と地をつなぐもの
- 山神と交信し、山内の陰陽を整える御神楽(みかぐら)の先駆け
- 耳にする者の心を高揚させることがあっても、その逆はあってはいけないもの
- 喜怒哀楽を音に込めるのは、雅楽(うた)にあらず
230 倫(りん)
- 伶(れい)の双子の弟
- 瓜二つの顔
- 横笛
- 師匠が手本と呼ぶ、横笛の奏者
- 色素の薄い瞳、伏せられた長い睫毛、くるくると癖にある強い淡い茶の髪
230 【🔎】神楽(かぐら)
232 伶(れい)と倫(りん)
- 山内は東領、永日郷(ながひごう)の宿場町に生まれた
- 山烏の生まれでありながら、大貴族東家(とうけ)のお膝元で楽人見習いとしていられるのはられるのは、東家の施策のおかげ
232 東家(とうけ)
- 四大貴族の一つ
- 楽家として中央に名を馳せた家
- 東家当主は朝廷において、儀礼、式典の諸々を一手に司り、それに必要な人員を東家系列の貴族で固めている
- 東家は本家分家問わず、それぞれに得意とする楽器を持っており、儀式の要である神楽の奏者や舞手は、東家に連なる高級貴族達がを務めている
- 東家は東領全体に音楽を推奨し、身分を問わず才のある者は、宮中に召し上げることを約束していた
232 主要な式典で演奏できるのは貴族だけ
- 実力さえあれば山烏出身であっても、当代限りでそれにふさわしい身分を与えられる場合もあった
- 山内中から腕に覚えのある者が集まるようになっていた
232 伶(れい)と倫(りん)の母親
- もとは東家お抱えの舞姫になることを夢見て東領にやって来た流れ者
- 自身がとりたてられることは叶わなかった
- 楽人であった夫とは早々に生き別れた
- 双子を少しでもよい師匠をつけるように、東本家直轄地に居を移し、二人の楽才を見込んでいた
- 現在は、三味線奏者として働きながら、双子が宮仕えに成功し、自分を中央に呼び寄せる日を待ち望んでいた
233 伶(れい)と倫(りん)の楽才
- 双子は名のある竜笛奏者の推薦を受け、13にして東本家の擁する楽人の養成所、外教坊(がいきょうぼう)に入ることを許された
233 才試(差異いこころ)みとは
- 実際に宮仕えするために、この上に「才試(さいこころ)み」という試験を受けなければならなかった
- 既に宮廷において楽人として活躍している者達と合奏し、全員からお墨付きを得なければ、仲間に入ることができない
- 二人はこの難関を合格した
234 16歳になった今
- 師匠に稽古をうけつつ、東家の下男として働きながら次の才試(さいこころ)みを待つ身
235 梅花の宴
- 秘曲が聴けるかも
- 東家の姫が集まれ、楽人としての腕前を披露することになっている
- 将来この山内の地を統べる若宮殿下の后(きさき)選びのための登殿(とうでん)の儀がもうすぐ始まるから、候補選定が行われる
236 今の若宮殿下
- 風流人
236 風流人の若宮に、お館様は多少縁が遠くても、腕のある姫を選ぶつもりらしい
- そのための梅花の宴
- 東家は名より実を取る性質
237 東領(とうりょう)
- 南領のような財力も、西領のような技術力も、北領のような武力もない。文化的には優れていても、ある意味、四領の中で最も弱いと侮られている
- 朝廷でうまく立ち回らなければ力関係が崩れてしまう立場なので、四家の中で最も政治上手
- 歴代の東家当主が柔軟な方
237 東家の得意とするのは、長琴(なごん)という楽器
- 伶(れい)と倫(りん)の双子も、長琴(なごん)を間近で聴くのは初めて
238 長琴(なごん)
- その音色は、一面で神楽(かぐら)のための一編成に匹敵するといわれている
- 東家秘伝の楽器とされる
