407 【本】瀬名秀明
408 【本】クリフォード・D・シマック
409 【本】「ぼくの創造(I,Robot)」(1939) イアンド・バインダー
- 長編小説版の邦題「ロボット市民」(1965)
9 序章
9 USロボット社
- ユナイティド・ステーツ・ロボット&機械人間(メカニカルマン)株式会社
9 エンサイクロペディア・テルリカ
9 エンサイクロペディア
9 スーザン・キャルヴィン
- 1982年生まれで75歳
- ユナイティド・ステーツ・ロボット&機械人間(メカニカルマン)株式会社は、75年ということ
9 ローレンス・ロバートスン
- 人類史上、稀有な大産業にまで発展した一企業体の法人設立登記を完了したのは、キャルヴィン博士が誕生した年だったからだ(1982年)
9 20歳のとき(2002年)、スーザン・キャルヴィンは、心理数学の特別セミナーに参加
10 20歳(2002年)のスーザン・キャルヴィン
- 冷たい感じの、地味な目立たない娘
- 気に食わない世界に対して、仮面のような表情と異常に発達した知能で自らを守った
10 2003年、コロンビア大学で学士号をとり、大学院でサイバネティクスのコースをとる
10 20世紀中葉の〈電子計算機〉のめざましい進歩
10 陽電子頭脳回路
10 リレー
10 光電管
10 プラチナイリジウム合金
https://www.goodfellow-japan.jp/jp/blog/platinum-iridium-alloy.htm
10 スーザン・キャルヴィンは〈陽電子頭脳〉における未定数を決定するのに必要なパラメーターを計算することを学んだ
10 2008年スーザン・キャルヴィン
- 博士号取得
- 〈ロボ心理学者〉としてUSロボット社に入社
- 新しいサイエンスの最初の偉大な専従者となった
- ローレンス・ロバートスンは、このとき、まだ社長の地位にあり、アルフレッド・ラニング博士はすでに、研究所の所長になっていた
11 スーザン・キャルヴィンは、今その地位を去ろうとしている
- 50年たった
11 ≪インタープラレタリ・プレス≫
- わたしは、≪インタープラレタリ・プレス≫に掲載する特別読物のために、もっとスーザン・キャルヴィンのことが知りたかった
- 全太陽系に販路を広げている。潜在視聴者30億。
11 わたし
- ≪インタープラレタリ・プレス≫の取材者
- スーザン・キャルヴィン女史に取材している
- 32歳 ロボットのいない世界を知らない歳
11 女史(じょし)
13 【💗】l11~l17
14 あの当時(スーザン・キャルヴィンがここへ来るよりもっと以前)
- 地球用のロボットを売っていた
- その頃は、ロボットは喋ることができなかった
- そのあとだんだん人間らしくなり、同時に排斥がはじまる。
- 労働組合は、人間の仕事をロボットが奪うから反対
- 宗教団体が、さまざまな見地から、迷信じみた反対
15 ロビイのケース
- スーザン・キャルヴィンは、ロビイ(彼)とは会えなかった。
- スーザン・キャルヴィンが、入社する前に、解体されてしまった、旧式なもの
- 博物館で、あの少女を見かけた
15 ロビイ
- 旧式の無声ロボット(話すことができない)
- 1996年に製作され、売られた
- 子守り用に売られたロボット
17 1ロビイ
17 グローリア
- 8歳
- ロビイの子守り相手
- 頭は角や縁に丸味をもたせた小さな平行六面体、顔よりもっと大きい平行六面体の胴体に、しなやかな短い軸でつながっている
- ロビイの金属の肌の温度は、内蔵された電熱線により、常時華氏70度に保たれていて気持ちがいい
20 平行六面体
22 華氏70度
- 21.111度
23 ロビイはお話を聞くのが好き
- シンデレラ
24 ミセス・ウェストン
- グローリアのママ
- ロビイが、一片のためらいも見せずに従うのがもっともよいと判断させる女性
- ロビイにとって、グローリアの母親は不安の種で、いつも彼女の眼の届かないところにこっそりにげだしたい衝動にかられる
24 ジョージ・ウェストン
- グローリアの父
- 昼間はめったに家にいない
- 日曜日は別
- 父親の方は、家にいる時は温厚で、ものわかりのいい人物
- 結婚して10年、いまなお妻を愛している
- 日曜日の夜の、夕食のあとのひとときだけは、2、3時間はひとりにしてもらえる、のんびりくつろぐ習慣
26 ・・・結婚して十年の歳月がたっているというのに、いまなお妻を愛しているというこの言語に絶する愚かしい自分、・・・
26 言語に絶する
26 ルフェール=ヨシダの火星探検
- 《タイムズ》の新聞記事
- ルナ基地から出発することになっており、実際、成功するかもしれない
28 ロビイは、グローリアを2年、子守りをしている
- ミセス・ウェストンは、ロボットに子守りをさせるのが不安になってきている
- お友達と遊ぼうとしないのも不安
29 ロボット工学三原則
- ロボットが人間に危害を加えることは不可能
- ロボットが狂っても、第一条を破るような事態が起きる前に、ロボットは完全に動かなくなる
29 年に二度もUSロボット社のエンジニアに来てもらって、点検してもらっている
- ロビイがおかしくなる可能性の方が少ない
30 2日後の夜、ミセス・ウェストンは、夫にロビイのことをうちあける
- 村の人達が、ロビイのことをよく思っていない
- 村のほとんどの人が、ロビイのことを危険だと考えている
- 子供達は、夕方になるとうちに近づくなと言い聞かされている
31 最近では、都会方がロボットへの雲行きが怪しい
- ニューヨークで、日没から日の出までの間、ロボットを街から締め出す条例が通過した
32 "とてもきれいな"ビジボックスのショオ
- 父親が、グローリアをロビイから引き離すために連れて行った
33 【犬】コリー犬
- 名前は、イナズマ
- ロビイと引き換えに用意されたペット
- グローリアは受け入れず、返却することになる
37 口をきかなくなり、ひと月で5ポンドも体重が減ったグローリアの環境を変えようと、母親が提案する
- 8月のニューヨークへ連れて行く
37 8月のニューヨーク
- 耐えられないほど暑い
- 灼け着く舗道
38 ニューヨークへ出発する日がくると
- グローリアは、すっかりもとどおりのグローリアになり、ロビイのことはぴたりと口にしなくなった
38 ・・・一家は上機嫌でタクシー・ジャイロで、(ウェストンは自分のジャイロを使いたかったのだがシートが2つしかなく、荷物を積み込む余地がなかった)・・・
38 ジャイロ
- 飛行する
40 グローリアは、ニューヨークへいけば、探偵に頼んでロビイを探せると思い込んでいた
40 1998年のニューヨーク・シティ
- 観光客にはパラダイス
41 半マイルもの高さのルーズベルト・ビルのてっぺんからの眼下に林立するビルのパノラマが、遠く、ロングアイランドの平野やニュージャージィの平地にとけこんでいるさまを畏怖にうたれながら見た
41 動物園
- グローリアは、“本物の生きているライオン”を見た
41 さまざまな博物館、公園や海浜や水族館
41 蒸気船というものでハドソン河を半ばまでさかのぼった
41 遊覧飛行で成層圏にものぼった
42 ロングアイランド海峡に、ガラス張りの潜水艦で潜った
42 日常的に、ミセス・ウェストンは、娘をデパートに連れて行った
42 科学産業博物館における事件で、クライマックスに達した
42 科学産業博物館の特別な〈子供むけプログラム〉
- 子供の知能にそった科学の魔法展が催されていた
- 両親が展示に気をとられているすきに、〈しゃべるロボット室へいたる〉と3階の掲示板へグローリアは一人で向かった
43 3階の〈しゃべるロボット室へいたる〉
- 画期的製品だが、実用性は全くなく、宣伝価値があるにすぎない
- 担当のロボット技師が、適当な質問をしてロボットに答えさせる
44 しゃべるロボット
- 25平方ヤードもの面積を占領する不格好な、ワイヤやコイルの動かないかたまり
- 15、6歳と思える一人の少女がベンチに座って、3度目の実演を見るために待ちかまえている
- 歯車だらけの大きなしろもの
45 グローリアはしゃべるロボットに話しかけた
- しゃべるロボットに、ロビイを探してほしいと頼む、グローリア
46 しゃべるロボットは、半ダースのコイルが焼きいれ、警告アラームが鳴り出した
46 15、6歳と思える一人の少女
- 立ち去っている
- “ロボット工学の実用的側面”に関する物理ー1のレポートの資料とした
- この論文は、スーザン・キャルヴィン博士の、ロボット工学に関する数多くの論文の最初のもの
48 グローリアをUSロボット社の見学に連れて行く計画
- 父親が考察するには、グローリアはロビイを機械じゃなく人間だと思っていること。だからロビイを忘れられない。
- USロボット社を見学させ、ロビイが、鋼鉄の板や銅のワイヤがごちゃごちゃ集まったものにすぎなく、命の源は電気だということを、グローリアに納得させてやったら、ロビイを恋こがれるのをやめるだろう
- USロボット&機械人間株式会社のロバートスンに見学を頼んだ
48 ミスター・ストラザーズ
- 実直な営業部長
- 口数が多い、鼻眼鏡の男
- 工場見学の案内をした
50 工場内にあるロボット労働力だけが採用されているセクションへの見学
- 監督の5人の人間以外は、ロボットだけ
- 5年間、このプロジェクト始めて以来一度の事故もなし
- 比較的単純なロボットを組み立てている
50 部屋の中央の丸いテーブルで、働いている6、7台のロボットのうちの一人が、はっきりわからないが、まるでロビイだった
- グローリアは「ロビイ!」と叫んだ、するとテーブルの前にいる一台のロボットが、ふっとよろめいて、持っていた工具を落とした
- 飛び出すグローリアに、大きな図体のトラクターが、定められた進路をまっしぐらに突進してきた
- ロビイが小さな女主人を助ける
52 ジョージ・ウェストンが、ロビイを工場で働かせることを仕組んで、グローリアと再会させようとした
- だが、事故は想定外のことで、ロビイはグローリアの命を救った
- 母親は、錆びるまで家に置くことを決めた
53 ロビイとグローリアの話は、1998年
- 2002年 自力走行の喋るロボットが完成して、喋らないロボットは時代遅れになった
- 反ロボット分子にとっては、限界となり、世界中のほとんどの政府が、2003年から2007年の間に、科学的な研究を除いてはいかなる目的であれ、地球上でのロボットの使用を禁止した
54 世相で、結局グローリアはロビイを手放すことになっただろう
- だが、グローリアは8歳ではなく、15歳
54 2007年 スーザン・キャルヴィン博士が入社した頃
- USロボット社は、財政的にはどん底だった
- スーザン・キャルヴィンの仕事も打ち切りになりそうだった
- そのうちに、地球外のマーケットが開拓された
54 最初の喋るモデル
- 身の丈が12フィート
- とても不器用
- 水星の採掘基地を建築する手伝いに送り出したが、失敗だった
54 水星鉱山は今や数十億ドルの大企業
- 成功したのは、二度目の時
- そのことを知りたいなら、グレゴリイ・パウエルに会うこと
55 グレゴリイ・パウエルとマイケル・ドノヴァンが、10年代、20年代の最も厄介ナケースを扱ってきた
55 マイケル・ドノヴァン
- マイケル・ドノヴァンの消息は、この数年聞いていない
55 グレゴリイ・パウエル
- このニューヨークに住んでいる(スーザン・キャルヴィンの取材はニューヨークで行われているということ)
- もう、孫がいるお祖父さん
55 詳しいことは後で2人から補うとして、スーザン・キャルヴィンの取材が続く、今度は水星のこと
- 2015年 第二次水星探検隊の派遣
- 実地踏査が目的
- USロボット社と太陽系鉱業が半々に出資した
- 隊員は、新しいロボットが一台(まだ実験段階のモデル)とグレゴリイ・パウエルとマイケル・ドノヴァン
57 2堂々めぐり
57 グレゴリイ・パウエルのお気に入りの決まり文句
- 騒ぎたてたところでなんの得にもならない
57 マイク・ドノヴァン
- 赤毛
- <55では、マイケル・ドノヴァンだったが、同一人物。
57 ドノヴァンがあわてている理由
- スピーディが帰ってこない
58 ドノヴァンが1日中地下でやっていること
- セレンをスピーディに、採りにいかせている
- スピーディが出てから、5時間たった
58 セレン
58 【🚩】水星に到着してから、12時間
- トラブル続き
- 2人は、ステーションの無線室にいた
58 無線室
- 旧式になった機械装置
- 彼等がやってくるまでの10年間、誰も触れていない
- 水星のステーションは、廃墟
59 スピーディの位置を無線で突きとめられない
- 水星の太陽側では、無線は役に立たない
- 2マイル離れると使えない。
- 第一次探検隊が失敗したのも、そのためだ
- 超電波装置の備え付けは、あと2、3週間かかる
59 解ったこと
- 短波で、はっきりしない個体信号を突き止めた。
- 2時間にわたり、スピーディのあとを探知して、足取りを地図に記入した。
59 ドノヴァンは、スピーディのことを、やつと呼ぶ
59 黄ばんだ羊皮紙の地図
- 不成功に終わった、第一次探検隊の記念物
- 赤いX印は、セレンの層(プール)・・・グレゴリイ・パウエルが、自分で記した
- マクドゥガルが、ここを立ち去る前に探し出していたのは、3つ。
- スピーディを探索させたのは、3つのうちの一番近く。17マイル離れてる。
- ドノヴァンがチェックしていた2時間の間、スピーディはセレン層(プール)を4回も回っている
60 ピンチ
- 水星に降り注ぐすさまじい太陽熱から、彼等を守ってくれる太陽電池層が、がたがたになっている➡彼等を救ってくれるのは、セレンしかない➡セレンを採ってこられるのは、スピーディだけである➡スピーディが戻ってこなければ、セレンもない。➡セレンがなければ、太陽電池層もない。➡太陽電池層がなければ、ゆっくり炙り殺しになる。
61 ドノヴァンは、グレゴリイ・パウエルのことをグレッグと呼ぶ
61 パウエルとドノヴァンという大物二人組が水星に来たわけ
- 太陽側の採掘ステーションが、近代技術と新型ロボットの力で再開できるかどうかを調査するため
61 太陽電池層は自分たちの手でなんとかしようという思いつき
- 1㎏のセレンとスティルヘッド絶縁基板と3時間という時間があれば、簡単な計画
- それに、セレンの層(プール)は、太陽側にはいたるところにある。マクドゥガルの分光反射器は5分で3つも見つけ出した。
61 スティルヘッド
61 絶縁基板
水星
62 スピーディを追いかけられない
- 太陽側では、新型の耐熱服でも、直射日光のもとでは20分ぐらいしかもたないから
62 古い諺
- “ロボットを捕まえるにゃロボットを”
62 地下層にある6台の古いロボット
- 動くか不明
- 第一次探検隊がもってきたロボット
- 陽電子頭脳もちゃんと具えている
- とても初期の型・・・10年前の技術
- ばかでかい図体。両足を投げ出して座っているのに、7フィートはあった。胸のまわりは10フィート。
- しゃべるかもしれない
63 ・・・ロボットの胸プレートをはずして直径が2インチの球体をさしいれた。・・・
- 直径が2インチの球体・・・この中には、ロボットの生命のみなもとである原子エネルギーの小さな発生装置がおさまっている。
- 新型モデルに使われている無線制御装置は10年前には、噂にものぼっていなかった
64 ・・・「おい!聞こえるか?」
怪物ロボットの頭がゆっくりとうつむき、眼がパウエルに注がれた。そしてしゃがれた、きしり声がしたーーー大昔の蓄音機のような声で彼は言った。「はい、だんなさま!」
- 最初の喋るロボットが出現した頃、地球上でのロボットの使用が禁止されそうな雲行きだった。メーカーたちは、そうさせないために従順で健康な奴隷コンプレックスをロボットに植え付けた。
65 旧ロボットに命令して、17マイル先にいるスピーディの捕獲を命令するグレゴリイ・パウエル
- 命令を理解しているが、主人を乗せなければ勝手に行動できないシステム(初期の地球がそういう時世だったから)
- 人間は、太陽側では、新型の耐熱服でも、直射日光のもとでは20分ぐらいしかもたないので、一緒にはでかけられない。
66 ドノヴァンのひらめき
- 地図に、採鉱ステーション(現在地は黒い円)から、坑道を表す点線が、黒い円の周囲にくもの巣状にひろがっている
- 地図の小さな点は、坑道から地表への出口で、セレンのプールまで3マイルの出口がある。・・・坑口ナンバー13a
- 耐熱服を着て、旧式の喋るロボットに乗っていくプラン
66 耐熱服
- 正規の宇宙服よりかさばる不格好なもの
- 素材が全て非金属なので、かなり弱い
- 耐熱性のプラスチックと科学的に処理されたコルク層から成り、内部の空気をからからに乾燥させる装置を備え、水星の直射びも20分間は耐えられる。
- さらに、5分から10分は、中の人間が死なないでいられる。
67 ・・・パウエルはその耳をつかんでロボットの頭をまわした。彼の乗ったロボットはのっそりと向きを変えた。「さあかかれ、マクダフ」だが心は少しもはずまなかった。・・・
- <「さあかかれ、マクダフ」のマクダフって何?台詞の意味は何?
