11 『シャーロック・ホームズ』
18 作品内にも登場するジェイムズ ラヴグローヴのマッシュアップ三部作『クトゥルフ・ケースブックス』
- 【本】『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』:1880年に起こった
- 【本】『シャーロック・ホームズとミスカトニックの怪異』:1895年に起こった
- 【本】『シャーロック・ホームズとサセックスの海の悪魔』:1910年に起こった
26 【本】『緋色の研究』コナン・ドイル
62 【本】マスグレイヴ家の儀式(短編)
147 【本】『ヘンゼルとグレーテル』 グリム童話
160 【本】『アーサー王伝説』ジェフリー・オブ・モンマス
ブリタニア列王史: アーサー王ロマンス原拠の書 単行本 – 2007/9/1 ジェフリー オヴ モンマス (著), 瀬谷 幸男 (翻訳)
マーリンの生涯: 中世ラテン叙事詩 単行本 – 2009/5/1 ジェフリー・オヴ モンマス (著), 瀬谷 幸男 (翻訳)
163 『妖蛆(ようしゅ(そ))の秘密(デ・ウェルミス・ミステリイス)』関連
191 コモリオム、ウズルダロウム、オラトーエ、ヴァルーシア関連本
- 『狂気の山脈にて』At the Mountains of Madness ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
- 『永劫より』Out of the Aeons ヘイゼル・ヒールドによる短編
- 『ヒュペルボレオス極北神怪譚』 クラーク・アシュトン・スミス
- 『サタムプラ・ゼイロスの物語』The Tale of Satampra Zeiros クラーク・アシュトン・スミス
- 『北極星』Poraris ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
191 フリードリヒ・ヴィルヘイム・フォン・ユンツト『無名祭祀書』関連本
- 『夜の末裔』 ロバート・アーヴィン・ハワード
220 トマス・ド・クインシー
224 獲物が飛び出したぞ(ザ・ゲーム・イズ・アファット)。ワトスン。外套を取って、ぼくと来てくれ・・・
- 【本】『アビイ屋敷』the Abbey Grange(『シャーロック・ホームズの帰還』内に収録)
271 【本】『魔女に与える鉄槌』 ハインリッヒ・クラマー・・・超自然的存在の出現に対する固定化したキリスト教的な取り組みの本。
271 【本】『ホノリウスの誓いの書』・・・降霊術についての中世の論説の本。
271 【本】『ソロモンの鍵』・・・降霊術についての中世の論説の本。
271 【本】偽書『真正奥義書』・・・1500年代初期のメンフィスでエジプト人アリベクにより刊行されたと言われたが、実際には数世紀後の氏名不詳のヨーロッパ人による作品。
291 【本】「最後の事件」 アーサー・コナン・ドイル
219 【本】『恐怖の谷』 アーサー・コナン・ドイル
293 【本】「グロリア・スコット事件」 アーサー・コナン・ドイル
296 【本】「まだらの紐」 アーサー・コナン・ドイル
296 【本】「アーサー王の伝説」
329・337 【本】「ギリシャ語通訳」 アーサー・コナン・ドイル
366 【本】『インスマスの影』 ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
404 【本】「這いずり回る混沌」 ラヴクラフト
429 【本】「最後の事件」 アーサー・コナン・ドイル
429 【本】「空き家の冒険」 アーサー・コナン・ドイル
449 【本】『バスカヴィル家の犬』アーサー・コナン・ドイル
450 【本】「サセックスの吸血鬼」アーサー・コナン・ドイル
7 はじめに
7 ジェイムズ・ラヴグローヴ
7 2014年春のある日
- ロードアイランド州ブロヴィデンスにある、弁護士事務所からメール
- 差出人は、ラフリン・ジェイコブズ・トラヴァース法律事務所のシニア・パートナーのメイスン・K・ジェイコブズ三世
- 件名は「遺産」
7 【🔎】ロードアイランド州ブロヴィデンス
8 メールの内容
- ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフト氏が昨年秋に82歳でなくなった
- 生涯プロヴィデンスに住み、ラフリン・ジェイコブズ・トラヴァース事務所の長年の顧客だった
- 独身で子供もなく、心不全でなくなった
- 7万5千ドルの財産を遺した
- 彼は、スミス・ヒルにある質素なコンドミニアムに住んでいた
- この街(プロヴィデンス)は、あまり好まれない地域
- 遺産の大部分は、彼のマンションを売却したことにより生じたもので、9万5千ドルだった。そこから税金や諸経費、事務所の手数料を差し引いて残額が7万5千ドル。これは、メイン州のケネバンクポートに住む、ラヴクラフト氏のごきょうだいの孫娘を探しだし、遺産を無事ロンダ・ラシェイズさんに渡した。
- ラヴクラフト氏の遺産の中には、ロンダ・ラシェイズさんが受け取りを希望しないものがあった(書籍や文章、異国の道具、宗教的な目的でつくられたと思われる彫像や手工芸品などの収集もの・・・無価値で公衆衛生上もんだいがあると、処分された)
8 【🔎】7万5千ドルの財産
- 現在1ドル = 153.76円
- 1千153万2千円の財産
10 公共図書館、ブラウン大学ジョン・ヘイ図書館の担当者の遺産の鑑定
- 書籍や文章は、ほとんど価値なし
- 彫像や肖像画、呪物のたぐいの大半は、皮や髪の毛などの有機的な素材で作られていて、虫に食われたり不潔な状態だった
- ありふれた、粗雑な感じがあるので、ラヴクラフト氏が自分でつくったものかも
- その中で一つ、特に保存に値するものがあった
10 ジェイムズ・ラヴグローヴ
- 事務所の調査では、ジェイムズ・ラヴグローヴは故ラヴクラフト氏の遠縁に当たる
- その関係は、300年ほど前にさかのぼる親類
- 「ホームズ研究(ホーメジアーナ)」におけをる専門家
10 当事務所のジュニア・パートナーは、ジャンル・フィクションの熱心な読者であり、あなた(ジェイムズ・ラヴグローヴ)の作品をよく存じ上げている
- 当事務所のジュニア・パートナーが、ジェイムズ・ラヴグローヴが残った品を受け取るのにふさわしいと示唆した
- それは、本の原稿
10 本の原稿の内容
- タイプ打ちされた原稿3束
- 全体で一つの長い物語になったもの
- おそらく100年はたっている
- ジョン・ワトスン博士がかいたもの
- あなた(ジェイムズ・ラヴグローヴ)なら、ワトスン博士の作品に充分な知識がある
- この原稿は、ラヴクラフト氏の寝室のクローゼットの錆びた金庫の中から発見された
11 事務所の考え
- この原稿は、偽物であり、せいぜいよくてパスティーシュのようなものと考えている
- 【本】シャーロック・ホームズをめぐる物語に、ワトスン博士の著者名をつけたものである
- シャーロック・ホームズ愛好家たちが慣れ親しんだものとは異なる冒険
- 奇妙で不気味な出来事が中心
11 【🔎】パスティーシュ
12 ・・・ファンタジー小説やーーーあえて専門用語を使うならーーー「ホームズ研究(ホーメジアーナ)」におけをる専門家としての経験から、この原稿と質の信憑性を判断するには最適な人物であると考えています。・・・
12 ホームズ研究(ホーメジアーナ)
- イギリスではホームジアン (Holmesian)
12 ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフトと私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)の関係
- 【本】ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフトは、ホラー小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(1890~1937)の子孫に違いない
- プロヴィデンスという場所は、ラヴクラフトが生まれ、生涯のほとんどを過ごした土地
- 3人の共通の先祖は、バイエルンの貴族、フォン・ルフトグラーフ家
12 【🔎】ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
12 プロヴィデンス
- プロビデンス、プロヴィデンス(英: Providence)とはキリスト教における「すべては神の配慮によって起こっている」という概念。日本語では「摂理」(せつり)、「神の意思」と訳され、用法等によっては「天帝」とも訳される。摂理 (神学)の項で詳述。
13 【🔎】バイエルン州
13 ・・・バイエルンの貴族、フォン・ルフトグラーフ家であった。ルフトグラーフとは、ドイツ語で「高貴な伯爵」というような意味だ。・・・
13 【🔎】グラーフ
13 フォン・ルフトグラーフ家
- 1760年代に財政危機に見舞われて領地や城を失う
- オーバーフランケン地区の広い範囲を所有していた
- ある時、この名家の御曹司が、悪魔を育てる黒魔術師のカルト教団に関わり、発狂して、仲間の信奉(しんぽう)者に全財産を譲ってしまった。その後、彼は精神病院で最後の日々を過ごし、わけのわからぬことを口走っていたと言う。
- わずかに残ったフォン・ルフトグラーフ家の人々は、この事件による恥辱と窮乏から逃れ、再出発のために、北はイギリスへ、西はアメリカへと二手に分れ移住した。
- イギリスではラヴグローヴ、アメリカではラヴクラフトと苗字を短くしたり英語化して生活した。
- ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフトは、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(作家)を生んだ家系の中でも、18世紀半ばにニューイングランドに到着した最初の家系の幹となる、別の枝に属している。しかし彼は、親類の持っていたオカルトや神秘的なものへの強い関心を、共有していた。
- 私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)は、10代の頃夢中になって読んだ著者H・P・ラヴクラフトからはるかに離れた、いとこである。
13 【🔎】1760年代
13 【🔎】オーバーフランケン地区
13 【🔎】ニューイングランド
14 ・・・彼(H・P・ラヴクラフト)のあまり健全ではない個人的属性、特に人種的偏見やアングロサクソン系以外の文化に対する嫌悪感は、・・・
- <確かに、だがそれが一般的な時代
14 H・P・ラヴクラフト
- ホラー作家
- 太古の神々や禁断の知識、敵対する超自然的な力、宇宙的な無関心主義を融合して探求・体系化したクトゥルー神話をつくりあげた男
14 【🔎】クトゥルー神話
14 私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)とH・P・ラヴクラフトの共通点
- 物書きである
- DNAを共有している
- 特に目のまわりなど、漠然とした肉体的な類似性
- <まさか・・・w
15 2週間後、遺産の原稿が到着
- 専門家の紙の鑑定:透かしが入っていること、木綿のぼろ(ラグ)が多く含まれていることから、1920年代に使われていた、フールスキャップを綴ったものだった。
- 別の専門家の鑑定:使用されているタイプライターは、インペリアル・モデル50であると確認。
- 私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)は、1年ほどかけて、何度も調べた。
15 タイプライター インペリアル・モデル50
- このタイプライターは、2つの大戦の間の時期にイギリスで人気があったもの。
- ワトスンの序文の日付けからわかる執筆時期と一致する。
15 【🔎】インペリアル・モデル50
15 ・・・一見したところでは本物らしいということだ。と同時に、これはとんでもない(モンストラス)悪ふざけなのではないかとは思わずにはいられなかった・・・
15 【🔎】モンストラス
16 「シャーロック・ホームズの経歴における別の歴史」を書いたものかどうか
16 ・・・おそらくヘンリー・プロテロ・ラヴクラフト自身が作者であり、この作品はただ難解なメタフィクション的ジョークであり、・・・
16 【🔎】メタフィクション
16 【本】私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)は、3つの原稿を、“クトゥルー・ケースブック”というシリーズタイトルで出版するつもり
- 『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』:1880年に起こった
- 『シャーロック・ホームズとミスカトニックの怪異』:1895年に起こった
- 『シャーロック・ホームズとサセックスの海の悪魔』:1910年に起こった
- <ぽいタイトル
16 【🔎】ジェイムズ・ラヴグローヴ
- James Lovegrove
18 序
18 ジョン・ワトスン博士
- 老人になった
- 鏡み映った老化の兆候と、隅に隠れているもの、視界の周辺に潜んでいるものも映し出される。そうしたものを一度でも目にすると、忍び笑いをささやいたり、時には黙ってこちらを見ていたりする。
- 今で誇りに思う友人シャーロック・ホームズの冒険を描いた好評を博した何十もの物語を書いてきた。
- 全てのことを語っていないどころか、ある話から注意を逸らすために、別の話をしてきた。それは、普通の人達のほとんだが、認識できない領域で、知らない方がといから。事実が知れると、文明は自信を失い、劇的かつ永続的な混乱に陥るので、ジョン・ワトスン博士は、暗くて腐った真実の核心のまわりに人工的な殻を作って、文明を守ってきた。
18 【🔎】ジョン・H・ワトスン
19 【🔎】演繹(えんえき)
19 シャーロック・ホームズ
- 演繹(えんえき)的な力や推理の力を論じ、問題の真相を突き止めて悪事を暴き不正を裁く無比の能力がある
- ジョン・ワトスン博士の友人
19 【🔎】シャーロック・ホームズ
19 ・・・世界中の遵法(じゅんぽう)精神に富む市民の生活を向上させ、ひいては遵法(じゅんぽう)精神に富まない人々の行為を無効にしてきたと・・・
19 【🔎】遵法(じゅんぽう)
19 シャーロック・ホームズが亡くなったのを期に
- 長い間隠してきた秘密を打ち明ける時がきた
- 真実を埋葬していたのは、シャーロック・ホームズの要請だった
- 埋葬していた真実は、ジョン・ワトスン博士を悩ましてきたので、死ぬ前にホームズに関する最後の作品として、3冊の本を書くことにした。
- 三部作は、ホームズが実際に行ったこと、人生で達成したことの全てをさらけ出す。それは、彼の経歴における別の歴史で構成しているが、真実である。
- 出版されることは、期待していない。絶対に人の目につかぬようにしたい。
- 3部作は、ラヴクラフトというアメリカの作家にたくすつもり。ラヴクラフトは問題とする深遠な領域に誰よりも精通しているから、この作品を金庫にしまって鍵を捨ててくれるだろうから。
20 ラヴクラフト
- 彼の作品は、アメリカの「パルプ雑誌」で評判になっている作家
- 煽情的な作品が扱っている冒涜的で、正道を踏み外す題材に、ラヴクラフトが精通しているとジョン・ワトスン博士は思い、文通している。
- ラヴクラフトは、問題とする深遠な領域に誰よりも精通している。
- ラヴクラフトの同業者であるロバート・E・ハワードやクラーク・アシュトン・スミスも同様に精通している。
20 「パルプ雑誌」
- イギリスでの「ペニー・ドレッドフル」や「シリング・ショッカー」と呼ばれる安っぽい犯罪小説が載る雑誌で、扇情的な作品ばかり。
20 【🔎】「ペニー・ドレッドフル」
20 【🔎】「シリング・ショッカー」
20 【🔎】ロバート・E・ハワード
20 【🔎】クラーク・アシュトン・スミス
22 序文
- 1928年 パディントンにて J・H・W
22 【🔎】1928年
22 【🔎】ロンドン・パディントン
23 1章 瘢痕組織(スカー・ティシュー)の研究
23 【🔎】瘢痕
23 【🔎】スカー・ティシュー
- scar tissue
23 1880年の秋のジョン・H・ワトソン
- アフガニスタンから心身ともに傷ついて英国本土に帰還
- カンダハール州の滅びた都市へ探検に赴き、そこに住まうものども邂逅(かいこう)した時のジョン・H・ワトソンが受けた身体的な傷と、精神の損傷。
- あの出来事の記憶が、激烈な悪夢となってジョン・H・ワトソンを苦しめた。正気を保つため、自己否定という、狂気といか言いようのない境地にひきこもったジョン・H・ワトソン
- 熱に浮かされ錯乱した脳の見せる妄想に吞み込まれないよう、現実の出来事ではなかったと自分に言い聞かせた。
23 【🔎】カンダハール州
24 ネトリー病院
- 2年前に、ジョン・H・ワトソンが軍医研修を受けた病院
- 英国に引き上げてきて、ネトリー病院に入院していた
- ハンプシャーにある陸軍病院
- 人目につかない翼練は、身体的な重傷ではなく、戦場の恐怖による心的外傷(トラウマ)を負った復員兵たち専用の病室があった。
- ジョン・H・ワトソンは、なかば無意識に、なかば本能的に、自らの感覚を受け入れまいとする決断をして、心的外傷(トラウマ)を負った復員兵たち専用の病室の一員にならずにすんでいた。
24 アフガニスタンでの真実
- アルガンダーブ渓谷の奥深くに分け入った第五ノーサンバーランド・フュージア連隊に、厄災となった進軍を煽動して真っ先に犠牲になったロデリック・ハロウビー大尉以下6人の死者がでた真実
- あの地下都市の住人達に襲われた兵士達の悲痛な叫びや、武装した小隊を殺戮することに残虐な喜びを覚える住人達のさらに忌まわしいわめき声。
- ジョン・H・ワトソンにできることは、マイワンドの戦いでジェザイル銃弾を受けたというふりをしつづけることだけだった。ペシャワールの本隊病院で思いついた嘘。祖国への忠義を果たした、勇敢さを褒めたたえられて帰国。
- <第二次アングロ・アフガン戦争に行っていた。
25 【🔎】マイワンドの戦い
25 再びロンドンに戻ったジョン・H・ワトソン
- 何週間か、抜け殻になったままでいた。
- ジョン・H・ワトソンに残った者は、わずかな軍人恩給、傷病復員兵の卑屈なとげとげしさと、闇の知識が宿る目。
25 闇の知識が宿る目
- 朝、ひげ剃りの時に鏡から見返してくる目。ジョン・H・ワトソンは、めったに目を直視できなかった。普通は目にすることはないもの、普通は知らずにいた方がいいものを見た目だった。
25 鏡に映るジョン・H・ワトソンが、一生帯びていく姿
- 左肩上部の肉がえぐりとられた、見ようによってはライフル銃弾が貫通したと言えなくもない、醜い溝。
- 曲がった鉤爪(かぎづめ)に三角筋を引き裂かれ、骨から肉をごっそり削られた跡のようにも見える。
- 傷は常に痛み、左腕を使うのに支障をきたした。
- ペシャワール滞在中には、傷が化膿し、医師達が腕を切断するか論議していた頃に比べて、危険は脱していた。急激に悪化した敗血症は治りも早かった。
26 【🔎】敗血症
26 しわの寄った瘢痕(はんこん)組織
- 傷を負わせた不快な生きもののことを努めて考えないようにした。
- 「銃弾」と、詠唱するように言い聞かせた。
26 その年の冬
- 懐が寒くなってきたころ
- 旧知のスタンフォードにばったり出くわす。
26 旧知のスタンフォード
- 【本】『緋色の研究』に記載したとおり、バーツ(聖バーソロミュー病院)でジョン・H・ワトソンの手術助手だった青年。
- 手術助手だったこと以外、彼との再会やその後のなりゆきについて記述したことは、事実に反する。
26 【🔎】バーツ(聖バーソロミュー病院)
26 ジョン・H・ワトソンの『緋色の研究』という小説とは違う、真実
- 旧知のスタンフォードとジョン・H・ワトソンが偶然会ったのは、ピカデリー・サーカスのすぐそばにあるクライテリオン・レストランのロング・バーという上品な場所ではなく、酒を飲むには不健全な、コマーシャル・ロード界隈の迷路のような貧民窟にある、裏路地のパブだった。
- 12月の初日の凍てつく首都。前日の雪で足首までぬかるむ裏通り。
- 根っからのギャンブラーだったジョン・H・ワトソンは、カードゲームのナポレオンで、残り少ない恩給を賭けて参戦して、1時間後、負けたのでゲームを降りた。
- 戸口で、一夜の相手をさせたい女の子の料金をめぐって、2人組のインド人水夫(ラスカー)と派手にやりあう男がいた。インド人水夫(ラスカー)達は、女の子の周旋(しゅうせん)人。その男が、スタンフォード。
27 【🔎】カードゲームのナポレオン
- イギリスのトランプゲーム
28 【🔎】周旋(しゅうせん)
30 女の子
- 青白く怯えた顔つきの浮浪児
- 一夜の相手に、2人組のインド人水夫(ラスカー)とジョン・H・ワトソンの旧知のスタンフォードとの間で、2シリングか5シリングかの値段交渉で、派手にもめられていた娘。
- ぼろきれと大差ないものの、ひだ飾りやフリルでこびを売るような服を着ている。
- 歳はせいぜい13といったところ
- ほこりにまみれた顔の目のまわりが黒ずみ、外反膝で背骨が湾曲ぎみなことから、幼少期に骨軟化症を患ったのだろう。
- 幼いころから、仲間の人間に虐待されてきたのは明白
- 花盛りを迎えられそうにない発育不全のバラのような姿
30 【🔎】外反膝
30 【🔎】骨軟化症
30 スタンフォード
- 記憶の中のスタンフォードは、陽気で元気溌剌(はつらつ)とした若者
- 血だの臓物だのが日常茶判事の手術室では、特に医療従事者のよすがとなる、気味の悪いユーモア感覚を率先して披露する男だった。
- 今は、快活さもうしない、相当神経が張りつめているらしく、いやな汗をかき、頬は土気色で疲れ果てた目をしている。
31 見かねて割って入ったジョン・H・ワトソン
- ラスカー達は憤慨し、海軍用のピーコートのポケットからジャックナイフを取り出した。
- ジョン・H・ワトソンは、両手の拳を固めた、これこそジョン・H・ワトソンが求めて彷徨いあるいていたものだった。
- その時、あの老人が現れた。
33 人目につかずジンをちびちび飲んでいた老人
- ジンのボトルを片手に担がれ、典型的な酔っ払いの千鳥足で奥の方から現れた
- 60歳くらい
- 肩が丸くすぼまり、白髪交じりの頭、びっしり針金状の顎ひげ
- 擦り切れたツイードのジャケットに、浅い縁なし帽(フラットキャップ)、襟なしのシャツと人目を引く青いネッカチーフという格好。
- 洋々たる前途がいつまでも運に見放されたまま遠のいて、失意のうちに取り残された男のように見える。
- 頬の毛細血管が切れて赤らんでいるのがアルコール好きの証拠。
- 球根のような形のざらざらした鼻は、飲酒歴の長さを物語っていた。
- 聞き取りにくい、強いヨークシャ訛り
35 ヨークシャの老人は、ラスカーのジャックナイフの攻撃をかわし、鋭敏な動きで反撃にでた。
- 二人とも真っ青な顔で、ほとんど人事不反省(じんじふせい)の状態になり、戦闘力はなくなった。
36 【🔎】人事不反省(じんじふせい)
36 老人が背筋をのばし、ヨークシャ訛りがなくなって、少女に声をかける
36 ホワイトチャペル
37 スタンフォード医師を監視していた老人に扮した、シャーロック・ホームズ
38 2章 私用の馬車
38 まだ名前も知らないヨークシャ男についていくジョン・ワトスン。
- 好奇心にそそられ、アルガンダーブ渓谷でのことを忘れて、シャーロック・ホームズとスタンフォードを追うジョン・ワトスン。
- かつての手術助手スタンフォードの人生のひどいつまずきがあったのかという心配
39 ぬかるみのスタンフォードの足跡を見つけるシャーロック・ホームズ
- 10.5 スタンフォードの靴のサイズ
- 爪先の細い、両側がゴム布のアンクル・ブーツ(足首までの短いブーツ)の靴底の足跡
- 靴底に穴がひとつあいている
- 全体的に見て、爪先の方がかかとよりくっきりと深い跡になっているのは、走っていた印
40 シャーロック・ホームズのジョン・ワトスンへの観察力
- 戦闘準備ができている軍人のようだ
- 肩をかばうようにしてるのは、痛むからでしょう?戦傷で。
- アフガニスタン帰りの軍医・・・スタンフォード医師にバーツで一緒だったと言っていたから。
- 肌の色は黒いけれど、手首から上は白いから日焼け・・・最近熱帯地域にいた。
