11 『シャーロック・ホームズ』
18 作品内にも登場するジェイムズ ラヴグローヴのマッシュアップ三部作『クトゥルフ・ケースブックス』
- 【本】『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』:1880年に起こった
- 【本】『シャーロック・ホームズとミスカトニックの怪異』:1895年に起こった
- 【本】『シャーロック・ホームズとサセックスの海の悪魔』:1910年に起こった
26 【本】『緋色の研究』コナン・ドイル
62 【本】マスグレイヴ家の儀式(短編)
7 はじめに
7 ジェイムズ・ラヴグローヴ
7 2014年春のある日
- ロードアイランド州ブロヴィデンスにある、弁護士事務所からメール
- 差出人は、ラフリン・ジェイコブズ・トラヴァース法律事務所のシニア・パートナーのメイスン・K・ジェイコブズ三世
- 件名は「遺産」
7 【🔎】ロードアイランド州ブロヴィデンス
8 メールの内容
- ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフト氏が昨年秋に82歳でなくなった
- 生涯プロヴィデンスに住み、ラフリン・ジェイコブズ・トラヴァース事務所の長年の顧客だった
- 独身で子供もなく、心不全でなくなった
- 7万5千ドルの財産を遺した
- 彼は、スミス・ヒルにある質素なコンドミニアムに住んでいた
- この街(プロヴィデンス)は、あまり好まれない地域
- 遺産の大部分は、彼のマンションを売却したことにより生じたもので、9万5千ドルだった。そこから税金や諸経費、事務所の手数料を差し引いて残額が7万5千ドル。これは、メイン州のケネバンクポートに住む、ラヴクラフト氏のごきょうだいの孫娘を探しだし、遺産を無事ロンダ・ラシェイズさんに渡した。
- ラヴクラフト氏の遺産の中には、ロンダ・ラシェイズさんが受け取りを希望しないものがあった(書籍や文章、異国の道具、宗教的な目的でつくられたと思われる彫像や手工芸品などの収集もの・・・無価値で公衆衛生上もんだいがあると、処分された)
8 【🔎】7万5千ドルの財産
- 現在1ドル = 153.76円
- 1千153万2千円の財産
10 公共図書館、ブラウン大学ジョン・ヘイ図書館の担当者の遺産の鑑定
- 書籍や文章は、ほとんど価値なし
- 彫像や肖像画、呪物のたぐいの大半は、皮や髪の毛などの有機的な素材で作られていて、虫に食われたり不潔な状態だった
- ありふれた、粗雑な感じがあるので、ラヴクラフト氏が自分でつくったものかも
- その中で一つ、特に保存に値するものがあった
10 ジェイムズ・ラヴグローヴ
- 事務所の調査では、ジェイムズ・ラヴグローヴは故ラヴクラフト氏の遠縁に当たる
- その関係は、300年ほど前にさかのぼる親類
- 「ホームズ研究(ホーメジアーナ)」におけをる専門家
10 当事務所のジュニア・パートナーは、ジャンル・フィクションの熱心な読者であり、あなた(ジェイムズ・ラヴグローヴ)の作品をよく存じ上げている
- 当事務所のジュニア・パートナーが、ジェイムズ・ラヴグローヴが残った品を受け取るのにふさわしいと示唆した
- それは、本の原稿
10 本の原稿の内容
- タイプ打ちされた原稿3束
- 全体で一つの長い物語になったもの
- おそらく100年はたっている
- ジョン・ワトスン博士がかいたもの
- あなた(ジェイムズ・ラヴグローヴ)なら、ワトスン博士の作品に充分な知識がある
- この原稿は、ラヴクラフト氏の寝室のクローゼットの錆びた金庫の中から発見された
11 事務所の考え
- この原稿は、偽物であり、せいぜいよくてパスティーシュのようなものと考えている
- 【本】シャーロック・ホームズをめぐる物語に、ワトスン博士の著者名をつけたものである
- シャーロック・ホームズ愛好家たちが慣れ親しんだものとは異なる冒険
- 奇妙で不気味な出来事が中心
11 【🔎】パスティーシュ
12 ・・・ファンタジー小説やーーーあえて専門用語を使うならーーー「ホームズ研究(ホーメジアーナ)」におけをる専門家としての経験から、この原稿と質の信憑性を判断するには最適な人物であると考えています。・・・
12 ホームズ研究(ホーメジアーナ)
- イギリスではホームジアン (Holmesian)
12 ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフトと私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)の関係
- 【本】ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフトは、ホラー小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(1890~1937)の子孫に違いない
- プロヴィデンスという場所は、ラヴクラフトが生まれ、生涯のほとんどを過ごした土地
- 3人の共通の先祖は、バイエルンの貴族、フォン・ルフトグラーフ家
12 【🔎】ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
12 プロヴィデンス