- <「マクダフ」というウィスキーがある。ハイランドの蒸留所名。これではないと思う。
- <「マクダフ」MACDAFFは、「ダフの息子」という意味で、元々はダウンと呼ばれる小さな村を、この地を支配したファイフ伯ジェームズ・ダフの名前。これでもないと思います。
- <『マクベス』のことか?
68 ステーションが無人になってから10年間、トンネルにこうこうと明かりがつき、温度も地球並みに整えられている理由
- 太陽系で一番安上がりなエネルギー太陽熱のおかげ
- ステーションが山のかげではなく、日の当たる所に作られたのも太陽熱のため
- 巨大なエネルギー変換器。太陽熱は、電気に、光に、動力に、その他もろもろに変換されている。そうやってエネルギーが供給され、ステーションは同様のプロセスで冷却されている。
69 スピーディの故障原因が腑にいちない、ドノヴァンとパウエル
- 彼は、水星の環境に完全に適応するように作られている
- 熱なんか彼にとってはなんともない
- 弱い重力やでこぼこの地面でも平気なように作られている
- ぜったい故障のおきないやつ
69 グレゴリイ・パウエルはマイケル・ドノヴァンのことをマイクと呼ぶ
69 セレンのプールまで3マイルの出口がある。・・・坑口ナンバー13aに到着
- ここから地表に出る
- がらんとした空気のないサブステーション
- 壁面の上のほうにあいている縁がぎざぎざの穴を調べていたドノヴァン。隕石か?
69 外
- 黒い玄武岩の絶壁がそそりたって日光をさえぎり、空気のない世界の深い夜の影が、彼等をとりまいていた。
- パウエルは、地平線までひろがる雪みたいな、光の世界を眺めまわし、その華麗な光輝に思わずたじろぐ。
- 特殊な地域かも。
- 美しい光景だが、ビジプレートのフィルター無しで見たら、30秒もたたぬうちに失明する。
70 特殊な地域
70 【🔎】アルベド
70 温度が高いのはなぜか?
- パウエルが温度が高いのは、大気があるからかな?と考察。
70 水星に大気があるという発言にびっくりするドノヴァンにパウエルの説明
- 水星は、空気がまったくないというわけではない。
- 水星の地表には、うすい蒸気がへばりついている。水星の重力でも引きとめておけるほどの揮発性の高い元素や化合物の蒸気だ。セレン、ヨード、水銀、ガリウム、カリウム、蒼鉛、揮発性酸化物など。
- 蒸気は影の部分に流れこんで凝結して熱を放散する。巨大な蒸留器のように。
- 実際、携帯灯で照らしたら、あの絶壁の側面は、硫黄の霧か、水銀の霧で覆われているのが見えるだろう。
71 パウエルは説明しながら、ビジプレートに双眼鏡を取り付け見た。
- 角をだしたかたつむりのような姿。
- 見えるものは、地平線上に黒点。セレンのプールだろう。だがスピーディーの姿はない。
71 ついにロボットの肩の上に立ち上がって、パウエルはスピーディーを探す。
- 結晶体から成る地面の燦然(さんぜん)たる光輝(こうき)を背に小さな黒点が動いていくのが見える。
72 ロボットで追いかける2人。
- ロボットSPD13号は、こ、あやかなところまではっきり見えるぐらいに近づいている。
73 ロボットSPD13号 スピーディー
- 優美な流線型のボディ
- 燃え上がるようなハイライトを放ちながら、岩だらけの地面をゆっくりした歩調で歩いている。
- スピーディーという名前は製品番号からとったもの。
- USロボット&機械人間株式会社が製造したロボットの中でも、最も俊足のロボット。
73 ドノヴァンとパウエルがまたがっているロボット
- 齢(よわい)50歳の骨董品。
- のろのろとした歩み。
73 近づくと、スピーディーの歩き方が妙にふらついている。
- 左右によろめくのが目につく。
- パウエルが、頭部に取り付けられたコンパクトな無線送信装置に最大限の電力を送り込むと、スピーディーが頭をもたげてこちらを見た。
- スピーディーはしばらくじっとしていた。まるで微風に吹かれるように、かすかに体を揺らしている。
74 パウエルが「いい子だ、スピーディー。こっちにおいで」とどなった。
74 その時はじめて、スピーディーのロボット特有の声がパウエルのイアフォンに響いた。
- 「ワーオ、いっしょにあそぼうよ、あんた、あたしをつかまえて、そしたらあたし、あんたをつかまえる。どんな愛だって、あたしたちのナイフを二つに切れないよーだ。だってあたしはちっちゃなキンポウゲ、かわいいキンポウゲだもん。ありゃりゃと!」
- くるりと向こうむきになると、いま来た方角へ駆け出していく。
- みるみる遠ざりながら吐き捨てた彼の言葉は、「大きなカシの木の下で小さなお花が咲きました」だった。
- そのあとに、ロボットのようなしゃっくりとでもいうような、奇妙な金属的な音がした。
74・・・ドノヴァンが弱々しく言った。「やつはいったいどこでギルバートとサリバンのオペレッタの台詞をおぼえたんだ?おい、グレッグ、やつは・・・・やつは酔っぱらっちゃたのか」・・・
74 【🔎】ギルバートとサリバン
75 スピーディーが狂った理由
- スピーディーは水星のふつうの環境には完全に適応するように作られているが、この一帯は、およそ普通じゃない。これが鍵。
75 結晶体はどうして生じたのか?
- 液体がゆっくりと冷えて作られたのかもしれない。だが水星の太陽のもとで冷却するような、そんな熱い液体がどこにあるのか。
- 火山活動さ、とドノヴァン。
76 岩壁まで戻る2人。
- 苦境に追い込まれた2人。
76 ロボット工学の基本原則に立ち戻ろうとする2人。
- ロボットの陽電子頭脳に深く刻み込まれているあの三原則に。
77 ロボット工学の三原則
- 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過するにことによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
- 第二条 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない」
- 第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれがないかぎり、自己をまもらなければならない。
78 スピーディーの場合
- スピーディーは最新のモデルで極度に専門化され、戦艦と同じくらい高価なものだ。
- それで、第三条が強化されている。このことは、SPDモデルの仕様書に特に明記されている。
- したがって、危険に対するアレルギーは極度に強い。
78 ドノヴァンは、スピーディーにセレンを採りにいかせるとき、その命令をさりげなく、特に強調することもなくあたえた。
- それで、第二条のポテンシャルの設定がいささか弱いものになった。
- あのセレンのプールにはなんらかの危険が集中している。その危険は彼が近づくにつれて増大する。そしてある距離のところまでくると第三条のポテンシャルが、はじめから異常に高いポテンシャルが、はじめから異常に弱い第二条のポテンシャルとぴったりバランスしてしまう。
- そこで彼はセレンのプールのまわりをぐるぐるまわることになる。
- つまり、2つのポテンシャルが平衡するあらゆる点を結んだ軌跡の上をたどっている。
- ドノヴァンとパウエルが何か手を打たない限り、永久にその軌道をまわり続けて、堂々めぐりをさせていく。
- 彼が酔っぱらったのは、ポテンシャルが平衡状態に達したために、頭脳の陽電子回路の半分が狂ってしまった。どうも人間が酔っぱらったみたいに、随意的な機能の一部のコントロールがきかなくなった。
79 【🔎】随意(ずいい)
79 スピーディーが逃げたい危険とは何か
- ドノヴァンが言っていた火山活動
- セレンのプールの真上のどこかで、水星の内部からガスが漏出しているんだろう。二酸化硫黄、二酸化炭素、一酸化炭素が大量に。それにこの温度で、一酸化炭素と鉄を反応させると揮発性の鉄カルボニルになる。そしてロボットは基本的に鉄だ。
79 解決法がない
- ドノヴァンとパウエルは、自身の手でセレンを採取しには行けない。
- ロボット馬をやるわけにもいかない、ロボット馬だけではいかせられない、かといって2人が乗っていっても、かりかりにならないうちに往復できるほど速くない速度。
- スピーディーをつかまえることもできない。スピーディー自身はドノヴァンとパウエルが遊んでいると思っているし、2人が4マイル走るあいだにスピーディーは60マイル走れる。
- 2人のうちのどちらか片方だけ行って、焼きあがって戻ってくれば1人は残る。だが、セレンのプールにたどりつかないうちに、その人間は命令を出せるような状態ではなくなっているだろう。ロボットたちは、命令がなくては岩壁まで戻ってこない。・・・計算すると10分足りない。
- おまけに、第三条のポテンシャルが、スピーディをあの場所に停止させているということは、金属蒸気を含む大気中に相当量の一酸化炭素があるに違いないので、かなりの腐食作用が起こるだろう。=現場のスピーディはいつ故障するかわからない状態。
81 パウエルの作戦
- 危険を高めてやれば、第三条のポテンシャルが増大してスピーディを押し戻すことができる。
- スピーディのいるあたりの一酸化炭素の濃度を増してやればいい。
- ステーションに戻れば、分析実験室があり、カルシウム沈澱用のシュウ酸もある。シュウ酸を熱すれば二酸化炭素と水と一酸化炭素に分解する。
82 ロボット馬に投石させる
- 半マイルの距離。
- 水星の重力に鋼鉄の腕だから届くはず。
- 石の速度をにぶらせる空気の抵抗もなく、方向をそらせる風もない。
83 太陽電池層の状態は予想以上に急速に悪化していた。
84 シュウ酸の入った3ℓ瓶を2組を、走り寄って来た頭のいかれたスピーディに向かって、ロボット馬に投げさせた。
- スピーディの後ろの地面に落ちて、粉々に瓶は砕け、シュウ酸を粉塵のように飛散させた。
- 水星の太陽熱をまともにあびれば、ソーダ水のように泡立つだろう。
84 15秒後
- スピーディは、彼ら2人の人間のほうにまっすぐに走ってきた、よろめきながら。
84 ・・・パウエルにはスピーディの言葉はよくわからなかったが、こんなふうに聞こえた。「愛の告白が、ヘシアン語で語られたとき」・・・
84 【🔎】ヘシアン語
- Hessian
85 彼らはゆっくりとした単調な足どりのロボットの背に揺られながら岩蔭に向かい、影蔭に入ってひんやりした冷気が彼らを包んだ時、ドノヴァンが振り返ると
- スピーディはとてもゆっくりと、ちがう方向へ歩いていた。
86 新しい一酸化炭素を作って、第三条のポテンシャルを高めるとスピーディは後ろにさがり、さこでまた平衡状態が生じる、そして一酸化炭素が吹き流されると彼は前進し、そこでまた平衡状態が生じる。
86 第一条のポテンシャルによれば、ロボットはその危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない。第二条も第三条もこれに逆らうことはできない。を利用して例えスピーディが酔っぱらっていても、命がけで試してみる。
- パウエルが命がけで陽光のもとに出て行った。
88 スピーディまであと300mのところで、一歩一歩用心深く後じさりをするスピーディ。
- パウエルは、ロボットの肩から結晶体でできている地面におりた。
- パウエルは自分の足で歩きだした。
- 距離的に自力でも、ロボットの肩に乗っても、岩壁までは戻れない。
- スピーディが助けてくれないと、パウエルは太陽に焼かれて死ぬ。
89 ・・・「スピーディ、あの影のところまで戻らなきゃならない、さもないと太陽にやられちまうんだ。生きるか死ぬかだ、スピーディ。おまえの助けが要るんだ」スピーディは一歩前に踏みだして立ちどまった。そして喋りだしたが、それを聞いて彼はうめき声をあげた、それはこうこういう言葉だったから。「うっとうしい頭痛で夜どおし眠れなきゃーーーー」そこでとぎれた、そしてパウエルは、なぜかゆっくりとつぶやいた。「アイオランテ」とサリバンのオペレッタの題名を。・・・
89 【🔎】アイオランテ
89 あぶられているみたいに熱い! その時、パウエルが乗っていたあの怪物ロボットが歩いて来る。ーーー彼の方にむかって、騎手も乗せずに。
- ロボットは、「おゆるしください、だんなさま。だんなさまを乗せずに動いてはいけないのですが、あなたが危険ですので」とあやまった。
- 第一条のポテンシャルが、すべてに優先しているので、停止命令をするパウエルに、何度も「あなたが危険です、だんなさま」と繰り返す。
90 パウエルは、もう眼がはっきり見えない。頭がかっかとしてめまいがする。吐く息は灼けつくようだ。まわりの地面はちらちら光るもやと化している。
90 ・・・「スピーディ!死にそうだ、ちきしょう!どこにいる?スピーディ、おまえが必要なんだ」・・・
- 鋼鉄の指が彼に触れるのを感じた。
- そして気づかわしいそうな、弁解じみた金属的な声が耳もとでひびく。「いったいぜんたい、ボス、ここでなにをしているのです?それにわたしはなにをしているのだろうーーー頭がすっかり混乱してーーー」
- パウエルは「気にするな」と弱々しくつぶやき、岩壁の蔭につれていってくれと命令した。
- 最後に宙にかかえあげられる感覚、スピードのある動きと、灼け着く熱気の感覚があり、パウエルはそのまま気を失った。
91 パウエルが気が付くと、心配そうにドノヴァンがかがみこんでほほえみかけた。
91 スピーディは、セレンの他のプールにやった。
- 今度はなにがなんでもセレンを採ってこいと命令したと、ドノヴァン。
- 42分30秒で、スピーディは、セレンを採取してきた。
91 パウエルに𠮟られることを怖がって近づかないスピーディに、スピーディの手をにぎって「いいんだよ」と許すパウエル。
91 パウエルはドノヴァンに提案
- ここのが片がついて、スピーディが実地試験に通ったら、僕らははまた次のステーションにやられてしまう。
- 出発前に、キャルヴィンばあさんが、パウエルにそういった。ドノヴァンに言わなかったのは、断固抵抗するつもりだったから。といって「でもーーー」と言い淀んでいるパウエル。
92 ・・・「わかってる。もういいんだよ。零下二百七十三度。たのしみじゃありませんか」「宇宙ステーションよ」とドノヴァンは言った。「ただいま参上」・・・
- <零下二百七十三度、どこかな?
93 3 われ思う、ゆえに・・・・・
93 半年後、パウエルとドノヴァンは考えをあらためていた。
93 ロボットQT1号 キューティ
- 1週間前、ドノヴァンとパウエルが組み立てたロボット。
- 磨き上げられたボディのプレートは照明灯に照らされきらきら輝いていた。
- 眼である光電管の赤い光はテーブルの向かい側の地球人の上にじっと注がれている。
- QT型はこの種のものでは最初のもの。目の前にいるのは、QT型第一号。
94 パウエルの不安。
- このロボットたちは特殊な頭脳をもている。ロボット工学三原則はちゃんと守ると、USロボット社では、ロバートスン会長から新米の掃除婦にいたるまで、全社員がそう主張している。
- だが、QT型はこの種のものでは最初のものだから不安。
94 ロボットQT1号 キューティに、キューティは、作られたものだと指摘するパウエル。
- 記憶は、1週間前は完全な空白で、いきなり何もかもそろったことは認めるだろう?