- 顔に苦労の跡が刻まれいる・・・イギリスの軍医が辛酸をなめるとしたら、アフガニスタン。
41 ・・・ペシャワールでベッドを温めたあと、カラチからオロンテス号でポーツマスまで船旅を無為に過ごした数週間・・・
41 ペシャワール
41 カラチ
41 ポーツマス
41 オロンテス号
- 軍隊輸送船オロンテス号
- 『緋色の研究』コナン・ドイルに出てくる
43 スタンフォードは、大通りで雇って待たせておいた四人乗り箱馬車(クラレンス)
で逃亡してしまった
- 追いつくみこむがない2人
45 どうしてクラレンスを変装して追っているのか、真相を本気で聞きたいジョン・ワトスン。
- 歩いて45分のベイカー街に部屋をいくつか借りている、自分の部屋で詳細を話そうというシャーロック・ホームズ。
- ロンドンは、家賃が高すぎるので、いっそのこと、転がりこまないかと持ち込まれるジョン・ワトスン。
3章 221Bへ
46 ベイカー街221番地Bの部屋へ
- 1880年の冬のこと・・・この時の部屋の様子はほかのところで描写したとおりだったが、その後どんどんむさくるしくなった。
46 ハドスン夫人
- 家主
- シャーロック・ホームズのがらくたでうまった巣窟の掃除を、固く禁じられていた
47 当時のベイカー街221番地Bの部屋
- 科学実験台は定位置にあった。酸のしみがついていた。台の上の様々な実験器具はまだあまり使用していなかった。体液も、汚れの落ちにくい各種のぞっとする物質もさらされていなかった。
- マントルピースの上には、パイプ煙草の葉を入れたペルシャ・スリッパが、愛用する2本のパイプ(クレイと桜材)を従えて、葉巻をしまってある石炭バケツを見下ろしている。
- 棚には百科事典、辞書、地名辞典などの参考文献。後釜にたくさんの量の魔術の手引き書や同種の秘本がすわることになるとは思えなかった。
- スクラップブックやたまっていく切り抜きは揺籃(ようらん)時代にあって、さほど場所をとっていない。
- 通りに面した窓の台に、メンデルスゾーン歌曲集の楽譜を下敷きにしてストラディバリウスのヴァイオリンが横たわっている。
- 使い込まれたちゃんとした家具
- 暖炉の前にある熊皮の敷物
- 酒類の戸棚
- ・・・私の読者なら《ストランド》誌に載ったパジット氏の挿絵でおなじみのはずの、月並みな品々がひととおりある。・・・
- 1階の玄関から17段ある階段を上がって、部屋にいく。
47 【🔎】揺籃(ようらん)
47 【🔎】パジット氏
- アーサー・コナン・ドイルが、「ストラッド・マガジン」に掲載していた『シャーロック・ホームズ』シリーズの挿絵で有名。
47 ストランド・マガジン
48 寝室で付けひげなどをはずし、メイキャップを落として、キルトのスモーキング・ジャケットに着替えて再登場したホームズの印象
- どうみても品がよくて骨格もしっかりした紳士
- 1880年には、まだ26歳で、肌はすべすべだし顎の輪郭もひきしまっている。
- V字形の生え際は後年ほど目立たないが、終生変わることのない鷲鼻と秀でたひたいは、このころから特徴的だった。
- 灰色の目が禁欲的で高遠な知性に輝き、仕草のひとつひとつに自信がうかがえる。
48 【🍴】初めて行ったベイカー街221番地Bの部屋で、暖炉の火をかき立て、ホームズがワトソンにすすめたお酒。
- コニャック
48 ワトソンが知っているスタンフォード
- 外傷を手当をしたり包帯を巻いたりするのにかけては文句なしに有能。
- 病院では、同年代のかなり荒っぽい連中とつきあいがあった。みんな裕福な家の出。
- 悪ふざけがすぎるところがあった。
49 ホームズが語るスタンフォード
- 彼はアヘン中毒だった
- スタンフォード医師は、ケシのとりこになり、その悪習のため、ライムハウス(イースト・エンドのテムズ川北岸にある中国人居住区)のグンフェン・シュウという中国人が経営するアヘン窟に、足しげく通っている。
- 奇怪な殺人事件に関係している
- <そんな気がしてました・・・あの事件ですね。
49 グンフェン・シュウ
50 ホームズの職業
- 世界で初めてのコンサルタント探偵
- 「推理と科学」・・・『緋色の研究』参照
51 7年後
- ジョン・ワトスンが、『緋色の研究』の執筆を始める頃
- ホームズの世界観は、すっかりといいほど変わってしまった。
- ホームズは、自らが実人生ではもう信奉していない考えを印刷物で披露することになった。
51 ジョン・ワトスンが発表した冒険譚のすべてに言えること
- 56の短編と4つの長編
- ホームズとワトソンは、2人で結託して、読者を誤認に導く壮大なミスディレクションを図った。
- 一般大衆を安心させせ、事件が実は不穏な性質のものではないかという疑義を抱かせないための配慮。
51 ホームズの語る本題について
- 最近イースト・エンドで次々と死体が見つかっている
- 【🍴】3杯目のブランデーを飲んでいるところ・・・ブッデローという、いいコニャック
- 扇情的な記事の得意な新聞が、盛んに書き立てている事件。
52 ブッデロー
- BOUTELLEAU
- ブッテロー社は、130年以上も最高級コニャックを作り続けている。
52 ひと月前の≪イラストレイテッド・ポリス・ニュース≫の紙面
- ≪ポリス・ニュース≫や≪フェイマス・クライムズ≫や≪ポリス・バジエクト≫といったレベルの低い、流血やら醜聞やらに目がない新聞が、ホームズにとっては、貴重な資料
- お高くとまった定期刊行物が避けて通ろうとする犯罪や不品行まで、もれなく報道するから。
- 『やせ細った遺体、またも発見される』という見出しの短い記事
53 記事の内容
- 11月3日午前
- ロンドンのターリング街
- その通りにある下宿屋への通路口にある裏庭に、男の死体が見つかった。
- しなびれてしわだらけの男
- その界隈ではおひとよし(シンプル)のシメオンとして知られるユダヤ人の浮浪者
- 本名はわからない
- シメオンの死因は、慢性的な栄養失調による心不全と判定された
- 何日か前に見かけた時、彼はまずまずの健康状態だったいう証言がある(地元でパン屋を営むユダヤ人が、パンを施していたから)
- 近辺での異様にやせ衰えた状態で発見された死体は、4人目。
- どの死体の顔にも一様に浮かんだ表情は、「絶望的な恐怖」
- 極端に身体が縮んでいる以外、4人の犠牲者たちのあいだに共通点はない。
- シャドウェル地区の、主にケーブル街、セント・ジョージ街、キャノン街あたりで目撃されている。得体の知れない“影(シャドウス)”との関係
- 過去数か月にわたり、その地区の人が、夜間にあまりにも異様な動き方をする濃い闇を見たと主張。不用意にそれに近づくと気分が萎え、恐れが湧いてくるという。
- 記事には、シンプル・シメオンの遺体の様子をきちんと描いた版画が添えられていた。骸骨のような顔に、「絶望的な恐怖」の表情。
56 イースト・エンドのスラム街は、伝説と幻想的な噂の温床
- 家々の屋根に吸血鬼が出没した
- 犯罪者が吊るされた辻に幽霊がぶらつく
- 燃えるような目をした人間もどきがカンガルーみたいに
58 4章 四人の犠牲者
58 最初の死者を見落としていた、ホームズ
58 3年程前にコンサルト探偵として開業以来
- 新聞記事をあさり、異常で不可解な死亡記事の情報を収集していた
- この件の記事をすくいそこなっていた。引き続き死者が出るようになって初めて、古い記事にさかのぼり同じパターンに当てはる事件の記事を徹底的に探した。
58 最初の犠牲者
- 香辛料や乾燥果物を売る行商人
- ジュニパー・ロードの家の玄関先に身体を丸めた格好で発見された。8月
- 警察発表は、「危ない状態」という言及で、シンプル・シオメンのような異様にやせ衰えた状態とははっきり述べていなかった。
58 第二の犠牲者
- ひと月後、道路清掃人の死体が発見された。9月
- 10代の少年
- 肺病か何か慢性の持病があり、それがもとで体力消耗、肉体委縮に至ったという見解。
- 清掃人の身では、病気の診断も治療も受けたことがなかっただろう。ばったり倒れるまで、黙って愚痴もこぼさずに症状に耐えていたというのか。
59 第三の犠牲者
- マッチ売りの少女の死体が発見された。10月
- 死因はリン中毒で、燐顎(んがく)といって、下顎骨(かがくこつ)が腐っていくもので、マッチ製造工場で働く人たちの健康を害することが多い。まず歯が抜け、次に膿瘍ができて、じわじわと壊死(えし)が進む、放っておくと例外なく死ぬ病。
59 【🔎】リン中毒
60 死んだ4人の犠牲者
- 市営墓地の墓標のない貧困者用の墓所に埋葬され、死後も最低限の関心と権利しか与えられなかった
- 死体を解剖しようなどと考える者もいなかった。誰も病気以外の死因と思いつかなかったから。
- 首都圏警察(ザ・メット)たちは、個別の散発的事件として処理し、4人とも異様な飢餓状態で死んでいるという意味ありげな特徴を見過ごしていた。
- 4人の共通点に気づいたのは、ワトソンと《ポリス・ニュース》の無名の記者(ホームズ)だけ。
62 ホームズのコンサルタント探偵という職業にたまに舞い込む事件
- 「タールトン殺人事件」
- 「ワイン商人ヴァンペリの事件」
- 「アルミ製松葉杖の怪事件」
- 内反足のリコレッティとその憎むべき細君の事件」
- という、ホームズのいう“ささやかな問題”ばかりだった。
- ホームズの学生仲間だったレジナルド・マスグレイヴと彼の家の古い儀式書にまつわる事件、などまんざらでもない難問もあった。
- 「グロスターシャーの屋根裏のミイラ化した手をめぐる奇怪な事件」・・・ホームズが忘れられない事件。
62 【🔎】【本】『マスグレイヴ家の儀式』(『シャーロック・ホームズの思い出』に収録)
63 モンタギュー街のホームズの部屋に依頼者が現れず、暇な時の修業
- 学術的な研究にいそしみ
- 棒術
- バリツという東洋の格闘技
- 調査に値する異常な出来事の兆候がないか探す
63 ホームズの推測
- 9月の清掃人の死、10月のマッチ売りの死からさかのぼり8月の行商人の死の相互参照
- 三人の死に関連があり、裏で同一人物の手が働いている。
- 短い新聞記事しかないので、証拠に乏しい
63 証拠探し
- 3人の死体発見場所:シャドウェル地区
- 月に一度という一定間隔で死者が出ていることから暦との関連性を発見:新月の夜を狙っている
- 犯人側になんらかの儀式を行うような感覚がある
64 ワトソンは、月の満ち欠けによるものだと言われる間欠性精神病と関係していることを疑う
- 言い伝えによると、ある種の狂気は満月になると最高潮を迎えるという。この場合はその逆で、同じ天秤の反対側の皿に載っているような、冷静で狡猾な、理性に基づく凶行だと、ホームズ。
64 【🔎】間欠性精神病
64 10月後半
- 月はどんどん細くなり、11月2日に夜空から姿を消すはず。:次の死者が出る予定の日。
- ホームズは、変装してシャドウェル地区の裏通りや人気のない場所を歩き回り調査を急いだ。
- だが、11月のシンプル・シオメンの事件が起きてしまった。
64 ホームズは学生時代アマチュア演劇に熱中していた。
66 ホームズはなぜ警察をまきこまなっかたのか
- スコットランド・ヤードは見込みはあるが、頼りないやつが2人いる。
- トバイアス・グレグスンとG・レストレードを鍛えている。
- 警察は、動かぬ証拠に裏づけられてない説なんて、信憑性がないので断られた。
66 トバイアス・グレグスンとG・レストレード
- ストレードのイニシャルGは、ゲイブリエルのことだとホームズは推測している。
- 彼等との関係を育てて活用するつもり。
- 2人は、他の仲間たちより飛び抜けて高い知性があるが、たいしたことはない。
- 互いに競争心がむきだし。
67 だが、シンプル・シオメンの死体発見の後、ホームズは現場を徹底的に捜査した。
- 2つの石畳の間の泥に埋まっていた、金のカフスボタンを見つけた。
67 金のカフスボタンが埋まったのは、12時間以内のこと。
- この1週間は雨が降らず、11月3日の朝は雨が降っていたが、それまで泥が固く、カフスボタンが埋まることなどなかったはずだから。(事件は11月2日)
- 24金カフスだから、泥に埋まることがなければ、すぐに誰かが拾って宝石店や質屋に持ちこんだだろうから。
- その金のカフスは、シャドウェル地区出身者のものでなく紳士のもので、医者のものだった。医者のシンボルであるアスクレピオスの杖が刻まれていた。
- カフスのもう1枚の円盤には、「V・S」のイニシャルが刻まれていた。
67 【🔎】アスクレピオスの杖
67 【💗】・・・「どうしてわかったんだ?」
「初歩的なことだよ、ワトスン」ホームズがあの有名なセリフを吐いたのは、このときが最初にして最後だった。・・・
68 医者のシンボルであるアスクレピオスの杖と「V・S」のイニシャルが刻まれていたことから、ホームズは絞り込んでいき、候補者を3人まで絞り込んだ。
- 消化器系を専門のハーリー街の臨床医は、除外。:60代で、体格も立ち姿も弱々しかったから。
- ランベスの聖トマス病院にいる外科の研修医も除外。:この男は30代半前で、ゴルフと水泳に熱中しており、ホームズの描いた犯人像にぴったりだったが、一度もカフスをつけず、ボタンカフの服ばかり着ていたから。
- 最も可能性が高い男ヴァレンタイン・スタンフォード
69 ワトソンがバーツで知り合ってからのヴァレンタイン・スタンフォードのその後
- ワトソンが去った後もスタンフォードは、病院で仕事をつづけたが、次第に管理職から疎まれるようになった。仕事がいいかげんになり、出勤も不規則で、態度もしばしば横柄だった。
- 結局、彼が担当した患者が盲腸の手術後に腸の壊疽(えそ)で死亡して、理事会は彼を解雇せざるをえなくなった。
- スタンダードのアヘン中毒がこの頃から始まっていたと断定できないが、その可能性は高い。
- 綜合評議会の記録に黒星がついたスタンフォードは、どの認可病院にも就職できず、マイル・エンドの救貧院に付属するボランティア病院、聖ブリジッド・ハウスで技術を磨くことになった。
- 病院からすぐのところに、グンフェン・シュウのアヘン窟があったため、頻繁に通うようになる。(ホームズが、聖ブリジッドの看護婦から聞き出した。)
70 聖ブリジッド・ハウス
- マイル・エンドの救貧院に付属するボランティア病院。
- 裕福な慈善家たちからの寄付金や出資金で運営され、貧しい人たちに無償で治療を施す病院。
- スタッフの給料が安すぎるので、休みの日を犠牲にしてほかの病院から来てくれる医師や、スタンフォードのような別の収入がある常勤スタッフにより成り立っていた。(スタンフォードは、家族信託から多少の収入があったため、ごくわずかな給料で生きていけた。)
- 聖ブリジッド・ハウス側には、採用する人を選ぶ余裕がなかったので、不祥事を起こした医師でも歓迎された。
70 【🔎】マイル・エンド
- Mile End
70 ホームズが話を聞いた聖ブリジッドの看護婦
- アイルランド人の女性
- スタウト・ビールが好きで、一杯おごるたびに舌がゆるんでいった。
- アヘン中毒の患者を数多く看護してきたので、スタンフォードにその微行を見てとり、アヘンをやめるように何度も説得したが、聞き入れられなかった。夢中だった。
- 8月の時点でスタンフォードは聖ブリジッドでの職を辞し、姿を消した。
70 【🔎】スタウト・ビール
71 ホームズは、11月の大半をスタンフォードを追う作業に費やした。
- 11月も終わりに近づいた頃、スタンフォードを発見できた。
- スタンフォードは、ブラックウォール鉄道路線に面したヨーク・ロードのテラスハウスの軒下にある、二部屋のみすぼらしいアパートに住んでいた。
- スタンフォードが出かけるのは、食事の時と、銀行で金を下ろす時と、グンフェン・シュウの店に行く時だけ。
- ホームズは、スタンフォードを見張りはじめ、昼夜を問わず尾行した。新月が間近になったころ、彼が次の犠牲者を襲うのを現行犯で捕えようと考えた。そこでワトスンが割って入った。今となっては、あの少女が犠牲者かどうかわからない。
71 【🔎】ブラックウォール鉄道
71 【🔎】ヨーク・ロード
74 ホームズの詳細を聞き終わったのが、深夜2時。
- ホームズのすすめで、泊まっていくことになるワトスン。
76 5章 スッコットランド・ヤードのグレグスン
76 ハドスン婦人
- 小柄でちょっと気難しそうな年配の婦人
- 朝食の料理を運んできてくれていた。
77 ホームズは、7時すぎに出て行った、とハドスン婦人。
- すでに、今は9時近い。
77 【🍴】ハドスン婦人が、ホームズに頼まれて用意してくれた朝食
- フライドベーコン
- ポーチドエッグ
- バター付きトースト
- 湯気の立つコーヒー
78 ホームズが帰宅
- スタンフォードがゆうべ帰ってこなかったという自分の推測が正しいかどうか確かめるため、ヨーク・ロードにある彼のアパートに行ってきた。
- ドアの鍵をこじあけ、部屋が空っぽで、ベッドもつかわれていないと自分で確認した。
78 【🍴】ホームズが。ぼくはまだ朝食を食べていないと、階下のハドスン婦人に食べたいものを注文する。
- キッパー(塩漬けして燻製にしたニシンの開き)2枚にゆで卵を一つ。
78 【🔎】キッパー
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79 ホームズが、不法侵入したスタンフォードの部屋からもう片方の金のカフスボタンを持ち帰ってきた。
- スタンフォードのベッドサイド・テーブルにあった
- かれは、シンプル・シオメンの現場にいたことになる。
80 グレグスン警部
- 長身で白い顔をした亜麻色の髪の男
- 両手が丸々として、雄々しく、有能そう
- ドクター・ヴァレンタイン・スタンフォードのことで、ホームズに会いに来た。
83 グレグスン警部からの報告
- 5人目の犠牲者は出ていない。
- ドクター・ヴァレンタイン・スタンフォードを逮捕した。
- スタンフォードは、取り乱していて、まともな精神状態ではない。スタンフォード本人かもはっきりしないくらい。
- 財布の中に名刺があったが、その財布が彼自身のものかどうか、誰にもわからない。
- ホームズにヤードまできてもらって、本物かどうか確認してほしいと伝えた。
84 6章 聞き覚えのある言語
84 スコットランド・ヤード
- ホワイトホール・プレイス4番地
84 【🔎】スコットランド・ヤード
84 スコットランド・ヤードの待機坊に送られたスタンフォード
- 耳障りな声で言葉とも思えないようなことをひたすら口走り続ける
- 5時ごろ連れて来られた。
- 二人の巡査が、夜間巡回を終えるころにオールドゲイトで確保した。
- わめきながら自分を傷つけようとして、常軌を逸していた。
- 前夜会っていなかったら、ワトスンにもかつての仲間だとわからなかった。
- 髪を振り乱し、目を血走らせ、泡唾のまとわりつく唇、片方の鼻孔からひとすじ垂れ下がる粘液。血の気の引いた肌は青ざめて灰色がかり、着ている服は破れてびしょぬれだった。さっきまで下水に浸っていたような臭い。顔に擦過傷や打撲傷がいくつもある。ひたいは青黒いあざの迷彩柄で、頬は爪の引っかき傷だらけだった。
- 全部、自分でつけた傷:捕まえた時、オールドゲイト・ポンプに頭を叩きつけていた。いさめると、今度は顔に爪を突き立てて、両方の目玉をえぐり出そうとしているようだった。
87 ガチャリと鎖の音をたててスタンフォードがいきなり立ち上がり、金切り声をあげはじめた。
- 「フダグン!エブムナ・フダグン!ハフドルン・ウガフン・ングハ・ングフト!」と繰り返す。
88 アセルニー・ジョーンズ警部
- 南部ウェールズ(ザ・ヴァリーズ)出身
- スタンフォードがほとばしる謎の言葉が、コーンウォール地方の方言か、ゲール語か、ウェールズ語かとうたがい、ウェールズ出身者のアセルニー・ジョーンズ警部が、ウェールズ語ではないと断言した。
88 ワトスンには聞き覚えのある言葉
- うつろにこだまする声が聞こえる。
- 目をよぎる鱗状の皮膚、細い裂け目のような瞳孔、ちらちら震える二又の舌。
- 何か月もかけて忘れようとしていた、どろどろとした音節。
- 真っ青になり、気絶しかけるワトスン。
90 スタンフォードが、かがみ込んで前腕に顔を近づけ、嚙みちぎりはじめた。
92 スタンフォードに応急手当をしたワトスンに、スタンフォードは忠告して亡くなる。
- シャドウェルのことは忘れたまえ。
- あの場所にはかかわるな。二度とあそこに近寄るな。力がはたらいている。
- 人間以上の人間たち、連中は“グレイト・オールド・ワンズ”と手を結んでいる。
- 禁断の力を求めている。やつらが力を手にしたらおしまいだ。
92 【🔎】グレイト・オールド・ワンズ
93 7章 移動祝祭日
93 “グレイト・オールド・ワンズ”
94 ・・・「ぼくらは無神経だった」彼はスタンフォードの下敷きになっていた馬巣織りの灰色の毛布を引き出して彼の身体に掛け、・・・
94 【🔎】馬巣織り
- ホースヘア・クロス
94 ・・・「あなたの上着の左ポケットがヒップ・フラスクで膨らんでいるのがーーー・・・・
94 【🔎】ヒップ・フラスク
ステンレススキットル フラスク ヒップフラスコec.ujack.co.jp
95 ウイスキーをやりながらホームズ、グレグスン警部、ワトスンの議論
- ホームズが言うように、これまでの殺しがすべてスタンフォードのしわざだとすると、彼の死を持ってこの一連の殺人事件も終わりを迎えた。
- 完全主義者を辞任するグレグスン警部は、とことん調べ抜くことにこだわる。
96 まだ答えの出ない問題
- スタンフォードがどうやって犯罪を行ったか?
96 ・・・「ぼくに言わせれば、『論理的な想定』というのは撞着(どうちゃく)語法です。同じ分の中にあるまじき二語だ。・・・
96 【🔎】撞着(どうちゃく)語法
96 スタンフォードがどうやって犯罪を行ったか?
- グレグスン警部は、餓死させたと考える
97 グレグスン警部説のホームズの吟味
- 餓死は2~3週間かかる
- スタンフォードは、かなりの時間をかけて、それぞれの犠牲者をあらかじめ選び出し、拉致してからどこかに隠し、飲まず食わずで自然死するのを待ったということにする。
- つじつまが合わないのが、正確な周期だ。どの死体も新月の翌朝に出現している。どうやって、スケジュールどおりに絶命するようにしたのだろう?
- 餓死する期日は移動祝祭日のようなものだから、不可能。
97 捕えた犠牲者を飢えさせておいてから、殺害したと、グレグスン警部。
- そうやって月齢をあわせて死者を出した。
98 ホームズの吟味
- 検視官が死体を検分していたら、殺害されたかどうか判断できたのにとホームズ。(検分していない)
- 『恐怖の表情』と「おもいがけず、安らかならざる死を迎えた」について、ワトスンの死体の腐敗に進む初期段階の現象についての意見を説明
- 飢えた犠牲者が思いのほか早く死に至ることもある、それを考慮すると、スタンフォードは、期日の日まで、徐々に腐敗の進む死体をかかえていなければならない。
- ホームズの知るかぎり、どの死体も死後それほど時間がたっていなかった。多少、腐りかけたような臭いだけはした。
98 グレグスン警部は、運にめぐまれていて、犠牲者全員がしかるべきあいだは生きていたのではと主張
- ホームズは、無理やり餓死させるという説そのものに重要な事実は、スタンフォードが、次の犠牲を物色していたのは、ついゆうべのことだと主張。
99 以上のことから決着はついたとグレグスン警部は、認めた。
- 方法はわからないが、スタンフォードの犯行であり、彼は死んだ。
- ホームズたちが詳細をしらべるのなら、進展は教えて欲しいと伝えた。
100 ・・・ホームズと私はぬらぬらと不快な光沢を見せて流れるテムズ川を右手に、馬車の往来を左手に見ながら、エンバンクメント沿いを東へ進んだ。トラファルガー広場まで突っ切り、そこからオックスフォード街へ向かうあいだも、ホームズはずっと黙りこくっている・・・
100 【🔎】エンバンクメント
100 ・・・折しも降臨節に入ったところで、オックスフォード街に並ぶ店はクリスマス前に華やいでいた。・・・
100 【🔎】降臨節
100 ・・・オックスフォード・サーカスでブラスバンドが演奏を始め、・・・
100 【🔎】オックスフォード・サーカス
101 ・・・「ワトスン」マールバン地区を北へ進みはじめたとき、ホームズがとうとう口を開いた。・・・
101 【🔎】マールバン地区
- <?