- プロビデンス、プロヴィデンス(英: Providence)とはキリスト教における「すべては神の配慮によって起こっている」という概念。日本語では「摂理」(せつり)、「神の意思」と訳され、用法等によっては「天帝」とも訳される。摂理 (神学)の項で詳述。
13 【🔎】バイエルン州
13 ・・・バイエルンの貴族、フォン・ルフトグラーフ家であった。ルフトグラーフとは、ドイツ語で「高貴な伯爵」というような意味だ。・・・
13 【🔎】グラーフ
13 フォン・ルフトグラーフ家
- 1760年代に財政危機に見舞われて領地や城を失う
- オーバーフランケン地区の広い範囲を所有していた
- ある時、この名家の御曹司が、悪魔を育てる黒魔術師のカルト教団に関わり、発狂して、仲間の信奉(しんぽう)者に全財産を譲ってしまった。その後、彼は精神病院で最後の日々を過ごし、わけのわからぬことを口走っていたと言う。
- わずかに残ったフォン・ルフトグラーフ家の人々は、この事件による恥辱と窮乏から逃れ、再出発のために、北はイギリスへ、西はアメリカへと二手に分れ移住した。
- イギリスではラヴグローヴ、アメリカではラヴクラフトと苗字を短くしたり英語化して生活した。
- ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフトは、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(作家)を生んだ家系の中でも、18世紀半ばにニューイングランドに到着した最初の家系の幹となる、別の枝に属している。しかし彼は、親類の持っていたオカルトや神秘的なものへの強い関心を、共有していた。
- 私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)は、10代の頃夢中になって読んだ著者H・P・ラヴクラフトからはるかに離れた、いとこである。
13 【🔎】1760年代
13 【🔎】オーバーフランケン地区
13 【🔎】ニューイングランド
14 ・・・彼(H・P・ラヴクラフト)のあまり健全ではない個人的属性、特に人種的偏見やアングロサクソン系以外の文化に対する嫌悪感は、・・・
- <確かに、だがそれが一般的な時代
14 H・P・ラヴクラフト
- ホラー作家
- 太古の神々や禁断の知識、敵対する超自然的な力、宇宙的な無関心主義を融合して探求・体系化したクトゥルー神話をつくりあげた男
14 【🔎】クトゥルー神話
14 私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)とH・P・ラヴクラフトの共通点
- 物書きである
- DNAを共有している
- 特に目のまわりなど、漠然とした肉体的な類似性
- <まさか・・・w
15 2週間後、遺産の原稿が到着
- 専門家の紙の鑑定:透かしが入っていること、木綿のぼろ(ラグ)が多く含まれていることから、1920年代に使われていた、フールスキャップを綴ったものだった。
- 別の専門家の鑑定:使用されているタイプライターは、インペリアル・モデル50であると確認。
- 私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)は、1年ほどかけて、何度も調べた。
15 タイプライター インペリアル・モデル50
- このタイプライターは、2つの大戦の間の時期にイギリスで人気があったもの。
- ワトスンの序文の日付けからわかる執筆時期と一致する。
15 【🔎】インペリアル・モデル50
15 ・・・一見したところでは本物らしいということだ。と同時に、これはとんでもない(モンストラス)悪ふざけなのではないかとは思わずにはいられなかった・・・
15 【🔎】モンストラス
16 「シャーロック・ホームズの経歴における別の歴史」を書いたものかどうか
16 ・・・おそらくヘンリー・プロテロ・ラヴクラフト自身が作者であり、この作品はただ難解なメタフィクション的ジョークであり、・・・
16 【🔎】メタフィクション
16 【本】私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)は、3つの原稿を、“クトゥルー・ケースブック”というシリーズタイトルで出版するつもり
- 『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』:1880年に起こった
- 『シャーロック・ホームズとミスカトニックの怪異』:1895年に起こった
- 『シャーロック・ホームズとサセックスの海の悪魔』:1910年に起こった
- <ぽいタイトル
16 【🔎】ジェイムズ・ラヴグローヴ
- James Lovegrove
18 序
18 ジョン・ワトスン博士
- 老人になった
- 鏡み映った老化の兆候と、隅に隠れているもの、視界の周辺に潜んでいるものも映し出される。そうしたものを一度でも目にすると、忍び笑いをささやいたり、時には黙ってこちらを見ていたりする。
- 今で誇りに思う友人シャーロック・ホームズの冒険を描いた好評を博した何十もの物語を書いてきた。