- それは、ドノヴァンとパウエルが、ここへ送られた部品から組み立てたから。
95 キューティは、妙に人間めいた神秘的な風情で、長いしなやかな指を見つめている。
- パウエルが自分を作ったとは考えられないと言い張るキューティ。
- 直感から。今は制つめい出来ないが、論証してみせるという。正しい推論はの鎖は、真理への到達によってのみ完結する。わたしはそこに到達すると言った。
95 パウエルは、ロボットに同情する。
- 普通のロボットとまったく違って、ステーションにおける特殊な仕事を、深くうがかれた陽電子回路の力により行うというだけのロボットとは違うのだと思った。
95 キューティは、自分の存在について好奇心を示した最初のロボット。また、この外の世界を理解するだけの知能をもった最初のロボットだと、パウエルはキューティに告げた。
96 壁のボタンを押し厚い透明なガラスの向こうに現れた空間をキューティに見せる。
- 宇宙について教えるパウエル。
- 星のことや何十億という人間が星の表面に住んでいることや白熱球からとりだしたエネルギーをそれらの世界に送っていること。その白熱球は太陽と呼んでいて、このステーションの反対側にあり、ここからでは見えないことを教えた。
- パウエルとドノヴァンは地球から来た。地球には30億人の人間が住んでいる。
- 2週間もすれば、パウエルとドノヴァンは、また地球へ戻ると伝えた。
97 キューティの存在についての説明。
- これらのステーションが、太陽のエネルギーをあの惑星群に供給するために建築された当初は、人間の手によって維持されていた。ところが、熱や強烈な太陽輻射や電子嵐などのために、人間の手による維持が困難になった。
- そこでロボットが人間の労働力にとってかわるようになる。今では、各ステーションに必要なのは2人の人間の管理員だけ。
- 人間は、その2人の管理員もロボットに置き換えようと努めてきた。そこでキューティが登場した。
- キューティは、今までに作られたロボットの中で最も高性能なタイプだから。
- キューティが、この中継ステーションを独力で維持できる能力を示せば、人間達は修理用の部品を運んでくるだけで、もうここへ来る必要がなくなる。
98 複雑で納得しがたい仮説だと、キューティはパウエルの説明を信じなかった。
98 踵(きびす)かえし、悠然と部屋を出ていくキューティは、戸口でマイケル・ドノヴァンとすれちがうと、重々しい会釈をして、廊下に出ていく。
98 マイケル・ドノヴァンは、キューティのことを歩くがらくた、頭の狂ったロボット、あのくず鉄と呼んでいる。
- マイケル・ドノヴァンは、自分に向かってパウエルに向かって言ったような態度をとったら、クロムのあの頭骨を吹っとばしてやると言った。
99 マイケル・ドノヴァンは、ペイパーバックの推理小説を読みながら、キューティにぞっとすると言った。
- いくらなんでも、好奇心が強すぎる。
99 【🍴】
マイク・ドノヴァンは、キューティがそっとノックをして部屋に入ってくると、レタスとトマトのばかでかいサンドイッチのかげからうなり声をあげた。
- グレゴリイ・パウエルを探しにきた。
100 グレゴリイ・パウエルは、嵐につっこむので電子流機能のデータを集めにいって、もどってきた。
- Ζ(ゼータ)ポテンシャルが徐々に上昇している。
- 電子流機能も不安定。
- どうなるか予想がつかない。
100 キューティは、新しいドライブ・バーの取り付けを監督し終えて、2人とお話にきた。
- グレゴリイ・パウエルは不愉快そう。
100 キューティは、結論に達したと報告した。
- この二日間、全精神を集中して内省(ないせい)に専念した。
- わたしは公ではないかと思われるある確かな仮説から出発した。われ思う、ゆえにわれありと。
101 【🔎】内省(ないせい)
101
・・・われ思う、ゆえにわれありとーーー」
パウエルがうめき声をあげた。「こいつはたまげた、ロボット・デカルトさまだ」
101 デカルト
101 キューティに、たちまち生じた疑問
- わたしの存在理由はなのか?
101 これに対しての2人の答え
- パウエルは、「われわれが作ったとおしえたはずだ」といい
- ドノヴァンは、「よろこんでばらばらにしてやるよ」と言った。
101 キューティは2人に、権威だけではなにごとも受け入れないこと。仮説は理性による裏付けが必要で、さもまくばまったく無意味なことを諭す。
- あなたがたがわたしを作ったという説は論理の命題に反する。
102 「いったいどうしてそんなことを言うんだ?」と、ドノヴァンをいなしたパウエルがキューティに尋ねる。
- 非人間的な笑いがおこるキューティ。メトロノームのように規則正しく抑揚のない笑い。
102 キューティの答え
- あなたがたを作っている物質は柔らかく軟弱で、耐久性に欠けており、エネルギー源を有機や物の非効率的な酸化に依存している(食事のこと)
- あなたがたは周期的に昏睡状態におちいり、温度や気圧や湿度や放射線などの些少な変化は、あなたがたの能率を減じる。
- あなたがたはいわば、当座の間に合わせものなのです。
- それに反して、自分は完全な製品だ。
- 電気エネルギーを直接吸収し、ほとんど100パーセントに近い効率でそれを活用する。
- わたしは強い金属で合成され、つねに意識を有し、いかなる極限状態にも容易に耐えうることができる。
- こうした事実は、いかなる生物も、それ自体より優れた生物を創造することはできない。という自明の命題とともに、あなたがたの愚昧(ぐまい)な仮説を完璧に粉砕するものだ。
103 ドノヴァンが、もし俺たちのがきさまを作らなかったら、どこの誰が作ったんだ?と聞く。
- それは、第二の疑問だと、キューティ。
- わたしの創造主は明らかに、わたしより優秀なものでなければなりません。
- 可能性はただひとつしかないという。
103 創造主の可能性
- このステーションにおける活動の中心はなにか
- われわれは何に仕えているか
- われわれの注意のすべては何に注がれているか
- それは、エネルギー変換装置
104 キューティが話す真実の話
- 主はまずはじめに、もっとも単純なタイプであり、きわめて容易に組み立てられる人間をお創りになりました。
- それから、次の段階として、人間たちを徐々にロボットに置きかえていかれた。
- そして最後にわたしをお創りになった、最後の人間のあとを継がせるために。
- 今からは、わたしが、主にお仕えしていく。
104 パウエルは、そんなこはしなくていいと言った。
- キューティが満足に変換器を操縦できるようになるまでは、2人の命令に従って、おとなしくしていればいい。
- データーを整理しろと命令して出て行かせた。
105 ドノヴァンは、キューティがいまに面倒をひきおこすと言った。
105 ステーション4号のビームはよていどおり火星に届いた。
- われわれのほうは中断していい。
- キューティがエンジン・ルームにいるから、シグナルを出してやらせよう。
105
「おい、これは、おれがガンマ線と呼んでいたやつだぜ。おてんとうさんがうかれているのさ」
105 【🔎】ガンマ線
105 【🔎】
105 ガンマ線強度と電子嵐
- 地球向けビームはその予想進路に入っている。
- 10日先の、交代がやってくるまで、電子嵐が近寄らなければいいが。
105 電子嵐
106 ドノヴァンは、アーモンドを手に下へいってキューティを見張りに行く。
- エレベーターは、降下して広いエンジン・ルームを見下ろす狭い通路(キャットウォーク)の前で止まった。
- 巨大な発電機が稼働中で、Lーチューブから低い回転音がもれ、ステーション全体に響きわたる。
- 火星用のLーチューブの前に、キューティのぴかぴか光る巨体が見える。キューティは、緊密な連隊作業をしている一群のロボットたちを監視している。
106 ドノヴァンは、体をこわばらせた。
- ロボットたちが、チューブの前に一列に並び、頭をぎこちなく下げた。そして列の前を、キューティがゆっくりと行ったり来たりしている。
- 15秒すぎた、騒々しい発電機のうなりにがちゃがちゃという音が加わり、ロボットたちがいっせいにひざまずいた。
107 ドノヴァンは、怒声をあげて命令しに階段を下りて行った。
- どのロボットも動こうとしない。
- 立っているのはキューティだけで、どのロボットも跪いていた。
107 「立て」とこずいたロボットが言った言葉
- 「わが主のほかに主はいまさじ」
- 「QT1号はその予言者なり」
- 20台の機械の眼がいっせいにドノヴァンに注がれ、20の硬くひびく声がおごそかにその文句を朗誦(ろうしょう)している。
107 【🔎】朗誦(ろうしょう)
107 キューティが、「わが友は、あなたより優れたものに服従しているようだ」と口をはさんだ。
108 命令をきかないので、ドノヴァンはロボットたちが主と呼んでいるLーチューブに、ぺっと唾を吐いた。
- 「神聖を汚しましたね」とキューティが低い声で言った。
- キューティから怒りを感じ、ドノヴァンは恐怖を感じた。
109 ドノヴァンとパウエルに、コントロール・ルームとエンジン・ルームへの立ち入りを禁止するキューティ。
- キューティの指示でロボット2台にドノヴァンの両腕をおさえつけた。
- ドノヴァンがあっと息をのむ間に、体が床から持ち上げられ、馬の緩い駆け足より速い足並みで階段を運びあげられる。
109 グレゴリイ・パウエルは、拳をかたくにぎりしめ、ドノヴァンになぜLーチューブに唾を吐きかけたかといただす。
- 2人は管理室に閉じ込められて、ドアの前には2台のロボットが見張っている。
110 このままで、ベースに戻ったら
- 水星の鉱山に20年間、逆もどり。
- セレス刑務所行き。
- なぜなら、接近している電子嵐は、地球向けのビームのど真中をつっきるので、コントロール・ルームにキューティだけでは、焦点がはずれるに決まっているから。
111 キューティが2人をたずねてきて、いずれこうなるほかなかった。パウエルとドノヴァンは本来の機能を失ったのです、どうか心配しないでと告げた。
- キューティが作られるまでは、2人が主に仕えていた。その特権はいまやキューティのものであり、パウエルとドノヴァンの唯一の存在理由は消滅したのは明白だ。
112 キューティは、パウエルとドノヴァンをどうしたいのか。
112
「わたしはあなたがた二人が好きです。あなたがたは、たかがしれた推理力しかもたない劣等生物ですが、わたしはあなたがたに愛情のようなものを心から感じます。あなたがたは主によく仕えてきました。主はその労に報いてくださるでしょうが、あなたがたが生存するかぎりは、食物、衣服、居室などは供給します、コントロール・ルームとエンジン・ルームへ近づかないかぎりは」
113 パウエルとドノヴァンがボスで、このステーションは、地球やほかの惑星に住んでいる人間の手で作られたもので、ここは単なるエネルギーの中継地だと理解しないキューティ。
113 パウエルが、もし地球のようなものがないとしたら、おまえが望遠鏡で見ているものをどう説明するのかと尋ねた。
- キューティは組み立てられてから、望遠鏡観測をたくさんしていた。
113 外にある光点のいくつかが、望遠鏡でのぞくと円盤のように大きくなるのに気づいただろう?というパウエルの質問に
- キューティは、あれは単なる拡大です。ビームがより正確に到達するための。と答えた。
113 なぜすべての星が等しく拡大されないのか?というパウエルの質問に
- ほかの光点は、あれらにはビームがいかないから必要ないと答えた。
- パウエルがそれくらいのことを理解していないのを不審がる。
114 しかし望遠鏡ではもっとほかの星も見えるだろう。あれはどこから来たんだね?というパウエルの質問に
- キューティは、たじろぎながら、われわれの器具の光学的幻影についていちいち物理的解釈を下す時間を浪費しないと答えた。
- いったいいつからわれわれの感覚が、厳しい理性の光に対抗できるという証拠が示されたのですか?とたずねる。
114 ドノヴァンが、キューティのどっしりとした鋼鉄の腕をかいくぐって叫んだ。問題の核心を明らかにしよう、そもそもビームはなんのためにある?俺たちは論理的な立派な説明を聞かせている、きさまにもっとましな説明ができるのか?