102 ワトスン、ホームズの共同間借人になることを決める。
- ホームズの相棒と同居人なる。
- ノーウッドからの引っ越し
- 引っ越しはともかく、今日の午後はやいうちに、ベイカー街に移ってきてほしいホームズ。
102 【🔎】ノーウッド
103 退役軍人のワトソンが持つピストル
- ウェブリー・プライスの中折れ式リヴォルヴァー
- 弾はイリーの2番、450口径
103 【🔎】
105 8章 ドラゴンの巣
105 ロンドン 夜
- 霧がたちこめ、視界が悪くなる・・・濃霧
- 氷の畝(うね)ができる・・・身が斬られる寒さ
105 ホームズとワトスンは、ライムハウスへ
- グンフェン・シュウという男が経営するアヘン窟
105 グンフェン・シュウ
- アヘン窟のライムハウスの中国人経営者
- 1850年代後半に起きた第二次アヘン戦争(アロー戦争)と、それにともなう咸豊帝(かんぽうてい)(清の第9皇帝)の逃亡および円明園(えんめいえん)(清代に築かれた離宮)焼き打ちのあと本国を出て、それ以来イギリスに在留している。
- 入国以前の過去については記録がない。
- その後の20~30年で絹と米の輸入事業から始めて一大帝国を築き上げた。その二品目については取引の90%が、彼の手を経るといわれているほど、イングランド市場をほぼ独占し、相当な上前をはねている。
- 移民の成功物語:無一物から大富豪にまで成り上がった男が、税金を納め、気前よく慈善を施し、ベルグレイヴィア(ハイド・パーク南地区で当時から今に至るまで高級住宅地)に邸宅を、サリー州の田園地方にマナーハウスを所有して、それぞれに使用人を大勢雇い、起業家として活躍。
- グンフェン・シュウの身辺につきまとう、あやしげな風聞:イースト・エンドにある少なくとも3つのアヘン窟とのつながり。彼のところへ上海や香港から絹の反物や米袋を運ぶ汽船には、甲板下の秘密区画に箱入り生アヘンが隠されているという噂。
- 証拠はないが、アヘン窟の黒幕。
105 【🔎】咸豊帝(かんぽうてい)
105 【🔎】第二次アヘン戦争(アロー戦争)と円明園(えんめいえん)
105 【🔎】円明園(えんめいえん)
106 【🔎】ベルグレイヴィア(ハイド・パーク南地区で当時から今に至るまで高級住宅地)
106 1867年の薬事法制定により、アヘン由来薬物の販売が規制されて以来
- 流通しているモルヒネやアヘンチンキなどを薄められた調合薬を買うよりも、アヘン窟で混じりけのないものを吸飲するほうが手っ取り早いと思う中毒患者が増えた。
- 麻薬の密輸や不法供給に多額の金が動き、グンフェン・シュウは、ロンドン第一の供給元となったといわれている。証拠はない。
107 ひとりがアヘンの愛用者(ホームズ)ともうひとりがアヘンの手ほどきをしてもらいたがっている(ワトスン)2人組の紳士を装って、ライムハウス界隈へ向かう
- グンフェン・シュウその人に謁見できるようにするのが目的
108 ・・・彼らの祖国でわが国がこの数十年してきたことーーーいばり散らしたり脅したりを繰り返してきたことを思えば、彼ら民族に私たちが慕われるはずもない。当然ながらその後も中国の情勢は荒れて、義和団の乱が勃発し、必然の結果として大英帝国は非妥協的態度をとり、清王朝は諸問題で対立をかかえて統治不能となった。・・・
108 【🔎】義和団(ぎわだん)の乱
108 ゴールデン・ロータス・ホテル
109 中国人老女
- ゴールデン・ロータス・ホテルのフロントで迎えた、花柄のチャイナドレスを着た子供のように小さな中国人
- つやつやの髪を後頭部で丸くきっちりまとめ、そこへ箸を2本交差さして挿して固めている。
111 リーとチャン
- 丈長シャツにゆったりしたズボン、ぴっちりした縁なし帽という格好の中国人2人
- 2人は、吸飲者たちのあいだを静かに巡回して、看護婦のように気づかいながら様子を見ていた。
- 中国人老女はリーとチャンに、ホームズとワトスンの世話を申し付けた。
- 2人とも若い
- 口の両端からチョウザメの触鬚(しょくしゅ)のような巻きひげを垂らしているのが、リー。
- チャンは、鬚がないが、背後に長さ1フィートほどの豚のしっぽのような弁髪を垂らしている。
- 英語を一言も話さないで、案内した。
- ホームズが、1クラウンだすとチャンは悲しそうに首をふり、指を2本立てた。ホームズが倍額の半ソヴリン出すと、丁寧に受け取った。
112 【🔎】ゾヴリン
- Sovereign
- 1ソブリン=1.05ポンド
-
シャーロック・ホームズの時代の1ポンドを5万円くらい
- <25000円くらいホームズは支払った。
112 リーとチャンが、アヘンを詰めた水パイプを持ってきた。
- 吸うふり
114 リーとチャンを呼びつけて、ホームズが大声で因縁をつけはじめる
- 室内が大騒ぎになる
- ホームズとリーとチャンの格闘
- ワトスンは、リヴォルヴァーで応戦したがすきをつかれ、2人とも逆転して負ける
- ホテルを追い出される際、ホームズが、老女にグンフェン・シュウの名を出して粉をかけた。
- リーにリヴォルヴァーを奪われ、あきらめるワトスン。
123 ワトスンにとってのウェブリー・プライスのリヴォルヴァー
- 大切なもの
- あの銃が、アルガンダーブ渓谷の時だけでなく、何度もワトスンの命を救ってくれたものだった。
125 ゴールデン・ロータス・ホテルから尾行がついている
127 ・・・チャンとの闘いでホームズが負ったいくつもの打撲傷に、テレビン油剤を塗って手当てしてやった。・・・
127 【🔎】テレビン油剤
129 真夜中の侵入者
129 午前3時の侵入者
131 侵入者 グンフェン・シュウ
- 中国人
- 背が高い
- 頬骨がみごとに突き出て、薄くなりかけた髪はきっちりなでつけてある
- 正装のウィングカラー、金のタイピンからエナメル革の靴の甲皮を覆うフェルトのスパッツまで、つけいる隙のない装い。
- ダブルのニューマーケット・コートとグレーのアンゴラズボンは、見ただけで値の張るサヴィエル・ロウ仕立てとわかる、細く身の締まった体形ぴったりの、あつらえ品。高級なチェスターフィールド・オーバーが半分にたたんで肘掛け椅子にかけてあり、その上に帽子とマフラーが載っておる。
- くつろいだ雰囲気。
- 完璧な英語
132 グンフェン・シュウは、ホームズのことを知っていた。
134 グンフェン・シュウは、ワトスンのウェブリー・プライスの銃を返してくれる
134 リー・クイイン
- ワトスンから銃を没収した中国人使用人
136 故ヴァレンタイン・スタンフォード医師とグンフェン・シュウとの関係の証拠
- ホームズの部屋から見える、縁石のところに駐まっている箱馬車(クラレンス)が、きのうの夜中、日付が変わってすぐのころ、シャドウェルからスタンフォードを連れ去った馬車と同じ。
- スタンダードは、『ライムハウスのとある店舗』ことゴールデン・ロータス・ホテルの常連客だった。グンフェン・シュウとの間に直接関係あると推定できる。
- スタンダードは、グンフェン・シュウの下働きをしていた。犠牲者を見つくろって連れ去っていた。ケシの奴隷が転じて、グンフェン・シュウの奴隷にもなっていた。
139 データはないが、そこから先のホームズの推測
- スタンダードは、グンフェン・シュウと一緒に、ある実験をしていた。
- 人をさらってきては、何か強力な新種の麻薬を試していた。
- だが、これまでのところ有望な結果はでていない。有望どころか、その麻薬はたちまちのうちに劇的な死をもたらした。使用者の精気、身体的活力、存在そのものを奪ってしまう。そして、やせ衰えた死体をシャドウェル当りにこっそりばらまいて捨てる。
- 充分な間隔をあけて、ひと月に一度と決めて実験し、多数の死者を出していると見えないようにした。
139 ・・・言ってみれば、あなたとスタンダードは現代の“バークとヘア”(19世紀初めに解剖用の死体を売るため大量殺人をした2人のアイルランド人)になったわけだ。・・・
139 【🔎】“バークとヘア”(19世紀初めに解剖用の死体を売るため大量殺人をした2人のアイルランド人)
142 “グレイト・オールド・ワンズ”とはどういう意味なのかと問いかけるホームズに、グンフェン・シュウが、ほんの一瞬まごついた。
- 恐怖から生まれた憤怒
144 ・・・そうしなければ、ぼくは不撓不屈(ふぎょうふくつ)の容赦ない追跡者、まさにブラッドハウンドとなってあなたにつきまとう。・・・
144 【🔎】不撓不屈(ふぎょうふくつ)
144 ・・・「そうします。それがぼくの生き方(モーダス・ヴィヴェンディ)ですから」・・・
144 【🔎】生き方(モーダス・ヴィヴェンディ)
- modus vivendi
144 ・・・君たち英国人は実証主義(エンピラシズム)の上に帝国(エンパイア)を築いてきた。・・・
144 【🔎】実証主義(エンピラシズム)
145 ・・・「あなたのとりとめものない形而上学(けいじじょうがく)的な話には、・・・
145 【🔎】形而上学(けいじじょうがく)
145 ・・・私が話題にしているのは、この国の、いや、どんな国のものよりも古くからあるーーー人目に触れず長いあいだ眠っていた、ひとにぎりの者しか知られていない宇宙論(コスモロジー)だ」・・・
147 ・・・おとぎ話の魔女がヘンゼルとグレーテルを、甘言とたくさんのキャンディをエサにしてお菓子の家におびき寄せるようなものだ。・・・
147 【本】『ヘンゼルとグレーテル』 グリム童話
147 【🔎】ヘンゼルとグレーテル
147 グンフェン・シュウは、ホームズを啓発のためについてこいと誘う
- スタンダードの運命や、あの痩せた死者たちの裏にある真実につながること。
- 包括的啓示の経験を経て、世界のことをこれまでより広く、深く理解することになる。
- 好奇心に引き受けるホームズ。とめるワトスン。
150 1880年当時のホームズ
- まだ若く、若者らしく向こうみずで性急なところがあった
- 後年は覇気が知性によっていくぶんなだめられたものの、すっかり消え去ることはなかった。
- 若い頃のホームズは、危ない橋を渡りがちだった。
150 5時ごろの夜の帳が下り、どんよりとした一日のおわりに雨が降りはじめた。
- ホームズの帰りを部屋で待つ、ワトスン。
151 【🍴】グンフェン・シュウの甘言にのり一緒に出掛けたホームズを心配して、部屋で待つうちに知らぬ間に、肘掛椅子に丸まって切れ切れに数分ずつ眠ってしまったワトスンに、ハドスン夫人が運んでくれた夕食。
- いい匂いののする熱々のシチュー
- 朝も昼も食べていないワトスンは、このシチューも手を付けなかったので、ハドスン夫人は、不満そうに舌打ちしてさげた。
151 真夜中近く
- ホームズが帰宅する。
- よろよろと敷居をまたいで入って来たのは、24時間前に出かけたいったホームズとは別人になっていた。
152 10章 ボックス・ヒル古墳
152 げっそりやつれた顔に目を血走らせたホームズ
- 迎え出たワトスンの腕に倒れ込んだ。
- 靴とズボンに泥がこびりつき、上着は草のしみだらけ
- 頬やひたい、両手に、やたらと引っかき傷がある。
- 手に負えないほど身体が震えていた。
- 雨にぬれている
153 暖炉で暖まり、ブランデーと気付けのパイプを何回か吸うと、元気を取り戻したホームズがあったことを語り出した。
153 ・・・マールバン・ロードに出ると馬車は左でなく右に曲がった。その後ハイド・パークを横切ったので、行き先はどうやらベルグレイヴィアにあるグンフェンの邸宅らしいと考え直した。だが、それも違った。どうやら長旅になるらしい。ホームズは座席にゆったりともたれた。・・・
153 【🔎】マールバン・ロード
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154 旅の間のグンフェン・シュウの身の上話
- 中国北西部の青海(チンハイ)という、チベットとの国境に近いへんぴな高原地帯で生まれ育った。
- 一家は農業を営み、細々と暮らしていた。
- 子供のころから野心があったグンフェン・シュウは、成長すると家を出て、働きながら北京へ向かった。
- 下層の仕事につき何でもした。田舎育ち丸出しのしゃべり方を笑われるので、なまりや方言を出さないようにし、北京語で洗練された上品な話し方をまねて覚え、北京人で通せるほどになった。自分にカメレオン並みにまわりに溶け込む才能があることに気付いた。
- 首都に暮らすうちに、アヘン貿易が国を荒廃させてしまったか、目の当たりにした。
- アヘンの恩恵を受けるのは、2つの階級の人間に限られれていた。インドでケシを栽培して麻薬を船で中国に運ぶ、イギリス東インド会社の代表者たちと、それを現地で売りさばく麻薬仲介人たち。
- 1600年代半ば、清(シン)が絹、陶磁器、中国茶などの市場を世界に開放して以来、イギリスから中国へ流れ込んだ資金を、東インド会社がうまい具合に回収した。
- アヘン貿易は、ひそかに行われた帝国主義的政策で、銃を使わずに一国を服従させる方策だった。
- 清の皇帝が、取り締まりを強行し、大量のアヘンを没収することになった。イギリスは報復として砲艦を派遣し、それが第一次、第二次と繰り返されたアヘン戦争の導火線に火をつけた。
- そのころグンフェン・シュウは、麻薬仲介人の仲間入りをして東インド会社を相手に取引していた。
- 25歳になるころは、もうかなり裕福になり、30歳で押しも押されもせぬ金持ちになった。北京から上海へ、その後香港やマカオまで勢力圏を広げた。
- イギリスとの取引によかれと思って英語に磨きをかけると、ひいきにしてもらえた。
- 第二次アヘン戦争が終結すると、アヘン貿易を認める条約を含んだ北京条約が結ばれた。清の咸豊帝(かんぽうてい)は、北京から北に逃げ、ほどなく逃亡先で没した。
- グンフェン・シュウにしてみれば、祖国は滅びたも同様だったので、イングランドに来たというわけ。
154 【🔎】中国北西部の青海(チンハイ)
154 【🔎】北京
156 【🔎】北京条約
157 馬車は、郊外のウォンズワース、ウィンブルドン、そしてモーデンを縫うように進んだ。
- グンフェン・シュウのサリー州の家へ向かっているのか、とホームズは思った。
- グンフェン・シュウは、ドーキングのはずれにある50エーカーの地所に、ケイパビリティ・ブラウン(18世紀の造園家ランスロット・ブラウンのニックネーム)が設計した庭園とリージェンシー様式のマナーハウスを所有していた。
157 ホームズを馬車に残して、グンフェン・シュウは家に寄った。
- 御者が馬を交換
- 固く封帯を巻いた箱を携えてグンフェン・シュウが戻った。
- ホームズは不安になってきていた。
157 【🔎】ウォンズワース
157 【🔎】ウィンブルドン
157 【🔎】モーデン
157 【🔎】サリー州
158 馬車がサリー州の原野を抜けて行く間に、グンフェン・シュウは宗教の話を始めた。従来の宗教は神の性質を誤解している。
- 神とは、愛情の表現よして私たちを創りたもうた、慈悲深い全能の存在などではない。神を擬人化するのは、褒めてもらいたいという人間の願いから生まれた、誤った考えだ。
- 歴史をさかのばれば、古い時代の神ほど敵意があって思いやりがない。神に敵対する者たちを罰し、疫病をもたらして神の名において人々を苦しめた、旧約聖書のヤハウェのことだけではない。いつ果てることもなく酒池肉林にふけり、ごまかしを続ける、異端の神々のことでもない。
- 洞穴から出てきたばかりの人類が獣も同然の状態から一歩進み、戦の絶えない領土を野蛮な王たちが支配するという、それなりに文明化してきたころの話だ。ノアの大洪水以前の暗黒時代、考古学者たちが掘り出して研究材料とする遺物などろくに残っていない、石と鉄と火の時代のことだ。それが最古の神々の時代だ。
158 【🔎】旧約聖書
158 【🔎】ヤハウェ
159 【🔎】ノアの大洪水
159 石と鉄と火の時代の最古の神々の時代
- そうした時代に相応し、どんな人間の心にもあった、そして今もある、凶暴性と渾沌をそのまま反映した神々。
- 何よりも征服と強奪と虐殺を望む神々。
- 殺戮に喜びを覚え、人間など家畜並みか、ペット程度にしか扱わない神々。
159 グンフェン・シュウが最古の神々を知ったのは、イギリスに来てから。
- 子供の頃に信じていた龍や自然界の霊は青海に置いて来て以来、棄教者だったが、ロンドンで真実を発見した。神々はわれわれの内にあり、われわれの命と破滅を欲している。
160 イングランドの首都、無類の大都会であり、帝国の心臓部であり、現代の世界の中心でグンフェン・シュウの信念が砕けた理由
- ロンドンには、一般のロンドン人が気づいている以上の意味がある。
- 原始時代からある基盤の上に成り立つ都市だから、人目につかない忘れられた片隅の随処で、古いものが新しいものに浸透している。
- ロンドンは、ローマ人がやってきて定住するずっと前から存在していた。
- はるか昔、原始ブリテンの部族は、大小さまざまな川の交流点に集まり住んで聖堂や神殿を建て、自分たちの崇拝する存在に野蛮な貢物(敵方の捕虜や仲間うちの好ましくない者の生贄)をした。
160 ロンドンの名前の由来
- 『ロンディニウム』そのものの語源はさだかでない
- ジェフリー・オブ・モンマス(アーサー王伝説の語り手のひとりとして知られる12世紀イングランドのキリスト教聖職者、歴史家)によれば、古代ローマ帝国復興以前のラッドという伝説の王がこの都市を築き、その王の名前がロンディニウム』の由来になったいうのだが、学者たちはそれに異議を唱え、のちに、『渡るには幅が広すぎる川』という意味のロウォニダというケルト語が転訛(てんか)したという説を打ち出した。
- ほとんどの人が知らないいくつかの文献には、首都ロンドンと、ロボンと呼ばれる神との関係が記されている。
160 【本】『アーサー王伝説』ジェフリー・オブ・モンマス
160 【🔎】アーサー王伝説
160 【🔎】ジェフリー・オブ・モンマス
160 【🔎】ロンディニウム
161 ロボン
161 ロボン
- ほとんど知られていない名。
- ロボンは、紀元前3000年ないし4000年ごろにこの一帯で勢力をふるっていた神々のひとり。
- 戦いの神であるロボンを信奉したのは、当時の基準からして好戦的で獰猛な人々で、力ずくでまわりにいる部族を支配していった。
- 『ロボン』が、長い間に翻訳や母音変化の道のりを経て、『ロンドン』にいきついた。
162 馬が重労働にあえいでいる
- ドーキング地方 ノースダウンズの丘陵を上っている
- サリー州ギルフォードからケント州ドーヴァーのホワイト・クリフまで連なる白亜質の尾根。
- 向かっているのは、ノースダウンズの最高地点、ボックス・ヒル。
162 【🔎】ノースダウンズの丘陵
162 【🔎】サリー州ギルフォードからケント州ドーヴァーのホワイト・クリフまで連なる白亜質の尾根
162 【🔎】ノースダウンズの最高地点、ボックス・ヒル
162 馬車が通れなくなると、ホームズとグンフェン・シュウは降りて、謎の箱の取っ手を片方ずつ持って、頂上まで運んだ。(ノースダウンズの最高地点、ボックス・ヒル)
- 頂上を極めると、足もとから20マイルあまり先のサウスダウンズまで、サリー州とサセックス州の眺望が開けた。
- 12月の陰気な日でも、それなりにいい眺めだった。
162 謎の箱
- 中身は何だかわからない
- 箱はずっしりと重く、歩くたびにカタコト音を立てた。
162 【🔎】サウスダウンズ
163 ボックス・ヒルで、グンフェン・シュウとホームズは、古墳とおぼしき、枕のような形をした塚がいくつも集まっているあたりまで行った。大昔の王や族長、高僧といった高位の人々が眠っている。
- 箱を地面に下ろすと、グンフェン・シュウがふう封帯の皮ひもの留め具をはずして、箱の中から古色蒼然(こしょくそうぜん)とした大型の書物と、粉末の入った瓶、茶色がかった液体の入った皮下注射器を取り出した。
- 30分ほどかけ、グンフェン・シュウは草の上に粉末をていねいに振りかけて大きな円を描くと、しきりと書物を参照しながら、円のまわりに等間隔で独特の凝った記号を描いた。
163 【🔎】古色蒼然(こしょくそうぜん)
163 グンフェン・シュウは草の上にまいている粉末
- こんもりして軽い、うっすらとくすんだ灰のようなもの。
- 何なのかわからない。
163 書物
- 背の金箔の文字がすっかりきれてほとんど読めなくなっているものの、かろうじて著者名はルードヴィヒ・プリン。
- タイトルは、『妖蛆(ようしゅ(そ))の秘密(デ・ウェルミス・ミステリイス)』、あるいはそれに近いものと解釈した。
163 【🔎】『妖蛆(ようしゅ(そ))の秘密(デ・ウェルミス・ミステリイス)』
163 『妖蛆(ようしゅ(そ))の秘密(デ・ウェルミス・ミステリイス)』関連
164 すっかり準備が整ったと言って、グンフェン・シュウはホームズに袖をめくるように言う。
- 茶色がかった液体の入った皮下注射器をうつつもり
- うたなければ、何も起こらないとグンフェン・シュウは言った。『夢の探求(ドリーム・クエスト)』が起きない。
164 茶色がかった液体
- グンフェン・シュウが考案した調合薬。
- さまざまな物質の混合物(カクテル)。
- 主な成分はアヘンとコカインで、それに中国本土でしか育たないという薬草のエキスを加えたもの。
165 グンフェン・シュウの“カクテル”をうったホームズ。
- ホームズは粉末で描いた円に入って、グンフェン・シュウ自身は外にとどまった。印をふまないように、ホームズに注意した。
165 グンフェン・シュウは草の上にまいている粉末の招待
- 骨灰(ボーン・アッシュ):カルシウム含有量が高い
- 骨灰磁器(ボーン・チャイナ)の製造に使う動物の骨灰ではなく、人骨。
- 灰のでどころは、フリート街のセント・ブライド教会地下納骨堂。入手は容易でもなかったし、安くもなかった。地下聖堂の管理人から買った。
165 グンフェン・シュウは書物を開き、声を出して読み始めた。
- 単語はわからなくても、ホームズには聞き覚えのある言語だった。
- スタンダードがスコットランド・ヤードの独房で口にしていたのと、同一の言語。
- その言葉がヘビのように耳の中に這い入ってくるのと同時に、ホームズの血管内を麻薬が駆け回った。
- 氷のように冷たい小さな指に、皮膚の下をぞわぞわ引っかかれているような感覚。
- グンフェン・シュウの声を聞いていなかった。聞こえるぎこちないリズムの文言は、ある種の呪文のようなものらしく、別世界の力に訴えているが、それもヴェールの向こうに遠のき、遠くかすかになった。まばたきすると、丘の上にひとりきりだった。グンフェン・シュウの姿はない。静まりかえっている。風さえ止んでいた。夢の探求がはじまった。
167 11章 シャーロック・ホームズの夢の探求
167 落ち着いたら、グンフェン・シュウに騙されたと思ったホームズ。
168 風がなくなり訪れた静けさを奇妙だと思うホームズ。
- 死のような静寂。無音。
- 聞こえるのは、自分の心臓の鼓動と呼吸の音だけ。
- 時の狭間にはまり込んだ感じがした。:懐中時計は止まっていた。
169 男がひとり現れた。
- 突然、目の前に現れた。
169 突然現れた男
- キルトのようなものを身にまとい、毛皮のついたブーツを履き、繊細な細工の銅の留め金がついた外套を片方肩にかけていた。
- 上腕には金の腕輪、首には金の首輪がはまっている。
- 肌に明るい青のジグザグ模様が入っており、大青(たいせい)と呼ばれる植物染料で描いたものだとホームズは思った。
- 肩まで伸びた髪は不揃いで、肌は全体的に日焼けして浅黒かった。
- 男の身体のたくましさは、近代の農耕作業者の体格とはまるで違っていた。しなやかで強靭な肉体は、あまたの苦難や争いを知る、人生のあらゆる局面で戦いを経験してきた男のものだった。
- 両刃の斧を持っていた。両刀ともあちこち欠けたりくぼんだりしていて、鎧や骨の上に何度も振り下ろされたものに違いない。
- ケルトの戦士のような格好。
169 突然現れた男は、好奇の目でホームズを眺めると、うめき声を漏らし、記録にも記憶にも残っていない言語でしゃべりだした。
- 知らない言葉なのに、相手の言う意味はお互い理解できた。
170 突然現れた男の話(名もなき族長)
- 名前は教えてくれない
- かつての族長、偉大なる部族の長だった者
- われわれは北からやってきた、冬が長く、風が冷たい、過酷な山岳地帯から。
- 何年もかけ、世代から世代へと引き継ぎながら、南へ進軍し、領土を拡大し、われわれに従う部族を吸収し、従わない部族は全滅させた。
- ようやくここまで、白い海岸の近くまでたどり着き、ブリテンの多くはわれわれのものとなった。
- 私は、大いなるタメサス川のそばに砦を建て、わが家とした。鉄の斧と鉄の意志により、私はそこを治めた。
- 神々に血と略奪の貢物をし、しばらくは報いられ、強大で並ぶ者なき者となった。
- 神々は、常に満足するわけでなく、たやすく失望する。神々は戦いの混乱の中での武力によって、または、祭壇の上での神官の聖なる刃により、解放される魂を要求する。普通はそれで神々の食欲が満たされ、まどろみから完全に目覚めない。だが時にはそうならない場合、人間界はこのうえなく用心せねばならない。
- 神々は子供ではなく、年寄りだ、悠久の年月を生きている。
- まだ大地が若くて形を成していない頃、神々は遠い星から、ほかの世界からここにやってきた。追放されたのだとも、みずからの自由意志で去り、新しい居場所を求めたのだとも言われている。
- 彼らは彗星の背に乗って宇宙の淵を渡り、大挙してここにやってきた。ひとつの種族ではなく、たくさんの種族が絡まり合っていた。
- この世界を自分たちでつくり、お互いのあいだで分け合った。しかしそれでは安心しなかった。それが彼らの本性だ。互いに争い合った。
- 無限の力と恐ろしいほどの知識を持ち、遠い星で生まれたこの生き物たちは、何百万年にもわたり何度もぶつかり合った。息子が父に謀反、下僕は主人と戦い、兄弟どうしで戦争した。
- 彼らの争いで大地は荒廃した。彼らの武器はおそるべきもので、その本質や破壊力は計り知れない。山を崩壊させ、渓谷を裂いた。かつて世界はひとつの大陸だったが、神々の戦いで破壊され、ばらばらに離れた。
- やがて、より強力な神々が、自分たちが地球の支配者と定めた。弱い神々は地下や海の中へと引きさがった。多くの神々は敗者として幽閉され、その牢屋は常にこの地上にあるとはかぎらず、どこかほかの領域、現実のひだの奥にも存在していた。
- 休戦協定らしきものが結ばれ、反目は和らいだが、完全にはなくならなかった。たとえば、クトゥルーと、その腹違いの兄弟である“名状しがたきもの”ハスターとのあいだには、永久に憎しみしか存在しないだろう。
- やがて、神々は眠りについた。対立は終わり、休むときがきた。一年に季節があるように、宇宙にはサイクルがある。全能の不死の者たちでさえ、否応なく目を閉じて夢をみなければならない。自分の広大な街、自分の洞窟、世界と世界の空間で、神々は横たわり眠りについている。それでもなお、神々はわれわれを見張っている。
- 常に人間を見張り、人類が動物的な無知状態から、自己認識に目覚めるまで観察している。旧支配者(グレイト・オールド・ワンズ)やその親族は、われわれを意識し、ときにはわれわれに呼びかけ、われわれが捧げることのできるものを求めている。つまり、族長が捧げたものは充分ではなかった。それで失墜した。
- 族長は、ロボンの侍者だった。族長の先祖はもともとサルナスの出で、ロボンはサルナスを支配する神であり、あの都市が滅亡して廃墟となった時、ムナールの地を追われて大移動した民衆と共に、ロボン信仰も伝わっていった。族長はこの島々にやってきた人々の直系子孫で、部族の王として、ロボンの寵愛を保つ使命を負っていた。ロボンは戦神なので、敵の血と心臓を捧げればそれで充分だった。
- 族長は寄る年波で、戦いに疲れ、戦いの意欲も薄れた。手にしている土地を管理すれば充分で、新しい領土はいらなかった。南への容赦ない進軍も停滞した。それをロボンは喜ばなかった。
- ある夜ロボンは、ツタの冠をかぶって槍を持った若者の姿で、族長の前に現れた。ロボンと族長は寝室で戦った。そして負けた。
- 族長がここに埋葬されたのは、ロボンが最後の侮辱として命じたから。族長が流血を嫌い、征服を拒み、手を触れずにおいた土地、ブリテンの最果てが見渡せるように、罰として。
172 ・・・「一部の地質学者ーーーアントニオ・スナイダー・ペレグリニなどーーーは、大陸移動現象について、また別の説明をしていますが」・・・
172 【🔎】アントニオ・スナイダー・ペレグリニ
172 【🔎】大陸移動説
175 ホームズにはまだ何も見えていないという族長の言葉に、ホームズが「では視野を広げるにはどうすれば?」と尋ねると、斧が飛んできた。
- 斧は身体を通りぬけたが、身体から魂が切り離された。
- ホームズの知性は、突然に肉体的な殻から解き放たれた。
- ホームズは飛翔した。
176 ホームズは、太平洋の真ん中の島へ飛んでいった。
- 火山岩でできた小さな点のような島
- 腐った魚の死骸が散らばり、頂点に白い一枚岩(モノリス)が立っていた。
- 近くの海底の裂け目には、うろこのある球根のような形をした生き物が動き、水面に浮かび上がってきた。
- 身体の一部は魚、一部はひとつ目巨人のキュクロプスだ。
177 次にホームズは、太平洋にある別のもっと大きな島に飛んだ。
- 失われた都市があり、輪郭や角が不揃いな建物が残っていた。
- 建物を見ていると、いつしか折りたたまれて行くように見えてきて、他の数学者の知らない幾何学の分脈に属していると思わせた。
- 汚らしい円天井の中には、人間ぐらいの大きさの怪物がいて、もっと大きな、コウモリの翼をもった怪獣のまわりに集まり、すぐさま眠りに落ちていった。大きな怪獣のほうも、うとうとしていて、その顔はほんの一瞬しか見えなかったが、もっと近くで見なくてよかったと思うホームズ。
177 ホームズはさらに飛び、雪に覆われた南極大陸の荒地を抜け、別の見捨てられた都市に来た。
- 巨大な壁と、深部に造られた地下通路があった。
- 体長6フィートほどの、白いペンギンに似た動物が道をよたよた歩いていたが、その目は退化した割れ目のようで、何も見えてない。
- ホームズの知る生き物のどれにも似ていない、クラゲを思わせる黒い原形質のような塊が、触覚や感覚器官がついたゼラチン状の身体をくねくね動かしているのも見た。
177 次にアメリカ南部州のルイジアナの沼地へ飛んで行った。
- ルイジアナの沼地で忌まわしい黒魔術の儀式が行われていた。
- 参加者は西インド生まれの半裸の船乗り
178 グリーンランドへ行く
178 アメリカ南部州のルイジアナの沼地の儀式も、グリーンランドの儀式も、詠唱や踊りはおおよそ似かよっていた。
- 熱狂的な崇拝の対象は、子分に取り巻かれて眠っていて、ホームズが触手で飾られた顔をじっくり見ることをためらった、コウモリの翼をもつ巨大な怪物の彫像だった。
178 次にホームズは、合衆国で最も文明化されているニューイングランドに飛んだ。
- 隠れた恐怖の場所は、星の数よりたくさんあることがわかった。
- 深い緑の谷、住み心地いい小さな町、活気に満ちた都市、果てしない森、なだらかな農園を荒廃させ、一見すると無害にしか見えない場所に、墜落の塊や斑点を生じさせている。
179 ホームズは、地球外へ投げ出され、宇宙へ飛び込んだ。銀河を通り過ぎ、広大な空白のあいだを抜けていき、太陽が塵くらいの大きさになるほど、太陽系から遠く離れた最果てのどこかで、数十個の惑星が巨大な橋で接続された場所にたどり着く。
- 惑星には、無数の奇妙な住人がいた。
- 彼らは無限の力をもつがゆえに、必要なものや欲しいものを手に入れることの意味をほとんど忘れてしまっている。
- 無限の存在としてただよい、ときにはお互いに遭遇してとりとめのない会話を交わすか、輝かしく品位のある孤独にとどまるかしている。
- 彼らは、宇宙そのものが生まれてまもなく生を受け、旧支配者(グレイト・オールド・ワンズ)の先祖となった旧神(エルダー・ゴッズ)であることが、ホームズにはなんとなく理解できた。
180 突然ホームズは、もと来た軌道を逆戻りした。あらゆるものの辺境から、回転する宇宙の中核へ、まさに中心に戻ってきた。
- 渾沌(カオス)の地
- 光と闇の大渦巻がうねる中心には、螺旋状にねじれたたくさんの奇妙な城壁が浮かび、巨大な流れに気まぐれな動きを見せている。(雪片状、多面体で構成されたものなど):これらは、神々の住居であり神殿。
- この神々の住居であり神殿に住む外なる神(アウター・ゴッズ)は、強欲で悪意に満ちた神々だった。
- 外なる神(アウター・ゴッズ)は、霧や石や宝石や肉からなり、召喚されるのを待っていた。しかるべき礼をもって求められるのを待っていた。虚空を移動し、おぞましく凶悪な行動を行うべく招かれるのを待っていた。
- 彼らは思考するだけで途方もない距離を移動でき、旅する価値があると思えばどこへでも行く。
- 彼らが発散するのは、嫌悪、堕落、侮蔑のみ。光る者でさえ、輝くのは影を投げかけるためで、その影の中で汚れた欲望を満足させる。
- 恐怖の化身。
- 侵入者を感知し、数人の外なる神(アウター・ゴッズ)が好奇心をホームズに持ち始め、水銀でできた生物が、アメーバー様の突起をホームズのほうにのばしてきた。
- バルコニーでは、美しい女性と見まがう生き物が鼻を鳴らしはじめ、ネコが風で流れてきた臭いを嗅ぐように鼻を持ち上げた。
181 ホームズは、外なる神(アウター・ゴッズ)に見つからずに逃れようとした。
- ホームズの知性が自分を救った。若い頃から厳しく鍛錬してきた解析的推論の科学が、ホームズを自分に引き戻してくれた。
- ホームズの脳の力がなければ、精神は今も外なる神(アウター・ゴッズ)の玩具になり、身体は正気も知恵も奪われた状態で、丘の上で発見されていたかもしれない。
183 自分の身体にもどったホームズ。
- 全身が冷たく、四肢がこわばみ、痛み、腹ぺこになっていた。
- 重いまぶたを開けると、黄昏時で、夜の帳が下りていた。
- 懐中時計は再び動き出していて、5時過ぎだった。
- あぐらをかいたまま、風雨にさらされて丸1日過ごしたせいで、下半身が麻痺して曲がらなかった。手や脚に充分感覚が戻るまで、両手両足をついてうずくまって、そのあと、よろよろ歩きながら、骨粉の環を出て丘を降りた。
- グンフェン・シュウはいなくなっていた。馬車も消えた。
- 雨の中、暗闇をつまづきながらホームズは歩き、途中、小さな家の明かりを見つけ助けをこうた。
184 【🍴】友好的でない田舎者の家主に、二連式の猟銃をつきつけられたが、家主の妻が仲裁して、家に招き入れ、元気の出る温かいミートパイをふるまってくれた。
- そのあと、馬車でホームズをドーキングまで送ってくれた。
184 ドーキングの駅で降ろされ、ウォータール行きの最終列車に乗ることができた。
186 ワトスンが、ホームズの話した『恐ろしい悟り』を自分も体験したことがあると、うちあけた。
- 自分の目で、地下でもっといろいろ、恐ろしいものを見たことがある、自分が生きた証拠であること。
186 ・・・君ならもちろん、『ハムレット』のセリフを覚えているだろう。『この天と地のあいだにはもっといろいろなものがあるのだよ、ホレイショ、学問をするうえでは夢にもおもわぬことだが』」・・・
188 12章 失われた都市タ・アー
188 【💗】・・・私がひとりぼっちで歩いていると思っていた旅路に、ホームズが旅仲間として現れた。ホームズにどうしても打ち明けたくなったのも、致し方ないことだったのだ。・・・
188 突然の覚醒による痛みと披露を癒す暇もなくホームズに、アルガンダーブ渓谷での経験を聞かせるワトスン。
188 始まりは、マイワンドからの退却時
- アフガニスタンの総督(アミール)アユーブ・ハーンの軍は、イギリス軍を敗走させた。マイワンド峠からの退却。
- ワトスンが配属されていたのは、第5ノーサンバーランド・フュージリア連隊の所属する、第66バークシャー連隊。
- ジョージ・バロウズ准将の未熟さと戦術的洞察力の欠如による、大惨事。
- ペイワール、カブール、アフメドヘルなどで立て続けに大勝利したイギリス軍は、自信過剰だった。
- アフガニスタン軍は撤退するイギリス軍を追ってこなかった。なんとかカンダハールまで戻ろうとしていた。
- 翌朝、コケランで救援軍に迎えられたその日、ハロウビー大尉がとちょっとした遠足を提案した。
188 【🔎】マイワンド
マイワンドの戦い カンダハール郊外
188 【🔎】アユーブ・ハーン
- ?