- 全てのことを語っていないどころか、ある話から注意を逸らすために、別の話をしてきた。それは、普通の人達のほとんだが、認識できない領域で、知らない方がといから。事実が知れると、文明は自信を失い、劇的かつ永続的な混乱に陥るので、ジョン・ワトスン博士は、暗くて腐った真実の核心のまわりに人工的な殻を作って、文明を守ってきた。
18 【🔎】ジョン・H・ワトスン
19 【🔎】演繹(えんえき)
19 シャーロック・ホームズ
- 演繹(えんえき)的な力や推理の力を論じ、問題の真相を突き止めて悪事を暴き不正を裁く無比の能力がある
- ジョン・ワトスン博士の友人
19 【🔎】シャーロック・ホームズ
19 ・・・世界中の遵法(じゅんぽう)精神に富む市民の生活を向上させ、ひいては遵法(じゅんぽう)精神に富まない人々の行為を無効にしてきたと・・・
19 【🔎】遵法(じゅんぽう)
19 シャーロック・ホームズが亡くなったのを期に
- 長い間隠してきた秘密を打ち明ける時がきた
- 真実を埋葬していたのは、シャーロック・ホームズの要請だった
- 埋葬していた真実は、ジョン・ワトスン博士を悩ましてきたので、死ぬ前にホームズに関する最後の作品として、3冊の本を書くことにした。
- 三部作は、ホームズが実際に行ったこと、人生で達成したことの全てをさらけ出す。それは、彼の経歴における別の歴史で構成しているが、真実である。
- 出版されることは、期待していない。絶対に人の目につかぬようにしたい。
- 3部作は、ラヴクラフトというアメリカの作家にたくすつもり。ラヴクラフトは問題とする深遠な領域に誰よりも精通しているから、この作品を金庫にしまって鍵を捨ててくれるだろうから。
20 ラヴクラフト
- 彼の作品は、アメリカの「パルプ雑誌」で評判になっている作家
- 煽情的な作品が扱っている冒涜的で、正道を踏み外す題材に、ラヴクラフトが精通しているとジョン・ワトスン博士は思い、文通している。
- ラヴクラフトは、問題とする深遠な領域に誰よりも精通している。
- ラヴクラフトの同業者であるロバート・E・ハワードやクラーク・アシュトン・スミスも同様に精通している。
20 「パルプ雑誌」
- イギリスでの「ペニー・ドレッドフル」や「シリング・ショッカー」と呼ばれる安っぽい犯罪小説が載る雑誌で、扇情的な作品ばかり。
20 【🔎】「ペニー・ドレッドフル」
20 【🔎】「シリング・ショッカー」
20 【🔎】ロバート・E・ハワード
20 【🔎】クラーク・アシュトン・スミス
22 序文
- 1928年 パディントンにて J・H・W
22 【🔎】1928年
22 【🔎】ロンドン・パディントン
23 1章 瘢痕組織(スカー・ティシュー)の研究
23 【🔎】瘢痕
23 【🔎】スカー・ティシュー
- scar tissue
23 1880年の秋のジョン・H・ワトソン
- アフガニスタンから心身ともに傷ついて英国本土に帰還
- カンダハール州の滅びた都市へ探検に赴き、そこに住まうものども邂逅(かいこう)した時のジョン・H・ワトソンが受けた身体的な傷と、精神の損傷。
- あの出来事の記憶が、激烈な悪夢となってジョン・H・ワトソンを苦しめた。正気を保つため、自己否定という、狂気といか言いようのない境地にひきこもったジョン・H・ワトソン
- 熱に浮かされ錯乱した脳の見せる妄想に吞み込まれないよう、現実の出来事ではなかったと自分に言い聞かせた。
23 【🔎】カンダハール州
24 ネトリー病院
- 2年前に、ジョン・H・ワトソンが軍医研修を受けた病院
- 英国に引き上げてきて、ネトリー病院に入院していた
- ハンプシャーにある陸軍病院
- 人目につかない翼練は、身体的な重傷ではなく、戦場の恐怖による心的外傷(トラウマ)を負った復員兵たち専用の病室があった。
- ジョン・H・ワトソンは、なかば無意識に、なかば本能的に、自らの感覚を受け入れまいとする決断をして、心的外傷(トラウマ)を負った復員兵たち専用の病室の一員にならずにすんでいた。
24 アフガニスタンでの真実
- アルガンダーブ渓谷の奥深くに分け入った第五ノーサンバーランド・フュージア連隊に、厄災となった進軍を煽動して真っ先に犠牲になったロデリック・ハロウビー大尉以下6人の死者がでた真実
- あの地下都市の住人達に襲われた兵士達の悲痛な叫びや、武装した小隊を殺戮することに残虐な喜びを覚える住人達のさらに忌まわしいわめき声。
- ジョン・H・ワトソンにできることは、マイワンドの戦いでジェザイル銃弾を受けたというふりをしつづけることだけだった。ペシャワールの本隊病院で思いついた嘘。祖国への忠義を果たした、勇敢さを褒めたたえられて帰国。
- <第二次アングロ・アフガン戦争に行っていた。
25 【🔎】マイワンドの戦い
25 再びロンドンに戻ったジョン・H・ワトソン
- 何週間か、抜け殻になったままでいた。
- ジョン・H・ワトソンに残った者は、わずかな軍人恩給、傷病復員兵の卑屈なとげとげしさと、闇の知識が宿る目。
25 闇の知識が宿る目
- 朝、ひげ剃りの時に鏡から見返してくる目。ジョン・H・ワトソンは、めったに目を直視できなかった。普通は目にすることはないもの、普通は知らずにいた方がいいものを見た目だった。
25 鏡に映るジョン・H・ワトソンが、一生帯びていく姿
- 左肩上部の肉がえぐりとられた、見ようによってはライフル銃弾が貫通したと言えなくもない、醜い溝。