- 実際には、外界からの技術や様式なども取り入れられ、貪欲に改良を重ねているらしい
- 分家ごとに形式も異なり、長琴(なごん)を作る職人を囲い込んでいる
- 音階が特殊で、高低の幅が異様に広い
- 長琴(なごん)は、姫を際立たせることで、他の楽器と合奏することはほとんどない。それひとつでどれだけ華やかな音が奏でられるかが肝
241 浮雲(うきぐも)
- 東清水(ひがしきよみず)
- <あけびの母親
- その音色は、一面で神楽(かぐら)のための一編成に匹敵する音を奏でる姫
- 東清水の浮雲(うきぐも)は、正式に東本家の姫として迎えられた
242 兄・伶(れい)は奏者は浮雲ではなく、替え玉が演奏したのではと疑い、弟・倫(りん)は、浮雲の楽才に心酔した
243 浮雲が東本家の娘になって、3日目の夜
- かすかな長琴(なごん)の音
- 伶(れい)と倫(りん)の双子は、音を追って外教坊から本家の者が生活する寝殿へ見張り見つからないように近づいて、少し上げられた御簾(みす)をのぞくと、月明かりに長琴(なごん)と奏でる少女の白い手が見えた
245 立ち上がって竜笛を吹く、弟・倫(りん)
- 長琴(なごん)は、合奏を企図(きと)して作られたものではないのに、倫(りん)の竜笛は長琴(なごん)を邪魔することも、その音に負けることなく合奏した
- 二人とも天才
246 立ち去る気配に、御簾(みす)から浮雲がでてきて、弟・倫(りん)に「また合奏してくださる?」と、二人の眼差しが交差した
- 二人は、東本家の裏手にある山の中へ逃げ込んで、見つからずにすんだ
248 あれ以来、弟・倫(りん)が、夜にふらりといなくなるようになる
- 浮雲に会いに行っていると思う、兄・伶(れい)
- これまで、双子同士支え合っていきてきて、自分たち以外に対する秘密を共有しりことはあっても、お互いに対して隠し事をするなんて、今までなかったことだった
248 兄・伶(れい)が弟・倫(りん)に問いただすと、その夜、倫(りん)は浮雲の屋敷の一角ではなく、あの夜、二人で逃げ込んだ東本家の裏手にある山の中へ兄・伶(れい)を連れて行った
- あまり近すぎると、見咎められるから、ここで十分合奏になるという弟・倫(りん)
- こっちでは拍子は外れて聞こえるが、浮雲のもとではしっかり音になるから
- ここで竜笛を吹くと、浮雲が返してくれるというが、兄・伶(れい)には聴こえない
- 半信半疑で、少し屋敷に近づくと、弟・倫(りん)の笛が聞こえなくなるかわりに、浮雲の長琴(なごん)の音が聞こえ始め、兄・伶(れい)は衝撃を受ける
251 初秋の頃
- 稽古の最中、師匠し指摘される弟・倫(りん)
- 弟・倫(りん)のこれまで静謐(せいひつ)で犯しがたい清らかさを持っていた竜笛の音色が濁った
- 春の終わりごろから、時折、音がいつもと違うようにきこえることがあった
- 弟・倫(りん)の音は、奏者の心が音に乗った、卑俗な音になった
252 浮雲に恋に落ちてしまった弟・倫(りん)
- 夏中、東本家の裏手にある山の中から浮雲と合奏して、遅れた拍子に合わせる癖と、音に感情が乗りすぎる癖がついてしまった
253 最後の別れに、その夜、見つかるのを覚悟で、二人は浮雲の居室の近くまで行き、築地塀(ついじべい)を隔てて、倫(りん)は竜笛を奏でた
- 涙を流しながら奏でる倫(りん)は竜笛は、春のものから変わり果てていた
- 浮雲が返してきたのは、宮廷の神楽(かぐら)とは違う、民草の間で流布しているような明るい音楽だった。しかしその音色は、師匠のいうような「俗楽だ」と切り捨ててしまうには、あまりにも素朴であたたかな音色に、崩れ落ちる倫(りん)