189 【🔎】マイワンドからカンダハールまで、なんとか撤退しようとしていた
190 ロデリック・ハロウビー大尉
- アマチュアの野外考古学者
- ハインリッヒ・シュリーマンやサー・アーサー・エヴァンズの研究の熱烈な愛好家
- クリミア戦争の退役軍人である父親の求めで軍事任務を引き受けたものの、心は発掘作業や古代の遺物への情熱を追い求めている人。
- 砂漠や地図のない島、秘境の谷などにある、遠い昔に失われた都市や滅亡した文明の遺跡など、考古学に関する人を引き付ける話は、ジョン・ワトスンの琴線に触れた。
190 【🔎】ハインリッヒ・シュリーマン
190 【🔎】サー・アーサー・エヴァンズ
190 【🔎】クリミア戦争
190 ロデリック・ハロウビーが話す、シュメール人以前の時代の話
の話
- 天文学や医学など、われわれに匹敵するほど洗練された驚くべき科学知識を持つ人々が集まる、石造りの都市。
- アトランティスやレムリアのこと。哲学者や神智学者に愛される架空の場所ではなく、本当に海面下に沈み、再発見されるのを待っている大陸。
- そうした時代の他の文明ーーーコモリオム、ウズルダロウム、オラトーエ、ヴァルーシアーーーの話。
- ハロウビー大尉によれば、世界的な大変動、おそらくは大洪水が、この時代の痕跡をほぼすべて拭い去り、今ではまれな孤立地帯のみ残っている。
190 【🔎】シュメール人
190 【🔎】アトランティス
190 【🔎】レムリア
191 【🔎】コモリオム
191 【🔎】ウズルダロウム
191 【🔎】オラトーエ
191 【🔎】ヴァルーシア
191 「まれな孤立地帯」のひとつ
- アルガンダーブ渓谷の北部から、ヒンドゥークシュ山脈の低い丘陵地帯に入っていくあたりに、かつて地下都市があったという。
- ロデリック・ハロウビーは、チャリングクロス・ロードのはずれの古本屋で見つけた1845年にブライドォール社が出版したフリードリヒ・ヴィルヘイム・フォン・ユンツトの著作『ウンアウスシュプレヒリヒユン・クルテン』の英語版の『無名祭祀書』に書かれていた。
- 千ページもあるその書物には、洞窟の中で荒らされないまま残り、通りも家も完全に保存され、風雨にさらされていないタ・アーという名の街のことが書かれていて、洞窟へ行くための道のりについても説明してあった。
- フリードリヒ・ヴィルヘイム・フォン・ユンツトみずからがそこを見たわけでなく、古い言語による他の資料の中に見つけた文章を引用していた。彼もロデリック・ハロウビーもその存在を確信していた。
191 【🔎】ヒンドゥークシュ山脈
191 【🔎】フリードリヒ・ヴィルヘイム・フォン・ユンツト
192 救援軍の護衛でカンダハールへの行軍を再開する準備の時、ハロウビー大尉の提案
- 休息のために、カンダハールには戻るが、途中でちょっと寄り道をしよう。
- 回り道をしてタ・アーに行って10日ほどで、本体からはぐれたといってカンダハールへ行こう。
- ハロウビー大尉の親父は、ロバーツ陸軍元帥の親友だから、厄介なことになってもコネを使って丸くおさめると請け負う。
193 軍法会議のかけられる危険を冒すことを決めたグループは、ぐずぐず歩いて本隊から離脱した。
- アルガンダーブ川の岸辺を離れ、ごつごつしたむきだしの丘陵地帯へ。
- 7月の陽射しは猛烈で、空気は薄く、冒険隊も3日も歩くうちに足取りが重くなった。ハロウビー大尉はスプリンガー・スパニエルのように元気だったが、歩兵たちはぶつぶつ言いだした。
193 【🔎】スプリンガー・スパニエル
194 5日目の夜明け
- タ・アーに近づく様子がないので、歩兵たち(5人の兵士たち)は、暴動でも起きそうな雰囲気になっていた。
194 フリードリヒ・ヴィルヘイム・フォン・ユンツトによれば、タ・アーに続く小道の入口には、明確なる道しるべがあるらしい。
- 高き100フィートほどの花崗岩の標柱
- 標柱のてっぺんには、風雨にさらされた像がある。
194 通りすがりのヤギ飼い
- ハロウビー大尉はへたなパシュート語でタ・アーへの標柱のことをたずねたら、すぐさま動揺したヤギ飼い。
- 意味が分からないとごまかそうとするヤギ飼いをハロウビー大尉は拳銃で脅したので、ヤギ飼いは、しわだらけのクルミ色の顔を警戒心でこわばらせ、歯のない口を開けて歯茎をむき出し、標柱の場所を白状した。
- 方角も教えてくれ、半日あれば着けると教え、今すぐ引き返し、その都市を探そうなどと考えるのをやめるべきだ。アフガニスタン人は誰ひとり近づかない。近づいた者は、発狂して戻ってくるか、二度と戻らないかのどちらかだ。不吉な場所というばかりか、死をもたらす場所だ。と警告した。
195 標柱到着
195 ハロウビー大尉にかりた双眼鏡で見るてっぺんの像
- 不格好に屈(こご)んだ像は、身体が人の形で、背中にはコウモリのような翼があり、頭はイカに似た生き物で、不気味な外見だった。
196 小道へ
- 入口から少なくとも3マイルは続き、下っていき、両脇の岩盤が高くなり、進めば進むほど出られなくなっていく感じがした。
196 自然の中庭のような場所に出た
- 自然の中庭の向こうにたくさんの彫刻画にに囲まれた、洞窟の入口となる裂け目があった。
197 彫刻画
- 目を見張るほど質の高い繊細なもの。
- 標柱の上の像と同じコウモリの翼をもった生き物が、自分の前で怯えるトカゲの頭をした人間に、いばり散らしている様子が描かれていた。
- トカゲ頭の人間が、手の鉤爪で普通の人間の喉を裂いたり、心臓や内臓をえぐりだしたりしている彫刻画もあった。
- いくつかの彫刻画の中には、えぐりだされた内蔵が皿に盛られ、コウモリの翼がある生き物の食物としてささげられていた。
- トカゲ人間自身が、人間の内蔵や手足、その他の小さめの器官をご馳走としている彫刻画もあった。
197 ・・・兵士たちはからいばりして、彫刻画の解釈をぶしつけにあれこれ口にし、特に描かれている全登場人物が裸であることや、殺害場面がグロテスクなことで有名な劇、グランギニョール風であることについて論評していた。・・・
197 【🔎】グランギニョール
198 洞窟の裂け目に下りて行った。
- 長い地下通路
198 不意に広い岩棚から見えた断崖の景色
- 大聖堂が20ぐらい入りそうな荒漠とした洞窟内
- 底辺部の堆積物でできた柱が洞窟の天井を支えている。一番細い柱でも直系10数ヤード以上ある。
- 洞窟の一番奥では、帯水層から流れてくる大きな滝がきらめいていて、反響音がうねりながら空気をみたしている。
- あちこちの表面に発光菌類
- 洞窟の地面に建っている、粗雑に切った平板からできている立方体に、くぼんだ長方形の穴を開けてドアをつけた建物が、不規則な並びの道に沿って建っている。
- 真ん中にひときわ大きな建物があり、規模や中心的存在感、丸屋根や柱廊のついた側面を見る限り、宗教か政治関連の重要な建物、神殿か公会堂のようだった。
199 断崖の正面に岩を切り出してつくった階段を下りた。
- 私たちはタ・アーを練り歩いた。
- エジプト王朝よりもずっと古い都市の遺跡を、見て回った。
- 入口の彫刻画を除けば、文化や土着の生活を匂わせるものはほとんどなかった。
200 中央の建物
- 礼拝のための場所
- 標柱の上にあった像の生き物、外の彫刻画にもたくさん描かれていた、あの忌まわしい異種混合の怪物のための聖堂だった。
- 神殿の外壁四面にも同じ怪物の姿が刻まれ、内部の大きな台座にもその像が立っていた。この彫像は高さ30フィートはあり、金の鉱石のすじが走る黒い大理石でできていた。
201 クトゥルー
- 彫像の足のそばから像を見上げたハロウビー大尉が言った彫像の名前。
- 旧支配者たちのひとりで、その中でも最も偉大な神とも言われる。
- ナグの息子。
- ハスターの腹違いの半兄弟。
- イダ・ヤーの夫。
- ガタノソア、イソグサ、ゾス・オムモグ、クティーラ、シャーラッシュ・ホーの父親。
- グールのヨガシュの祖父。
- 大ヘビのク・バアーの曽祖父。
- フォン・ユンツトの言葉を信じるなら、クトゥルーの影響は世界中のいたるところに広がっている。ハイチ、ルイジアナ、南太平洋、メキシコ、シベリア、グリーンランド。クトゥルーを崇拝する人たちがいる場所は広がっている。
- ここ中央アジアは、クトゥルー信仰の中心地。この都市は基点。至聖所(サンクタム・サンクトールム)か、本源(フォンス・エト・オリーゴ)だったかもしれない。(クトゥルー信仰教団におけるウェストミンスター寺院を発見したのかも。)
202 エジントン二等兵
- 神殿の床に散ばっている骨の小山を見つける。
203 人間の大腿骨
- 普通と違う特徴は、かなり湾曲していた。
203 ロックウッド
- この大腿骨には原因の明らかな傷や溝がついていると指摘した。
- 第五ノーサンバーランド連隊に加わる前のロックウッドは、ドーチェスターで肉屋の見習いをしていて、豚の腿肉の骨を飢えた犬にやるとこんなふうにかじられた痕がつくことを知っていた。
- ドーセッドなまり
203 ワトスンは、野生動物ではなく、人間がかじった痕かもしれないと思った。
- 野生動物がつけたににては、なまくらな傷すぎるから。
- 兵士たちはすでに神経過敏になっているから、動揺させないようにだまっているワトスン。
203 スマイス二等兵
- 人間の頭蓋骨も2、3あったが、スマイスが拾った頭蓋骨は、頭頂部の丸い部分が長く、前頭部と後頭部が白くなっている。顎は妙に長く、スマイスが下顎の骨を付け足すと、下顎枝(かがくし)から顎の長さが人間の1.5倍はあった。
- 頭蓋骨の鼻孔は幅広で未発達で、おそらくは鼻が平たく窪んでいると思われた。
- 人間に似ているが、通常の人間の頭蓋骨ではなかった。
204 トカゲ人間
- 彫刻画にあったトカゲ人間の頭。
- トカゲ人間は実在した。
205 エジントン二等兵が、声が聞こえたと言った。
205 スマイス二等兵の疑問
- もしももの文明が、大尉のおっしゃるように遠い昔に滅亡した文明なら、このトカゲ頭の人間の骨がまんまり古く見えないのはなぜだろう。
206 トカゲ人間が極限状態(イン・エクストレミス)で、究極のタブーを犯した痕跡についてハロウビー大尉が言及をさけているとワトソンが指摘。
- 共食い
206 オコーナー二等兵
206 フィールディング上等兵
- 神殿の入口に普通の顔じゃない誰かがいたと、悲鳴をあげる
- 鱗におおわれた顔を見た。鼻が長く、目が飛び出していた。
- トカゲ人間かも
207 演説をぶって、二等兵たちを説得していたハロウビー大尉が、偶像の台座から飛び出してきた、怪物のは鉤爪のついた爬虫類のような手を一振りして、ハロウビー大尉の首を切り落とした。
208 ハロウビー大尉の暗殺者
- ほかの隊員が何もできずにいるうちに逃げた。
- 彫刻画のトカゲ人間だった。
- 壁の脇をすばやくよじ登ると、鉤爪を登山のハーケンのように使い、天井の陰の中に姿を消した。
208 銃撃したが、当たらなかった。
208 ハロウビー大尉の次に階級が上のワトソンが、撤退命令をだした。
- フィールディング上等兵がワトスンの権限を副官として承認して、命令を繰り返した。
- トカゲ人間は一匹ではないかもしれないから。
209 神殿から崖へと引き返す、撤退はもたついた。
- トカゲ人間は放っておかなかった。ずっと襲撃をうけた。
- 神殿にいたトカゲ人間は、たった1匹の生命体ではなかった。
209 トカゲ人間たち
- トカゲ人間は、今もタ・アーに多数住んでいて、そこに侵入してきた者への好意など感じていなかった。
- 神殿の骨の山の中に人間の頭蓋骨もあったことを思えば、彼らはある意味、この都市にやってきたワトスンたちを歓迎したのかもしれない。あの彫刻画は、そうした物語を伝えていたのではないか。
- トカゲ人間は、単に人を食うという生き物ではなく、まさに人食い獣で、私たちは彼らの食事だった。
- 裸で、なめらかな鱗に覆われた連中
- がに股で、腿(もも)は強靭で、ぞっとするほど足が速いく、獰猛。
- トカゲ人間が襲い掛かるとき、シュッと呼吸音を立て、ときにはその呼吸音で言葉を発した。
- 詠唱をしながら、先の割れた舌、唇のない口に、恍惚としたに焼け笑いがはりついていた。
210 トカゲ人間が冷酷な声で、何度も繰り返す一連の言葉
- 「フングルイ・ムグルウナフ・クトィルー・ルルイエ・ウガフナグル・フタグン!」:意味 「ルルイエの住処(すみか)にて、死せるクトィルー、夢見ながら待つ」
- ルルイエ語、もしくはアクロ語と呼ばれる言語
- トカゲ人間たちは、彼らの忌まわしい神への信仰儀式や、神を讃え忠節を誓うときの賛歌で使う詠唱の、重要な一節を繰り返していた。
211 弾丸で応戦しながらの、目印のない撤退。
211 断崖が見えてきたころ、ドーセッド生まれのロックウッドがトカゲ人間の餌食になった。
- 逃げる途中でつまずいて転倒し、トカゲ人間に捕まって引きずっていかれた。
212 弾がつきてからは、白兵戦となった。
- ようやくトカゲ人間を振り切る頃には、スマイス、エジントン、ワトスンの3人になった。
212 断崖の階段の下にきたとき
- エジントンとワトスンが両脇から支えて逃げていた脚に負傷をうけたスマイスが、いいほうの脚も進まなくなり、大腿動脈の切れていたスマイスは失血で息絶えた。
212 エジントンとワトスンは粗削りな階段を必死で上り、半狂乱で逃げた。
- 追いかけてくるトカゲ人間より早く頂上にたどり着いたワトスンたちは、力を振り絞り、ランタンをつける暇もなく、闇の地下通路を駆けた。
213 洞窟の裂け目、自然の中庭、たにまの小道の近くまで来たとき、エジントンはブーツの紐のせいで脚をとえあれ悲鳴をあげた。
- 足に体重をかけられなくなったエジントン。
- エジントンは自分を残して、ワトスンに逃げろとすすめた。
- ワトスン一人、洞窟の裂け目から身を躍らせて飛び出し、ほこりっぽい地面に転がり落ちた。
215 疲れ果てて身体が動かないワトスン。
215 身体を制御する力が戻って来たとき、最初のトカゲ人間の姿が、洞窟の裂け目の向こうに現れた。
- トカゲ人間の手がワトスンの肩をつかんだ。
- みをよじって離れ、その拍子に鉤爪が肩の肉をざっくりと裂いた。
- ワトソンは、激痛に声を上げ、谷間の小道に向かって飛び出していった。
215 小道にたどりつくと、ワトソンは追いかけてきているとおもったトカゲ人間を振り返った。
- トカゲ人間は、片手を目の上にかざし、怖じ気ついて裂け目の奥へ戻っていった。
- 他の仲間達も同様に、誰もそれ以上は進もうとしなかった。
216 地下通路の闇から出てこれないトカゲ人間
- 南中高度を過ぎたばかりの太陽の強い光は、トカゲ人間にはまぶしすぎるから。
- タ・アーでずっと生活し、発光菌類の淡い光だけをみてきたトカゲ人間の視角は、それより明るい光源にたやすく順応できない。
- あの彫刻画があるということは、もっと前の世代は外の世界に頻繁に出られたのかもしれない。あるいは、月光のみに照らされてあれを彫ったのかもしれない。
- 現在のトカゲ人間は、昼間の間、タ・アーをでることはできない。
216 ワトソンは小道に飛び込み、逃げた。
217 アフガニスタンの村人が、ワトスンを見つけてくれた。
217 エジントンとの約束を守らなかった理由
- 起きた事件のすべてをなかったことにしようと、心に決めたから。
- そうしなければ、自分に残ったわずかな正気が守れなかったから。
217 ワトスンの作った嘘
- ワトスンは、マイワンドから退却する間に狙撃兵(そげきへい)に撃たれ、銃弾が肩の上部をきれいに貫通したと報告して受け入れられた。
- 退却中主要部隊の知らないところで、臆病なイスラム兵士が、隠れていた場所から私に発砲した。この兵士がジェザイル銃で、ハロウビー大尉と5名の兵士を撃ち殺した。この奇襲で唯一生き残ったワトスンは、置き去りにされ、自分で自分の身を守り、傷と譫妄(せんもう)に苦しみながら、何日も彷徨ったのち救出された。
217 【🔎】譫妄(せんもう)
219 13章 悪魔といえば
219 翌朝
220 ・・・「グンフェンの薬が、ぼくに突拍子もない幻覚を見せただけだと主張するのは、簡単だ。鮮烈で不穏な幻覚ではあったが、ド・クインシーが仰向けの人の顔にうめつくされた銀の海を見たときにつかった、アヘンチンキときっと同じようなものだとね」・・・
220 【本】【🔎】ド・クインシー
221 クトゥルーと言う神について、ホームズの見解
- 古代の人々に知られ、崇拝されていたようだ。
- この神は実在していて、今も現実にいる。
- 現実にいるというなら、ほかのものも現実にいるということになる。
221 未知の言葉
- スタンダードが使い、洞窟のトカゲ人間たちもその言葉をしゃべっていた。
- ワトスンの体験、ひいてはホームズの体験が真実だと支持してくれる、もうひとつの証拠。
221 ホームズとワトスンのこの先
- 2人とも、二度とこれまでと同じではいられない。知ってしまったことにより取り返しのつかないほど変化し、ある程度は打撃を受けたから。
- 2人の試練は、以前と同じようにやっていけるかかどうかということ。
222 現実を受け止める
- タ・アー
- トカゲ人間
- クトゥルーやその種族
- ワトスンのタ・アーの物語にとって、ホームズの夢の探求も現実
222 ホームズの2人の救済策案
- 自分たちを緊張感のある仕事の中に投げ戻すこと。:シャドウェルの殺人事件
- 臨まないものが心に住みつかないようにするには、ほかの何か、実用的な何かを居座らせておくのも一つの方法
222 シャドウェルの殺人事件まとめ
- 罪を犯しているのはグンフェン・シュウ。
- スタンフォードは、グンフェン・シュウの操り人形。
- ホームズの考えどうり、彼らが新しい危険な麻薬を製造している。
- 麻薬製造も、スタンフォードの死についても、グンフェン・シュウは否定したが、あの中国人の責任。
- ホームズとワトスンに残された仕事は、グンフェン・シュウに不利な説得力のある証拠を集め、グレグスン警部に引き渡すこと。そのあとはグレグスン警部がやってくれる。
223 その日の《タイムズ》の記事
- 衰弱による死者が5人に増えた。
- 前日の朝、ロンドン埠頭に仕事をしにやってきた港湾労働者が、テンチ街で、埠頭の建物裏の壁に寄りかかっている死体を発見。
- 被害者は中国系で、餓死。
- 極東からの船で密航し、長旅の間に死んだものではないかと思われる。
- 死体は前の夜、ロンドンに着いたときに発見され、捨てられたものだろう。
223 ヤードが積極的に捜査しない案件
- 死んだ密航者は、彼らの優先順位の上位にならないから。
223 今まで高級紙は、シャドウェルで起きていることを全く気付いていない。
- 扇情的な新聞にかぎられとりあげられてきた。
- 《タイムズ》もいずれこの事件に気付くだろう。
224 ・・・「この件を人よりよく知っていて、他人が見逃しているつながりに気づいているぼくらとしては、務めを果たさなければなるまい。獲物が飛び出したぞ(ザ・ゲーム・イズ・アファット)。ワトスン。外套を取って、ぼくと来てくれ」・・・
224 【🔎】獲物が飛び出したぞ(ザ・ゲーム・イズ・アファット)。ワトスン。外套を取って、ぼくと来てくれ
- The Game Is Afoot!:もとはシェイクスピアの芝居に使われている古い言い回しで、「獲物が現れたぞ!」と言う意味。
- 【本】『アビイ屋敷』the Abbey Grange(『シャーロック・ホームズの帰還』内に収録)
234 イースト・エンドの病院と死体安置所へ
- 2、3時間費やして歩き回る
234 ホワイトチャペル・ロードのロンドン病院の地下
- 中国人の死体発見
- ホームズがじかに見た初めての、やせ衰えた死体。
- “恐怖の表情”
- 死体は、ゴールデン・ロータス・ホテルの従業員のリー・クイイン。(ワトスンの拳銃でワトスンを人質にした男)
- 2りとであってから、たった一晩しかたっていない。
234 【🔎】ホワイトチャペル・ロードのロンドン病院
228 ホームズの見解
- 中国人の死体は、リー・クイインだと気づいていた。
- グンフェン・シュウは、リー・クイインがワトスンの銃を奪ったときのふるまいを、『判断を誤った』『無礼をはたらいた』と、腹を立てていた。
- グンフェン・シュウの不興を買った人間に、厳しい罰。プラス、すでに確立された方程式、月に一度の殺人を永続させるための、第五の死体。
- 新月は2日前だが、遅れてもやらないよりまし。
- しかし、リー・クイインの働いていたアヘン窟は、グンフェン・シュウとつながっているという噂があるだけで、両者の間が繋がる確固たる証拠がないので立証できない。グンフェン・シュウがおとといの夜中に221Bに侵入し、銃を返したとき、彼はリー・クイインを知っていると認めたことも、ドーキングの旅の途中でホームズに白状した、アヘン密輸入への関与も、伝聞証拠なので法廷では認められない。
230 二人の帰りの道すがら、グンフェン・シュウが四輪馬車で止まり、ホームズとワトスンに「時間をもらえないか」とさそった。
231 14章 獲物でなく客人
231 ホームズとワトスン、グンフェン・シュウの馬車に同行する。
231 グンフェン・シュウの様子
- 221Bの家に押し入った時のような自身に満ちた態度ではなく、落ち着いた洗練された人物とは違って見えた。
- 狼狽していた。手はわずかに震えていた。
- 平静を装うとして失敗していた。
233 ホームズとワトスンは、獲物でなく客人
- グンフェン・シュウは、ホームズとワトスンにこの馬車にいてほしい。
- ここにいさせる必要性があるから、病院の外で待ち構えていた。
233 ホームズが夢の探求を無償で成し遂げると、グンフェン・シュウにはわかっていた。
- 劣った知性なら、壊れていたかもしれない。スタンフォードのように。
234 スタンフォードとグンフェン・シュウの関係
- スタンフォードの場合、アヘンではもはや満たされなくなっていた。その量が増え、次第に効かなくなっていた。彼はさらなる量を欲し、グンフェン・シュウが提供できることを知っていた。
- ボックス・ヒルでホームズに使った、アヘンよりもさらに強力な薬、グンフェン・シュウの“カクテル”をグンフェン・シュウが作る知識と手段があることを、スタンフォードは知っていた。
- “カクテル”で目のくらむような、世界が変わるほどの特徴をグンフェン・シュウが語るのを、聴いたことがあって、味わうためならどんなことでもするし、なんでも言うとおりにするほど、渇望していた。
- “カクテル”の対価は、5人の犠牲者。
- だがホームズとワトスンに邪魔されて5人目を完遂できなかったスタンフォード。直近の新月の夜に5人目の遺体が必要なのに、失望したグンフェン・シュウは罰のため“カクテル”をうった。アヘンの使用で弱っていたスタンフォードの精神はすでに崖っぷちで、最後のひと押しをした。
235 ・・・「利点と欠点を天秤にかけ、それに従って決める。感傷や道徳などは斟酌(しんしゃく)しない。・・・
235 【🔎】斟酌(しんしゃく)
236 グンフェン・シュウが信じて欲しいこと
- この地球には邪悪な存在がいるが、特にそのひとつは、その心の過酷さと自己の欲への献身ぶりにおいて、グンフェン・シュウでさえ驚くような存在。
- 神、クトゥルーのような、旧支配者
236 夢の探求であったもの
- 古代の族長
236 古代の族長
- 彼はごく少数の幸運な人にだけ、魂の案内人として現れる。
- 彼はこの現実とその他のものの間の、ある種の仲介人の役目を果たす。その存在は移行を楽にする。
- グンフェン・シュウがホームズを彼が葬られたボックス・ヒルに連れて行ったのは、守護精霊ゲニウス・ロキである古代の族長が、ホームズのもとを訪れるのではないかと期待したから。グンフェン・シュウのホームズへの敬意。(ドクター・スタンフォードには、ただ薬を打った。)
236 【🔎】ゲニウス・ロキ
237 ・・・チャンとリーの説明からすると、ジュウジツのようだが」「バリツだ」「まあ、近いものだね。その数多くの技と修練はジュウジツからきている。深遠な選択よ。・・・
237 【🔎】バリツ
237 ・・・私は君が、最優秀で資格ある者のみが招かれる特別なクラブの会員になれる可能性があると思った」「クトゥルー・クラブ?」・・・
327 クトゥルー・クラブのための調整
- ボックス・ヒルでの儀式。グンフェン・シュウの薬を使ってホームズに魂の火の洗礼を施したこと。
- ホームズを勧誘するため。
238 【🔎】火の洗礼
238 クトゥルー・クラブ
- 選ばれた少数派
- 真の神々を知り、彼らの力を理解し、そこに加わりたいと望んでいる者。
- 偶像にひれ伏し、数え切れない世代を受け繋がれた儀式を思慮もなくまねる、多くの野蛮人とは違う。彼らに重要性はない。グンフェン・シュウやホームズは"価値のある"重要人物。
- 旧支配者の単なるしもべではなく、彼らの存在の知識からより多くのことを得ることができる。
- 我々は、そう選択すれば、世界を変えて私たちの好みどおりに形づくれるであろう人間。神々が共にいれば、われわれはもっと容易にそうすることができる。
238 ホームズに拒否される。
240 グンフェン・シュウから、助けをもとめる依頼
241 15章 匿名の警告
241 グンフェン・シュウは罪を犯したと自供。
- 節度を欠き軽率だった
- 自らの意志で行動していたことが、すべきことではなかった。
242 怒らせたのはクトゥルーより悪い相手だと言って、ベルグレイヴィアの自宅の郵便受けに入っていた手紙を見せた。
242 奇妙な書簡の内容
- いやはや(ディアー・ミー)、グンフェン君、いやはや!