- 曲がった鉤爪(かぎづめ)に三角筋を引き裂かれ、骨から肉をごっそり削られた跡のようにも見える。
- 傷は常に痛み、左腕を使うのに支障をきたした。
- ペシャワール滞在中には、傷が化膿し、医師達が腕を切断するか論議していた頃に比べて、危険は脱していた。急激に悪化した敗血症は治りも早かった。
26 【🔎】敗血症
26 しわの寄った瘢痕(はんこん)組織
- 傷を負わせた不快な生きもののことを努めて考えないようにした。
- 「銃弾」と、詠唱するように言い聞かせた。
26 その年の冬
- 懐が寒くなってきたころ
- 旧知のスタンフォードにばったり出くわす。
26 旧知のスタンフォード
- 【本】『緋色の研究』に記載したとおり、バーツ(聖バーソロミュー病院)でジョン・H・ワトソンの手術助手だった青年。
- 手術助手だったこと以外、彼との再会やその後のなりゆきについて記述したことは、事実に反する。
26 【🔎】バーツ(聖バーソロミュー病院)
26 ジョン・H・ワトソンの『緋色の研究』という小説とは違う、真実
- 旧知のスタンフォードとジョン・H・ワトソンが偶然会ったのは、ピカデリー・サーカスのすぐそばにあるクライテリオン・レストランのロング・バーという上品な場所ではなく、酒を飲むには不健全な、コマーシャル・ロード界隈の迷路のような貧民窟にある、裏路地のパブだった。
- 12月の初日の凍てつく首都。前日の雪で足首までぬかるむ裏通り。
- 根っからのギャンブラーだったジョン・H・ワトソンは、カードゲームのナポレオンで、残り少ない恩給を賭けて参戦して、1時間後、負けたのでゲームを降りた。
- 戸口で、一夜の相手をさせたい女の子の料金をめぐって、2人組のインド人水夫(ラスカー)と派手にやりあう男がいた。インド人水夫(ラスカー)達は、女の子の周旋(しゅうせん)人。その男が、スタンフォード。
27 【🔎】カードゲームのナポレオン
- イギリスのトランプゲーム
28 【🔎】周旋(しゅうせん)
30 女の子
- 青白く怯えた顔つきの浮浪児
- 一夜の相手に、2人組のインド人水夫(ラスカー)とジョン・H・ワトソンの旧知のスタンフォードとの間で、2シリングか5シリングかの値段交渉で、派手にもめられていた娘。
- ぼろきれと大差ないものの、ひだ飾りやフリルでこびを売るような服を着ている。
- 歳はせいぜい13といったところ
- ほこりにまみれた顔の目のまわりが黒ずみ、外反膝で背骨が湾曲ぎみなことから、幼少期に骨軟化症を患ったのだろう。
- 幼いころから、仲間の人間に虐待されてきたのは明白
- 花盛りを迎えられそうにない発育不全のバラのような姿
30 【🔎】外反膝
30 【🔎】骨軟化症
30 スタンフォード
- 記憶の中のスタンフォードは、陽気で元気溌剌(はつらつ)とした若者
- 血だの臓物だのが日常茶判事の手術室では、特に医療従事者のよすがとなる、気味の悪いユーモア感覚を率先して披露する男だった。
- 今は、快活さもうしない、相当神経が張りつめているらしく、いやな汗をかき、頬は土気色で疲れ果てた目をしている。
31 見かねて割って入ったジョン・H・ワトソン
- ラスカー達は憤慨し、海軍用のピーコートのポケットからジャックナイフを取り出した。
- ジョン・H・ワトソンは、両手の拳を固めた、これこそジョン・H・ワトソンが求めて彷徨いあるいていたものだった。
- その時、あの老人が現れた。
33 人目につかずジンをちびちび飲んでいた老人
- ジンのボトルを片手に担がれ、典型的な酔っ払いの千鳥足で奥の方から現れた
- 60歳くらい
- 肩が丸くすぼまり、白髪交じりの頭、びっしり針金状の顎ひげ
- 擦り切れたツイードのジャケットに、浅い縁なし帽(フラットキャップ)、襟なしのシャツと人目を引く青いネッカチーフという格好。
- 洋々たる前途がいつまでも運に見放されたまま遠のいて、失意のうちに取り残された男のように見える。
- 頬の毛細血管が切れて赤らんでいるのがアルコール好きの証拠。
- 球根のような形のざらざらした鼻は、飲酒歴の長さを物語っていた。
- 聞き取りにくい、強いヨークシャ訛り
35 ヨークシャの老人は、ラスカーのジャックナイフの攻撃をかわし、鋭敏な動きで反撃にでた。
- 二人とも真っ青な顔で、ほとんど人事不反省(じんじふせい)の状態になり、戦闘力はなくなった。
36 【🔎】人事不反省(じんじふせい)
36 老人が背筋をのばし、ヨークシャ訛りがなくなって、少女に声をかける
36 ホワイトチャペル
37 スタンフォード医師を監視していた老人に扮した、シャーロック・ホームズ
38 2章 私用の馬車
38 まだ名前も知らないヨークシャ男についていくジョン・ワトスン。
- 好奇心にそそられ、アルガンダーブ渓谷でのことを忘れて、シャーロック・ホームズとスタンフォードを追うジョン・ワトスン。
- かつての手術助手スタンフォードの人生のひどいつまずきがあったのかという心配
39 ぬかるみのスタンフォードの足跡を見つけるシャーロック・ホームズ
- 10.5 スタンフォードの靴のサイズ
- 爪先の細い、両側がゴム布のアンクル・ブーツ(足首までの短いブーツ)の靴底の足跡
- 靴底に穴がひとつあいている
- 全体的に見て、爪先の方がかかとよりくっきりと深い跡になっているのは、走っていた印