- ビームは、主によって、主ご自身の目的のために、さしだされているものです。そこにはなにか意味があるのです。
- それはわれわれが詮索すべき事柄っではありません。
- この問題については、キューティはただ主に仕える身、ことさら問うつもりもありません。
115 パウエルはのろのろと腰を下ろし、震える両手で顔をうずめた。
- パウエルはキューティを部屋から出て行かせる。
- 115 ドノヴァンが提案したキューティの破壊工作よりも、48時間以内に2人をコントロール・ルームに入れさせるように説得しなければならないと、パウエル。さもないと、かりかりに焼き上げられておしまいになる。
115 ドノヴァンはロボットと論議することが、屈辱的だと思っている。
116 ドノヴァンが、キューティの目の前で、ロボットを組み立ててみせようと提案した。
- パウエルの顔にゆっくりと微笑みがひろがった。
116 ロボット
- 地球でも生産されている。
- 宇宙へ積み出す場合は、使用の際に組み立てるよう部品のまま積み出したほうが簡単。
- 完全に調整されたロボットが地球にいる間に、どこかへさまよいだす危険を回避するため。
- それにより、USロボット社が地球上の厳しいロボット規制法と直面する危険を排除することになるから。
- これは、パウエルやドノヴァンのような人間に完全なロボットを組み立てる作業が課せられる。それは複雑きわまりない厄介な仕事だった。
116 組み立て室
- パウエルとドノヴァンは、主の預言者、QT1号の見守る前でロボットを組み立てる。
- 組み立てたロボットは、シンプルなMC型で、ほとんど完成してテーブルの上に横たわっている。
- 3時間にわたる作業も、あと頭部を残すのみ。
117 頭脳を入れる作業
- 密封されたコンテナの蓋を開け、油槽の中から2つ目の箱をひきだし、中のスポンジ・ラバーの容器から球体の物質を取り上げる。
117 ロボットの脳
- 人間によって作られた機械装置としてはもっとも複雑なもの
- 球体の薄いプラチナメッキの被膜におおわれているのは陽電子頭脳
- 精妙で不安定な構造には、綿密に算出された神経回路が刻みこまれており、それによってロボットたちはいわば出生前の教育に等しいものを与えられていた。
118 動き出したロボットを見てもキューティは、2人が自分を作ったと認めなかった。
- 2人はすでに作られていた部品を組み立てたに過ぎない。
- 大変見事に組み立てたのは、本能によるものでしょう。
- 部品は主によって創造されたのです
119 ロボットの部品は地球で作られたものだと認めないキューティ。
119 図書館の本をよんでいれば、ロボットの部品のことも説明されていたと、ドノヴァンが言うと、論駁(ろんばく)できないと、パウエルがいうと、
- 図書館の本を全て読んだキューティだが、独創的なものだった。
- あれらの書物が情報の確実な源とは考えていない。
- あれらは、主によって創られたもので、2人の為に作られたもので、わたしのためではないと言った。
119 【🔎】論駁(ろんばく)dictionary.goo.ne.jp
119 なぜ、図書館の本が人間のために作られたもので、キューティのためのものではないか
- 私(キューティ)は理性を有する存在であり、真理を最優先な根拠から演澤(えんえき)できるから。
- あなたがた(パウエルとドノヴァン)は、知能はあっても、理性がないから、外から与えられる存在の説明が必要。主はそれをなされたのです。
- 主が2人に、はるかかなたの世界とかその住民に関するばかけた観念を植えつけられたことは、明らかに善意をもってなされた。
- あなたがたの頭脳は、おそらく粗雑きわまるものなので、絶対的な真理を理解することはできないでしょう。
- しかし、あなたがたがあの書物を信じるのは主のみこころなのですから、これ以上あえて議論はしない。
119 【🔎】演澤(えんえき)
121 来週、交代の連中がやってくれば、地球が存在しているかどうかキューティにもわかる。
- パウエルとドノヴァンは、地球に戻って甘んじて非難を受けよう。
121 キューティは、パウエルとドノヴァンも、本も自分の眼も信じない。
- 推論だけが能のロボット
122 12時間後
- 2人は眠れなかった。
- 嵐は予定より早く襲来した。
122 事情が異なれば、それは美しい眺め
エネルギー・ビームに衝突した光速度の電子流は、蛍光を発し、極少針状体の強烈な光に変じた。ビームはみるみる空中に四散し、おどりくるう微片とともにきらきら消えた。
122 エネルギー・ビームの軸(シャウト)は安定していたが、二人の地球人は、肉眼に映る状況の意味をしっていた。
- 角度で千分の一秒の一ずれても、眼には見えないが、ビームの焦点を大きくはずす。
- 地球上の数百マイルの地域を白熱にさらし廃墟と化してしまう。
122 ビームにも焦点にも地球にも無頓着で、主以外のものにいっさい無頓着なロボットが、コントロールをにぎっている。
122 数時間が経過した。
- 地球人(パウエルとドノヴァン)は催眠術にかかったように黙りこくって眺めていた。
- やがて飛びかう微細な光点が薄れて消えた。
- 嵐は終わっていた。
124 キューティがパウエルとドノヴァンに、記録用紙を持ってきた。
- キューティはビームの焦点を合わせていた。
- キューティは、主のみこころに従って、すべてのダイヤルの平均を保っただけだと言った。
125 キューティは、中継ステーションを完全に管理できることを示した。
- 電子嵐をこれほど見事にさばいた例は見たことがない。
- だが、問題は何一つ解決していなかった。
125 パウエルの考察
- キューティは、ダイヤルや機械やグラフという手段により、主の指示に従った。それは、みんなぼくたちがやってきたことと同じ。
- キューティが服従を拒んだのも納得がいく。服従はロボット三原則の第二条。人間にいかなる危害も加えてはならないというのが第一条。キューティがそれを知っていようといまいと、いかにしたら人間を危害から守ることができるか?それは、エネルギー・ビームを安定させておくことだ。キューティはパウエルとドノヴァンよりも優れた自分の方が、ビームをしっかり安定させられることを知っている。だからキューティは2人をコントロール・ルームから閉め出した。ロボット工学三原則のことを考えれば、必然的結果だった。
126 パウエルは、キューティが何を信じていようとかまわないといって眠った。
126 これからは仕事が楽になる
- 新しいQT型を一台ずつ運び込み、一週間以内に自動的に電源がを切れるスイッチをつけておく。
- 預言者キューティ自らの口から、主の話を聞かせる時間を充分あたえてやるんだ。
- それからやつらを他の中継ステーションへ送り込み、そこでまた生命を吹き込んでやる。2台のキューティが管理する。
127 パウエルとドノヴァンは宇宙服を着て、地球へ帰る。
127 キューティが別れにやってくる。
- キューティは、2人の奉仕の時が終わり、終末の時がやってきたと同情している。
128 USロボット社がまた新型のロボットを発明した。
- 複合ロボット。
- 大きな契約があった。
- 小惑星鉱山用
- 親ロボットの下に6台のサブロボットがいる。
- 実施テストは、パウエルの帰りを待っているらしい。
131 4 野うさぎを追って
131 パウエルとドノヴァンの休暇は2週間より長かった。
- 6ヶ月の有給休暇だった。
- たまたまそうなっただけと、マイク・ドノヴァンは憤慨やるかたない。
131 有給休暇が長かった理由
- USロボット社は複合ロボットから欠陥を取り除く必要があった。
- 欠陥がやまほどあったので、実地テストができない。
131 マイク・ドノヴァンとグレゴリイ・パウエルは小惑星にやってきていた。
132 新しい複合ロボットたちについて、グレゴリイ・パウエルの説明
- 仕様書によれば、自力で惑星の採鉱作業ができるて、監督は不要。
132 新型のロボットについて、マイク・ドノヴァンの論理的な説明
- 新型のロボットは本社の研究室あらえるテストに合格した
- USロボット社はこれらのロボットが、小惑星における性能テストに合格することを保証した。
- このロボットは、前述(2)のテストに合格しない。
- 合格しないとなると、USロボット社はキャッシュで1千万クレジット、信用で1億クレジットを失うことになる。
- 合格しないとして、ではなぜ合格しないのか、パウエルとドノヴァンが説明できないとしたら、2つのいいお仕事からお別れをしなければならい。
132 USロボット社&機械人間株式会社の不文律
〈社員は同じ過ちを二度くりかえすことはない。一度目でクビだから。〉
132 【🔎】不文律(ふぶんりつ)
132
「きみってやつは、ユークリッドみたいに頭脳明晰になるんだね、
132 【🔎】ユークリッド
133 新型のロボット
- ロボット集団が三交代するあいだ、ドノヴァンが監視して、完璧に仕事をこなした。
- ドノヴァンが監視している間は完璧に仕事をしたが、三度ばかりドノヴァンが目をはなしたときには、鉱石のひとかけらも採ってはこなかった。予定通りに戻ってもこなかったので、ドノヴァンが連れ戻しにいった。
133 ドノヴァンは、新型のロボットがどこがおかしいかを発見したい
- 調べても、すべて完璧だ。
- ただひとつ瑣末なことが気にかかる、鉱石がない。
133 DV5号
- 新型のロボット
- 6台のロボットを引き連れている。
- 手下ではなく、ほかの6台もDV5号の一部。
- サブロボットは、人間の指のようなもので体の一部をなしていて、DV5号の命令は、声でも無線でもなく、陽電子場を通じてじかに彼らにあたえられる。
134 陽電子場
- この陽電子場というものが、どういもので、どんな働きをするものか知っているロボット学者は、USロボット社にも一人もいない。
- グレゴリイ・パウエルだって知らない。
- マイク・ドノヴァンだって知らない。
135 デイブが入って来て、補強した椅子についた。
- パウエルはロボット技師だから製品番号で考えない。
135 DV5号 デイブ
- 七台一組の複合ユニットの思考装置としては決して大きすぎない。
- 身の丈は7フィート
- 金属部分と金属回路を合わせて半トンの重量。
- 人間が知るいかなる心理反応にも対応できることを考えれば、重すぎはしない。
- 陽電子頭脳が、10ポンドの物質と、千の六乗という数の陽電子によって、全体を統御している。
- 性能のいい震動版が装備されていて、サウンド・ユニットに倍音が加わるので、普通のロボットの音声に特有の金属的な平板さがほとんどない音声。
136 デイブ自体は好調なのに、仕事のほうはどうしたのか。例えば今日のBシフトは?とパウエルが質問した。
- デイブはいいよどみ、「わたしのしるかぎり、なにもない」と答える。
136 鉱石のひとかけらも掘らなかった理由は?
- デイブは悩んで、「説明ができない」という。
- あのおかげで神経がどうにかなりそうです。少なくともこのままにしていたらそうなる。
- サブたちは円滑に仕事をしています。わたしもちゃんとしている。
- 覚えていない。
- 1日が終わると、マイクがいて、鉱石運搬車があり、車はほとんど空でした。
137 近頃、作業時間の終わりに報告しにこないのは?とマイク・ドノヴァン。
- わかっているが、なぜかというとなると・・・とデイブは考えこむように首をふった。
137 パウエルの不安な気持ち
- ロボットは、本来の性質からして、おのれの機能不全には耐えられない。
137 ドノヴァンがデイブの記憶喪失を疑った。
- パウエルは人間の病名をつけても、ロボット工学には何の役にも立たないと言った。
- パウエルは、デイブに基本的な頭脳反応テストを受けさせたくないのは、デイブの自尊心によくないからだった。
137 『ロボット工学ハンドブック』
- パウエルが昔、火事の時、パンツひとつで持って逃げたという大切なもの
137 『ロボット工学ハンドブック』に指示されたテスト概要をデイブに見せる。
- デイブにひとつのテストを受けてみるか?とパウエルが言うと、苦痛そうにボスの命令に従うデイブ。
138 デイブをテストをするが陽電子頭脳の流れには、異常なし
139 ロボットは意識的に嘘はつけない
139 マコーマック₋ウエズレイ・テスター(M₋Wテスター)
- ここにはないが、ロボットの体の中の個々の部品を24時間なし、48時間でチェックしてしまえるもの
- たった2台しかない
- 10トンの重量
140 なぜ人間のいない時だけデイブはおかしくなるのか?
142 赤毛の修理係のドノヴァンは、いつも新型ロボットと自分たちが悶着あることに憤慨しながら、ロボットたちを見張っている
143 ロボットたちが仕事をせず、デイブを先頭にそろって行進している。驚いたパウエルとドノヴァンは、外に様子をみにいく。
145 17号坑道で手ごわい露頭部にぶつかり、それに取り組んでいたと思ったら、次は人間が側びいると気配を感じ、気が付くと幹道を半マイルも外れていたと、デイブ。
- サブロボットたちは、さっと仕事にもどった。
145 【🔎】露頭(ろとう)
146 残りの3時間はドノヴァンがデイブを見張ったので何もおこらなかった。
146 デイブは、サブロボットたちに対し生殺与奪権をもっているが、これがデイブの精神状態に影響を及ぼしているのでは?デイブは、自我への譲歩として、その権力を誇示する必要にせまられているのかもとドノヴァン。
- 軍隊精神
- パウエルはその考えは否定。ドノヴァンは陽電子頭脳が常識を逸していると仮定して分析しているから。
- 「デイブはロボット工学三原則の第一条を破らない」→「すなわちロボットは人間に危害を加えてはならない。またその危険を看過することによって、人間に危害を及ばしてはならない。」よって、「軍事式の姿勢や傲慢な自我を持つタイプは、論理的帰結として、人間の支配にいきつく」→そして、「軍事式の姿勢や傲慢な自我を持つタイプ」の頭脳を持つロボットは、第一に、工場から出ることはない。第二に、仮に出てきたとしてもすぐ発見される。なぜなら、デイブはパウエルがテストをしたから。
147 【🔎】論理的帰結
149 自立性を司る回線のチェックは無理
150 サブロボット(指)の面接
150 サブロボット
- 喋ることができた
- かなり発達した頭脳を持っていたが、陽電子場を経て命令を受けるように調整されていて、個々の刺激に対する反応はどちらかというと鈍かった
- 製品番号は、DVー5ー2
151 サブロボットは、デイブが最近4度にわたり頭脳スキームから外れた行動をしたことを覚えていた
151 【🔎】スキーム
151 【🔎】諒解(りょうかい)
- 諒は了
- 本当はニュアンスは違うかも
154 ビジプレートでロボットの行動を一挙手一投足見張る、あと10日間
156 8日間でドノヴァンが見ているときに5回、パウエルのときに3回仕事をやめたが、原因不明
156 DV5号は、人間が不在で、非常事態に直面した場合に仕事をやめるので、原因追求のために、パウエルとドノヴァン自身の非常事態をわざとつくろう
- ちょっとした落盤事故を提案するパウエル
157 残りあと2日、新しい坑道をパウエルとドノヴァンは降りていき、ロボットに感知されないように気を付けて、発破をかけるロボットが見える幹道へ入り、ブラスターでロボットたちの上をわざと落盤事故を引き起こし、ロボットたちの様子を見る実験
- 自分たちの上が落盤して、閉じ込められてしまうパウエルとドノヴァン。
- パウエルが思いつき、ロボットたちが射程距離をでないうちに小さい穴から火器でサブロボット(第三ロボット)を撃って、ロボットの気をひき、トランスミッターでデイブと連絡がとれて救助を待つ二人。
167 【🔎】トランスミッター
167 パウエルの種明かし
- 問題は自律神経をつかさどる回路にあること、非常の場合におこることはわかっていた。原因としてあるひとつの特定な命令を探していたが、まちがいで、ひとつの命令ではなかった。
- 最も自立性を必要とする、非常の場合だけ発せられる命令とは、一度に6通りにはっせられなければならない命令のこと。
- 平常は、1、2本の〈指〉が厳しい監視を必要としない日課をこなしていが、緊急時には、6台のサブロボットは、即座に同時に動かさなければならなくなり、デイブはそこでおかしくなる。→自立性の必要性が減れば、または人間の応援がかけつければ、デイブは正常にもどる。→だから、パウエルはサブロボットを1台破壊すれば、命令は5通りで済み、自律性の必要性が減ればデイブは正常にもどるということ。(論理的帰結)
169 今回のことでパウエルとドノヴァンのしごとは簡単になった
- 回路を全て点検して、5通りに発せられる命令の場合は生じないで、6通りに発せられる命令の場合に加負担を生じる箇所をチェックするだけ
169 デイブとサブロボットたちの奇妙な分裂ダンスはなんだったのか?とドノヴァン
- パウエルの考察では、サブロボットはデイブの〈指〉だから、デイブが気が触れて、行進ダンスのような幕間劇がはじまると、デイブは知能低下の迷路にはまりこんで、その間指をひねくりまわしていた現象では?
*
170 スーザン・キャリヴィン
- パウエルとドノヴァンの話の語りて
- にこりともせず2人のことを語るが。話がロボットに触れると、声にあたたかみが忍びこむ。(スピーディー、キューティ、デイブ)
170 わたし
170 パウエルとドノヴァンではなく、スーザン・キャリヴィン博士にまつわるロボットがおかしくなって困った話についてさぐるわたし。
- 40年前の2021年、スーザン・キャリヴィン博士は38歳の時の思い出を思い出し、博士が頬を染める。
- ハービィは人の心を読むロボットだった。後にも先にもあんなのはあれだけ。
173 5 うそつき
- 長い白髪と小さな眼
173 ピーター・ボガード
- 数学者
- 黒い髪
173 34番目のRBモデル
- 他のはみんな正常なのに、このモデルだけ人の心が読みとる
173 ミルトン・アッシュ
- テーブルびつている第三の男
- USロボット&機械人間株式会社の最少年の技術主任
174 スーザン・キャリヴィン博士
- USロボット&機械人間株式会社の工場所属のロボット心理学者
175 問題のまとめ
- 我々は普通製品と思われる陽電子頭脳を制作したが、思考波に同調することができるという驚くべき特性を備えていた。
- なぜこのような現象が起こったのかがわかれば、ロボット工学数十年来の最も重要な進歩だ。
178 RB34号 ハービィ
175 心を読めるロボットの存在を秘密にする
- 惑星間規約が、ロボットを宇宙空間へ積み出す場合に、工場内でテストを行うことを認めると修正されてから、ロボット排斥運動はいっそう激しくなったから
- ロボットが読心力があるという事実が漏れると、利用されてしまうので、原因を把握するまで秘密にする
176 RB34号の読心力を最初に発見したのは、技術主任ミルトン・アッシュ
- オバーマンが留守にしていたので、組立て台からおろされたばかりでミルトン・アッシュのところへ回わされた。
- ミルトン・アッシュがロボットを検査室に連れて行く途中、論理的かつ明確にロボットが話しかけたが、自分が一言もしゃべらず思考しただけだったのに気づいた。RB34号は、ミルトン・アッシュの思考を覗き込み、その中から適切なものを選び出し、拾い上げていた。
179 スーザン・キャリヴィン博士がハービィに持って行った3冊の本は、『超原始理論』
- 30分で読了して、こういうテキストには興味がわかないというハービィ。人間の科学は、間に合わせの理論でこね合わせたデータの寄せ集めにすぎず、単純で読むほどでもないもの。
180 ハービィが興味があるものは、人間の小説
180 【🔎】相克
181 スーザン・キャリヴィン博士の秘めている恋愛について知っているハービィ
- 恋愛相談しはじめるスーザン・キャリヴィン博士、38歳
- 彼は35歳(ミルトン・アッシュ)
183 ミルトン・アッシュは、スーザン・キャリヴィン博士を愛していると教えてくれるハービィ
- 以前工場にミルトン・アッシュを訪ねてきた金髪美人は、彼のただのいとこだと、スーザン・キャリヴィン博士のもやもやを打ち払ってくれるハービィ
187 最近スーザン・キャリヴィン博士とよく出会うミルトン・アッシュ。
- お化粧をしているスーザン・キャリヴィン博士
187 数学者ピーター・ボガードは、ハービィに自分の出した推論を、ラニング博士が受け入れない事を相談した
- 誤りはないというハービィ。それに数学者ピーター・ボガードは優れているので、それ以上先へは進めないし、首を突っ込むのは面倒とも言った。
188 アルフレッド・ラニング博士は70に手が届く、工場をいつ辞めるか知りたいピーター・ボガードに、既に辞職していることを伝えたハービィ。しかしまだ辞令は発令されていない。ハービィの問題を解決待ちで、その後に後継者に所長の地位を譲るつもり。
- 次の所長は、ピーター・ボガード
193 【🔎】枝葉末節(しようまっせつ)
202 このロボットは人の心を読むのです
- 心に与える危害について知っているので、何か尋ねられて、尋ねた当人がこう言ってほしいと思っている返答をする。それ以外の返答では、我々が傷ついてしまうとハービィがしっている。
- ロボット工学第三条「ロボットは人間に危害を加えてをはならない。また、その危険を見過ごしてはならない。」
203 ハービィは、組み立ての工程でどが間違っていたこということまでも知っている.