- 宛名も差出人の名前もない。
- 筆跡からもわかる、グンフェン・シュウの親しくしている仲間のもの。
243 筆跡からもわかる、グンフェン・シュウの親しくしている仲間
- ドーキングへの途中のホームズへの説明で、グンフェン・シュウが知識に目覚めていくにあたっては助言者(メンター)がいたと言った、その助言者(メンター)と『親しくしている仲間』が同一人物。
- グンフェン・シュウと同世代。
- とてもカリスマ性のある人間で、野心と大志を持っている。
- 『真の重要人物』
- 私たちの世界の周辺に潜んでいる恐ろしい力について、グンフェン・シュウに初めて目を開かせた人物。その力が個人的利益のために用いることができるのではと提案した人物。
- 道徳的制約を超越して金持ちたちより裕福になり、王より強くなるのだと話しかけてきた人物。
- 彼は去年の初め、ある日突然接触してきた時、グンフェン・シュウは彼のことを全く知らなかった。事前の連絡もなく自宅に訪ねてきて、応接間に腰を下ろし、グンフェン・シュウは瞬く間に“魅了された”。
243 グンフェン・シュウが“魅了された”彼の計画
- 彼と彼が好む人間が、ほかの人類を超越した存在になり、『星々の間を歩く』ようになる、方法について。
- 旧支配者や旧神、クトゥルーなど、普段なら完全にナンセンスだと馬鹿にするような話を語り始めても、彼には協力な説得力があった。
- 証拠はまだ出せないが、グンフェン・シュウに求めたものは、彼自身が持っていない資金だけ。グンフェン・シュウにとってはたいしたことのない金額だった。彼は秘伝の資料や道具を探しに海外へ行けるくらいのもので、小切手を切ったあと、数か月ほどは知らせもなかった。
244 次に彼に会えた時、彼は求めていた証拠をグンフェン・シュウに示した。
- ボックス・ヒルではなく、もっと近い場所で。
- 人間とは取るに足らぬ小さくてくだらないものであると、グンフェン・シュウは確かめた。古の永遠の神々の荘厳かつ冷厳な威光のもとでは、われわれの生など何の意味も持たない。
- だがこの新たな友人であり助言者である人物から、意味をもてると説得され、グンフェン・シュウが完全に納得して大儀に同意し、一緒に彼の計略を実行に移すことにした。(シャドウェルの殺人のこと。)
245 グンフェン・シュウが、ホームズに注目したのはシャドウェルの殺人がきっかけだった。
- ホームズの卓越した才能を知って、仲間にに迎えいれるのに最適だと思ったが、グンフェン・シュウの仲間は、今はホームズを巻き込んだことを知っているが、グンフェン・シュウは誤りをおかし、その誤りによって逸脱してしまった。その結果厳しいものになる。
- グンフェン・シュウの財産をもってしても、自分を守れない。グンフェン・シュウよりも無慈悲な彼。
246 馬車が速度を落とし、止った。
- グンフェン・シュウは御者に止まるなと伝えてあった。
- 御者があわてて遠ざかっていく足音。あやまりながら逃げ去った。
247 サッカー
- グンフェン・シュウの馬車の御者
248 現在位置
- 単調な工場群のあいだを横切る鉄道橋のアーチの下。
- 頭上には湿っぽいレンガ造りのトンネルが延びていて、モルタル部分にはあちこち苔が生えている。
- 600万都市の裏通り。本道からほんの数百ヤードしか離れていない。
249 馬車の中だけが安全だとグンフェン・シュウが主張
- やつらはどこにでも隠れられる。
- あらえる暗がりに、やつらがいるかもしれない。
250 馬車から飛び出し、御者台に座るワトスン
251 ・・・そのとき、グンフェンがヒステリックな金切り声を叫んだ。「やつらがそこにいる!感じないのか?ああ神様、やつらがそこに」・・・
251 やつら
- 控え壁の影のひとつが動いた。
- 節状の巻きひげが馬車へ向かってトンネルの壁から押し出されたようだった。
- 闇の帯が馬車に達したとき、出し抜けにワトスンを襲ったのは、身体にも精神にも這い上がってくるしびれる感覚。手足から力が抜け、浮遊感が全身を包む。動くことができないし、動こうとも思わないワトスン。
- 馬たちも同じ影響を受けた。
- 起き上がって、だらだらしたい誘惑に打ち勝たなければ、と頭の一部で思うが、無駄な努力せず、次第に大きく広がっていく影を見ているほうがいいと思うワトスン。
- 花のように咲き広がるその影には、何か魅力的でうっとりさせる、忌まわしい美のようなものがあった。
- 命をもった純粋な虚無が、大ダコのような腕の中へ運ぼうとワトスンに手をのばしていた。
- 2つ目の影が反対側の壁からにじみ出て、トンネルの天井から降りて来た3つ目は、細い黒い指を奇妙なつららのように下へとのばしてきた。
- ワトスンは逃げ出す気もなく、影との接触がうれしいように感じた。それは冷気を放っていたが、その冷たさはエーテルのように無感覚で麻痺させるものだった。
252 ホームズがどうにか馬車から出て、ワトスンの横の座席によじのぼってきたとき、ワトスンは気を取り直した。
- 影たちはホームズの命を吸い出していたが、疲労と消耗を表しながら歯を食いしばり、ホームズは拒み、抵抗していた。
253 ホームズはワトスンから手綱と鞭を取り上げ、右の馬に鞭うち馬を動かした。
253 馬車の上のの影
- 黒い巻きひげが馬車の両側を激しくなでさすり、ホームズとワトスンの脚のまわりに這いあがってくる闇。
253 闇をのぞきこむ
- 覗きこみたくないがめがそぬけない。底に見える形に目がいってしまう。
- まるで深さ一尋(ひろ)のほの暗い水を通したときのように、何かが見えた。
- いくつもの万華鏡のような、ひどく恐ろしい何かが。
253 【🔎】尋(ひろ)
- 一尋(ひろ)は、1.515m
253 いくつもの万華鏡のような、ひどく恐ろしい何か
- それは決まった形がなかった。
- 激しく回転して、煙のように渦巻いている。しかし個体である。
- つやつやと肉付きがよい。
- 常に変化し、波立ちながら、秒ごとにその形を変えて行くようだった。
- 何十もの目。まばたき、ぐるぐると回し、凝視する。その目がワトスンを見ていた。ワトスンをむさぼり食らおうと渇望している。(母体)
- 影は母体の延長であり、世界へ突き出された手足だった。
- 母体はやつらを操作し、獲物を罠にかける。その食欲は外見と同じように醜悪だった。
- 口はなく、その必要もない。呑み込んで、吸収する。包摂する。
254 【🔎】包摂(ほうせつ)
254 ホームズが恐怖からのがれようと、馬に鞭うち馬車を走らせ逃げた。
- 馬車の中のグンフェン・シュウが、半狂乱になっていた。
- 両側の影がドアのまわりの隙間から入り込んでいた。
255 陽の光
- 影が、まるで光でやけどをしたかのように縮んだ。
- 影が追い払われた。
- 一本の暗い巻きひげがトンネルの影の外へのびたとき、その先端は霧散して消え失せ、根本はまるで痛みを感じたように退却した。
255 鉄道橋のトンネルから抜け出す。
- 影の巻きひげの破片がいくつか馬車にしがみついていたが、それも霧散して空気に溶けつつあった。
- トンネルの中では、影はそれが生み出された暗いくぼみへと後退していた。
- 鉄道橋はもとの姿へどんどん戻っていった。
- 終着駅のビショップズゲイト駅にある、グレイト・イースタン鉄道線の一か所を支えるレンガ造りの構造物へと。
255 【🔎】ビショップズゲイト駅
256 母国語の中国語で泣きわめいているグンフェン・シュウ
- 前の窓から見ると、影の巻きひげが絡みついている。
- 影のある馬車の中だから消えない。
256 ホームズとワトスンは、両側のドアを開け、光を入れて、残りの影を破壊。
- 邪悪な黒い抱擁から解放されても、グンフェン・シュウはまだ恐ろしい発作に苦しめられ、のたうちまわっていた。
- ホームズとワトスンはグンフェン・シュウを引きずり出し、道路に降ろして仰向けにした。グンフェン・シュウは子供のように軽く、身体が半分ほどに縮んでいる。身体にぴったり仕立てられていたスーツは、ぶかぶかの姿のように垂れ下がっていた。
- 生きているが、もう長くはない様子。
257 ホームズの質問、あの影は何だ?あれはどこから来た?誰があれを送った?罠を仕掛けたのは誰だ?を答えることなく死んだ。
258 16章 異常なものの探求
258 ホームズがマイル・エンド・ロードで捕まえた巡査につれてこられたグレグスン警部。
- グレグスン警部にグンフェン・シュウの死体について、真実ではないが上手い偽装工作をするホームズ。
258 ホームズの説明
- グンフェン・シュウは黒幕だった。
- ドクター・スタンフォードをだまし、グンフェン・シュウのために実験用の被害者を手に入れさせていた。
- ドクター・スタンフォードとグンフェン・シュウは一緒に、新しい薬物を発明そた。それは、一種の強力なアヘンだったが、たまたま有毒な副作用があった。
- グンフェン・シュウはスタンフォードは、その薬物をやがては安全で利益の出るとものにできると信じて、改良と向上の試みを続けて、人間を対象に実験してきたと推測しかできない。
- グンフェン・シュウはイースト・エンド中に倉庫を持っているので、そのうちのどこかを実験室としてつかっていたはず。発見する見込みはない。
- グンフェン・シュウの遺体は、追求の手が迫りつつあると気づいて、複数の殺人による有罪がもたらす醜聞と破滅との対峙するより、自殺を選んだ。
- 自殺の方法は、グンフェン・シュウとスタンフォードが、被害者に使ったのと同じ薬物を、致死量、ホームズ達の目の前で摂取した。止められなかった。
260 ・・・グレグスンは気の毒そうに私を見た。私はその瞬間、まるで頭の中でヒポクラテスの誓いを唱えているように、良き医者という雰囲気を出そうと努力した。・・・
260 【🔎】ヒポクラテスの誓い
261 ホームズの偽装工作
- ホームズがグレグスン警部を呼びに行かせる前に、ワトソンを一番近い薬局に行かせて、皮下注射器とさまざまな毒物やあやしげな薬の両方を買わせた。
- 液体を混ぜ合わせて、襲ってきた影がグンフェン・シュウを殺したのと同じ効果があるような調合物を作り上げ、まだ温かい遺体に注射してから瓶や残りの薬は下水に流した。
262 御者はいないことに気付く、グレグスン警部。
- あとで御者を探し出して、証言をとろうと考えている。
- グレグスン警部は、ホームズとワトスンの言葉をうたがってはいない。
- 一言一句はっきりさせたい気性なだけ。
263 グンフェン・シュウが死んだ午後、221Bの心地よい部屋にてホームズの意見。
- グレグスン警部にありのままの真実を告げることは、うまくいっても猜疑心を生む危険がある。
- 最悪なら嘲笑される。
- グレグスンのような類のいの人間は、君と僕という帆船が今航海している"未知の海"が示唆しているものを扱う能力がない。
263 人間から命を吸い尽くすことができる、生きた動く影
- はじめからシャドウェルの住民の言葉が正しかった。
264 グンフェン・シュウが消えても、あの“影”による死はやまないだろう。
- なぜなら、馬車を襲わせたのはグンフェン・シュウではなく、グンフェン・シュウは裏切り者として襲われたから。
- 御者のサッカーは、脅されるか金を受け取ったから、特定の場所に置き去りにした。その相手は、グンフェン・シュウに手紙を送ってきた人間。
265 グンフェン・シュウに手紙を送ってきた人間
- 海外調査ぼスポンサーにグンフェン・シュウがなった人物
- グンフェン・シュウの熱心な信奉者だった相手。
- 非常に説得力のある元助言者。
- この人物があの気味の悪い影に指示ができるのは確かで、だからこそグンフェン・シュウは恐れる人物。
265 問題は、待ち伏せで狙われたのは、グンフェン・シュウだったのか、ホームズとワトスンも標的だったのかということ。
266 御者サッカーが裏切ってついた相手
- サッカーを追いかけるのは有益だろうが、たいして成功の見込みはない。
- サッカーは、覚悟のうえでグンフェン・シュウを裏切った。サッカーの雇い主(グンフェン・シュウ)は、逆らった人間に下す処罰のことをよくわかっているに間違いない。つまりサッカーが運命をともにしようとした人間は、あの影の使い手である謎の人物。
- 影の使い手である謎の人物は、もし計画通りに事が進まない時、報復から保護してくれる誰かであり、その権力と影響力が少なくとも亡くなった彼の主人に匹敵する人物。
- 司直の力から守ってくれる人間
- つまり、サッカーはもう捕まらない。
266 【🔎】司直(しちょく)の力
267 クトゥルーと仲間たちについて考察することが大切
- 異常なものを学ぶ学生になり、まったく新しい研究分野全体を勉強すべき。
208 17章 封印書籍部
208 大英博物館の地下の記録保管所(アーカイヴ)
- 「封印書籍部」として知られている。
208 【🔎】大英博物館
268 ミス・チャスティティ・タスカー
- 大英博物館の地下の「封印書籍部」の案内人の女性
- 潔癖で多弁
- 自分の習慣に厳格で、気ままにしゃべるが、他人の行動には文句が多い、怖いもの知らずの年配の未婚女性。
- 職業としては、学芸員(キュレーター)というより、司書(ライブラリアン)。
268 封印書籍部の収蔵物
- 監獄のようなドアがついているアーチ天井の部屋に錠と鍵をかけた保管室。
- 崩れてしまいそうな書物。
- これらの多くの内容は危険だと考えられている。
- ある特定の人達によると、これらはただの本でなく、禁制とみなされるものや異端とされる知識への、人間の世界への認識を永遠に変えてしまう知識への、扉。
- 感受性の強い性質の人たちは、神経症や鬱状態になる傾向があったり、過剰な想像力に苦しめられたりしてしまう。
- 中でも中世の書物の挿絵は、気味の悪いものがある。
270 封印書籍部の収蔵物を避けるように警告する決まり
- あるとき、病人のような真っ青な顔で封印書籍部から帰って行く利用者を見たことがるミス・チャスティティ・タスカー。
- ある午後に、ヘレナ・ブラヴァツキーが立ち寄った時、難解なさまざまなテキストに目を通していて、何かを読んだときえらく腹を立てて気分を悪くし、ほとんど気絶せんばかりだったと、ミス・チャスティティ・タスカー。彼女は戻ってこなかった。
- 戻ってくる人は少ない。
270 ヘレナ・ブラヴァツキー
- 今も住んでいると思われる。
- 彼女は、アメリカから短期滞在でやってきて、封印書籍部の収蔵物で、自著である『ヴェールを剝がれたイシス』のための調査をしていた。
270 ミス・チャスティティ・タスカーの支援を受けて、それからの2週間
- 出所と著作者が不明確な古い書物を詳しく調べて行った。
- 一部の本が扱っているのは、黒魔術と古代の神秘的伝承で、ホームズとワトスンが探しているものと無関係な本。
271 ホームズとワトスンが探しているものと無関係な本(クトゥルーやハスターなどについて言及のない本。)
- 【本】ドイツの異端審問官ハインリッヒ・クラマーによる『魔女に与える鉄槌』・・・超自然的存在の出現に対する固定化したキリスト教的な取り組みの本。
- 【本】『ホノリウスの誓いの書』・・・降霊術についての中世の論説の本。
- 【本】『ソロモンの鍵』・・・降霊術についての中世の論説の本。
- 【本】偽書『真正奥義書』・・・1500年代初期のメンフィスでエジプト人アリベクにより刊行されたと言われたが、実際には数世紀後の氏名不詳のヨーロッパ人による作品。
271 【🔎】ハインリッヒ・クラマー
271 【🔎】ホノリウスの誓いの書
271 【🔎】ソロモンの鍵
271 【🔎】真正奥義書
271 ホームズとワトスンが本当に探しているもの発見
- 『妖蛆(ようしょ)の秘密』・・・グンフェン・シュウが、ボックス・ヒルで使った呪文の概説。ホームズはこの著作に熱心に取り組んだ。
- 『無名祭祀書』の無修正版・・・ロデリック・ハロウビーがそこからタ・アーの場所を探り当てた内容。
- 『イオドの書』
- 『エイボンの書』
- 『屍食教典儀』
- 『ナコト写本』
- 『ニューイングランド新天地の魔術的驚異』
- 『断罪の書』
- 『サンの七秘聖典』・・・地上にはなく暗黒の神々のいる場所にあるという『ニンの碑』の文章に言及している。
271 【🔎】『妖蛆(ようしょ)の秘密』 ルートヴィヒ・プリン
- Mysteries of the Worm
- クトゥルフ神話の架空の書籍
271 ルートヴィヒ・プリン
- 13世紀の十字軍兵士で、シリアで捕虜となったときに魔術師から教えを受け、またアレクサンドリア図書館でも学んだという。
271 【🔎】十字軍
- 13世紀は最後の方
271 【🔎】アレクサンドリア図書館
- エジプト
272 【🔎】『無名祭祀書』 ロデリック・ハロウビー
- Nameless Cults
- クトゥルフ神話の架空の書籍
272 【🔎】イオド
272 【🔎】『エイボンの書』
- Book of Eibon
- クトゥルフ神話の架空の書。
272 【🔎】『屍食教典儀』
- Cults of the Ghouls
272 【🔎】『ナコト写本』
272 フランス語と中英語の理解が不充分なところはミス・チャスティティ・タスカーが手伝ってくれた。
- 彼女はワトソンがそれまで出会った中で最も教養のある女性。
- 慣習的に女性に求められる妻らしさや母親らしさや家庭より、学究生活を優先させていた。
- 彼女のラテン語に関する理解力は貴重だった。簡単に翻訳。
- ミス・チャスティティ・タスカーは、次第にホームズとワトスンを気に入ってくれた。
273 大量の難解な伝承や複雑な宇宙論に触れて、身体に不調をきたしてきた時
- ホームズとワトスンは、休息のために、リージェント・パークのまわりを気晴らしにぶらぶらした。
- グンフェン・シュウの逃げた御者サッカーの追跡をした。・・・不明。
273 【🔎】リージェント・パーク
273 グンフェン・シュウに送られてきた、事実上彼の死の召喚状になった不可解な匿名の手紙
- ホームズが手にしている姿を、ワトソンは何度も見た。
- グンフェン・シュウの死後、ホームズが彼のポケットから抜き取って、暇のある時には、「いやはや、ミスター・グンフェン、いやはや!」という短い言葉が貴重な秘密を与えるかのように、じっくり調べた。
- 筆記体の手書き文字で、綺麗だがとくちょうがない。
- 紙は上質なボンド紙だが、良い文具店なら誰でも買える。
275 封印書籍部にずっと滞在していていれば避けられない『ネクロノミコン』
- 『ネクロノミコン』に導かれた。
- ホームズが博物館にある『ネクロノミコン』を出してほしいと頼んだ時、見つけることができなくて、ミス・チャスティティ・タスカーは困惑したことがあった。部屋中のどの棚にもなかったから。
- クトゥルーとその仲間達について究極の情報の宝庫で、ホームズとワトスンはそこに向かって研究と調査を積み上げてきた。
- 二人の最終目的地であり、入念に心構えと準備をしていた目標だった。
276 『ネクロノミコン』
- 730年頃にイエメンの神秘家かつ学識者だったアブドゥル・アルサハードによってかかれた本。
- 200年後にコンスタンチノープルのテオドロス・フィレタスによってアラビア語から古典ギリシャ語に翻訳される。
- さらに1228年にユトランド半島生まれのオラス・ウォルミウスによってラテン語に翻訳される。
- その後は、さまざまな現代語で発表され、その中にセルバンテスによるスペイン語版や、占星術師であり神秘家であるドクター・ジョン・ディーによるものがあると伝えられている。
- 儀式や象徴、式文が満載された『ネクロノミコン』は、地下の神々の体系化と理解、さらには召喚に不可欠だと考えられている。
276 『ネクロノミコン』につきまとう悲劇と恐怖
- アブドゥル・アルサハードが“狂ったアラビア人”と知られるようになった。
- この本に出会ったほとんどすべての人が狂気に至る運命をたどり、それはただの恐ろしい死以上のものだった。
- アブドゥル・アルサハード自身、ダマスカスの街で目に見えない獣に引きちぎられた。
- 1771年には、本を所有していたロードアイランドの商人で魔術師のジョゼフ・カーウェンが、ポータケットの自分の牧場で、プロヴィデンスの一部の有力者から襲われ、その後謎めいた状況で姿を消した。
- 1840年には、この本のドイツ語翻訳を出版した不運なフォン・ユンツトが、ドア内側から鍵をかけた自室で、喉を鉤爪で切り裂かれたような状態で死んでいるのがはっけんされた。
- 『ネクロノミコン』の多くは、当局によって焼却された。
- ローマ教皇グレゴリウス九世は、『ネクロノミコン』を『禁書目録』に入れた。
- 不完全な翻訳書はしばしば行方不明になり、発見されることがなかった。
- 『ネクロノミコン』がその長い歴史で引き起こしたのは、苦痛と不幸だけだった。
277 ミス・チャスティティ・タスカーは、『ネクロノミコン』が分類ミスで、中世の解剖学教科書に紛れているかもと、念のため調べに行った帰り、封印書籍部の訪問者名が書かれた台帳と、それぞれの訪問者が閲覧した書物のリストを持ってきた。
- 1880年12月の全部にシャーロック・ホームズとジョン・ワトスンが記入され、署名、それぞれの日に入館時刻と退官時刻を分まで記載されていた。
- 『ネクロノミコン』が最後に閲覧された時期まで遡ると、去年の5月だった。
278 去年の5月の閲覧者(彼)
ミス・チャスティティ・タスカーの記憶
- 礼儀正しくて、見た目と肉体に少し優雅さが足りなかったけれど、妙な魅力があった。
- 来たのは一度だけ。
- 興味があったのは、『ネクロノミコン』だけ。
- 午前は本について熟考しているみたいに没頭していて、帰った時の記憶がない。
278 鍵のかかった部屋から去年の5月の閲覧者(彼)が退出したことについて。
- 鍵穴があるのは外側だけだが、ドアの格子から手を出すと届いただろう。錠そのものは旧式で、かなてことヤスリで簡単に開けられると、ホームズ。
- 錠をはずす時の音がするはず、音がすればミス・チャスティティ・タスカーが気づくはずであることの疑問。気付かなかった。
- 責任をとって封印書籍部をやめさされるかもと、ミス・チャスティティ・タスカーの不安。
- 去年の5月の閲覧者(彼)の台帳に残した名前は、プロフェッサー・ジェイムズ・モリアーティ。
281 18章 モリアーティ
281 プロフェッサー・ジェイムズ・モリアーティ
- その頃のホームズとワトスンは、モリアーティを知らなかったので、彼と結びつけるものは何もなく、戦慄を引き起こすことはなかった。
- 台帳の署名は、グンフェン・シュウに届いた手紙と同一のものだった。
- グンフェン・シュウのかつての協力者であり、助言者だった男。
- グンフェン・シュウが、ホームズの助言者になったことで、モリアーティが怒り、グンフェン・シュウに敵意をもってしまった。
- 『ネクロノミコン』を盗んだ男。
282 ミス・チャスティティ・タスカーが語る『ネクロノミコン』の恐ろしい評判。
- 危険で、人間から理性を奪うことができると言われている。
- 間違った人の手に渡ると、世界を破壊することができるとも言われる。
- ミス・チャスティティ・タスカーのためにも、『ネクロノミコン』をモリアーティから奪い返す約束。
283 その日(『ネクロノミコン』がモリアーティに盗まれたと発覚した)の残りの時間
- ホームズは、モリアーティ教授について可能な限りの情報を掘り出すため出かけていった。