40 シャーロック・ホームズのジョン・ワトスンへの観察力
- 戦闘準備ができている軍人のようだ
- 肩をかばうようにしてるのは、痛むからでしょう?戦傷で。
- アフガニスタン帰りの軍医・・・スタンフォード医師にバーツで一緒だったと言っていたから。
- 肌の色は黒いけれど、手首から上は白いから日焼け・・・最近熱帯地域にいた。
- 顔に苦労の跡が刻まれいる・・・イギリスの軍医が辛酸をなめるとしたら、アフガニスタン。
41 ・・・ペシャワールでベッドを温めたあと、カラチからオロンテス号でポーツマスまで船旅を無為に過ごした数週間・・・
41 ペシャワール
41 カラチ
41 ポーツマス
41 オロンテス号
- 軍隊輸送船オロンテス号
- 『緋色の研究』コナン・ドイルに出てくる
43 スタンフォードは、大通りで雇って待たせておいた四人乗り箱馬車(クラレンス)
で逃亡してしまった
- 追いつくみこむがない2人
45 どうしてクラレンスを変装して追っているのか、真相を本気で聞きたいジョン・ワトスン。
- 歩いて45分のベイカー街に部屋をいくつか借りている、自分の部屋で詳細を話そうというシャーロック・ホームズ。
- ロンドンは、家賃が高すぎるので、いっそのこと、転がりこまないかと持ち込まれるジョン・ワトスン。
3章 221Bへ
46 ベイカー街221番地Bの部屋へ
- 1880年の冬のこと・・・この時の部屋の様子はほかのところで描写したとおりだったが、その後どんどんむさくるしくなった。
46 ハドスン夫人
- 家主
- シャーロック・ホームズのがらくたでうまった巣窟の掃除を、固く禁じられていた
47 当時のベイカー街221番地Bの部屋
- 科学実験台は定位置にあった。酸のしみがついていた。台の上の様々な実験器具はまだあまり使用していなかった。体液も、汚れの落ちにくい各種のぞっとする物質もさらされていなかった。
- マントルピースの上には、パイプ煙草の葉を入れたペルシャ・スリッパが、愛用する2本のパイプ(クレイと桜材)を従えて、葉巻をしまってある石炭バケツを見下ろしている。
- 棚には百科事典、辞書、地名辞典などの参考文献。後釜にたくさんの量の魔術の手引き書や同種の秘本がすわることになるとは思えなかった。
- スクラップブックやたまっていく切り抜きは揺籃(ようらん)時代にあって、さほど場所をとっていない。
- 通りに面した窓の台に、メンデルスゾーン歌曲集の楽譜を下敷きにしてストラディバリウスのヴァイオリンが横たわっている。
- 使い込まれたちゃんとした家具
- 暖炉の前にある熊皮の敷物
- 酒類の戸棚
- ・・・私の読者なら《ストランド》誌に載ったパジット氏の挿絵でおなじみのはずの、月並みな品々がひととおりある。・・・
- 1階の玄関から17段ある階段を上がって、部屋にいく。
47 【🔎】揺籃(ようらん)
47 【🔎】パジット氏
- アーサー・コナン・ドイルが、「ストラッド・マガジン」に掲載していた『シャーロック・ホームズ』シリーズの挿絵で有名。
47 ストランド・マガジン
48 寝室で付けひげなどをはずし、メイキャップを落として、キルトのスモーキング・ジャケットに着替えて再登場したホームズの印象
- どうみても品がよくて骨格もしっかりした紳士
- 1880年には、まだ26歳で、肌はすべすべだし顎の輪郭もひきしまっている。
- V字形の生え際は後年ほど目立たないが、終生変わることのない鷲鼻と秀でたひたいは、このころから特徴的だった。
- 灰色の目が禁欲的で高遠な知性に輝き、仕草のひとつひとつに自信がうかがえる。
48 【🍴】初めて行ったベイカー街221番地Bの部屋で、暖炉の火をかき立て、ホームズがワトソンにすすめたお酒。
- コニャック
48 ワトソンが知っているスタンフォード
- 外傷を手当をしたり包帯を巻いたりするのにかけては文句なしに有能。
- 病院では、同年代のかなり荒っぽい連中とつきあいがあった。みんな裕福な家の出。
- 悪ふざけがすぎるところがあった。
49 ホームズが語るスタンフォード
- 彼はアヘン中毒だった
- スタンフォード医師は、ケシのとりこになり、その悪習のため、ライムハウス(イースト・エンドのテムズ川北岸にある中国人居住区)のグンフェン・シュウという中国人が経営するアヘン窟に、足しげく通っている。
- 奇怪な殺人事件に関係している
- <そんな気がしてました・・・あの事件ですね。
49 グンフェン・シュウ
50 ホームズの職業
- 世界で初めてのコンサルタント探偵
- 「推理と科学」・・・『緋色の研究』参照
51 7年後
- ジョン・ワトスンが、『緋色の研究』の執筆を始める頃
- ホームズの世界観は、すっかりといいほど変わってしまった。
- ホームズは、自らが実人生ではもう信奉していない考えを印刷物で披露することになった。
51 ジョン・ワトスンが発表した冒険譚のすべてに言えること
- 56の短編と4つの長編
- ホームズとワトソンは、2人で結託して、読者を誤認に導く壮大なミスディレクションを図った。
- 一般大衆を安心させせ、事件が実は不穏な性質のものではないかという疑義を抱かせないための配慮。
51 ホームズの語る本題について
- 最近イースト・エンドで次々と死体が見つかっている