- 数学者の前でこの問題が解けないといったのは、ピーター・ボガードの自尊心を傷つけないため。
211 迷子のロボット
211 スーザン・キャリヴィン博士にあったのは、ハービィの話の2日後
212 恒星間旅行の電子頭脳の開発
- スーザン・キャリヴィン博士がはじめてタッチしたのは、2029年、一人のロボットが行方不明になった
*
213 ハイバー基地で超原子力エンジン作業が停止され、該当空域に太陽系からの立ち入り禁止、政府の特別パトロール艇で、USロボット&機械人間株式会社の主任真理学者スーザン・キャリヴィン博士と数学主任研究者ピーター・ボガード博士がハイバー基地へ送られた。
214 スーザン・キャリヴィン博士
- 一度も地球をはなれたことがない地球で田舎暮らしの化粧っけのない中年
214 ピーター・ボガード博士
- 卑屈さのある生白い顔
214 カルナー陸軍少将
- 禿頭
214 ロボットが一台行方不明になったため、作業を停止している状況
215 状況説明
- 問題のロボットが報告に現れなかったので緊急事態宣言が発せられ、ハイバー基地の全機能は停止された。
- 前日、貨物船が到着して、実験室用ロボットを2台おろした。船にはよそへ運ぶ同型ロボットがあと62台。
- 行方不明のロボットがどうしても突きとめられないとなった時、貨物船のロボットを数え直すと63台になっていた
- 問題は、どれが行方不明のロボットは識別する方法がないこと
216 どれでも同じロボットなのに、識別したい理由を疑問に思うスーザン・キャリヴィン博士に、数学者ピーター・ボガード博士が観念して説明する
- ハイバー基地では、たまたまロボット工学三原則第一条が完全に刻まれない頭脳をもったロボットを少数使用していた
- 政府命令で機密だった
- 迷子のロボット
- 修正された第一条が組み込まれた
- このことを極秘にするために、製造されたすべてのネスターには、作る際にも通し番号がついておらず、ここに送られてくるときも普通のロボットたちと一緒で、彼らにも自分たちの一部が改造されている事実を、部外者にはぜったい口外せぬという厳重な歯止めが組み込められている
218 63台全部がここで働いていることを否定した。1台が嘘をついている。
- 問題の1台は先月ついたばかりで、肉眼で判別できる損傷がないので、区別できない
219 ハイバー基地がそれらの改造ロボットによってどんな利便があるのか知りたいスーザン・キャリヴィン博士
- スーザン・キャリヴィン博士だけ蚊帳の外だったから
219L3和
220L10
220 第一条を除去ではなく緩和した
222 政府は超原子力エンジンがほしい、エーテル物理学者は仕事の邪魔をしないロボットがほしい。たとえ第一条をまげることになってもと、ピーター・ボガード博士。
- 12台かぎり、しかもハイバー基地でしか使用しない。エンジンが完成した後は全部破棄する、取り扱いには充分注意する、秘密は厳守すると主張したとピーター・ボガード博士。
- 辞職すればよかったのにというスーザン・キャリヴィン博士に、政府は我社に莫大な金額を申し出たうえに、拒否すればロボット排斥法を制定すると脅したと、ピーター・ボガード博士。
- この窮地が外に漏れれば、カルナー陸軍少将や政府は打撃をこうむるが、USロボット社はそれ以上の打撃をこうむるだろう。
【💕】
223L11
223L15
224 【🔎】フランケンシュタイン・コンプレックス
224 ジェラルド・ブラック
227 最後にNS2型 ネスター10号(改造ネスター)に会った時、変わったことがあったことをジェラルド・ブラックは話した
- ちょっとした悶着があった。あの朝、ジェラルド・ブラックはキンブル・チューブを壊して、5日分の仕事がふいになったので、仕事のスケジュールがすっかり狂ったうえに、家からの便りが2週間もなかった。
- そこへNS2型 ネスター10号(改造ネスター)がやってきて、ジェラルド・ブラックがひと月前にやめた実験をもう一度やれとしつこく責めた。その問題では、彼にしょっちゅう悩まされていたので、彼にあっちへ行けと言ったら、それきり彼の姿が見えなくなった。
- あっちへ行けではなく、"消えてなくなれ"と命令したと、ジェラルド・ブラックは訂正したが、さらにひとつの長いシラブルを一気呵成(いっきかせい)に吐き出した。
229 【🔎】シラブル
230 スーザン・キャリヴィン博士が63台のロボットと面接するのに、5時間かかった。
- 録音テープの分析を勧める、ピーター・ボガード博士。
232 他のNS2型 ネスター10号(改造ネスター)たちと話し合ったピーター・ボガード博士。
- おかしいところがあるとしたら、普通より愛想がいい点
- ピーター・ボガード博士と話す時、知識があることをひけらかす
- エーテル物理学を学ぶにまのなかった新着の2台は別だが、専門的なことに関するピーター・ボガード博士の無知さをうれしそうに笑うロボットたち。
232 ・・・プラナー反応をこころみては
232 【🔎】プラナー反応
236 ワレンスキイ
- 放射線ビル2号棟の3階の円天井の下に、大きな円陣をつくって立ち並ぶ木製の仕切りの建設作業の作業員のひとり
- 取り付けを命じられた63個の光電管をあからさまに不審がっていて、ジェラルド・ブラックにわけを尋ねた人物
238 実験:男を座らせていて、重りが男の上に落ちてくる。あわやの瞬間にエネルギー・ビームが出て重りが横に飛ぶ。
- 63の仕切りの中で、それを見守っていたNS2型ロボットは飛び出すのを10回。
- 明らかに危険にさらされている人間にとびかかっていく衝動は、ロボット工学でいう強制反応を観察する。同じことを繰り返せば、3、4回目には助かることがわかったとしても、第一条が飛び出させる。NS2型 ネスター10号(改造ネスター)をあぶり出せると思ったが失敗した。
カルナー陸軍少将
- USロボット社の代表と最初の夕食をともにしてから、制服をきちんと着用したことがない
- ブルー・グレイのワイシャツの襟をはだけ、黒いネクタイはほどけていた
ピーター・ボガード博士
- いまだにきちんとした服装
241 ハイバー基地へ来てから5日経過
214 スーザン・キャリヴィン博士の主張
- NS2型 ネスター10号(改造ネスター)は、私たちの手から逃げ回っている。こうした状況はきっと彼のふくれあがった優越感を満足させるに違いない。彼の動機は、単に命令に従うことではなく、人間の裏をかくことに偏執狂的な欲求をもちはじめた気がする。極めて危険な、不健全な状況。
- NS2型 ネスター10号(改造ネスター)は、明らかに我々のしていることに気づいている。実験の意図を知っていて、故意に偽って人間を助けようとする反応をして見せた。
242 実験:今度はNS2型 ネスター10号(改造ネスター)に偽りの行動がとれないように、ネスター型を感電死させる高圧線を、飛び越えられないくらいたくさん、実験材料とロボットの間におく。そして、ロボットには事前に、電線に触れることは死を意味することをちゃんと知らせておく。実際には重量が加えられたとたんに電流を遮蔽するリレーをセットしておくので、200万ドル相当のロボットは破損しない。
- スーザン・キャリヴィン博士の考察:こういう状況ではNS2型 ネスター10号(改造ネスター)は、椅子に腰かけたままでいなければならない。彼に対して、電線に触れて死ねと命令を下すことはできるが、なぜなら服従を命ずる第二条は、自己防衛を命ずる第三条に優先するから。しかし彼に命令ではなく、単に自身の意志にまかせるため、他のロボットは、人間の安全が優先する第一条によって、たとえ命令がなくとも飛び出す。ところがNS2型 ネスター10号(改造ネスター)は、第一条が完全に刻みこまれておらず、またこれについてはなんの命令も受けてはいないわけだから、自己防衛という第三条がすべてに優先せるから、彼は腰をおろしたままでいるほかない。それは彼にとって強制された行動といえるから。
244 実験失敗:63台のロボットは椅子に静かに腰をかけたまま、目の前の危険にさらされた人間をしかつめらしく見つめていた。一台も動かなかった。
244 28号
- 実験失敗のあとのスーザン・キャリヴィン博士の面接
- まだ番号をもらっていないが、この部屋の外の行列では28番目
244 人間を助けようとしなかったNS2型 ネスター28号の弁明
- 人間が死ぬか、あるいは人間も28号も死ぬか、どちらを選ぶかという問題で、主人を救うことは不可能だったので、主人は死んだと思ってもいい。その場合、わたしが無益な死を選ぶことは考えられない。命令もされていないのに。
- スーザン・キャリヴィン博士は同様の答えを27回もらっていた。
- この答えはゆうべみんなで話し合って、仲間のひとりがそれを考え付いて、もっともだと思った。それは誰だかわからない。仲間のひとり。
247 ハイバー基地へ来てから1週間
248 スーザン・キャリヴィン博士は63台のロボットを一台ずつ隔離することを、カルナー陸軍少将に進言、できなければ即座に63台のロボットの破壊を要求する
250 ジェラルド・ブラックからの報告で、貨物船のCコンパーメントの錠をいじった形跡がある。
- ごく新しいかき傷がついている
- Cコンパーメントは、ロボットたちの入っている部屋
- 中から
- 発見したのがジェラルド・ブラック
- ロビンズとマカダムズをおいてきた
253 NS2型 ネスターになぜ最初からエーテル物理学を学ばしていないのか
- カルナー陸軍少将の説明:極秘事項のひとつで、仮にエーテル物理学の知識を持った特殊なモデルを製造して、そのうち12台を使い、残りをほかの無関係の分野に配属したりすれば、疑惑が生じるかもしれないと考えたから。ノーマルなネスターと一緒に働いている人間は、なぜ彼らがエーテル物理学の知識をもっているのかと不思議に思うかもしれないから。そこで、彼らはエーテル物理学の分野でトレーニングを受けうる能力だけを刻み込まれた。
254 3度目の実験:面接の説明後、一人の人間が危険にさらされることになっている。NS2型 ネスターは説明を聞いて部屋を出た後、割り当てられた仕切りに連れていかれるから、そこで用意ができるまで静かに待つこと。人間が危害をこうむりそうならロボットは当然救おうとする。しかしその人間とロボットの間にはガンマ線がある。この放射線はロボットの頭脳を破壊してしまい、たちどころに殺してしまうことも伝える。ロボット自身と人間の間にガンマ線を認めたら、その場に座っていてもいいと忠告しておく。しかし危険な放射線がなかったら助けることと話しておく。
- スーザン・キャリヴィン博士自身が、実験の椅子に座る
254 NS2型 ネスター14号
- 意気消沈のスーザン・キャリヴィン博士のかわりに、ピーター・ボガード博士が面接して、ロボットに実験の説明をする
259 実験結果:1台のロボットが二歩あるいた。
【💕】
260L4
261L1
216 土壇場でNS2型 ネスター10号(改造ネスター)が、スーザン・キャリヴィン博士に襲い掛かっている事に気が付いて、ジェラルド・ブラックがガンマ線を5秒間照射したから、ロボットは壊れた
262 2週間後に、スーザン・キャリヴィン博士とピーター・ボガード博士は、カルナー少将と会見をしたあと、ハイパー基地の作業は再開した。62台の正常なNS2型ロボットを積んだ貨物船は、2週間後の遅延を説明する政府側の一方的な話を押し付けられて目的地へ出発した。
262 スーザン・キャリヴィン博士とピーター・ボガード博士の帰宅
263 種明かし:NS2型 ネスター10号(改造ネスター)が抱いていた優越感は徐々にふくれあがっていき、彼は自分や仲間達の方が人間より知識があると考えることが、彼にとって極めて重要になった。そのことを我々は前もって知っていたので、それぞれのロボットに前もって、ガンマ線はロボットを破壊するぞと警告し、そのガンマ線が彼らとスーザン・キャリヴィン博士の間に存在すると警告した。
- 当然、彼らは前回のNS2型 ネスター10号(改造ネスター)の理論に従い、無駄死にを避けるため、自分の席から動かなかった。
- 実は、スーザン・キャリヴィン博士とロボットの間に照射されたのは実はガンマ線ではなく、無害な熱線の赤外線だった。NS2型 ネスター10号(改造ネスター)は、それが赤外線で無害であると知っていたから、飛び出した。ほかの連中も、第一条の命ずる強制衝動によって飛び出すと思っていた。しかし、ノーマルなNS2型ロボットは放射線を見分けることはできても、種類を識別することができない。
- NS2型 ネスター10号(改造ネスター)は、ハイパー基地で愚かな人間たちから受けた教育のおかげで、波長を識別できた。その事実は屈辱的だったので、ほんの一瞬思い出せなかった。ロボットとスーザン・キャリヴィン博士の間は、私たちが言い聞かせたとおり、ロボットの死をもたらす空間だった。NS2型 ネスター10号(改造ネスター)だけが、私たちが嘘をついていることを知っていた。
<NS2型 ネスター10号(改造ネスター)は、ちょっとフィリップ・K・ディップの「アンドロイドは電気未の夢をみるか」のレプリカント、ネクサスを彷彿とさせました。
265 7 逃避
265 スーザン・キャリヴィン博士がハイバー基地から戻る
- 老人は自分の年を明かしたことがないが、すでに75歳の坂を越えていた
- 頭脳は明晰
266 ロバートスン
- USロボット社&機械人間株式会社の現社長
- 初代社長の息子
266 営業部長
- ロバートスンをチーフと呼ぶ
266 合同ロボット社
- 計算マシンをもっているライバル企業
266 1ヵ月前に合同ロボット社が持ち込んだ奇妙な申し入れ
- 数字や方程式を5トン持ち込んできて。答えをUSロボット社&機械人間株式会社に出してほしいという取引
- 解答は得られないが、失われたファクターを指摘できた場合は、10万ドル、解答が得られた場合は、20万ドル。それにプラス必要機械の製作費、プラスそれによって得られる収益の四分の一の条件。
- 問題は、星間航行用エンジンの開発にからむこと
エイヴ・レヴァ
- 不精ひげの生えた顎
267 合同ロボット社は、思考マシンを確かに持っていたが、壊れてしまった。
- エイヴ・レヴァの推測:壊れた理由はわからないが、彼らは思考マシンに、我が社に持ち込んだのと同じデーターにもとづいて星間用エンジンを作れと命じたが、それが彼のマシンを駄目にした。
267 スペース=ワープ・エンジンの研究
- USロボット社&機械人間株式会社と合同ロボット社は、すぐれたロボット頭脳のおかげで、業界トップにたっていたのが、合同ロボット社がマシンがスクラップになったのなら、USロボット社&機械人間株式会社は、業界独走となる。
267 合同ロボット社の動機を考察する営業部長
- 新しいマシン建造には、少なくとも6年かかるから、我が社のブレーンに同じ問題を提出して壊してしまわないと、USロボット社&機械人間株式会社の独走を許したままになるからでは?