254 浮雲の奏でた音楽の意味
- 正道のものとはかけ離れているが、その音も私は好き
- そして、もう倫(りん)は竜笛はもとにもどることがないことへの、慰めだった
255 浮雲は登殿(とうでん)した
255 才試み
- 弟・倫(りん)は落ち、代わりに兄・伶(れい)が召人(めしうど)として中央へむかうことになった
- 弟・倫(りん)は見習いの身分のまま、東本家の下男となって働くつもりらしい
255 召人(めしうど)
256 宮廷の楽士に入ってきた皇后選びの詳報
- 浮雲の君が、東領に帰る
- 南家の姫が、おっかない女傑で、若宮を押し倒して、無理やりお子を身籠った
- 若宮が一番気に入っていたのは、東家の姫だったから、南家は面白くなかったみたいで、さっさと宮中から追い出しにかかった
257 約1年ぶりに、またまった休暇を得て東領に戻った兄・伶(れい)
- 城下町で、弟と母に会う
- 弟・倫(りん)の奏でる音は、雅楽とも、俗楽とも言えないあの頃とは違い、朝廷の音楽とは違うが、感情を表現する音楽としては、非常に完成されたものだった
259 5年の歳月が流れた
- 順調に宮廷の楽士として働いていた伶(れい)のもとに、弟・倫(りん)が死んだ、という知らせが届いた・・・入水自殺
- 別邸の浮雲のところに、中央から貴公子がお忍びで通っているという噂があった
261 母親を中央に連れて帰って3か月後
- 母親と一緒に、西領の寺院へ向かえと上役から命令
- 祭りに際しての派遣という名目であるが、明らかに帰還を前提としたものでなかった
- 過去に問題を起こした楽士が同じように厄介払いされたのと同じであるが、伶(れい)に思い当たるふ節はなかった
262 厨人(くりやびと)という触れ込みで就職
- 髪を黒く染め、伶(れい)は名と身分を偽り、東本家の別邸で下働きをしていた
- 10年前、西領へと流された伶(れい)は、弟・倫(りん)が死にも己の処遇にも、全く納得がいっていなかった
- 浮雲は、東本家の嫡男の側室として迎え入れられ、早々に娘を産んだ
- 何度か東領に戻ろうとするが、上役らの妨害が入り、弟の墓参りすら許されなかった
- 戻れないうちに、母親が亡くなった
- 上役が変わっても、戻れないので、身分を偽る手段を探し、末端の下働きとして東家にもどるまで10年かかった
264 浮雲の現在
- 宗家の姫の教育係として、東本家別邸と中央を往復している
- 時折、内親王(ないしんのう)をお忍びで別邸に連れてきて、自分の娘と遊ばせることもある
- 金烏陛下は、若宮だった頃にあった浮雲の御方が忘れられなかった。わざわざ、お忍びで東領まで来たこともあるくらい。10年くらい前の話。
- 陛下が通ってきたのに、浮雲は寝所に男を連れ込んでいたので、腹に子供がいるとばれて、陛下のお忍びもなくなった
267 浮雲の娘は、弟・倫(りん)との娘ではないのか
- 確かめたい伶(れい)
267 春、機会がめぐってきた。別邸での桜の花見
- 手伝いに駆り出された別邸で、人目をさけ伶(れい)が覗き見た浮雲の娘
269 浮雲の娘(あせび)
- 髪は風と陽光を受けて、金色に輝いていた
- くるくるとたなびく特徴的な癖毛は、自分と倫(りん)の他に見たことがないもの
- 弟の目
269 弟は東家によって殺されたのだろう
271 染めた髪を水で洗い流し、浮雲に挨拶しに行く伶(れい)
- あれから15年もの月日が流れたとは思えないほど、記憶にある浮雲の姿
- 「あなた、だぁれ?」という浮雲
- 伶(れい)は、弟・倫(りん)は自分から死を選んだのであり、そうさせたのが、この美しい女であることを知った
275 きんかんをにる