- 【🍴】3杯目のブランデーを飲んでいるところ・・・ブッデローという、いいコニャック
- 扇情的な記事の得意な新聞が、盛んに書き立てている事件。
52 ブッデロー
- BOUTELLEAU
- ブッテロー社は、130年以上も最高級コニャックを作り続けている。
52 ひと月前の≪イラストレイテッド・ポリス・ニュース≫の紙面
- ≪ポリス・ニュース≫や≪フェイマス・クライムズ≫や≪ポリス・バジエクト≫といったレベルの低い、流血やら醜聞やらに目がない新聞が、ホームズにとっては、貴重な資料
- お高くとまった定期刊行物が避けて通ろうとする犯罪や不品行まで、もれなく報道するから。
- 『やせ細った遺体、またも発見される』という見出しの短い記事
53 記事の内容
- 11月3日午前
- ロンドンのターリング街
- その通りにある下宿屋への通路口にある裏庭に、男の死体が見つかった。
- しなびれてしわだらけの男
- その界隈ではおひとよし(シンプル)のシメオンとして知られるユダヤ人の浮浪者
- 本名はわからない
- シメオンの死因は、慢性的な栄養失調による心不全と判定された
- 何日か前に見かけた時、彼はまずまずの健康状態だったいう証言がある(地元でパン屋を営むユダヤ人が、パンを施していたから)
- 近辺での異様にやせ衰えた状態で発見された死体は、4人目。
- どの死体の顔にも一様に浮かんだ表情は、「絶望的な恐怖」
- 極端に身体が縮んでいる以外、4人の犠牲者たちのあいだに共通点はない。
- シャドウェル地区の、主にケーブル街、セント・ジョージ街、キャノン街あたりで目撃されている。得体の知れない“影(シャドウス)”との関係
- 過去数か月にわたり、その地区の人が、夜間にあまりにも異様な動き方をする濃い闇を見たと主張。不用意にそれに近づくと気分が萎え、恐れが湧いてくるという。
- 記事には、シンプル・シメオンの遺体の様子をきちんと描いた版画が添えられていた。骸骨のような顔に、「絶望的な恐怖」の表情。
56 イースト・エンドのスラム街は、伝説と幻想的な噂の温床
- 家々の屋根に吸血鬼が出没した
- 犯罪者が吊るされた辻に幽霊がぶらつく
- 燃えるような目をした人間もどきがカンガルーみたいに
58 4章 四人の犠牲者
58 最初の死者を見落としていた、ホームズ
58 3年程前にコンサルト探偵として開業以来
- 新聞記事をあさり、異常で不可解な死亡記事の情報を収集していた
- この件の記事をすくいそこなっていた。引き続き死者が出るようになって初めて、古い記事にさかのぼり同じパターンに当てはる事件の記事を徹底的に探した。
58 最初の犠牲者
- 香辛料や乾燥果物を売る行商人
- ジュニパー・ロードの家の玄関先に身体を丸めた格好で発見された。8月
- 警察発表は、「危ない状態」という言及で、シンプル・シオメンのような異様にやせ衰えた状態とははっきり述べていなかった。
58 第二の犠牲者
- ひと月後、道路清掃人の死体が発見された。9月
- 10代の少年
- 肺病か何か慢性の持病があり、それがもとで体力消耗、肉体委縮に至ったという見解。
- 清掃人の身では、病気の診断も治療も受けたことがなかっただろう。ばったり倒れるまで、黙って愚痴もこぼさずに症状に耐えていたというのか。
59 第三の犠牲者
- マッチ売りの少女の死体が発見された。10月
- 死因はリン中毒で、燐顎(んがく)といって、下顎骨(かがくこつ)が腐っていくもので、マッチ製造工場で働く人たちの健康を害することが多い。まず歯が抜け、次に膿瘍ができて、じわじわと壊死(えし)が進む、放っておくと例外なく死ぬ病。
59 【🔎】リン中毒
60 死んだ4人の犠牲者
- 市営墓地の墓標のない貧困者用の墓所に埋葬され、死後も最低限の関心と権利しか与えられなかった
- 死体を解剖しようなどと考える者もいなかった。誰も病気以外の死因と思いつかなかったから。
- 首都圏警察(ザ・メット)たちは、個別の散発的事件として処理し、4人とも異様な飢餓状態で死んでいるという意味ありげな特徴を見過ごしていた。
- 4人の共通点に気づいたのは、ワトソンと《ポリス・ニュース》の無名の記者(ホームズ)だけ。
62 ホームズのコンサルタント探偵という職業にたまに舞い込む事件
- 「タールトン殺人事件」
- 「ワイン商人ヴァンペリの事件」
- 「アルミ製松葉杖の怪事件」
- 内反足のリコレッティとその憎むべき細君の事件」
- という、ホームズのいう“ささやかな問題”ばかりだった。
- ホームズの学生仲間だったレジナルド・マスグレイヴと彼の家の古い儀式書にまつわる事件、などまんざらでもない難問もあった。
- 「グロスターシャーの屋根裏のミイラ化した手をめぐる奇怪な事件」・・・ホームズが忘れられない事件。
62 【🔎】【本】マスグレイヴ家の儀式
63 モンタギュー街のホームズの部屋に依頼者が現れず、暇な時の修業
- 学術的な研究にいそしみ
- 棒術
- バリツという東洋の格闘技
- 調査に値する異常な出来事の兆候がないか探す
63 ホームズの推測
- 9月の清掃人の死、10月のマッチ売りの死からさかのぼり8月の行商人の死の相互参照
- 三人の死に関連があり、裏で同一人物の手が働いている。
- 短い新聞記事しかないので、証拠に乏しい
63 証拠探し
- 3人の死体発見場所:シャドウェル地区