268 アルフレッド・ラニング博士は、はるかに給料のいい営業課や販売課の態度を侮蔑している
- 現在の物理理論のもとでは、恒星間旅行の問題は、未知数。
- 合同ロボット社が、彼らの思考マシンに与えたデータを、我が社のデーターと同じデーターと仮定して、未解決な問題がある。
- 数学局が、合同ロボット社のデーターを徹底的に分析したが、すべて網羅しているように思われる。付託された資料はフランシアッチの空間ひずみ(スペース・ワープ)理論のすでに知られる全ての展開、関連した天体物理学と電子工学のあらゆるデータを網羅していた
269 問題点:ブレーンの能力に限界はないが、問題はロボット工学三原則にある。
- 人間に危険を及ぼす解答を教えることもできないし、答える拒否もできないジレンマに遭遇する。同じことが、合同ロボット社のマシンに発生したのではないかと思われる。
269 ブレーン
- USロボット社&機械人間株式会社の思考マシン
- ブレーンは、結局はロボットに過ぎないからロボット三原則にしばられている
- 幼児の個性がある
270 スーザン・キャリヴィン博士のロボット心理学からの意見
- ロボット陽電子頭脳は、人間の価値にしたがって作られたものだから、不可能に直面した人間は、現実から逃避する。現状に直面することを拒否するか、あるいは直面できないかのどちらかに。ロボットも同じ。
- 軽いジレンマでもリレーの半分を痛めるし、ひどいものだと、陽電子回路はことごとく修理不能に焼かれる。
- 合同ロボット社の資料には、禁じられた問題が含まれている
270 合同ロボット社のマシンとUSロボット社&機械人間株式会社のブレーンとの違い
- 合同ロボット社のマシンには、個性が与えられていない、機能主義なもの=規模の大きな計算機
- USロボット社&機械人間株式会社のブレーンには、感情回路にUSロボット社のパテントがある=個性がある(幼児の個性)で、白痴天才に似ている
271 【🔎】白痴天才
237 ブレーン
- 直系2フィートの球体
- 内部は完全に調整された気体ヘリウム満たされ、完全に無震動で、放射線から防御されている空間。その中に、古今未曾有の複雑きまわりない陽電子の細かい回路がおさまっていた。
- 部家にはブレーンと外界とを結ぶ媒体である声、腕、感覚器官などの補助装置がぎっしり並んでいる。
247 ブレーンに合同ロボット社のデータを分割して、少しずつ与え、人間に危害があるだけでなく、死を意味するものがでてきても、気にしないから、そこで止めて、データー用紙をもどしなさいと助言するスーザン・キャリヴィン博士
- 分厚い数理物理学の書物の17冊分に匹敵するデータがブレーンに与えられた
275 ブレーンの解答:できますよ、宇宙船を建造しましょう。簡単です。たぶん2か月はかかります。
- ジレンマも逃避もない、何の問題もなく解答したことが、問題。
277 マイケル・ドノヴァン
277 グレゴリー・パウエル
279 作業用ロボットが動かなくなったので、船が出来上がった。マイケル・ドノヴァンとグレゴリー・パウエルはエンジン理論に詳しいから呼ばれた。
- ライセンスを持っている2人だが、超原子力エンジンやワープ航法は含まれていない。三次元航法だけ。
279 宇宙船の船内を見学するマイケル・ドノヴァンとグレゴリー・パウエル
- この船は飛べないと、グレゴリー・パウエル:なぜなら、操縦室はあるが、舷窓(げんそう)ひとつとパーセクと書いてある計器1個、操縦装置がない、エンジンがないから。
279 【🔎】舷窓(げんそう)
282 宇宙船から戻ろうと、エアロックに通じる短い通路は、ロックされて閉じ込められる2人
- 舷窓(げんそう)から外にいるやつの注意をひこうともどると、舷窓(げんそう)からは、宇宙だった
283 2か月間、スーザン・キャリヴィン博士はブレーンに質問を続けてきた
- ブレーンの反応は正常ではなく、解答も奇妙なもの。
- どこがおかしいか突き止めるまで用心に用心を重ねる。些細な質問と言葉が、ブレーンを駄目にすかもしれないから。
284 半時間前に2人の実施テスト担当者をのせたまま、宇宙船がいなくなった
- ブレーンが、船のテストをする人間がふたり乗り込んだし、船の準備は完了していたので発進させた。
- 無線で連絡はとれる、ブレーンの遠隔操作
- ブレーンには、乗せた人間が死ぬ可能性があることなどを感ずかせないように注意するスーザン・キャリヴィン
291 受信装置だけの無線が呼びかける声が聞こえなくなってから、2人はあらためて宇宙船を散策した
- 水道があるが、シャワーがない
- 食べ物発見:レッテルのない缶詰がぎっしりつまっている
- 棚の下半分は冷蔵庫
- 豆とミルクの食事
- グレゴリー・パウエルが、「前にはなかった」と言った
293 〈パーセク〉と示された計器
- 数字は100万で終わっていた
- 指針はいぜん0を指していた
294 アルフレッド・ラニング博士は2人が応答しないことを告げた
- 2人には聞こえていると、ブレーンは言うが、詳しく話そうとしないし、さらに詳しくたずねようとずると、不機嫌になる。不機嫌なロボットなどきいたことがない。
294 スーザン・キャリヴィン博士がブレーンと話してわかったこと
- ブレーンは、自分が船を操縦していることを認めた
- 2人の安全については、まったく楽観的
- 詳細は何も教えてくれないし、スーザン・キャリヴィン博士もあえて追求してない
- 不安の源は、星間ジャンプにあるらしい。その問題を持ち出すとブレーンはなんと笑う。
- つまりこの異常性は、ヒステリー症状。それで話をすぐそらしたスーザン・キャリヴィン博士
- ブレーンが正常にもどれば、船をもどしてくれるだろう
205 2時間後、ピーター・ボガード博士の星間ジャンプにつての報告
- 星間ジャンプは瞬時ではなをく、光の速度が有限であるかぎり。その間生命は存在しえない。物質とエネルギーは空間のひずみ(スペース・ワープ)の中では存在しえない。それがどういうものか、ピーター・ボガード博士にもわからないが、合同ロボット社のロボットを壊した原因はこれ。
296 まだ5日 マイケル・ドノヴァンとグレゴリー・パウエル
- ライトが明るくなってからというもの2人はおかしな気分
- 震動をかんじる:星間ジャンプの準備かも
299 2人の死
- 棺桶のこと、女達が歌う声、地獄へ入るために並ぶ行列、地獄の業火についての説教
302 舷窓(げんそう)から射し込む弱々しく青白い陽光、わが太陽ではなかった
- 計器の針が、30万パーセクと記されていた:マイケル・ドノヴァンとグレゴリー・パウエルは、銀河系を飛び出したということ
- 2人は銀河系を飛び出した最初の人間になった
303 戻るとき、もう一度死ななくてはならない不安
- 303 6時間、スーザン・キャリヴィン博士は根気よくブレーンと話していた
305 船は飛び立ったときと同じようにひそやかに地球に帰って来た
- 二人はシャワー室を求めた
311 8 証拠
311 スーザン・キャリヴィン博士が生まれた時は、最後の世界大戦を切り抜けた年だった
- 史上最悪の時期
- 国家主義終焉の時:国家が統合して地区というものに生まれ変わった
- スーザン・キャリヴィン博士が生まれたときは、アメリカ合衆国は一国家で、今のように北部地区のわずかな一部ではなかったし、会社の名前も合衆国(ユナイテッド・ステーツ)ロボットだった。
312 国家から地区への変革
- 経済を安定させ、今世紀を前世紀と比較するとき、黄金時代ともいえる繁栄をもたらした
- それはマシン(ロボット)によってもたらされたもの。ブレーンの最初のマシーン。
312 スティーヴン・バイアリイ
- 去年亡くなった
- 2032年公職についた市長選
*
313 フランシス・クイン
- 新しいタイプの政治家
- フランシス・クインは、立候補もせず、票集めに奔走するでもなく、演説も行わず、投票箱を詰め込みもしなかったという事実
【🔎】
313L1
313L5
313L7ナポレオン~
313L10
313 【🔎】アウステルリッツ
- フランシス・クインに協力者として求められていた
- たけだけしい白い眉がおおいかぶさる眼には落ち前の性急さがぴりぴりとあらわれている
313 スティーヴン・バイアリイ
- フランシス・クインが気にしている立候補者
- 次期市長、今は一介の法律家
- 3年前までは、無名の人間だった
- 革新政治家
- 小さな町で平穏な生活、大学教育、早死にした妻、重傷を負った自動車事故、法科大学院、首都にでて検事。
315 フランシス・クインは昨年、革新政治家たちの過去の生活で、スティーヴン・バイアリイを調査した
- スティーヴン・バイアリイは、特筆する点がなかったが、この地方検事は物をたべたことがない(誰も見たことがない)
- あらえる水分を飲むこともなく、眠っているところを見た者もいない
317 スティーヴン・バイアリイがロボットではないか、アルフレッド・ラニング博士の会社で調査してほしいと、フランシス・クインは申し出た
- スティーヴン・バイアリイがロボットと公表されれば、人間居住区におけるロボット使用を禁ずる厳重な法規をそむいたことになる
- USロボット社&機械人間株式会社は、太陽系における陽電子ロボットの唯一の製造業者だから、もし、スティーヴン・バイアリイがロボットだとすると、当然彼は陽電子ロボットで、陽電子ロボットは、賃貸契約があって、売却されるものではないということ、つまり会社は、各ロボットの所有者であり、監督者である。各ロボットの行動には責任が伴なうから。
- だが、USロボット社&機械人間株式会社は、ヒューマン型ロボットを生産していない。だが、作ることはできる。
320 スティーヴン・バイアリイの顔は、なかなか描写しにくい顔
- 出生証明書によれば、40歳、外見も40歳
320 アルフレッド・ラニング博士は、スティーヴン・バイアリイがロボットであるか確かめに会いに行った
325 スーザン・キャリヴィン博士
- ロボ心理学者
326 スーザン・キャリヴィン博士から手渡されたりんごをスティーヴン・バイアリイが、自らすすんでかじってみせた
326 スティーヴン・バイアリイがロボットではなく、人間だという証明にはならないとスーザン・キャリヴィン博士。
- ヒューマノイド・ロボットならば、人間の完璧なイミテーションだから、食べたり、排せつしたりする機能は非常時用に使うようについているだろうから。
329 車椅子のジョン
- 体の不自由なその人の声は、耳ざわりなしゃがれ声が片側に永久にひきゆがんでしまった口から洩れる
- その口は半分は瘢痕組織になってしまった顔の意地悪い目のように見えた
- スティーヴン・バイアリイが大切にしている人
329 【🔎】瘢痕(はんこん)
332 スティーヴン・バイアリイがロボットであることを証明する方法はたった2つしかない。フランシス・クインのは状況証拠を示しているだけで、告発はできても、立証することはできない。
- 証明1:肉体的には彼を分解するか、X線を使用すればいい
- 証明2:心理学的には、彼の行動を調べればいい。彼が陽電子ロボットだとすれば、ロボット工学三原則に従うはず。陽電子ロボットは、この原則なしには作る事ができないから→これは立証にはならない。もしバイアリイが極めて善良な人間の可能性もあるから。
334 ロボット工学三原則があるかぎり、地方検事の仕事をするのは無理だと思いついた、アルフレッド・ラニング博士。
- 人間に処刑の判決をあたえなければならないから
334 しかしフランシス・クインは反論:地方検事であることが人間であることの証明にならない理由
- スティーヴン・バイアリイの裁判記録は、彼は無実の人間をぜったいに訴追しなかったというのが自慢。
- 被告にたいする反論が満足すべきものでないという理由で未審理になっているものがたくさんある
- 彼が、陪審員を説得して、彼らを原子に還元させてしまえる場合もしない。
335 ロボットは人間に危害を加えてはならない、卑劣な奴にも、天使のうような人にも、といいわけをするアルフレッド・ラニング博士に、スーザン・キャリヴィン博士は否定する
- もしロボットが、人の家に放火しようとしている狂人に出会ったとしたらどうするか。→ロボットは、狂人を止める
- ロボットは狂人を止める唯一の方法が、殺すことだとしたら?→ロボットは狂人を殺さないように最善をつくすだろう。もし、狂人が死ねば、ロボットは精神療法が必要となるから。与えられた矛盾に、たちまち気が変になるかもしれないから。(より高尚な見地から、第一条を守るために第一条を破ったという矛盾)
- バイアリイは狂人なのか?というアルフレッド・ラニング博士の皮肉に、彼は自分の手で人間を殺したことがない。彼は単に、ある特定の人間が、わたしたちが社会と呼ぶほかの大多数の人間の集団にとって、危険な存在であるという事実を暴露してきた。彼は大多数の人間を守っている、このように彼は最大限に第一条を固守している。死刑か懲役か下すのは判事、罪人を収監するのは看守、殺すのは死刑執行人であって、バイアリイ氏は、何が真実かを見きわめ、社会に寄与する以外なにごとも行っていない。
336 スーザン・キャリヴィン博士がくまなくスティーヴン・バイアリイを調査した結果
- スティーヴン・バイアリイは陪審員に対する最終諭告において、死刑の求刑をしたことは一度もない。
- 極刑の廃止を提唱
- 犯罪生理学を扱う研究機関に莫大な寄付をしている
- 明らかに、犯罪は罰するものというよりは、矯正するものと暗示的に信じている
- 以上ような彼がとっている行動は、ロボットか、人格高潔な人間のみ。ロボットと完全無欠な人間を見分けるのは不可能。
307 ヒューマノイド・ロボット
- USロボット社&機械人間株式会社で試作されたことがある:ただし、陽電子頭脳はつかわずに、人間の卵子とホルモン・コントロールによって、人間の皮膚と肉を、多孔質のシリコン・プラスチックの骨格の上に生育させることができるが、外観上の識別はまったく不可能になる。眼も髪も皮膚も人間のものであるが、人間そっくりというわけでない。それに陽電子頭脳や、体内に必要ないくつもの装置を取り付けるとヒューマノイド・ロボットができあがる。
- あらゆる装備、電子頭脳、骨格、卵子、適当なホルモンと放射エネルギーがそろっていれば、2か月で出来上がる
338 フランシス・クインの告発のゆくえ
- 多くのひとが真意を迷って、混乱がおこった
- "ロボ心理および陽電子頭脳工学に関する世界的権威"スーザン・キャリヴィン博士との長いインタビューの要約が掲載され、根本主義者たちがさわぐ
- 根本主義者は、ロボットやロボット・メーカーたちを憎み、USロボット社&機械人間株式会社は武装した守衛が群がって、さながらハチの巣のようになった。会社は戦闘態勢を整えていた
- 市内のスティーヴン・バイアリイの邸宅は、警官によって包囲され守られた。厳重な警戒陣の向こうに新聞記者やカメラマンが待っていた。
339 根本主義者
- 彼らは、政党ではなく、公認された宗教を装いもしなかった。
- 本質的には、かつて原子力が目新しかっころ、原子力時代とかつて呼ばれてたものに順応しようとしなかった人間たち。
- ロボットやロボット・メーカーを憎んだ
340 ハロウェイ
- こうるさい小男
- スティーヴン・バイアリイに建物内を捜査する権限を与えた法廷命令書を持ってきた人
341 ミセス・ホップン
342 ハロウェイは、スティーヴン・バイアリイ自身の調査をするように命令されてきていた
344 フランシス・クインとスティーヴン・バイアリイは会ったことはないが、テレビ電話で話した。かけてきたのはフランシス・クイン。
346 建物内を捜査した先日、身体障碍者が一人足りなかった件
- スティーヴン・バイアリイの恩師でいっしょに暮らしている
- 現在は田舎に静養へ行って、2か月ほどになる
- 不自由な身になる前は、法律家の恩師。現在は生物物理学研究院としての国家資格をもっており、自分の研究室をもち、彼の研究はしかるべき権威筋に登録されている
347 フランシス・クインは、体の不自由な恩師こそ、本物のスティーヴン・バイアリイで、あんたは彼が作ったロボットだと予想している。自動車事故に遭ったのは体の不自由な恩師のほうだと。
349 恩師ジョンを選挙の一週間前に連れ戻し、別の場所にかくまうスティーヴン・バイアリイ。
- 事態が悪化した場合のための処置
- 根本主義者たちの動きが不穏
350 レントン
- 選挙運動ともいえぬ選挙運動で、バイアリイの占拠事務局長というまったくありがたくない役目を引き受けている
- 5万人の根本主義者の前でバルコニーで生演説をするというスーザン・キャリヴィンを止めようとしていた
352 演説の時に、群衆の前列でもみあいをし、前に出て来た市民
- ひょろ長い手足に、つんつるてんの服を着た、目玉の飛び出たやせぎすの市民
- スティーヴン・バイアリイに会って、自分を殴ってみろと要求する男。ロボットだから殴れないと主張する
353 スティーヴン・バイアリイは、市民の男を撲って見せた
354 スティーヴン・バイアリイは市長に当選、その後のスーザン・キャリヴィン博士との会見