- ワトスンは、通常はルルイエと呼ばれ、一部ではアクロと呼ばれている言語の辞書をつくることが目標。
283 ルルイエ語
- クトゥルー自身とその広がった系譜によって用いられ、不詳の作者によって1万5千年もの昔に初めて数枚の粘土板(ルルイエの黒牌(こくはい))に書かれたものだと考えられていた。
- その痕跡は、紀元前3世紀から中国に巻物の形で保存されている。
- それを表す象形文字は中国文字とにているが、横線から下がる文字にはサンスクリット語の要素もある。
- その言語の知識は、バビロンとペルシアを通って中東から西へ広がった。
- 巻物のラテン語翻訳が紀元前200年頃にローマに突然登場し、その後『リユーフ』と題された。
- 『リユーフ』のドイツ語翻訳が、18世紀にハイデルベルクに現れた。名高い道楽者で放蕩者だった、第二代ロチェスター伯爵のジョン・ウィルモットが、卑猥な詩を書いたり、半数の貴族たちの妻と関係をもったりする以外の暇な時間に英語版を作ったと言われているが、この出版物は一部も現存していない。
- ワトスンは古代言語に関する知識を集めていった。
- この言語は、品詞の区別が明確でない。
- 文法規則がないのも同然。
- ルルイエ語の文章の意味を取るのは容易でない。
- 名詞は動詞としてはたらくことが可能で、形容詞と副詞もそうだった。
- 代名詞は任意だった。
- 動詞の時制は2つだけ。現在形と過去形、あるいは未来形。もしくは完了と未完了にもなる。どちらか判別できるのは、文脈だけ。
- 単数と複数に意味はなく、語順は可変で、発音はただの推測だった。
- 全体として、ルルイエ語は聞く者を惑わせ、妨げ、あいまいにするために意図的につくられたようだった。
- ライオンの咆哮がサルの鳴き声と似ていないように、ルルイエ語は人間の話し方とほとんど類似性がなかった。
- スタンフォードが何度も叫んだルルイエ語のホームズのメモ。
284 【🔎】第二代ロチェスター伯爵のジョン・ウィルモット
285 スタンフォードが何度も叫んだルルイエ語のホームズのメモの翻訳
- スタンフォードの言葉「フグタン!エブムナ・フグタン!ハフドルン・ウガフン・ングハ・ングフト!」
- ワトスンの翻訳「彼は待っている!穴で待っている!神官は闇の中で死を支配する!」
- 「支配する」という言葉は確信がないまま。
- 「ウガフン」という単語には2つの働きがあり、「~に存在する」という意味がある。状況からすると「支配する」が論理的な選択。
- 「死は神官と共に暗闇に存在する!」とも解釈できる。
- おそらくルルイエ語は、神々だけが流暢に使える言語の不正確さ。
- 翻訳では「彼」にした誰か、「穴で待っている」のは、「神官」だったのだろうか?あるいは、何らかの「死」の化身だったのだろうか?
- スタンフォードが2人に伝えようとしていた意味は?
286 『ネクロノミコン』を取り戻すために全力を尽くすとミス・チャスティティ・タスカーに約束して別れ、ホームズとワトスンは、グレイト・ラッセル街にあるコーヒーハウスへ向かった。
- ホームズがしらべてきたことを語る。
286 【🔎】グレイト・ラッセル街
286 ジェームズ・モリアーティ教授について
- 僕たちと同じ年ごろで、評判の良い数学者。
- 数学の分野では、彼を天才と呼ぶ人間もいる。
- 21歳で二項定理についての論文を書き、それがヨーロッパで人気を得たおかげで、わが国の小さな大学のひとつに職を得た。
- のちに発展して本にまでなる小惑星の力学についての彼の講義は、このテーマの決定的論考だとみなされている。このテーマの唯一の研究だと言える。それは、モリアーティ以外は誰も理解できない。
- 天体研究に運命づけられた学者。
- オックスフォードかケンブリッジの終身職、栄誉、大学総長の地位をスキャンダルで失った。ある種の恥ずべき行為で学術界から追放され、社会的隔離状態にある。
287 ジェームズ・モリアーティの恥ずべき行動を新聞のアーカイブとロンドン大学で教員たちと話を調べてきた。
- 著名人の中で、モリアーティの失脚の状況についての糸口を与えてくれたのはひとりだけだった。
288 モリアーティの失脚の状況についての糸口を与えてくれた著名人
- キングズ・カレッジの政治経済学の教授
- モリアーティと同時期にイングランド中部のどこかにある別の大学のいたことがある。
- 彼はモリアーティより先に大学を離れたが、その大学に居る時モリアーティのまわりにいろいろな噂が渦巻いているのに気づいていた。悪魔崇拝や冒涜的な習慣、黒魔術の儀式などの噂。
- モリアーティに会った時はいつも楽しく、談話室では博識で興味のもてる楽しい仲間だったと主張。
- いまだにやり取りをしている昔の知人たちの手紙にあった、あいまいな言葉と新聞の情報から、モリアーティが地位を失った理由を悟った。
288 ジェームズ・モリアーティが地位を失った理由の推測
- ある晩モリアーティは、寮の自室で悪事をはたらき、それがけっこうな騒動になった。
- 近くの学生と指導教員が聞いたのは、猛(たけ)り狂ったジャングルの獣の咆哮のような声で、それからゴン、ドン、バタンというような耳障りな音が続いた。モリアーティはそれを上回るような声で叫んでいた。
- ドアをノックしても騒動は収まらず、中の人間の返事もない。やがて音は自然に止み、しばらくして出て来たモリアーティは、ボクシングのヘビー級チャンピオンと数ラウンド闘ったようにぐったりとしていた。部屋はめちゃくちゃだった。説明を求められてもモリアーティは答えなかった。
- 引き出される合理的結論は、モリアーティが激烈なかんしゃくをおこした理由の引き金は、王立天文学会の月報に掲載されたばかりの『小惑星の力学』への悪評。
- モリアーティの精神は健全ではなく、同僚や生徒への潜在的に危険であると判断され、評議会に辞表を出すように促された。
289 モリアーティの「かんしゃく」についてのホームズの解釈
- その夜、部家では何か別のことが起こった。
- モリアーティが邪悪な儀式を試したか、手に負えなくなって何かが放たれてしまい、彼はそれをもとの場所に戻そうとして悪戦苦闘した。
- これが、2年前のこと。
289 優秀なモリアーティ教授は、今はロンドンにいて、給料よりも、肩書きとそれに伴う名声にしがみついている。
- 彼は金持ちの後継ぎを陸軍士官試験に合格させるための個人授業をして、かろうじて生計を立てている。
- そして、ホームズとワトスンの訪問を、ここから45分の自宅で待ち構えている。面会を求めるホームズの電報に、迅速に返事をくれた。
290 モリアーティ教授の自宅
- ムーアゲートに住んでいる。
290 【🔎】ムーアゲート
119 19章 ちょっとした催眠術
291 ・・・「最後の事件」と題した話では、スイスの新緑を背景に人影を見たことを描いているが、高い確率ではあっても、確かに彼だとは言えない。この人物の容貌について私が言える詳細な背地名は、ホームズから告げられたものだけだった。・・・
291 【本】「最後の事件」 アーサー・コナン・ドイル
291 【🔎】「最後の事件」
219 ・・・しかし実は、私が『恐怖の谷』で「有名な科学的犯罪者」と呼んだこの男には会ったことがあり、ほかに書いたときよりずっと前に、私たちの人生に入り込んでいたのだ。正確に言うなら、十一年前に。・・・
- 11年前にモリアーティ教授をワトソンは知っていた。
219 【本】『恐怖の谷』 アーサー・コナン・ドイル
219 【🔎】『恐怖の谷』
291 モリアーティ
- かなり魅力のない男。
- ホームズと同様、長身で痩せているが、大きくて筋張ったひたいが落ちくぼみ、すぼまった目の上に突き出ていた。
- 肩はまるくなっていて、本をあまりにも長い時間読んだことを示していた。
- 青白い顔色もまた、新鮮な空気と日光に触れずに、室内に閉じこもって長い時間過ごしていることを示していた。
- 魅力と愛想を出そうと努力して微笑みは怒った犬の残忍な含み笑いに似ていた。
- モリアーティの部屋は、ムーアゲートのみすぼらしい通りに建つ、みすぼらしい家の二階のゆでキャベツとカビの臭いが建物全体に染みこんでいる部屋。
- 態度は丁寧で愛想がよく、ホームズとワトスンに、ドライシェリーをすすめた。
293 モリアーティの告白
- ホームズとこんなに早く会うとは想定外だった
- ホームズがあなたの容姿にはなじみがあるからどこかであったことがあるかという質問には、お互い知らない人間だと答える。
- 興味をもって始めたばかりのホームズの仕事を追いかけていたことは白状した。
- モリアーティは、ホームズの大学の旧友ヴィクター・トレヴァーと以前からの知り合いだった。
293 ヴィクター・トレヴァー
- ホームズの大学の旧友
- ヴィクター・トレヴァーとホームズの道が分かれた直後、彼は1867年に植物学課程に入った。モリアーティはその同じ大学の大学院で研究していた。
- 彼はあきらめて大学をやめ、茶の栽培者になった。
293 ヴィクター・トレヴァー
293 【本】「グロリア・スコット事件」 アーサー・コナン・ドイル
293
293 ・・・彼はあきらめて大学をやめ、茶の栽培者になったーーーベンガルで、だったかな?」
「タライだ」とホームズ。
- ヴィクター・トレヴァーはテライ(タライ)茶園で成功をおさめた。
294 ヴィクター・トレヴァーがモリアーティに語ったホームズのいたずらの話
- ヴィクター・トレヴァーの父親は、オーストラリア行きの囚人輸送船グロリア・スコット号で起きた囚人暴動に加わった。
- ヴィクター・トレヴァーは、ホームズが鋭い観察力で、耳と入れ墨の入った肘、もっているステッキだけから、ヴィクター・トレヴァーの父親について多くの真実を推理したと教えてくれた。
- それにヴィクター・トレヴァーに送られた手紙の暗号をどうやって解いたのかも教えてくれた。
295 モリアーティは、ホームズとホームズの兄の洗礼名を知っていた。
- シャーロックもマイクロフトというのも、ご両親はとても革新的だといった。
- マイクロフトの政府での仕事も知っていた。
296 ・・・「私はヴィクター・トレヴァーが君のことを語った瞬間に、君がどういう人間なのかを理解した。再認識したのは、つい先ごろ君が、ミセス・ファリントッシュと彼女のオパールのティアラについて調査したという噂を聞いたときだ。・・・
- ホームズは、ミセス・ファリントッシュに助けが必要な時にそこにいて、大切な宝石を彼女に返し、さらに彼女と夫の和解を取り持った。
- そして脚光を浴びることをも好まず、ホームズの成功を警察の馬鹿どもの手柄にしてやることもしばしばだ。グンフェンには無理だったが、ホームズが輝くばかりに清廉潔白であること、グンフェンがホームズ私たちの小さな集団に引き入れようとするのは愚かであることが、モリアーティにはすぐに理解した。
297 グンフェンは疲れ果てていた。
- しばらくは、グンフェンは金を持っていたからよい共犯者だった。
- 最近は、頼りにならなくなっていた。モリアーティはグンフェン・シュウに影が食べる餌を探す仕事を命じていた。
- 祭壇への最後のいけにえは、グンフェン自身の下っ端だった。
298
296 【本】「まだらの紐」
296 【🔎】「まだらの紐」
296 ミセス・ファリントッシュ
296 ・・・君は、まるで本物のガラハッド卿(アーサー王伝説の登場人物)のように、ご婦人の助けに駆けつけた。・・・
296 【🔎】ガラハッド卿(アーサー王伝説の登場人物)
296 【🔎】【本】「アーサー王伝説」
298 影が食べる餌(人間)
- 生命力という格別なものをもっている人間たち
- モリアーティの手でしばらく影響力を強めていたある存在を、ずっと支えている。
- 影を通して渡す月々の食料は彼の食欲を満たし、彼のモリアーティへの好意を強める。
298 影を通して渡す月々の食料により、モリアーティへの好意を強める彼とは
- 彼の名前は言えない。
- クトゥルーではない。
298 グンフェン・シュウは、モリアーティの手助けを同意した。グンフェン・シュウは、モリアーティを深く心を奪われていたから、モリアーティのために何でもした。
- しかしその後、グンフェン・シュウは仕事の責務をモリアーティに相談なしに、スタンフォードに渡すことを選ぶ、過ちをおかした。
- また、ホームズをもっているの小さな集団に引き入れようとしたのが決定的だった。ホームズはやがて必ずモリアーティたちの計画に害となるだろう人間を勧誘する決断について、寛大になれなかった。
300 馬車にホームズとワトスンが同乗していたことは、モリアーティは知らなかった、とモリアーティ。
- モリアーティの良心は痛まない。
- ホームズが生き残ってくれてうれしい。
- ホームズとワトスンが一緒に死んでいれば、実際の邪魔者からも潜在的な邪魔者からも解放された。
300 御者サッカーの行方は?
- 一年のこの時期のテムズ川の流れは速いから、死体はでない。
- ポケットに石を詰め込んで、真夜中にウォータールー橋から飛び込んだら、すぐ溺れて死ぬ。満潮が引いて、潮流が西に向かうとしたら、彼の遺体はそのまま誰にも気づかれずにゲルマン海(北海の旧称)まで運ばれるだろう。
- 自殺。自発的。モリアーティは説得力があり、劣った知性相手なら特に、労働者階級の精神状態は簡単に操れる。
301 2件の殺人告白を聞いて、憤慨するワトスン。
302 モリアーティが盗んだ『ネクロノミコン』は、この部屋にはない。
302 モリアーティは、『ネクロノミコン』を盗むことは、衝動的に決めたことだった。
- 錠をいじったのではなく、モリアーティはミス・チャスティティ・タスカーを呼んで、モリアーティが本を棚に戻したかどうか調べずにいてくれるように説得しただけ。
- モリアーティの説得力の一例。望みどおりにするコツを知っている。
304 『ネクロノミコン』の返還と、モリアーティが執着している神が何であれ取り引きを放棄させてやる、と説得と警告するホームズ。
304 モリアーティの語る神
- モリアーティは、小惑星について研究した。
- 望遠鏡で地球の先を見ることから始めたが、時間がたつにつれ、モリアーティの天文研究は形而上(けいじじょう)的になっていった。
- 科学から昔の秩序へ、そして新しい正統から長く続く伝統へと転向した。
- 学べば学ぶほど、現代にいる私たちはその進歩にもかかわらず、知っていることがより少ないのだとわかった。
- 残酷な論理が、宇宙は冷たく有害なものだと教えてくれた。
- 宇宙はその誕生の時、完璧に環境に適合できるという同一の性質を有する存在を大量に生み出したということを、モリアーティは発見した。
- 彼らは神々だが、人間の大多数が現在崇拝しているものと違う神。
- 彼らは私たちを愛さない、さらに、憎むこともない。私たちのことはまったく無関心。
- 彼らは時々私たちを、養蜂家が蜂を扱うように使う。私たちの魂は、彼らにとって蜂蜜のようなものであり、私たちの命の副産物である砂糖菓子である。どうしてその返礼として、私たちが彼らを使ってはいけないのか?どうして彼らから私たちのための何かを取り戻してはいけないのか?
304 【🔎】形而上的(けいじじょうてき)
306 モリアーティの最後の言葉
- 「君は心の底で自分の求めるものを知っている。欲しいのは確実性で、予測できないことではない。神秘ではなく論理。曖昧さではなく立証。帰るのなら、これを頭に入れておきたまえ。君のような男が放っておくべきことは、そのまま放っておきたまえ。そうしなければ、苦労するぞ」
306 ベイカー街の居間でホームズの向かいに座って、壁の時計が12時を打つのに気づくまで
- モリアーティの最後の言葉から12時までの記憶がないワトスン。空白。
- ホームズは先に目覚めていたが、同様に数時間のことは思い出せない。ホームズが気づいたのは、11時少し過ぎ。
- モリアーティのまじない(催眠術のようなもの)は、ワトスンのほうが深くかかっていた。
307 モリアーティのまじない(催眠術のようなもの)
- グンフェン・シュウにとりいった
- ミス・チャスティティ・タスカーの鼻先で、『ネクロノミコン』を盗み出した
- 御者サッカーを丸め込んでウォータールー橋の欄干から身を投げさせた。
- ある意味、僕たちは幸運だった。モリアーティは家に送り届けてくれた。
308 モリアーティの助言は正しいとホームズ。
- 彼の助言どおり放っておくべき。
- 単なる探偵になるというアイディアは気にいった。ホームズが人生に求めていたこと全てだった。
- 彼の助言どおり、外なる神から引き下がれるうちに引き下がっておくほうが賢明だとホームズは判断する。
309 シャツを脱ぎ、タ・アーでトカゲ人間につけられた傷をホームズに見せながら、反論するワトスン。
- ホームズの判断は、モリアーティが頭の中に入り込んで、ホームズの不安と疑念を食い物にしている。
- トカゲ人間の容赦ない傷の痛みは、タ・アーと、ロデリック・ハロウビーと、ぼくらの失敗を思い出されるものだ。これは永遠にワトスンと一緒のものだ。これが意味するすべてのことをワトスンはやっと最近、ホームズと会って影の生き物の殺戮に巻き込まれたあとに受け入れた。ワトスンには、不可解な別世界の存在と対決する心構えができている。
- ジェームズ・モリアーティ教授などという不愉快な悪党が言ったから、放っておくことにするなんて、ホームズのすべきことではないと説得するワトスン。
310 ホームズは煙をふかしながら、ワトスンの決心を試してみただけと喜んだ。
- ちょっと疑わしいと思っているワトスン。
310 翌朝
- ホームズは、朝食を終えると何も言わずに姿を消した。
- 31分後に戻ってくる。
- 電報局に行って、モリアーティ教授に、僕たちがいかなる場合でもモリアーティ教授注目するし、シャドウェルの死の謎について調査を続けると宣言した電報をうってきたと、ワトスンに告げた。
312 20章 アンハッピー・クリスマス
- それまでに、モリアーティがシャドウェルの影にまたひとりいけにえを捧げるのを阻止しなければならない。
312 シャドウェルの影
- モリアーティが忠誠を誓った魔神。
- その力をみずからのために利用したいと思っている悪鬼のような神。
312 ホームズとワトスンは、封印書籍部に長居するようになった。
312 ミス・チャスティティ・タスカー
- ミス・チャスティティ・タスカーは協力的だったが、約束した『ネクロノミコン』奪還に失敗した二人は、彼女を失望させ、溝ができてしまった。
- ミス・チャスティティ・タスカーは、見るからに意気消沈している。
- 孰れ取り戻すというホームズに、もう1、2週間は上層部に盗難を伏せておくことに彼女は渋々同意した。
- 職務に忠実な女性。
313 『ネクロノミコン』がなくしてはわからないこと
- モリアーティがどんな儀式を執り行っているのか
- 暗黒の万神殿に居並ぶ神々のうちどの神と関係を築いてきたのか
313 ミス・チャスティティ・タスカーが教える誰でも閲覧できる『ネクロノミコン』と同書。
- 一冊は、プラハの国立博物館に所蔵されている。少なくとも3か月前に、20枚に及ぶ書面に記入して閲覧を申し込まなければならない。申込書はその後、受理されるという保証がなく、延々と煩雑なお役所業務に回される。
- もう一冊は、アメリカ合衆国の、マサチューセッツ州アーカム、ミスカトニック大学にある。
313 クリスマスのお祝い気分ではないホームズとワトスン。
- 祝祭の飾りつけをしないままの部屋には、ホームズの兄マイクロフトからのクリスマス・カードがマントルピースに置かれていた。
313 マイクロフト
- シャーロック・ホームズの兄
- ワトスンは、まだホームズの兄と挨拶していない。
313 ワトスンの兄
- そのころまだ存であった断続的に困窮にあえいでいた兄。
- 酒代の支出がかさんで経済状態が悪化し、品行も悪くなった兄。
- 住んでいたところを追い出されて住所不定の身。
- ワトスンのこの世でたったひとりの家族。
- 居所がわからないので、クリスマスでも会いに行けない。
314 クリスマス当日
- 友人の何人かと階下(した)でごちそうを囲むからと、ハドスン夫人がホームズとワトスンを誘ってくれたが、二人は辞退した。
- ホームズとワトスンは、底なしの憂鬱に沈んでいたから。
314 ・・・翌日のわびしいボクシング・デーのあとは、クリスマスと新年の間の、祝日でもなければすっかり平日が再開するでもない、余波が静まっていく無為の期間が続いた。・・・
- 外は冬めいていた。
- 大英博物館がお休み。
- ホームズとワトスンは、部家から出ないでいた。
- ホームズはパイプを片時もはなさないので、煙草屋の少年が毎日のようにシャグ煙草を配達した。
- ホームズは時にはヴァイオリンを弾きならした。
- すっかり無口になったホームズ。
314 【🔎】ボクシング・デー
- 12月26日
316 モリアーティと神を一挙に負かす方法があればと袋小路にはまるホームズとワトスン。
- そこへ立て続けに2つの出来事が起こり、事態を窮地に追い込んだ。
317 21章 訪問者と電報
317 大晦日の朝
- 今夜は月のない夜。モリアーティが神のために生贄をささげるには良い日。
- ホームズの気分は暗く、食欲がない。
- 【🍴】階下でハドスンさんがデヴィルド・キドニーを作っている、うまそうな匂い。
- デヴィルド・キドニーは、スパイスソースで調理した子羊の腎臓による朝食料理。
318 【🔎】デヴィルド・キドニー
- Deviled kidneys
320 モリアーティの件で警察に頼るのは無理
- レストレードでもグレグスンにも相談できない。
- スコットランド・ヤード内では、以前のホームズとワトスンの嘘の証言で、事件は解決したことになっているから。
320 朝食後の1時間後、呼び鈴が鳴った。
- ワトスンが会ったことがなかったレストレード警部が訪ねて来た。
320 レストレード警部
- やせこけて小柄な、黒い目のイタチみたいな顔をした男。
- 噂をしていた、ホームズの知り合い。
- グレグスンと比べて悲しげな姿に見えたワトスン。
- グレグスンは生意気なほど熱心なところがある。抑制的で厳粛なレストレードは、やや鼻にかかった話し方がおせっかいな感じだった。
- 困ったことがあると、山高帽のつばをつかんでぐるぐる回す癖がある。
322 レストレードは、グレグスン警部の件で訪ねてきた。
- グレグスンがいなくなった。
- 2日続けて仕事にでてこない。
- 病気や体調不良による欠勤届が出ていない。
322 昨日、バタシーの住まいに巡査をやって在宅確認させた。
- ノックに応答がなかったので、巡査は排水管をよじのぼって、掛け金のはずれた窓からもぐりこんだが、誰もいなかった。
- グレグスンの姿はないし、室内に変わったところもなかった。やむをえずあわてて出かけたり、意志に反して連れていかれた様子はなかった。
323 巡査は、フラットのご近所への聞き込み
- 1階の老夫婦が、29日水曜日の朝、グレグスンがいつもの時間に正面玄関から出かける音を聞いた。
- 最上階に住む事務弁護士の書記も出かけるのを聞いていた。
- どうやらグレグスンは、乗合馬車に乗って職場に向かおうとして、消えてしまった。
234 ホームズが失踪の原因を知っていそうなので、レストレードは、楽観視している様子。
- グンフェン・シュウの自殺の件と関係がある。
- グンフェン・シュウの仲間の東洋人たちに、報復のために拉致されたとか?