- 月に一度という一定間隔で死者が出ていることから暦との関連性を発見:新月の夜を狙っている
- 犯人側になんらかの儀式を行うような感覚がある
64 ワトソンは、月の満ち欠けによるものだと言われる間欠性精神病と関係していることを疑う
- 言い伝えによると、ある種の狂気は満月になると最高潮を迎えるという。この場合はその逆で、同じ天秤の反対側の皿に載っているような、冷静で狡猾な、理性に基づく凶行だと、ホームズ。
64 【🔎】間欠性精神病
64 10月後半
- 月はどんどん細くなり、11月2日に夜空から姿を消すはず。:次の死者が出る予定の日。
- ホームズは、変装してシャドウェル地区の裏通りや人気のない場所を歩き回り調査を急いだ。
- だが、11月のシンプル・シオメンの事件が起きてしまった。
64 ホームズは学生時代アマチュア演劇に熱中していた。
66 ホームズはなぜ警察をまきこまなっかたのか
- スコットランド・ヤードは見込みはあるが、頼りないやつが2人いる。
- トバイアス・グレグスンとG・レストレードを鍛えている。
- 警察は、動かぬ証拠に裏づけられてない説なんて、信憑性がないので断られた。
66 トバイアス・グレグスンとG・レストレード
- ストレードのイニシャルGは、ゲイブリエルのことだとホームズは推測している。
- 彼等との関係を育てて活用するつもり。
- 2人は、他の仲間たちより飛び抜けて高い知性があるが、たいしたことはない。
- 互いに競争心がむきだし。
67 だが、シンプル・シオメンの死体発見の後、ホームズは現場を徹底的に捜査した。
- 2つの石畳の間の泥に埋まっていた、金のカフスボタンを見つけた。
67 金のカフスボタンが埋まったのは、12時間以内のこと。
- この1週間は雨が降らず、11月3日の朝は雨が降っていたが、それまで泥が固く、カフスボタンが埋まることなどなかったはずだから。(事件は11月2日)
- 24金カフスだから、泥に埋まることがなければ、すぐに誰かが拾って宝石店や質屋に持ちこんだだろうから。
- その金のカフスは、シャドウェル地区出身者のものでなく紳士のもので、医者のものだった。医者のシンボルであるアスクレピオスの杖が刻まれていた。
- カフスのもう1枚の円盤には、「V・S」のイニシャルが刻まれていた。
67 【🔎】アスクレピオスの杖
67 【💗】・・・「どうしてわかったんだ?」
「初歩的なことだよ、ワトスン」ホームズがあの有名なセリフを吐いたのは、このときが最初にして最後だった。・・・
68 医者のシンボルであるアスクレピオスの杖と「V・S」のイニシャルが刻まれていたことから、ホームズは絞り込んでいき、候補者を3人まで絞り込んだ。
- 消化器系を専門のハーリー街の臨床医は、除外。:60代で、体格も立ち姿も弱々しかったから。
- ランベスの聖トマス病院にいる外科の研修医も除外。:この男は30代半前で、ゴルフと水泳に熱中しており、ホームズの描いた犯人像にぴったりだったが、一度もカフスをつけず、ボタンカフの服ばかり着ていたから。
- 最も可能性が高い男ヴァレンタイン・スタンフォード
69 ワトソンがバーツで知り合ってからのヴァレンタイン・スタンフォードのその後
- ワトソンが去った後もスタンフォードは、病院で仕事をつづけたが、次第に管理職から疎まれるようになった。仕事がいいかげんになり、出勤も不規則で、態度もしばしば横柄だった。
- 結局、彼が担当した患者が盲腸の手術後に腸の壊疽(えそ)で死亡して、理事会は彼を解雇せざるをえなくなった。
- スタンダードのアヘン中毒がこの頃から始まっていたと断定できないが、その可能性は高い。
- 綜合評議会の記録に黒星がついたスタンフォードは、どの認可病院にも就職できず、マイル・エンドの救貧院に付属するボランティア病院、聖ブリジッド・ハウスで技術を磨くことになった。
- 病院からすぐのところに、グンフェン・シュウのアヘン窟があったため、頻繁に通うようになる。(ホームズが、聖ブリジッドの看護婦から聞き出した。)
70 聖ブリジッド・ハウス
- マイル・エンドの救貧院に付属するボランティア病院。
- 裕福な慈善家たちからの寄付金や出資金で運営され、貧しい人たちに無償で治療を施す病院。
- スタッフの給料が安すぎるので、休みの日を犠牲にしてほかの病院から来てくれる医師や、スタンフォードのような別の収入がある常勤スタッフにより成り立っていた。(スタンフォードは、家族信託から多少の収入があったため、ごくわずかな給料で生きていけた。)
- 聖ブリジッド・ハウス側には、採用する人を選ぶ余裕がなかったので、不祥事を起こした医師でも歓迎された。
70 【🔎】マイル・エンド
- Mile End
70 ホームズが話を聞いた聖ブリジッドの看護婦
- アイルランド人の女性
- スタウト・ビールが好きで、一杯おごるたびに舌がゆるんでいった。
- アヘン中毒の患者を数多く看護してきたので、スタンフォードにその微行を見てとり、アヘンをやめるように何度も説得したが、聞き入れられなかった。夢中だった。
- 8月の時点でスタンフォードは聖ブリジッドでの職を辞し、姿を消した。
70 【🔎】スタウト・ビール
71 ホームズは、11月の大半をスタンフォードを追う作業に費やした。