- 真相:フランシス・クインのドラマチックな仮説「スティーヴン・バイアリイは若き法律家であり、聞く人を動かす弁舌家であり、生物物理学にも若干の造詣があった。」→しかし当選したスティーヴン・バイアリイはロボット工学の関心は、法律にしかない。だが、"この"スティーヴン・バイアリイは、ロボット工学に関心があった。ところが事故でバイアリイの奥さんは死に、彼自身は、両脚を失い、顔を失い、声を失った。世間から引退し、法律家としての生涯が終わった。それからいかなる方法でか、彼は陽電子頭脳を手に入れた。これまで開発されたものの中でもっとも高度なロボットぼ機能のもの。彼はそれをもとに肉体を作って、スティーヴン・バイアリイとして教育して、世の中に送り出した。自分は年老いた、肢体不自由な恩師として人目に触れぬようにした。
- ロボット・スティーヴン・バイアリイが、人間を撲れた理由:ロボット・スティーヴン・バイアリイの身内の者が、彼が人を撲ったことがないという事実をひそかに広めた。人に挑発されても人を撲れない=ロボットという証拠になるであると。そして、ロボット・スティーヴン・バイアリイは、公衆の前でばかげた演説をする手配をして、手をかえ品をかえ誇大な宣伝をした。ある馬鹿者がそれにひっかかった。(スティーヴン・バイアリイは自分が人間として打ち明けている)
356 ・・・いわゆる三百代言の使う手ですが、・・・
365 【🔎】三百代言
375 ・・・助言者がいるでしょう。人間の頭脳だって、助力なしに、支配することは不可能・・・
375 スーザン・キャリヴィン博士が、フランシス・クインの見落としたことに、笑う。
- 選挙前の3か月間、"この"スティーヴン・バイアリイ(大怪我の男)は、不可解な理由で田舎に行っていたが、あなたの演説に間に合うように戻って来た。人間・スティーヴン・バイアリイは、2度目のロボットを作ってきた。
- ロボットが、ロボット工学三原則を破らずに、人間を撲れる場合があるのは、撲られる側が、ロボットに過ぎない場合。
- スーザン・キャリヴィン博士は、ロボット・スティーヴン・バイアリイが、人間ではないことを見抜いていて、記者に嘘のコメントをしたのだった。
*
358 本当の話かと疑う記者に、スーザン・キャリヴィン博士は、本当だと断言した。
- それを突き止める方法は、ロボット・スティーヴン・バイアリイが死のうと決意した時、自らの体を原子に還元してしまったので、二度と法律的に適正な証拠はあらわれない。
- 彼は立派な市長で、5年後には、地区の統監になった。(スーザン・キャリヴィン博士が望んだとおり)
- 2044年、地球地区が連邦政府を結成すると、彼は初代の世界統監になった。(その頃、世界をうごかしていたのはどっちみちマシンだった)
- マシンはロボットで、彼らが世界を動かしている。スーザン・キャリヴィン博士が真実を見極めたいのは、2052年。スティーヴン・バイアリイが、世界統監の二期目を勤め上げた時だった・・・。
361 9 厄災のとき
361 ロボット・スティーヴン・バイアリイの世界統監の部屋で、スーザン・キャリヴィン博士がとの再会
- 一方ではまったく取るに足らない問題だが、見方を変えれば人類の終末を意味する問題化もしれないことの相談
- 需要供給の完璧なシステムにおけるこうした小さな不均衡が、最終戦争への第一歩であるかもしれない
363 ヴィンセント・シルヴァー
- USロボット社&機械人間株式会社の研究所所長
364 スーザン・キャリヴィン博士
- くつろごうとはしない、唇のうすい、ひややかな面と、落ち着きはらった抑揚のない声は、年とともにいっそう際立っていた
- ロボット・スティーヴン・バイアリイにとっては、彼女が好意と信頼を寄せることのできる唯一の人間
- 70歳に手が届く年
364L7
367L13
364L14
365L1
365L2
365L5
365L6
365L11
365L12
365L17
366 20世紀の戦争について
366L6
366L12
366 陽電子ロボット登場について
366L13
366L16
367 マシンの登場による変化
367L9
368L6
368 マシンの些細な不調
- 鉄鋼や水耕農場などに
- 起こるはずのない過誤:マシンは誤りはみずから正すから、リレーの回路に誤りがあること自体が自然のきほん法則に反することだと、ヴィンセント・シルヴァーが言った。
- それで、ヴィンセント・シルヴァーに、ロボット・スティーヴン・バイアリイは、調査を依頼したが、人間には手に負えないという答えだった。
369 USロボット社&機械人間株式会社の前所長、アルフレッド・ラニング博士やピーター・ボガード博士は死んでしまった。
370 実際にマシンに訊いてみたら、"本件は解明をゆるさない"と答えた
- 解釈1:マシンに解答を引き出すだけの充分なデーターを与えなかったのではないか・→ヴィンセント・シルヴァーも考えられないと同意した。
- 解釈2:人間に危害をおよぼす可能性があるデーターに解答をあたえられるとマシンが認めることはありえないということ。→ロボット工学三原則の第一条。それでヴィンセント・シルヴァー所長は、スーザン・キャリヴィン博士に会うことをすすめた。
371 ロボット・スティーヴン・バイアリイの仮説
- マシンが誤った答えを出している。彼らは誤ることはありえないとすると、→彼らは誤ったデーターを与えられている=つまり問題は人間側にあり、ロボット側にない。
372 ロボット・スティーヴン・バイアリイは、惑星全体の視察旅行にでかけ、今ニューヨークに戻って来たばかり。
- マシンは全部で4基あり、それぞれが惑星の各地区を担当している。
- そして、4基とも全部が、不完全な結果を招来している。
- →スーザン・キャリヴィン博士がのべた理由:マシンのどの一基に欠陥があっても、それは自動的に他の三基影響してくる。それは、三基はそれぞれ、彼ら自身の決定の基礎となる条件の一部として、不完全な四基目のマシンが完全であると前提しているから。(仮定が誤っていれば、彼らは誤った答えを出す)
372 〈人間同盟〉
373 東方地区
- 面積:750万平方マイル
- 人工:17億5千万
- 首都:上海
373 チン・ソウリン
- チン・ソウリンの曾祖父は旧中華民国に日本が侵略した際に殺されたが、親孝行な子供たちのほかには、彼の死を悼む者もいなければ、その死を知る者さえいなかった。
- チン・ソウリンの祖父は、40年代後半の内乱に生き残ったが、親孝行な子供達のほかには、その事実を知る者も、気にかける者もいないかった。
- チン・ソウリンは、地球の全人工を占める人々の経済的副詞をその手に委ねられている地区統監。
374 チン・ソウリンのオフィスの2枚の地図の装飾
- 装飾1:1.2エーカーほどの土地を手書きの線で描いたもので、もはや時代遅れとなった古い中国の文字が書き込まれている。川とみすぼらしい小屋がいくつか描きこまれていて、そのひとつがチン・ソウリンの祖父の生家だった
- 装飾2:鮮明に描かれた大きいもので、見事なキリル文字が書き込まれていた。東方地区を示す赤い境界線は、かつての中国、インド、ビルマ、インドシナ、インドネシアだった広大な領域を取り囲んでうねうねと伸びている。その中の四川省地方に、チン・ソウリンのの農場のあった土地であることを示す記号が、チン・ソウリンの手によって、誰にも見えぬくらい薄く密やかに書き込まれていた。
374 チン・ソウリンは、自分の仕事は閑職(かんしょく)で、ある社会的地位をともない、行政上の便宜的中心を代表しているが、本当の中心はマシンだと、ロボット・スティーヴン・バイアリイに話した。
374 【🔎】閑職(かんしょく)
375 天津(テンシン)では、失業問題がおこっている。生産過剰ということがありうるだろうか?アジアが、食糧過多で悩むなどとは矛盾していると、ロボット・スティーヴン・バイアリイ。
- チン・ソウリンは、過去数か月にわたり、天津(テンシン)で水耕槽のいくつかが操業を停止したのは事実だが、たいしたことはない。
- 従業員ははんの一時解雇され、ほかの農場で働いてもかまわないという連中は、セイロンのコロンボへ運ばれた。そこで新しい水耕農場が操業を開始しようとしている。
375 天津(テンシン)の水耕農業の操業を停止する理由
- 予期しないことではなかった。ロボット・スティーヴン・バイアリイは北方人だから、北方では土壌農場が、まだ収益をあげているから詳しくないかも。
- 北方人は、水耕農場を思いうかべるとき、化学溶液でカブを育てる装置を考えたりするが、実際そうだが、はかりしれないほど複雑な方法が使われいぇいる。
- 第一に、扱う最大量の作物は酵母で、すでに2千種以上の変種が作られ、毎月新種が加えられる。
- 17億5千万の人間を養う水耕農業をを成功させるため、東部の広大な地域に森林再生計画をおしすすめなければならいし、南方のジャングルを処理するための巨大な木材加工場をつくらなければならない。とりわけ、動力、鋼鉄、合成化学産業が必要となる。
- 2千種の変種酵母を作った。今日ロボット・スティーヴン・バイアリイがビフテキも、実は酵母で、シャーベットも冷凍酵母。ミルクの味、外見、栄養価をもった酵母ジュースも作った。
- 酵母を一般的に普及させるためには。味が大切。味を良くするため様々な工夫が必要。
- われわれは酵母のために色々と変化に富んだ食品を用意しなければならないし、時として変わる流行の複雑な要因を考えなければならない。新たな需要と新たな人気に答える新種開発という複雑な要因を予見されねばならず、マシンがその仕事を行う。→完璧ではないが、不完全ともいえない。
377 完璧ではないが、不完全ともいえない理由
- 天津(テンシン)では、数千人の労働者が一時的に仕事を失ったが、過去1年分の余剰領は、(余剰、つまり供給の失調、あるいは需要の失調による)われわれの全生産高の0.1%にも満たないもの。←マシンを使いはじめた最初の年は、0.001%にほぼ近かった。
- しかしマシンを本気で活動をはじめて10年間、われわれはマシンを利用して酵母産業をマシン以前の20倍に増大させた。仕事が複雑になれば、不完全なところも増す。
378 チン・ソウリンが、ロボット・スティーヴン・バイアリイに話すラマ・ヴラサヤナの奇妙な例
378 ラマ・ヴラサヤナ
- ヨウ素を生産する塩水蒸発プラントを預かっている男
- 酵素はヨードなしでもいいが、人間にはなくてはならぬものなので、彼のプラントはやむなく管財人の管理下に置かれるようになった。
- 原因は、競争。:一般にマシンの分析の主たる働きのひとつは、われわれ生産部門の効率的な分配。→事業所が足りないという地域が出るというのは明らかに誤算。事業所が少ないと、間接費にしめる輸送量の割合が非常に大きくなる。事業所が多く置きすぎるのも誤算。事業所が多いと、工場は生産能力をおとして操業しなければならないか、もしくは、互いに過当な競争をしなければならいのどちらか。
- ラマ・ヴラサヤナの場合は、別のプラントが同じ市内に建設され、しかもはるかに効率的な抽出システムを持っていた。←マシンはこれを許したことは驚くことではない。驚くべきは、マシンがラマ・ヴラサヤナにシステムを刷新せよ、もしくは合併せよと警告しなかったこと。
- ラマ・ヴラサヤナは、新しいプラントでエンジニアとして働くことを受け入れ、責任や収入は前より減っても、ちっとも悩んでいない。従業員たちも他の職場をすぐに見つけた。古いプラントは何かに転用された。←われわれはこうしたこと全てマシンにまかせた。その他の点で不平はないと、チン・ソウリン。
378 【🔎】管財人
379 熱帯地区
- 面積:2千2百万平方マイル
- 人工:5億
- 首都:キャピタル・シティ
379 リンカン・ンゴーマのオフィスの地図
- 熱帯地区の境界線は太い暗褐色の線で刷り込まれ、〈ジャングル〉、〈砂漠〉、〈象およびあらえる種類の珍獣あり〉などと区分けされている。
- 熱帯地区の内陸部は2つの大陸の大部分を取り囲んでいる。アルゼンチン以北の南アメリカ全土とアトンラス山脈以南のアフリカ大陸全土である。また、リオ・グランデ以南の北アメリカと、アジア大陸のアラビア、イランも含んでいる。
- 熱帯地区は、東方地区と逆で、東洋の蟻の巣が、全陸地の15%の中に人類の約半数をおしこめているのに反し、熱帯地区は、地球上の全陸地のほぼ半ば以上の面積に、人類の15%の人口が散らばっている地区。
- だが人口は増加しつつあった。→移民による人口増加が、出生による増加を上回る唯一の地区。そして、移住してくるすべての人々を必要としていた。
- 過酷な環境の地区
- 熱帯地区は、地球上でもっとも新しい首都があるが、単に〈首都(キャピタル・シティ)〉と呼ばれ、ナイジェリアの肥沃な高地にある。
381 ナイジェリアの肥沃な高地
- 生命と色彩があふれ、ぎらぎら輝く太陽、激しいスコール、極彩色の鳥のぎゃーぎゃーという啼き声。星は漆黒の夜空に針の先のようにちかちかとまたたく。
379 リンカン・ンゴーマ
- 黒髪、黒い眼、がっちりした顔だちのハンサムな大男
- くだけた英語
381 メキシコ運河の開通は遅延について
- 労働力がいつも不足している。熱帯地区では色々な事業が行われているから。運河ほそのひとつ。
382 マシンが、他の競合するプロジェクトを見越したうえで、運河に必要な労働量を予測してくれるのでは
- ちょっとはずれたと、リンカン・ンゴーマ。
- よくははずれない。たいした期待はかけていない。われわれはデータを与え、そして結果をもらい、マシンのいうとおり事を運ぶだけ。便利だから、労働を節約する装置にすぎない。
382 熱帯地区の自信
- 何千年ものあいだ我々を待っていた未開の土地がある
- 世界のほかの地域は、先原子力時代のぶざまな手探りのために、ばらばらに裂かれてしまった。
- 我々は、東方地区の連中のように酵母なぞ食べる必要はない。北方人みたいに前世紀も腐りかかった澱(おり)のことで頭を悩ます必要もない。
- 我々は、ツェツェ蠅も羽斑蚊(はまだらか)も絶滅させたし、人間達は太陽の下で生きられることを発見して、気に入っている。
- ジャングルを切り開いて土壌を得た、砂漠を灌漑して緑園を得た。
- 未開の原野で、石炭や石油を発見し、鉱物は無尽蔵にある。
383 運河は、6か月前までは予定どおりいっていたのに、何があったのか
- 「労働力の問題」だとリンカン・ンゴーマ。
383 フランシスコ・ヴィラフランカ
- 運河の担当技師
- 何か事故があって、陥没がおきた。記憶によれば、死者はなかったが、大変な騒ぎで、とんだ恥さらし。
- 彼の計算にミスがあったと、マシンがそう言った。フランシスコ・ヴィラフランカが用いた答えは不幸にも、水路の曲面に対する大量の降雨の影響を勘定に入れてなかった。
- フランシスコ・ヴィラフランカは、マシンの答えが最初から違っていたと主張した。自分は、マシンに忠実に従ったのだと、それから辞職した。
- フランシスコ・ヴィラフランカは、ロボット・スティーヴン・バイアリイと同じ、北方団体のメンバー。
- メキシコは、北方地区に近すぎるのが、トラブルのもと。
- 団体名は、〈人間同盟〉。ニューヨークで開かれる年次総会に毎年出席していた。
385 〈人間同盟〉
- 変人の寄り集まりだが、害はない。
- 〈人間同盟〉は、マシンが嫌い。人間の独創力を損なうから。
385 ヨーロッパ地区
- 面積:400万平方マイル
- 人工:3億
- 首都:ジュネーヴ
386 【🔎】ジュネーヴ
386 ヨーロッパ地区
- 面積ははるかに小さく極小。熱帯地区の五分の一に満たない。
- 地理的にはかつてヨーロッパ・ロシアであった地域とイギリス諸島を除外している点で、先原子力時代のヨーロッパとわずかににかよっているが、アフリカとアジアの地中海沿岸を含み、それに大西洋を変な具合に飛び越えて、アルゼンチン、チリ、ウルグアイなども含んでいる。
- 全地区の中で、ヨーロッパ地区のみが過去半世紀にわたって人口減少を如実にしめしている。
- 生産施設を真剣に拡張しようと努力もしなければ、人類の文化に斬新なものをさしだそうとしない。
386 マダム・ツェゲツオウスカ
- フランス語
- ヨーロッパは、もともと北方地区の経済的付属物だと発言
- ヨーロッパ地区の統監
- 灰色め眼の小柄な女性
886 マダム・ツェゲツオウスカのオフィスの壁には、ヨーロッパの地図はかかっていなかった。
387 ヨーロッパ地区のマシンについて
- "こうしろ、それがおまえにとって最良の道だ"としか言えない。
- ヨーロッパ地区にとっての最良の道とは、北方地区の経済的従属物に甘んじることでも、なんでもないこと。戦争もない、平和に暮らしているから。
- 7千年もの間、戦争が続いてきたあとでは、本当にすばらしいこと。
- ヨーロッパ地区は老いている。辺境には西洋文明の発祥地がある、エジプト、メソポタミア、小アジア、ギリシア。でも、老年が必ずしも不幸とは言えない。
387 ・・・「たぶんおっしゃるとおりでしょう」とバイアリイは磊落(らいらく)に言った。
387 【🔎】磊落(らいらく)
388 ヨーロッパ地区に似た例
388L6
388L14
388 アルマデンの水銀鉱山の生産量が、最近いちじるしく減少している。原鉱にんの産出が予想していたより急速に低下しているわけでもないでしょう?