- “トング”とかいう秘密結社のしわざか?
234 グレグスンの失踪が、グンフェン・シュウの一件に無関係とも、関係があるとも言えないホームズ。
324 バタシーのグレグスンの住まいを訪ねて、手がかりをさがすことにする。
326 グレグスンを選ぶのは、モリアーティの従来のパターンに一致しない。
326 電報配達人の訪問
- 電報には、「ホームズ様へ 大至急ディオゲネス・クラブへコラレタシ。 ホイットワース」とあった。
327 ディオゲネス・クラブ
- ホームズの兄マイクロフトは、ホイットワースの会員。
- 創立時の発起人のひとりが、マイクロフト。
- 端的にいうなら、キリスト教世界で一番変わったクラブ。
- そこの会員名簿は、奇人変人ばかりの紳士録。
- ほかのクラブにいれてくれないような、人づきあいが悪いことにかけては天才的な気難しい人間達が集まっている。
327 ホイットワース
- クラブの秘書。
- 彼がホームズに電報をよこすなんてよっぽどのこと。
- ホームズとホイットワースには、マイクロフトのほかに接点がないから、唯一推測できることは、用件はマイクロフト絡みだっていうことだ。
328 バタシーではなく、先にマイクロフトを優先するホームズ。
329 22章 キリスト教世界でいちばん変わったクラブ
329 ・・・出版された作品中に私がディオゲネス・クラブとその有名会員マイクロフト・ホームズを登場させたのは、本書に記す物語から七年後、1887年の事件を語った「ギリシャ語通訳」という短篇だった。・・・
- 今は、1880年
- 「ギリシャ語通訳」でワトスンは、それまでマイクロソフトの存在を知らなかったし、シャーロック・ホームズは天涯孤独の身の上なのだと思い込んだいたと述べているのは、つくり話。
- ホームズに兄がいるとわかった年を1887年に設定したのは、その年の春にワトスン自身の兄が、どんどん酒に溺れていった果てに非業の死を遂げたから。
329 【本】「ギリシャ語通訳」 アーサー・コナン・ドイル
329 1880年のディオゲネス・クラブ
- 揺監期(ようらんき)
- イングランドでいちばん社交嫌いの、人と一緒にいても会話はしたくない人間たち、無言で人と交わり、まるで誰もいないかのようにほかの会員に注意を払わずにいるのが好きな人間たちの安息地となっていた。
- 通称ダゴン・クラブという秘密のクラブ内支部組織は、当時まだなかった。
329 【🔎】揺監期(ようらんき)
350 ダゴン・クラブ
- ダゴン・クラブという組織の目的について語るのは、この手記三部作の二部、三部でとワトスン。
350 パルマルへ馬車を走らせ、10時少し過ぎにはディオゲネス・クラブの玄関口に着いた。
- カールトン・クラブの少し先だ。
350 【🔎】パルマル
330 【🔎】カールトン・クラブ
holmesandpoirotinlondon.blogspot.com
330 ホイットワース
330 マイクロフト・ホームズ
- マイクロフト・ホームズは、毎日時計仕掛けのように夕方4時45分から7時40分まで、ディオゲネス・クラブに来ている。
- この2日続けて、クラブに来ていない。
- マイクロフト・ホームズは若くても、肥満体で大食漢なので、ホイットワースたちに心配された。
333 不可解な失踪事件が、この48時間に2件
- グレグスン警部
- マイクロフト・ホームズ
- モリアーティに拉致されたのかも。2人ともホームズの知り合いだから。
- モリアーティにホームズがうった電報のせいかも。
334 パルマルのマイクロフト・ホームズの豪勢なタウンハウスへ
- 3階の続き部屋
- ディオゲネス・クラブとは目と鼻の先。
- 通勤のホワイトホールも角を曲がってすぐの場所。
334 【🔎】ホワイトホール
334 ボーイが紹(しょう)じ入れてくれる。
- マイクロフト・ホームズは、水曜日以来「オームズさんの影も形も」ないと断言し、ちょっとへんだと思っていたと認めた。
- 水曜日に客が訪ねてきたのか、ちょっとも思い出せないボーイ。
- 若者は、水曜日に訪問客があって、応対に出たような気がするが記憶が曖昧の様子。
- ホームズがモリアーティの見せかけを描写してみたが、ボーイは途方に暮れているように、そんな人に会った気がするが、夢にでも見たような感じで、はっきりしない答え。
- ボーイはモリアーティの“とびきり”説得力のある弁舌(シルヴァリー・シルヴァー・タン)”にかかったのだろうと、ホームズ。
335 ホームズはボーイにマイクロフト・ホームズの弟だと納得させ、3階の部屋をみせてもらうことにする。
- 合鍵をあずかっていると嘘をつき、ホームズは開錠道具(ピッキング)一式をしようした。
- マイクロフト・ホームズの習癖は狂信的なほどにきっちりしている部屋。
- ホームズとは体形も部屋も正反対の兄弟。
336 シャーロック・ホームズとマイクロフト・ホームズの両親
- 父親は古くから続く兵士の血統を引いて、何かにつけて軍人らしく行動を律する人だった。
- 母親は、伯父がフランスの画家オラス・ヴェルネで、彼女もだいたいにおいて自由奔放なほうだった。
- マイクロフトとホームズは、両方の血筋の特徴を受け継ぎながら、現れ方がひどくかけはなれてしまった。
- マイクロフトは食事を楽しむが、シャーロックは、心身のエネルギー補給としか思わない。マイクロフトは一貫性と体系化を求めてやまず、ホームズは創造的な渾沌のほうを好む。
337 【🔎】オラス・ヴェルネ
- 【本】「ギリシャ語通訳」でホームズの母親のことが書かれている。
337 ホームズはマイクロフトの部屋中を綿密に調べた。
- 兄マイクロフトは、やはりモリアーティに拉致されたと断言した。
- 落ちたモリアーティの髪の毛。
- 髪の毛の長さ、ココナッツとイラン=イランの香油の匂いはモリアーティの整髪油で、ローランズとぴったり同じ調合率だ。
339 マイクロフトが残した手がかり
339 【🔎】欽定訳聖書
342 『GOR GAL EPH』
344 セント・ポール大聖堂ではない。
- ロンドンにあるセント・ポールゆかりの場所はひとつではない。ロンドンだけでもナイブリッジ、コヴェント・ガーデン、ハマースミスの3つ。
- イングランド中に何十とあるセント・ポールのどこかにつれていかれたと推測。
- この事件に直接関係する地域にもセント・ポールがある。論理的に言って、モリアーティがマイクロフトとグレグスンを連れていったのは、シャドウェルのセント・ポール教会。
325 23章 戦いに備えるネズミたち
345 シャドウェルのセント・ポール教会
- セント・ポールは、ウォータールー教会のひとつとして、国会制定法によって60年程前に古い教会跡地に建てられた。
- ドーム状尖塔のある後期ジョージ王朝様式の建築は、高く柱廊を頂くファサードのあたりにギリシャの神殿の趣もある。
- ラトクリフ街道とシャドウェル・ドックにはさまれ、ドックがかなり近いため、係留された船のきしる音、アンカー・チェーンのうなる音、埠頭の杭に当たる水音が聞こえる。
346 時刻は7時過ぎ
- 雨が降り続いていた
346 ホームズとワトスンは日中を、危険に飛び込む準備をしていた。
- ホームズは科学実験台に何時間も張り付いていて、複雑な作業を、しょっちゅういやな臭いさせながら繰り返した。
- クリスマスの前日まで封印書籍部でとっていたメモを参照しながら。
- ワトスンは、ウェブリー・プライスを徹底的に掃除して、あらゆる可動部に油をさした。
329 ・・・「とはいえ、罠がぱっくり口を開いているのに、チーズの匂いに鼻をひくつかせているネズミになったような気がするのは、いかんともしがたい」
「はは、違いがあるとしたら、君がぼくも昔からのネズミじゃないってことだ。備えをしてきたからな。君の銃には、ぼくが渡した弾薬を込めてあるだろう?」・・・
- 章タイトル回収
- 残りの弾薬も持ってきている。
350 シャドウェルのセント・ポール教会
- 大晦日の礼拝を行っていないし、人影がない。
- 左右に並ぶ墓石の大半には、船員の名が刻まれている。セント・ポールは昔から船乗りたちの教会だった。
- 17世紀にできたもとの建物は船長の教会と呼びならわされていたし、教区民の中にはジェームズ・クックもいたらしいシャドウェル自体がもとは塩水製湿地だったので、この教会付近も夜になると空気にそれらしい臭いがする。街中の硫黄臭を湿った土と塩水の悪臭がしのぐのだ。
350 【🔎】ジェームズ・クック
251 液体磁石
- 『妖蛆(そうそ・ようしゅ)の秘密』に記述されていた
- たった1本だが、マイクロフトの部屋で拾った髪の毛でホームズが作った。
- 錬金術
- 髪の毛が溶かしてある溶液に、持ち主が近くに来ると目に見える反応がおきる。
- プリンによると、皮膚片のほうがいいし、身体からの発散物を試料にすればもっと望ましいが、髪の毛でも結果はでるだろう。
- 液体磁石がぼうっと淡青色に発光しはじめた。
352 液体磁石の発光具合を頼りにたどり着いた場所
- 教会の西向き側面、短い階段のふもとにある浮き上げ彫りの木の扉の側だった。
- 地下にある納骨堂への入り口。
- ポルト・カッターで錠の連結部を切断したときについた傷がある。
354 錠前をピッキングするホームズ
- モリアーティが錠を交換したなら、簡単すぎる錠に疑問をもつワトスン。
- 連結金具の先端、切り欠きのすぐ上に、凝ったシンボルがごく小さく刻まれていた。ホームズは錠前破りに夢中になりすぎて、そのシンボルに気が付かなかった。
354 凝ったシンボル
- その細かい手仕事は、南京錠が閉まっているあいだは隠れていた。
- そのシンボル自体の意味はわからなかったが、魔力を持つ印形だろう。
- 見ているうちに、パチパチ音を立てて浅く刻まれた溝をまぶしい発光が走り、私の網膜に真紅色の残像を置きみやげにして、消えた。
- ホームズの推測だが、"パルグロースの監視"だった。
- モリアーティは、ホームズとワトスンが来たことをこれで知った。
356 24章 魔弾
356 ホームズとワトスンは、携帯用ランタンを手に納骨堂への入り口を中へ
- いたるところに蜘蛛の巣
- ほこりっぽい湿った空気で喉が詰まり、土の味がした。
- 地下は地上の教会本体と面積はそう変わらないだろう。それでも充分広いが、地下にいくつもの横道を延ばしている聖堂もあると聞くから用心した。
- 影が怖くて銃で過剰反応してしまうワトスン。
358 暗闇から歯のない、目のくぼんだ茶色い顔
- アルコーヴに横たわる大昔の遺骸
- 死体は、地下聖堂の片側の壁沿いに、同じようなアルコーヴが何十となく並んでいた。
- 二段ベッドほどの大きさのアルコーヴが、ひとつひとつの抜け殻となった人体の安息所になっていた。
- 遺骸は、船乗りたちだとホームズ。
- みんな前世紀の海軍将校たち。制服を着て、モスマン帽(17世紀、兵士や水夫にもっとも普及した、平たく円い帽子)をかぶっている。また、つばの上に名札(タリー)の付いたターポット・ハット(コーキング材に、タールを用いたことから、ターポットは水夫や船員を指す。)。リボンに船の名前が入っている。ほかにも様々な制服。
358 【🔎】アルコーヴ
362 アルコーヴのそばを離れ、先に進みだした時背後でかすれた音。
- アルコーヴのひとつがからっぽになっていた。
362 死体が起き上がって、ぐらつき脚を動かして、よたよたと、歩いてきたのを見る。
- 次々とアルコーヴから起き上がる死体たち。
- ざっと5、6人がふたりを取り囲む。
363 ワトスンのウェブリー・プライスの中身
- 今日の午後、イリーの二番を弾薬筒(カートリッジ)をまるまる一箱、今目の前にいる敵に対抗できるように改造したばかり。
- "崩壊の印章"という意向で、原料にホームズの血をたっぷり混ぜた練り粉を、手間暇かけて弾薬の先にいちいち塗り付けた。
364 撃たれた遺骸は、火口(ほくち)に火がついたような音をたてて、まるで割れたガラスのひびのように、どんどんひろがっていく。
- 遺骸のすべてを灼熱のオレンジ色が何もかもなめ尽くし、一瞬のうちに死体の頭から爪の先までびっしり、ちらちら光る細かいひび割れだらけになった。
- ものの燃えているいやな臭いが鼻につく。
- 亡者は一気に結合力を失い、無数の破片となって砕け、なだれを打ってどっと崩れ落ちる。
- 床で崩壊し、微粒子となって四方八方に飛び散った。あとには、黒く炭化して表面から煙の臭いが漂う。燃え殻のような残骸。
- "崩壊の印章"が効き目があった。
365 暗闇からモリアーティがあらわれる。
- 手をたたいて、賞賛ものべた。
- 彼にはつれがいた。
366 25章 三蛇の王冠(トリオフィンディアン・クラウン)
366 ひたいがかたむいて長く、皮膚は鱗で覆われたヒト科の動物
- モリアーティ教授の連れ
- タ・アーのトカゲ人間によく似ている
- 爬虫類らしい顔立ちはしていても、祖先は別の科に属する動物のようだ。
- 鱗の大きさは大小さまざま、目にはまぶたがない。
- めくれ上がった唇の間からちろちろのぞく、先が二又に分れた舌。
- トカゲ人間ではなく、その近縁種のヘビ人間。
366 『ナコト写本』の中で、哺乳類らしくない特徴をもつ太古の類人についての記述に何度もであっていた。
366 【🔎】『ナコト写本』
366 【🔎】インスマス
- 【本】『インスマスの影』 ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
367 モリアーティ教授
- 初対面のときよりもおちつきはらって、ふんぞりかえっている。
- 仕立てのいい揃いのフロックコートとピンストライプの先細ズボンに、新たなアクセサリーが加わっていた。
- 頭上に王冠。
367 モリアーティ教授の頭上の王冠
- 青銅と錬鉄で、どことなくケルト装飾に似た組み編み模様があしらわれている。
- 面前を高く飾る意匠は、それぞれ別の方向へ突き出す三匹のへびの頭。
- そのへにの意匠ともが連れているヘビ人間との間には、つながりがあるにちがいない。
368 ゾンビ
- 6人分の死体が灰になった山
- 忌まわしいブラック・ブリューを使って、ハイチのブードゥー教僧侶のやり方で死者を蘇らせ、自分の意もままに奴隷にした。
368 ワトスンが撃った弾
- 鉛ではなくて鉄の銃弾
- 鉄はゾンビの阻害物質として知られている。
- 鉄はほかのさまざまな超自然現象の発現も阻害すると聞く。
- "崩壊の印象"
368 "三蛇の王冠"
- 『エイボンの書』
- 三蛇の王冠は力のある人工遺物で、身に着けている者にあらえるヘビを支配する能力を与える。
- ヘビらしいところのある人間も支配できるようだ。
- モリアーティのかぶっている王冠は、真新しい手作り品のようだ。自作したもの。
- たった3点しか現存しないオリジナルの王冠ではない。
369 オリジナルの"三蛇の王冠"
- 入手不可能
- ひとつは、とてつもなく裕福なアメリカ人古物蒐(き)集家の個人蔵で、所有者が収集品を油断なく守っていて、もう20年以上も外部の人間をよせつけない。来客は断るし、住み込み使用人以外家に近づく者には、2階からショットガンを撃つ。
- もうひとつの三蛇の王冠のオリジナルは、アマゾンのジャングルの奥深くに人知れずある神殿に置かれている。その王冠は役にたたないという噂だ。使われぬまま何世紀もたって力が衰え、もはや単なる装身具にすぎない。
- 3つ目は、ペルシアの博物館の地下収蔵庫に鍵をかけてしまわれている。入手できないのは、厳重に保管されているからではなく、似たような遺物の山に埋もれているから。
370 自作の"三蛇の王冠"
- ちょっとした魔力のある品々を取り揃え、その不思議な力を吸い上げて、そのままでは効力のない青銅管の寄せ集めに移した。
- その品を集めるのが、去年外国へ出かけた時だった。
371 ヘビ人間
- 誰よりも生粋のロンドン人
- もはやから目を離さない
- 楕円形に光る目に崇拝の念らしきものがうかがえたが、その奥には何か別の、憤慨ともとれるような感情が埋もれている。不運にも王冠の奴隷となっているのが気にいらない様子。
- 住んでいる場所は、深い場所。バザルジェット氏(ロンドン主要排水施設やテムズ川堤防の工事を手掛けた土木技術師)らが、ちょっとやそっと掘り返したくらいでは行き当たらないほど深い場所。
- 大がかりな公共工事が始まるずっと前から、彼らの種族はここにいた。
- ロンドンには、住民の誰ひとり道しるべさえ知らない場所があり、そこに人間よりはるかに古い文明社会が、遠い昔から人知れず人間社会と共存していた。
- 希少種ではなく、もっとたくさんいる。
372 たくさんのヘビ人間たちが姿を現した。
- ざっと20人ばかり。
- みんなヘビらしいところはあるものの、その特徴の現れ方はさまざまだった。
- 大きな丸い目が左右に離れてついているもの、肩や腕のうしろに鱗がちらほらある以外は、普通の人間といって通りそうな者もわずかにいる。細長い胴と気味の悪い先細りの手足の上に載っているものは、どう見てもヘビの頭。コブラのように顎がとさか状のものまでいた。
- 皮膚の色は、翡翠色から赤みがかった黄褐色、漆黒までさまざまで、縞やまだら、あるいは目のように見える模様もあった。
- モリアーティが脳内で命じるままに、ヘビ人間たちが迫った。
373 命じているモリアーティも楽ではないらしく、精神集中に顔をしかめ、額におおつぶの汗をかいていた。
374 ホームズとワトスンは、ボクシングでヘビ人間と戦う。
- ホームズは警棒をもっていた。
- ヘビ人間の体臭の強烈なアンモニア臭が鼻を刺す。
- ホームズは、警棒を折られたあと、バリツで戦ったが、2人ともヘビ人間に押さえつけられてしまう。
- コブラ男が黄色い毒液のしずくを見せて、ワトスンの首筋にかみついた。
377 26章 オニキスのオベリスク
378 あと少しのところで、モリアーティが「ンルフン!(やめろ!)」とルルイエ語でコブラ男に命令した。
- 「クナ・ンルフン?(なぜやめなければならないのか?)」と憤慨するコブラ男。
- 反抗ぎみのコブラ男に、モリアーティが"三蛇の王冠"の力を使うと命令する。
- 結局、コブラ男が折れた。が、モリアーティの頬は青ざめ、足もとがふらついているようだった。王冠に精神的消耗で疲れているようだった。
380 聖堂の北の突き当りへモリアーティが先導した。
- 床土が掘り返された一画があった。
- 約5ヤード四方のほぼ正方形で、敷石が近くにきちんと積み上げられていた。
- 穴は10フィートはえぐられていた。
- モリアーティが一人で掘った。
- 穴の真ん中に遺物がむき出しになっていた。高さ7、8フィートほどの、急勾配のピラミッド状のオベリスク。
381 急勾配のピラミッド状のオベリスクの遺物
- なめらかで光沢のある黒い石に、びっしりとルルイエ語の文章が刻まれていた。
- 神秘的な銘文(めいぶん)からして、オベリスクは気の遠くなるほど古いもののようだ。
- もともとのセント・ポール教会が建てられるずっと前から地中に埋まっていて、何世紀もここにあったもの。
- 銘文には『地下王国への門』とある。
- 『適切な言葉を口にする者たち』だけに開かれる。
381 【🔎】銘文(めいぶん)
382 モリアーティが適切な呪文を唱える
- ルルイエ語で、扉や戸口を意味するングルイ、開錠という意味のクタルルという二語が何度もでてきた。
- オベリスクの面が内側に開き、ぽっかり三角形の口が開いた。
- 内部に、暗闇に潜り込んでいく階段が見えた。
- 螺旋階段を下っていく。
- このオベリスクは、記念碑ではない。もっと大規模なものの突端だ。
- 私たちがいまいるピラミッドに比べたら、ギザのピラミッドのほうが背が低いし、こちらの方が古い。
383 モリアーティがどうやって遺物を見つけたのか
- 『ネクロノミコン』の本にほのめかしてある。本のあちこちにちりばめられた様々な手がかりや関連情報を集めてから、土占いの技を使った。
- ロンドンの地図の上に水晶のダウジング振り子を垂らして、ピラミッドのありかを三角法で測定した。
- それから、セント・ポール教会の聖堂を占い棒で調べて、所在地点をぴったり探知した。
- 発掘にとりかかったその晩に、敷石のほんの1,2フィート下に頂点が見えてきた。
384 キリスト教には、キリスト教布教以前の重大な意味がある場所をわがものとしてきた歴史がある。
- それが教会のやり方で、初期のころなら、なおさらだ。
- 神殿や寺院その他、異教の文化で聖地だった場所を平らにならして教会を建てた。
- 同じようにして、異教の祝祭もわがものとした。農神祭(古代ローマの12月の収穫祭)はクリスマスになり、サムハイン祭(冬の始まりと新年を祝う古代ケルト人の祭り)はハロウィーンになった。
- 初期のキリスト教はそんなふうにして優位を見せつけて、ライバルの土地や伝統を乗っ取った。異教徒たちはその地方を離れて、どこかよそで儀式を執(と)り行う場所を見つけるか、さもなくば改宗するしか、選択肢がなかった。
- セント・ポール教会のあるシャドウェルはそのいい例。紀元前には新石器時代の聖地だった。石碑や支石墓(ドルメン)が立ち並んで、収穫期や春分秋分の祭礼の祭礼にドルイド僧がたびたび訪れた。
- それよりも昔、地表の高さはもっと低かった。ただのオニキスのオベリスクにしか見えないものも、地上に堂々とたっていた。その存在が、ひとつの世界がもうちとつの世界と、つまり地下世界が地上世界と重なり合う地点を示していた。
385 ホモ・サピエンス・レプティリエンシス
- ヘビ人間のこと
- 過去に人類との異種交配があったようだ。
- 交雑は両方向へ進んでいると思う。現代の世界を、まったく気づかないままレプティリエンスの血統であるなごりをとどめた人々が歩き回っている。
- モリアーティもまた、レプティリエンスの子孫かも。ヘビそっくりに頭を揺らしていたり、三蛇の王冠をかぶってヘビ人間に自分の意志をうまく働かせたりできるのも、ここ数年磨きをかけてきた催眠術の才能も、遠い祖先のヘビから受け継いだのかもしれない。
387 人間とヘビの性質を兼ね備える生き物の民間伝承
- アテナイに初代王ケクロプスも、伝承では下半身がヘビだった。
- ラミア(ギリシア神話の、上半身が女体で下半身がヘビの化け物。人を食い小児の血を吸う。)
- ゴルゴン(ギリシア神話の、頭髪がヘビの三姉妹。見る人を石化する。)
- アステカ神話の神、トラロク(雨と雷の神)
- ヒンドゥー神話のナーガ(ヘビ、竜を神格化した雨や川などの神霊)
- ギリシャ神グライコン
- 中国のアダムとイヴである伏羲(ふっき)と女媧氏(じょかし)
- サタン(ユダヤ教、キリスト教における神の反対語)もヘビ
387 【🔎】女媧氏(じょかし)
388 広々とした薄暗いホールを抜けると、タ・アーの神殿のある大洞窟には遠くおよばないが、かなり大きい洞窟にでた。
- 巨大ピラミッドのオニキス仕上げは頂上部だけだった。他の部分の巨大な本体は、未加工のままの石がむきだしになっている。
- 目の前にある湖のようなもの。差し渡し40ヤードほどの、のっぺりと静かな、まるっきり黒曜石のような光沢の水面。
- その湖のまわりに、全部で200人にもなろうかという、性別も年齢も様々なヘビ人間が並んでいた。
- ヘビ人間たちはモリアーティのことを、「ロフッサー・ミアーティ」と呼ぶ。
389 湖のそばの、天然の台座のような一段高くなった区画
- 中央に、周囲20フィートばかりの石筍(せきじゅん)が高くそそり立っている。上向きに細くなった先端が、上からぶら下がる、やや太めの似たような鍾乳石まで達していた。
- 頭の高さに鉄の輪付きボルトが埋め込まれ、その輪に太い鎖が何本も通してある。鎖の先端は手枷で2人の人間が拘束されていた。トバイアス・グレグスン警部とマイクロフト・ホームズ。
- ホームズとワトスンも同じように拘束される。手錠の鍵はモリアーティに渡された。
389 【🔎】石筍(せきじゅん)
394 モリアーティが大英博物館から盗まれた『ネクロノミコン』を取り出した。
395 27章 量より質の問題
305 ・・・その禁断の魔術書をモリアーティは両手で捧げ持ち、しかるべき注意を払って扱った。ちょっとでも超撃を与えたり揺らしたりしたら悲惨なことになる桜ダイナマイト(ゼリグナイト)でも扱うように、取り落としてしまわないよう用心しているようだ。・・・
- モリアーティが贈ったつまらい人間達では満足させられなかった。気前よく定期的に捧げものをすれば報いてもらえるという、モリアーティの考えは判断の誤りだった。
- そこで考え直し、いけにえは量ではなく質の問題だと判断した。グンフェン・シュウとシャーロック、マイクロフト、グレグスン、ワトスン。
305 【🔎】ゼリグナイト
309 ・・・「そろそろ時間だ」モリアーティがーティが懐中時計を見て行った。・・・
- 夜の闇がいちばん濃くなる。
- 新月(ニュー・ムーン)は従来、新しいことを始めるときだという。
- ヒンドゥー教徒はそれを重要視して、たいてい新月を待ってから式典を開催したり独に着手したりする。
- イスラム教徒は新月をもとにして暦を決めるし、ユダヤ教徒も同じだ。
- 言い伝えによると、もっと古くには、新月の時に異界とのあいだの障壁が最も薄くなるため、神との霊的交わりがたやすくなるという信仰。
400 ナイアルトホテップ
- 旧神や旧支配者の中には、影という形態でこの世に姿を投射するものがいる。
- グンフェンの馬車を襲った影をワトスンとホームズの2人とも目の当たりにしたが、あのように変幻自在な実体ではない。2人が見たのは、形のない影ではなくて、形をさまざまに変える影だった。
- さまざまな異なる現れ方をする、中核となる本質のな存在。無数にある通り名のひとつ、マイティ・メッセンジャーとも呼ばれる。ブラック・デーモン、ブラック・ファラオ、出没するっ暗闇とも。
- カイロからコンゴまで、スコットランドからニューイングランドまで、知るもの誰しもがそれぞれに違う姿(アヴァター)のナイアルトホテップを知っている。
- ナイアルトホテップが見る者の目に合わせて、その場の最もふさわしい姿をとるかのように、畏敬、恐怖、親しみ、あるいはその3つの組み合わせのうち最も望ましい効果をあげそうな姿をとるかのよう。
- 変幻自在だからこそ旧神じきじきのメッセンジャーたりえていると推測する神秘学者もいる。
- それぞれの目の前で好ましく見える姿で現れて、たまたまいやなメッセージを運んでいても相手の憤怒をやわらげることができる。
401 【🔎】ナイアルトホテップ
401 モリアーティが忠誠を誓った神がナイアルトホテップ
401 【🔎】カルトゥーシュ
401 地下のこの場所は、われわれの世界と、地球の中心にあるというナイアルトホテップの本拠地との接続地点。
- 召喚ルートは地下にある湖。
- 適切な誘い方をすればナイアルトホテップがあの水の中から出てくることを、ヘビ人間たちは昔から知っていた。
- 何世紀にもわたって、困窮したときには、食糧が不足したり、出生率が危険なほど低くなったりしたら、自分たちの中からいけにえを捧げてきた。ナイアルトホテップが、彼ら種族の運が上向くよう高位の神々にとりなしてくれた。
- モリアーティはそれと同じように、自分自身のために神の介入を得るつもりでいる。
402 モリアーティがの望み
- 不滅の命と力が欲しい
404 ホームズもまた、モリアーティと同様に迷信のような神を信じているのに気づき、驚くマイクロフト。
404 クローリング・カオスは悪意のあるやっかいな神
- ナイアルトホテップのこと
- モリアーティの望みを聞き入れる見込みは到底なさそう。
- たいてい、贈り物を受け取った者は破滅に至る。
404 【🔎】クローリング・カオス
- Crawling Chaos
- 【本】「這いずり回る混沌」 ラヴクラフト
405 ホームズのモリアーティの人生への逆襲
- モリアーティはこれまでずっと失敗すてきた。
- 知性にあふれているにもかかわらず、学者として失敗した。
- 社会的に失敗して、個人教師として生計を立てることになった。
- 何よりもまず人間として失敗。友情であれなんであれ、自分がすぐれていて他者は劣っているということ以外に人との関係を育むことができなかったから。
- たとえ神格に上がっても何も変わりはしない。根っからのみじめな惨敗者のままだ。
- 最悪なのは、モリアーティ自身にそういう自覚あること。君は自分の欠陥があることがわかっている。その欠陥がどんなに大きいかわかっている。どれほどの高みにのぼりつめようと、何者になろうと、決してその欠陥から逃れられない。
406 モリアーティを激怒させ、ホームズたちの注意をさらせるのに成功。
- ホームズは目に着かないような動作を継続的に繰り返し、彼のシャツの袖口から紙巻き煙草ほどの大きさの細長い鋼の管を送り出し、指に持った。
408 28章 這い寄る渾沌がやってきた!