- 中央の話
- 奈月彦と浜木綿の娘・紫苑の宮との話
277 奈月彦(なづきひこ)
- 父親になっている
277 奈月彦(なづきひこ)の娘
- 妻によく似たきらきらした瞳
- 黒髪
- 6歳児
- 内親王という立場であるが、奈月彦(なづきひこ)が、自由な環境で暮らさせているいる分、宮中に戻った時に恥ずかしい思いをしないように、周囲の者は気を配って厳しく立居振舞をしつけられている
278 二人で干し金柑を作るのに、金柑を収穫する
278 ・・・くるりと回った瞬間、羽母(うば)に巻いてもらったと思わしき湯巻がきれいに広がったのが、ひたすらに愛くるしかった。・・・
278 【🔎】湯巻(ゆまき)
278 薬草園の一角に植えられた金柑の木
280 【🍴】奈月彦(なづきひこ)が、昔住んでいた宮の庭に植えられていた金柑を、誰も食べないのが勿体なくて齧ってみたが、とても渋みが強かった。以前、東領の山奥に住むおばあさんが、野生に近い状態で育った金柑を甘く煮ていたのを思い出した。
- 吹井(ふきい)郷の赤橙(あかだいだい)畑の近くで採れる蜂蜜は、香りが強くて独特
281 金柑煮
234 二人を護衛していた山内衆
- まだ護衛の任についてから日の浅い彼
- 金柑を煮たあとの白湯に出来上がった金柑をいれた金柑茶を、奈月彦がうながして、姫が彼に運んだ
284 浜木綿(はまゆう)
- いい匂いにつられて、着ぶくれした格好ででてくる
- 干した金柑をつまみ食いしようとする
285 それから4日たち
- 干した金柑に、甘大根のあられ砂糖をたっぷりまぶす
- 濡縁(ぬれえん)で家族3人で、金柑に砂糖をまぶす作業
287 雪哉(ゆきや)
- 報告にきた
- 証拠はないが、背後関係は紫の雲の方
287 紫の雲の方
- 現在、紫雲(しうん)院とも呼ばれるのは、大紫の御前(おまえ)として後宮を掌握していた、先の皇后
- れっきとした現皇后である浜木綿(はまゆう)と娘の内親王が宮中にいられないのは、紫の雲の方が原因
- 紫の雲の方は後宮を退いた後も、主たる役目を浜木綿(はまゆう)に譲らなかった
- 即位当初は急な譲位に不満を持つ者達も多く、それらを取りまとめて味方につけ、女屋敷の占拠まで行った
288 奈月彦と浜木綿と内親王が紫苑寺にいる理由
- 今でこそ奈月彦に味方する官人が増えたが、未だに紫の雲の方の影響力は大きく、特に女官の忠誠心には信用がおけないほどだった
- 仮住まいのつもりが、随分長い間、紫苑寺にいるので、娘は紫苑寺(しおんじ)の宮とよばれるようになった
288 紫苑寺(しおんじ)の宮
- 内親王
- 奈月彦と浜木綿の娘
- 雪哉のことを雪さんと呼ぶ
290 いよとあかね
- 毒味役と羽母子(めのとご)
290 今より10日前
- 娘・紫苑寺(しおんじ)の宮の食事に毒を盛られた
- 遅効性の毒が使われた
- 味付けの強い鮎の佃煮の中に混ぜ込まれていた
- 毒味役がいたのに、娘と羽母子(めのとご)が、佃煮を口にしてしまった
291 毒入りの佃煮を売ったのは、紫苑寺に日頃から出入りしていた行商
- 事件のあった翌日、湖(うみ)に浮いていた
- 背後で糸をひいていたのは、雪哉の調べどおり、大紫の御前(おまえ)
- 幼少時の奈月彦に毒を盛ったのも、おそらくは当時政敵であった大紫の御前(おまえ)
292 毒味役のためにも自分で料理をつくれっばいいという娘の考え
- 最初に自分で作った料理は、母と父、羽母夫婦、羽母子(めのとご)、世話役の者らと愛馬のクロ、そして雪哉に食べさせる
- 母親・浜木綿は料理ができない
293 「真の金烏」である奈月彦が、自分よりずっと娘の方が統治者に向いていると予感していた