- 11月も終わりに近づいた頃、スタンフォードを発見できた。
- スタンフォードは、ブラックウォール鉄道路線に面したヨーク・ロードのテラスハウスの軒下にある、二部屋のみすぼらしいアパートに住んでいた。
- スタンフォードが出かけるのは、食事の時と、銀行で金を下ろす時と、グンフェン・シュウの店に行く時だけ。
- ホームズは、スタンフォードを見張りはじめ、昼夜を問わず尾行した。新月が間近になったころ、彼が次の犠牲者を襲うのを現行犯で捕えようと考えた。そこでワトスンが割って入った。今となっては、あの少女が犠牲者かどうかわからない。
71 【🔎】ブラックウォール鉄道
71 【🔎】ヨーク・ロード
74 ホームズの詳細を聞き終わったのが、深夜2時。
- ホームズのすすめで、泊まっていくことになるワトスン。
76 5章 スッコットランド・ヤードのグレグスン
76 ハドスン婦人
- 小柄でちょっと気難しそうな年配の婦人
- 朝食の料理を運んできてくれていた。
77 ホームズは、7時すぎに出て行った、とハドスン婦人。
- すでに、今は9時近い。
77 【🍴】ハドスン婦人が、ホームズに頼まれて用意してくれた朝食
- フライドベーコン
- ポーチドエッグ
- バター付きトースト
- 湯気の立つコーヒー
78 ホームズが帰宅
- スタンフォードがゆうべ帰ってこなかったという自分の推測が正しいかどうか確かめるため、ヨーク・ロードにある彼のアパートに行ってきた。
- ドアの鍵をこじあけ、部屋が空っぽで、ベッドもつかわれていないと自分で確認した。
78 【🍴】ホームズが。ぼくはまだ朝食を食べていないと、階下のハドスン婦人に食べたいものを注文する。
- キッパー(塩漬けして燻製にしたニシンの開き)2枚にゆで卵を一つ。
78 【🔎】キッパー
tokyowhiskyspiritscompetition.jp
79 ホームズが、不法侵入したスタンフォードの部屋からもう片方の金のカフスボタンを持ち帰ってきた。
- スタンフォードのベッドサイド・テーブルにあった
- かれは、シンプル・シオメンの現場にいたことになる。
80 グレグスン警部
- 長身で白い顔をした亜麻色の髪の男
- 両手が丸々として、雄々しく、有能そう
- ドクター・ヴァレンタイン・スタンフォードのことで、ホームズに会いに来た。
83 グレグスン警部からの報告
- 5人目の犠牲者は出ていない。
- ドクター・ヴァレンタイン・スタンフォードを逮捕した。
- スタンフォードは、取り乱していて、まともな精神状態ではない。スタンフォード本人かもはっきりしないくらい。
- 財布の中に名刺があったが、その財布が彼自身のものかどうか、誰にもわからない。
- ホームズにヤードまできてもらって、本物かどうか確認してほしいと伝えた。
84 6章 聞き覚えのある言語
84 スコットランド・ヤード
- ホワイトホール・プレイス4番地
84 【🔎】スコットランド・ヤード
84 スコットランド・ヤードの待機坊に送られたスタンフォード
- 耳障りな声で言葉とも思えないようなことをひたすら口走り続ける
- 5時ごろ連れて来られた。
- 二人の巡査が、夜間巡回を終えるころにオールドゲイトで確保した。
- わめきながら自分を傷つけようとして、常軌を逸していた。
- 前夜会っていなかったら、ワトスンにもかつての仲間だとわからなかった。
- 髪を振り乱し、目を血走らせ、泡唾のまとわりつく唇、片方の鼻孔からひとすじ垂れ下がる粘液。血の気の引いた肌は青ざめて灰色がかり、着ている服は破れてびしょぬれだった。さっきまで下水に浸っていたような臭い。顔に擦過傷や打撲傷がいくつもある。ひたいは青黒いあざの迷彩柄で、頬は爪の引っかき傷だらけだった。
- 全部、自分でつけた傷:捕まえた時、オールドゲイト・ポンプに頭を叩きつけていた。いさめると、今度は顔に爪を突き立てて、両方の目玉をえぐり出そうとしているようだった。
87 ガチャリと鎖の音をたててスタンフォードがいきなり立ち上がり、金切り声をあげはじめた。
- 「フダグン!エブムナ・フダグン!ハフドルン・ウガフン・ングハ・ングフト!」と繰り返す。
88 アセルニー・ジョーンズ警部
- 南部ウェールズ(ザ・ヴァリーズ)出身
- スタンフォードがほとばしる謎の言葉が、コーンウォール地方の方言か、ゲール語か、ウェールズ語かとうたがい、ウェールズ出身者のアセルニー・ジョーンズ警部が、ウェールズ語ではないと断言した。
88 ワトスンには聞き覚えのある言葉
- うつろにこだまする声が聞こえる。
- 目をよぎる鱗状の皮膚、細い裂け目のような瞳孔、ちらちら震える二又の舌。
- 何か月もかけて忘れようとしていた、どろどろとした音節。
- 真っ青になり、気絶しかけるワトスン。
90 スタンフォードが、かがみ込んで前腕に顔を近づけ、嚙みちぎりはじめた。
92 スタンフォードに応急手当をしたワトスンに、スタンフォードは忠告して亡くなる。
- シャドウェルのことは忘れたまえ。
- あの場所にはかかわるな。二度とあそこに近寄るな。力がはたらいている。
- 人間以上の人間たち、連中は“グレイト・オールド・ワンズ”と手を結んでいる。
- 禁断の力を求めている。やつらが力を手にしたらおしまいだ。
92 【🔎】グレイト・オールド・ワンズ
93 7章 移動祝祭日