409 ホームズの手に隠された細長い鋼の管にきづかないまま、モリアーティはルルイエ語の祈祷を暗唱しはじめた。
409 『ネクロノミコン』のルルイエ語の祈祷
- 出だしの部分「フグタン!エブムナ・フグタン!ハフドルン・ウガフン・ングハ・ングハ・ングフト!」
- スタンフォードが独房で何度も叫んだあの言葉。
- 「彼は待っている!穴で待っている!神官は闇の中で死を支配する!」
- 神官(ハフドルン)であるモリアーティががある、闇に包まれた地下領域にいる死を、再び召喚しようとしている。今回の死が訪れる先は、豊かな資産と地位がある人間を2人を含む、4人の男を一気に食い尽くそうとしていた。
- 「ナイアルトホテップ・ウルン・シュグ。ク・イグルイ・ショグ。スルハ・オルエー・アー・フハヤク。ドロイ・ハフドルン・ムナフン。イハー」
- 「ナイアルトホテップ、地上に出でたまえ。闇の領域の出口を越えたまえ。わが貢ぎ物たる魂を味わいたまえ。ちちましき召喚者の祈りを聞き届たまえ。アーメン」
- 『ネクロノミコン』には記されていないモリアーティが自分で考えた個人的な祈願もはいっていた。
- 最後に「イアー、ナイアルトホテップ!イアー!イアー!」
- 「万歳、ナイアルトホテップ!万歳!万歳」
- ヘビ人間たちも言葉をまね、声を合わせた。
411 ホームズは、管のふたを誰にも気づかれずにはずして、手枷の鍵穴の上で逆さまにする。
- 蜂蜜のように透明だが鮮やかな緋色の、ねばつくシロップのような液体が、管の中からしたたり落ちた。
- 液体は、流れ落ちないで、金属部に触れた液体は、何本かのすじに分かれて、霊液でできた指のように鍵穴の中に入り込んでいく。まるで知覚や自身の思考をもった物質のようだ。
413 「イアー、ナイアルトホテップ!イアー!イアー!」の詠唱は次第に大きくなり、200人が一斉にあげる。
- 湖の水面が震えはじめ、黒い鏡のような水面に同心円状のさざ波が生まれ、ひろがっていく。
- 同時に、遠くからフルートのような楽器の音が聞こえて来た。湖そのものが発しているようなその音楽は、静かだが耳ざわりだった。ひどく不規則で聞いたこともない旋律。不協和音。地獄で演奏されていそうな音楽。
413 ホームズは一心に手枷に集中していた。
- 緋色の液体の小さな指はアリのような勤勉さで鍵穴をさぐっている。
- ホームズの唇がほんの少し動いて、液体に話しかけ指示を与えていた。
- ホームズの言葉の命令に反応する液体の発明は、午後いっぱい科学作業台で取り組んでいた錬金術による創造物。
414 暗い湖の深いところで、何かがうごめいている。何かが上がってくる。
- 水面に屈折して見えたのは、鉄道橋の下で影がグンフェンの馬車を襲ったとき、目撃したのと同じ存在だった。
- 無数の目があり、形が一定しない生き物。
- 風に追われる雲のように、うねり、荒れ狂っている。ねじれ、広がり、縮み、そしてふたたび形をなす。
- おびただしい数の異なる存在がすべて同じ空間に詰め込まれ、優劣を争っているかのようだ。
- バッタのような虫、大きく膨らんで忌まわしいほど太った女性の姿、スフィンクス、牡牛に似たもの、ライオン、ファラオ、ドワーフ、肌の黒い男、天使のような輝く金髪の白人女性、鼻の長い悪魔、翼のある獣、さまざまなものに姿を変えていく。
- ナイアルトホテップは、さまざまに現れては消える無数の化身や具現化、多数の形質によって、時空は全体に名を馳せている。
- ナイアルトホテップのたくさんの目は、どれも強欲で残酷で抜け目がない。
416 緋色の液体が、手枷を開錠させた。
- 自由になったホームズは、鎖を引きずって、モリアーティ教授に突進していく。
- 鎖を自由になる方の手でつかんで、先端をモリアーティめがけてたたきつけた。
- 顔に強力な一撃をくらった教授がよろめいた拍子に、頭から三蛇の王冠が転げ落ちる。
417 2発目をモリアーティに浴びさせようとしたとき、ナイアルトホテップが湖の水面から現れた。
417 ナイアルトホテップ
- テニスボール大のまばたきしない血走った目が先端についた、人間の腿ほども太いゼラチン状の触手らしいものが、湖からつきでてくる。
- 触手の表面の膜は、人体が出すいやな臭いの老廃物を思わせるようなおぞましい黄色だ。
417 のたくりながら水から出てきた触手が、台座のほうへのびてくる。
417 ナイアルトホテップを見たグレグスン警部とマイクロフト・ホームズ
- グレグスン警部は、正気を失い、悲鳴をあげて泣きじゃくりだし、ヒステリックで半狂乱になり手枷を引っ張った。
- マイクロソフトもさすがに冷静ではいられなくて、神への祈りをつぶやいた。
417 池の水に忌まわしくきらめく分泌物の混ざったすじを引いて、触手は軟体動物のように台座の床を這った。
- ナイアルトホテップは、長年の経験から石筍のある場所に栄養物があると知っているのだろう。
417 ホームズが再び鎖でモリアーティに襲い掛かった。
- 2度目は、モリアーティが飛んできた鎖の先、鍵の開いた手枷をつかんだ。モリアーティの血だらけの頬は割れたプラムのように腫れあがる。
- ホームズの電光石火のような拳はモリアーティのこめかみをかすめて、おかえしのアッパーカットがホームズの顎下を直撃した。
418 ・・・ホームズも私も、モリアーティの戦闘能力を侮(あなど)っていた。病弱で華奢に見えるが、拳闘の技のひとつや二つくらいは知っていたのだ。ベアナックル・ボクシングのチャンピオンであるジェム・メイスと比べる気はないが、拳での戦いならなんとかできるようだった。・・・
418 【🔎】ジェム・メイス
418 アッパーカットの一撃から立ち直ろうとしているホームズに、モリアーティは鎖の端を両手でつかんで走りだした。手枷がかかったままのほうの腕が引っ張られ、前方の腰くらいの高さの小石筍に突進させられ、激突したホームズは息を詰まらせ、身体を折り曲げた。
- 優位に立ったモリアーティは、さっき自分の頬を割った手枷で、ホームズの後頭部を殴った。だがホームズの頭蓋骨は思ったより堅かった。
- モリアーティはが二度目にふりかぶったとき、ホームズは脇に転がり逃げ、モリアーティの膝をかかとで蹴った。バキッという音がはっきり聞こえ、膝関節が脱臼したのがわかった。激痛に叫ぶモリアーティ。
419 ナイアルトホテップの触手は、おおきな石筍に這い寄る。
- ワトスン、グレグスン警部とマイクロフト3人にかなり近づく。蹴れば届きそうな距離に迫った。
- 蹴ろうとするワトスンの脚をナイアルトホテップも機敏によける。
- ナイアルトホテップがもたらす衰弱の影響力は、ワトスン、マイクロソフトとグレグスンにもおよんでいた。3人とも脱力していた。その中でワトスンはどうにか自己感覚を保とうとした。
429 ・・・最悪の独裁者となって、ここまで三蛇の王冠の加護によりヘビ人間にいばり散らしてきたように、人類に対しても暴虐のかぎりを尽くすだろう。チンギス・ハーン、ヘデロ王、カリグラに匹敵する邪悪な厄介者となるだろう。新たなナポレオンとなるだろう。・・・
429 【🔎】チンギス・ハーン
429 【🔎】ヘデロ王
429 【🔎】カリグラ
429 【🔎】ナポレオン
421 ホームズとモリアーティの激しい格闘はじわじわ湖の縁に近づいた。
- 触手が現れた場所の近くまで来た。
- 偶然ではなく、ホームズが計画的にその方向に進めた。
- 突然、ホームズがモリアーティを力いっぱい投げ飛ばした。教授の身体は探索中の触手の上にひっくり返った。
- 触手の先端が振り返り、モリアーティの方を向く。その目が不気味に教授をにらみつける。
422 ナイアルトホテップに詫びながら、その場を離れようとしたが、"這い寄る渾沌"興味をそそられ、触手が動きモリアーティの腕や脚に巻き付く。
- ナイアルトホテップはジェイムズ・モリアーティ教授を味見し、気に入ったようだった。
- ひとりで食われるものかと、モリアーティは近くに落ちていたホームズの手首に繋がった鎖をにぎりしめて、ホームズも道ずれにしようとした。
423 モリアーティが台座の縁から湖に滑り落ちた。水面下に消える直前、最後の表情が、自分の壮大な計画が最終的に裏目に出たという事実を受け入れるかのような、あきらめの表情。瞳は、それでも自分は勝利をおさめたと言いたげな、奇妙な光があった。
- 果敢にも抵抗するホームズもあとに続いた。
424 静寂のなか、ヘビ人間たちさえ呆然としていた。
- ナイアルトホテップは、これまで何度も繰り返してきたとうり、差し出されたいけにえを受け入れる準備を一瞬のうちに行った。
- 儀式の神官であり、ヘビ人間の指導者として居座っていた人間と、当初いけにえにされるはずだった人間のひとりと共に、神官自身が供物として連れ去られていった。
- ヘビ人間たちは、しばらく困惑し、途方に暮れた。
425 ワトスンは、無事で元気なホームズが、今にももう一度現れてくれるのではないかと願っていた。
426 29章 ヘビの暴走
426 マイクロフト・ホームズも、悲しみに打ちひしがれていた。
426 ヘビ人間たちも主人、ロフッサー・ミアーティの名をを何度も叫んで死を嘆いていた。
- 不条理な哀悼の時間も、長くは続かなかった。
- 悲しみは不満へと凝固し、やがて怒りに変わった。
- ヘビ人間たちは舌足らずのルルイエ語の方言で、互いに不満をつぶやき出した。
- 視線は、手枷をはめられ、石筍につながれて逃げられない、マイクロソフト、グレグスン、ワトスンに向いた。報復をもくろんでいる。暴徒化してリンチされそうだった。
428 ワトスンはこの時28歳
428 コブラ男が現れた。
- 暴走のリーダー役
- ほかの仲間を殺害行為に駆り立てる強いオス。
- もともとはヘビ人間の族長で、モリアーティもその地位を奪ってはいなかった様子。
- コブラ男が口を大きく開け、上顎の禍々しい毒牙をむき出して、ワトスンに嚙みつこうとした。
429 「ンルフン!」と、頭皮に濡髪を張りつかせ、服から水をしたたらせて足もとに水たまりをつくえい、暴徒の後方にシャーロック・ホームズがたっていた。
429 ・・・のちに私が出版した物語、「最後の事件」と「空き家の冒険」の二作で、私はホームズの見せかけの死と、それに続く奇跡のような復活について書いた。ホームズがモリアーティ教授との戦いで死を遂げたと語り、二人ともスイスのライヘンバッハの滝に転落したらしいという推測を示したが、実はそれはホームズがほかの敵の注目を避けるために仕組んだ見せかけの死で、三年後には私の人生に再登場してくる。・・・
- こうして似たような架空の物語に書き換えられた。
- 実際にはヨーロッパ横断旅行などしなかったし、怒れるモリアーティが私たちの後を追ってきたわけでもない。
- ホームズの変装による、身体が不自由でしなびた顔の本屋の老人の訪問もなかった。
- バーク・レーン事件・・・ロナルド・アデア卿がセバスチャン・モイラ大佐に空気銃で殺された事件はおきたが、事実はワトスンの書いたとおりではない。
- "大空白時代"を挟んだあの2つの物語が伝える感情は、偽りのないものだった。しかし、内容の大半は捏造されている。
429 【本】「最後の事件」 アーサー・コナン・ドイル
429 【本】「空き家の冒険」 アーサー・コナン・ドイル
430 湖からあがったんばかりのホームズの手には、落ちた場所から拾ってきた三蛇の王冠があった。
- コブラ男とほかのヘビ人間に、「ンルフン!」と命令を繰り返した。
- 威厳があり、頼み事に応じさせる力があった。
- 暴徒たちは静止したが、困惑が広がった。
431 ヘビ人間たちに困惑がひろがったので、ホームズは三蛇の王冠をかぶった。
- ホームズに2サイズ大きな王冠
- ホームズは歯を食いしばって精神集中して、三蛇の王冠を輝かせ、緑がかった光が震えながら点滅させる。一度消えてしまうが、また光が戻り、ホームズが王冠を扱うのにつれ、より強く、よりはっきりとした。
- ホームズは、自分の思考、意志、望みを、ヘビ人間の精神に投射した。
- 徐々に、ヘビ人間たちは離れて行った。
432 最後に残ったのは、コブラ男と彼の仲間のひとり全身に黄色と黒の縞模様があるヘビ人間の2人
- 彼らはたやすく服従しないで、拘束された3人の人間に報復しようとしていた。
- 2つの対立する欲求が彼らの内部で闘っていた。一方は血への渇望。、もう一方はホームズの禁止令への従属。
- 黄色と黒の縞模様のヘビ人間は降伏して、憎しみのこもるしかめ面で石筍から離れた。
- コブラ男は、頑なにホームズに反発している。ホームズの眉間にさらに深いしわが刻まれる。王冠がこれまでになく鮮やかに輝き、強情なコブラ男が折れた。
433 急いでワトスンたちの近くにやってきたホームズは、ワトスンからリヴォルヴァーと予備の弾薬を出し、手枷の鎖を撃ちくだいた。
- 手枷の鍵は、モリアーティと共に沈んでしまったから。
- ワトスン、マイクロフト、グレグスンを助ける。
434 4にんは、ピラミッドのふもとにある、玄関ホールへの入り口を目指した。
- グレグスンの顔色は灰色で、ふらふら立つのがやっとだったので、ワトスンが肩をかした。
- ホームズは、まだ輝いている三蛇の王冠をかぶったまま、『ネクロノミコン』を拾い上げ、油布に包んで、ワトスンたちに追いついた。
434 覚醒したヘビ人間たちがコブラ男に率いられ、あとを追ってくる。
- 先頭の太ったマイクロフトは一気に階段を上るのが辛そうで、グレグスンを助けながらのワトスンの歩みもゆっくりだった。ホームズは、王冠を使ってヘビ人間たちを鎮めながら逃げるが、完全にはきいていない。
- どんどん距離がつまってくる。
435 てっぺんまで四分の三ぐらいまで来たとき
- マイクロフトは、息切れして足が止まる。
- ワトスンが励まして、もう一度歩き出した。
436 三角形の開口部が見える。
- 3人は一人ずつ戸口を抜け、モリアーティが掘った穴に出て行った。
- ホームズは、すぐさま『ネクロノミコン』を置き、オベリスクの内側に手を伸ばすと、扉をつかんで引いたが、ぴくりとも動かない。
- そこまでヘビ人間たちが近づく。
437 ホームズは閃いて、モリアーティが使っていた祈祷の言葉を、そっくりそのまま繰り返した。
- 何も言起きない、扉も動かない。リヴォルヴァーの用意をするワトスン。
- ホームズは、再度祈祷の言葉を繰り返し、今度は"開錠"の「クタルル」を、反意語の「たるる」に置き換えると、扉がやっと閉まった。
437 碑文『伝統に秘められた言葉を話すことにより、無の者だけが内なる者となるだろう』
- この扉は、下の領域に住む者を、ここへ来させないようにできている。
- ヘビ人間たちは扉を開けてでてこれない。
439 30章 冒瀆行為を正す
439 ホームズの主張で、オニキスのオベリスクを埋め直すことにした。
440 湖でどうやってモリアーティから逃げられたか
- 逃げたのではなく、沈む途中でモリアーティが自分から鎖から手を離した。
442 モリアーティがホームズを解放したのは、このゲームがまだ終わっていないからかも。
443 シャドウェルのセント・ポール教会の鐘がゆったりと夜の12時を告げる頃、
地下室から外に出た4人。
- 霧雨
- 新年おめでとう
- 1981年のはじまり。
444 超自然現象
444 クトゥルーの呼び声
- ホームズが聞いた呼び声
444 ぼくらは戦争に駆り出された
- ホームズ、ワトスン、マイクロフト、グレグスンの4人。
- この戦争は、世の中に知られることなく、密やかにやるもの。
- 旧支配者や旧神が生きているうちは、決して危険が去ることはない。
446 シャーロック・ホームズのもと、4人で戦う決意をする。
447 エピローグ
447 文中で、長年にわたり、ワトスンが隠してきた物語を書くことで浄化できて喜んでいる
- 2人の妻にも伝えていない。
447 1895年の出来事
- その名声と悪評とで"ベドラム"の名で知られる。
- サザークのベスレム王立病院で始まった出来事
- 回想録の次の巻で綴る。
447 回想録、最後の第三巻
- およそ15年後
- イングランド南部を荒らした、海で生まれた怪物の話を扱う。
447 これらの書物に書く予定の30年間にわたり、ホームズとワトスンは何度となく否定しようのない不変の真実に直面してきた。
- 私たちが敵より優位に立って自身を感じているとき、下から足をすくいにくる真実。
- 『ネクロノミコン』の中で、2行連句に記された真実。
- アブドゥル・アルサハードが、かつて夢見た古代アラビアの無名都市について描写するときに綴ったこの短い2行は、私たちが打ち破ろうと興奮し、そして私たちを打ち負かそうとしてきた敵のすべてについて物語っていたのだ。
- 「とこしえに横たわるものは死者にあらず、計り知れぬ永劫の中では死すらも息絶えん」
449 解説(あとがき)
449 英国の作家 ジェイムズ・ラヴグローヴによる"クトゥルー・ケースブック"三部作
449 1作目の内容
449 2作目の内容
- その15年後の1885年
449 3作目の内容
- さらに15年後
- 以上、30年間にわたるホームズたちとクトゥルーの神々や怪物たちとの闘いが回想録として語られる。
449 ・・・シャーロック・ホームズは『バスカヴィル家の犬』の中で「ぼくはこれまでのところ、自分の調査をこの現実世界に限ってきています。そこそこ悪と闘ってきましたが、悪魔本人を相手にしようなどというのは荷が重い」とモリアーティ医師に言った。また、その後の「サセックスの吸血鬼」事件では、吸血鬼伝説の資料を放り出して「この世だけだって広くて、それの相手で手いっぱいだ。この世ならぬものなんかにまで、かまっていられるもんか」とワトスンに言っている。・・・
449 【本】『バスカヴィル家の犬』アーサー・コナン・ドイル
449 【🔎】バスカヴィル家の犬
450 【本】「サセックスの吸血鬼」アーサー・コナン・ドイル
450 【🔎】サセックスの吸血鬼
450 パスティーシュの世界では、かなり昔から「この世ならぬもの」が登場するホームズ・ストーリーが生み出された。
450 【🔎】パスティーシュ
450 この十数年、
- 「超自然(スーパーナチュラル)」や「パラノーマル」な要素、別の有名作の世界や人物を、ホームズ世界に融合させる「マッシュアップ小説」や「クロスオーバー作品」が増加。
- ドラキュラ、フランケンシュタイン、ジギルとハイド、クトゥルー神話といった古典的なものや、SFやファンタジー(魔法世界を含む)、ゴースト・ストーリーの様々なテーマ、著名ミステリーの主人公たち、など。
- 英国の長寿番組『ドクター・フー』も例外ではない。「動く(生きている)影」は『ドクター・フー』のヴァシュタ・ネラダを連想させる。爬虫類人間はサイルリアンという爬虫類先住民族に似ているという指摘がある。
450 【🔎】パラノーマル
450 【🔎】マッシュアップ
450 クロスオーバー
451 ヴァシュタ・ネラダ
451 マッシュアップやクロスオーバー作品
- 相容れぬはずの世界や人物をうまく融合させることが大切。
451 ワトスンは自分がアフガニスタンで受けた銃創について
- 正典(ホームズ物語60編)のある作品では、肩だと書き、別の作品では脚と書いている。
- この謎がシャーロッキアンの研究ネタのひとつとなっている。
- この謎をうまく利用し、実はジェザイル弾によるものでなくクトゥルーの・・・というラヴグローヴの設定。
- ワトスンは実際に起きた出来事を隠しており、正典には書かれていない事実がある。ラヴグローヴも、この手法(ホームズ・バスティーシュの典型的な手法)を使って様々な辻褄合わせをしている。(若干ほころびはある。)
451 ジェイムズ・ラヴグローヴ
- 1965年 英国イースト・サセックス州に生まれる
- オックスフォード大学で文学を専攻
- 大学時代から小説を書き始める
- 1990年に最初の長編 The Hopeがマクミラン社から刊行
- 二作目の長篇 Dogsは、1998年のアーサー・C・クラーク章にノミネートされる。
- 長篇 United Kingdamは2004年のジョン・W・キャンベル記念賞にノミネートされた。
- 短篇では「月をぼくのポケットに」(1999年)で日本の星雲賞を受賞