- 北方系の企業
- 本社は鉱山はニコラーイエフにある
- マダム・ツェゲツオウスカの私見では、コンソリデイテッド・シナバー社の経営陣は、そもそもマシンに意見を求めていなさそう。先月の総会では、マシンに意見を求めているとはいっていたが、していない証拠にはならない。北方人の言葉は信用できない。
390 いずれは、幸運な結末になる
- ここ数か月来の経済変調は、過去の大変調と比べれば小さなもですが、ヨーロッパ地区の平和にひたりきっている者の心をかき乱し、スペイン地方に不穏な空気をかもしだしていることを理解してほしい。
- コンソリデイテッド・シナバー社は、スペイン人のグループに身売りしようとしているらしい。
- すくなくともアルマデンでは、これ以上のトラブルがなくなるだろう。
391 北方地区
- 面積:1800万平方マイル
- 人工:8億
- 首都:オタワ
391 北方地区は様々な点で首位に立っている。
391 ハイラム・マッケンジイ
- 北方地区の地区統監
- スコットランド人
391 ハイラム・マッケンジイのオタワのオフィスにかかっている地図
- この地図は、北極が中心となっている
- 2つの主要な地域にわけることができる。:地区の左手はリオ・グランデ以北の北アメリカ全土。右手はかつてソ連邦であった全地域が含まれる。
- この2地域は、本惑星における原子力時代の中心勢力だった。
- この2地域の間に、ヨーロッパ大陸をなめる舌ともいうべき大ブリテン島があ
- る。
- 地区の上部に、同じく本地区の一部をなすオーストラリアとニュージーランドがある。
- 過去数十年のあらゆる変化も、北方地区が惑星の経済的支配者であるという事実を変えなかった。
- 北方地区は競争を恐れず、卓越性をわざわざ強調する必要もないとでもいいたげに、地球全体を書き入れているのは、象徴的だった。
391 【🔎】包含(ほうがん)
392 過去において、ある人々が、分別のあった人々が、虚偽のデータがマシンに与えられたら、どうなるだろう?と考えたことがあった。と、ハイラム・マッケンジイ。
- 集められたデータは、全て、人間と機械がかかわる複雑なスクリーニング・システムのチェックを経るわけだから、そうした問題は心配ない。
393 問題の核心もの
- "誤ったデータ"と呼ばれるものは、ほかのあらえる既知(きち)データと相いれないということ。それが、正誤を判断する唯一の基準。それは、マシンも同じ。→長年の間与えられた既知(きち)データに照らして、合っていなければ、却下する。
393 【🔎】既知(きち)
393 “虚偽のデータ”をマシンにむりやりに与えることのできる唯一の方法
- 自己矛盾のない一連のデータの一部に混ぜてやること。
- しかもその誤りは、非常に微妙でマシンが発見できないか、あるいはマシンの経験にはないものであるかのどちらかの、ごく微妙な誤りでなければならない。前者は人間の能力の限界を超えるものだし、後者もほぼ同様で、マシンの経験が刻々と増すにつれ、ますます不可能となる。
394 ロボット・スティーヴン・バイアリイは、本能的に大きな誤り、つまりマシンはなんでも知っているという誤りを冒していると、ハイラム・マッケンジイ。
- 綿花の等級をいまだにマシンが決められない。それはいかなる繊維化学者も、買い付け人が綿の房に触ったとき、彼が何を検査したのか知る事はできないから、データはまったくない。こんなケースは、たくさんある。
【💕】
395L5
395L10
395 解決法
- 我々は、マシンに尋ねる然るべき質問を考え出せるような人間を必要としている。そんな人間をたくさん見つけだせれば、ロボット・スティーヴン・バイアリイが心配するような混乱もおこらないだろう。
- 面積:5400万平方マイル(陸地面積)
- 人工:313億
- 首都:ニューヨーク
396 ロボット・スティーヴン・バイアリイとスーザン・キャリヴィン博士の会話に戻る。
396 状況を杞憂している、ロボット・スティーヴン・バイアリイ。
- みんな状況を過小評価している
- ヴィンセント・シルヴァー所長は、マシンが狂うことはありえないと言う
- ハイラム・マッケンジイは、虚偽のデータをあたえることは不可能だという
- しかし、マシンは変調をきたしている
396 彼らの意見を信じるとすると、もう一つの可能性は、正しいデータが与えられ、正しい答えが受け取られるが、その答えは無視されているということ。
- マシンは命令に対する服従を強制できないから。
- マダム・ツェゲツオウスカは、一般的北方人を引き合いに出して、そのようなことをほのめかしていた。
397 マシンに従わないことによって、どんな目的が満たされるの動機は?
- 故意にボートをゆするというケース。:現在の地球上では由々しい紛争は起こりえない。つまりある特定のグループが、全体として手に入れるため、持てる以上の権力を奪取しようとする、マシンが支配する限りはそういう紛争は起こりえないから、マシンに対する一般の信頼が失われて、マシンを廃棄するようなことにになれば、地球は再びジャングルの法律に支配されることになる。そして、4つの地区のどれをとっても、それを望んでいるという疑惑を免(まぬが)れうるものはない。
- 東方地区は、その環境の内側に人類の半数の人口を抱え、熱帯地区は、地球資源の半分以上を抱えている。両地区ともそれぞれ全地球の本来の支配者であると自覚するかもしれないし、それぞれ北方地区に対する屈従の歴史を持っている。それに対して彼らが無分別な復讐を望んだとしても、それは人情として当然のこと。ヨーロッパ地区は、栄光の伝統を持っている。かつて地球を支配していた。権力の記憶ほど永遠にまといついて離れぬものはないから。しかし、見方をかえるとそれも考えにくい。なぜなら東方地区も熱帯地区も、その領土の中で目覚ましい発展の途上のある。しんじられぬほどの上り坂にあるので、軍事活動に費やす余剰のエネルギーがあるわけがない。そしてヨーロッパ地区には昔日の夢しかない。軍事的には無に等しい。
- 北方地区は、いまや最も強大。1世紀の間、その状態を保ってきた。しかし、今や、それも他に比べると衰えつつある。熱帯地区は、ファラオ以来はじめて文明の先頭に立つかもしれないことを、恐れている。
- 〈人間同盟〉は元来北方地区の組織。そして彼らは、マシンは不要だと考えている事実を隠そうとしない。彼らは数においては少数だが、有力な人々の集まり(工場の幹部、農工合同企業の幹部など)。彼らの言う"マシンの給仕"であることを忌み嫌い、野心をもつ連中が属している。自分たちにちってなにが最善かということは、自分たちで決めるくらいの能力はあると思っている人間。これらの人間は、ともにマシンの決定に応じることを拒否することによって短時日(たんじじつ)のうちに世界を覆すことができる。まさにそういった連中が同盟に属している。
399 ワールド・スチール社の取締役のうち5人までが〈人間同盟〉のメンバー。
- ワールド・スチール社は、生産過剰という事態におちいっている。
- アルゼンチンの水銀を採掘しているコンソリデイテッド・シナバー社は、北方地区の企業。名簿を目下調査中だが、少なくとも中の1人は、〈人間同盟〉のメンバー。
- 独力でメキシコ運河の開通を2か月遅らせたフランシスコ・ヴィラフランカも〈人間同盟〉のメンバーのひとり。
- ラマ・ヴラサヤナも、〈人間同盟〉のメンバー。
399 〈人間同盟〉はへまをやった
- マシンの分析に従わないということは、最善ではない道をたどることだから。
400 ロボット・スティーヴン・バイアリイの対処
- 急ぎ、同盟を非合法化して、メンバーは責任ある地位からひいてもらう。そして今後あらえる経営部門や技術部門の管理職候補者は、非同盟者である旨の宣誓に署名した者のみにかぎることにする。
400 スーザン・キャリヴィン博士は、その対処はうまくいかないとアドバイスする
- 少しでもやろうとしたら、いたるところで妨害され、実行不可能。
402 マシンが破壊されるようにボートをゆすっているのは、〈人間同盟〉ではなく、マシンが、ボートをゆすっている。
- マシンは不服従の者がいることを知っていて、なにも狂っていない。
- マシンはロボットである。→ロボット工学三原則の第一条に従う。→マシンは一個のためにではなく、人類全体のために働くので、第一条は、〈マシンは人類に危害を加えてはならない。また、その危険を見過ごすことによって、人類に危害をおよなじてはならない〉となろ。→人類の危害とは、経済的混乱のこと→経済的混乱を最も惹き起こしやすい要因は、マシンの破壊。→よってマシンの第一の関心は、自分自身を守ること。→だから、マシンは自分たちを脅かす唯一の要因をひそかに取り除こうとしている。ほんの微(かす)かに、マシンが人類にとって有害だと考えてボートのふちにしがみついている少数の人たちをふりおとせるくらいにゆすっている。
- それで、ラマ・ヴラサヤナは工場を失い、なんの危害も及ばせない仕事を与えられた、ひどい痛手を負うこともなく、生活費を得る手段を奪われもせず。最小限度しか人間に危害を与える。
- コンソリデイテッド・シナバー社は、アルマデンにおける支配力を失った。フランシスコ・ヴィラフランカは、もはや重要なプロジェクトに参加できる民間の技術者ではない。
- ワールド・スチール社の幹部たちは、経営上の支配力を失いつつあるか、失う。
403 ロボット・スティーヴン・バイアリイが、マシンにこの問題をあたえたときの、マシンの答えは、"本件は解明を許されない"だった。
- その解明を知らされることは、人間にとって害のある事なんですよ、だから推測するしかない。
403 スーザン・キャリヴィン博士の解説
- マシンは、単に我々の直接の質問に答えるだけではなくて、世界情勢や人間心理全般に対する普遍的な解答を通じて、私たちの未来を導いているということ。そして、それを知ることは、我々を不幸にし、我々の誇りを傷つけるかもしれない。→マシンは我々を不幸にすることはできないし、してはならないから。
- マシンは、私たちが知らぬまま、人類の窮極的な幸福へ連れて行ってくれる
*
405 スーザン・キャリヴィン博士とインタヴュアーとの会話が終わる。
- スーザン・キャリヴィン博士は、先月、82歳でこの世を去った。
407 「ロボット学」の新たな世紀へアシモフ〈ロボット工学の三原則〉の受容と発展
作家 瀬名秀明
407 【🔎】【本】瀬名秀明
408 ・・・クリフォード・D・シマックに景況を受けたという彼の簡明な文体は、
408 【🔎】【本】クリフォード・D・シマック
408 アイザック・アシモフ
- 1920年ロシアの小村で生まれる:カレル・チャペックが戯曲『ロボットーーーR.U.R』の初版を発表した年。
- 両親と共に、アメリカへ移民してきた彼は、父が経営するキャンディーストアでパルプ雑誌の物語に浸りながら少年時代を過ごす。
- 1938年、「アスタウンディング」誌にジョン・W・キャンベル・ジュニアが新編集長として就任し、雑誌の刷新がおこなわれた。アシモフは、これに刺激を受け投書を始める。最初の小説は、日の目をみなかったが、アシモフはその後も作品をキャンベルに送り、SF作家アイザック・アシモフの誕生へ繋がる。
- デビュー前後の1939年5月、アシモフはSFファンの集まりに顔を出すようになり、作家のオットー・バインダーと出会っている。アシモフは、オットーと兄のアールが合作したイアンド・バインダー名義の短編「ぼくの創造(I,Robot)」(1939)を読んで感銘を受けた。
- 大好きな作家レスター・デル・リイの短篇「愛しのヘレン」(1938)にも感激したばかりだった。三日後にロボット小説を書き始め、同月23日、子の短篇に「ロビイ」というタイトルをつけ、キャンベルに送った。
- 1939年という時代は、前年12月25日にカレル・チャペックが死去。第二次世界大戦が勃発する直前。アメリカでは、ルーズベルト大統領の推進するニューディール政策を受けて大衆消費社会が花開き、電子工学への関心が高まっていた。同年から翌年にかけて開催されたニューヨーク万博のテーマは、「明日の世界の建設」。それは旧来のヨーロッパ文化や共産主義を一掃し、新しいアメリカ時代がやってくることを宣伝する一大祭典だった。19歳のアシモフも、ニューヨーク博を訪れているが、きっと彼はウェスティングハウス社のパビリオンで、身長7フィートのヒト型ロボット《エレクトロ》、番犬ロボット《スパルコ》を見たことだろう。当時の小説では、ロボットが人間の脅威として描かれることが多かった。「ぼくの創造」も「愛しのヘレン」も心優しく高貴なロボットが人間とこころを通わせる。アシモフはそこに惹かれたのだろう。←抜粋でかくこと。
408 【🔎】カレル・チャペック
408 【🔎】戯曲『ロボットーーーR.U.R』
409 【🔎】オットー・バインダー
409 【本】「ぼくの創造(I,Robot)」(1939) イアンド・バインダー
- 長編小説版の邦題「ロボット市民」(1965)
409 【本】短篇「愛しのヘレン」(1938) レスター・デル・リイ
409 【🔎】レスター・デル・リイ