1 心理学者、強制収容所を体験する
1 知られざる強制収容所
1 体験記
- おびただしい大衆の「小さな」犠牲や「小さな」死を描写
- 強制収容所の日常はごくふつうの被収容者の魂にどう映ったかを問う
- 綴られる体験記は、アウシュビッツ強制収容所ではなく、その悪名高い支所にまつわるもの
- ・今では、こうした小規模の強制収容所こそがいわゆる絶滅収容所だったと知られる。
- ここで語るのは、「知られざる」収容者の受難
2 年季の入ったカポーをはじめとする様々な「エリート」被収容者には触れない理由
- この人々は心理も人格も、ナチス親衛隊員(SS)や収容所監視兵の同類と見なされるから。
- ・カポーが収容所監視兵よりも「きびしかった」こと、普通の被収容者をより意地悪く痛めつけたこと
- ・カポーはよく殴り、一般収容者からそのような適正のある者がカポーになり、はかばかしく「強力」しなければすぐ解任された
2 【し】カポー
https://ja.namu.wiki/w/%EC%B9%B4%ED%8F%AC
3 上からの選抜と下からの選抜
3 「ガス室送り」の選抜
- すべての人がすべての人を敵に回した抗争、グループ同士の抗争が始る。
- ・移送リストから「はずしてくれるよう嘆願する」ことに、ぎりぎりの土壇場 まで死にものぐるいになる。
- ・誰かが抹殺をまぬがれれば、誰かが身代わりになる。問題なのは、数だけ。移送リストをみたす被収容者の数だけなのだ。
- 一人ひとりはただの数。
- ・リストには収容者番号しか記入されなかった。
4 アウシュビッツに被収容者が到着すると
- 持ち物を全て取り上げられ、身分を証明するものを失う。
- 名前と職業はあった。(利用することもあったかもしれない。)
- 被収容者を(たいていは入れ墨で)識別できる被収容者番号
- ・ズボンや上着やコートの所定の位置に縫い付けてある番号で、監視兵や看守が識別する。
4 「ガス室送り」には、ためらうことなくほかの誰かを、ほかの「番号」を、移送団に押し込もうとした。
5 カポー選抜
- 劣悪者を下から選ぶ。
- この任務に耐えられるのは、最も残酷な人間だけだった。
5 親衛隊員(SS)の選抜
- ある種の優秀者を上から選ぶ。
5 あちこちたらい回しにされたあげく、1ダースもの収容所で過ごしてきた被収容者
- 生存競争の中で良心を失い、暴力も仲間から物を盗むことも平気になってしまう者だけが、命をつなぐことができた。
- いい人は帰ってこなかった。
5 被収容者119104の報告 心理学的試み
5 【き】被収容者119104という被収容者
- 「心理学者」
- 強制収容所では「心理学者」として働いていなかった。
- ・最後の数週間をのぞけば、医者として何にもになかった。
- ・「私個人」のことではなく、ごくふつうの被収容者が経験した収容所生活のことを書き記すのが目的だから、重要なこと。
- 自分がそうした「ごくふつうの」被収容者だったこと、119104番でしかなかったことを胸を張って言いたい。
- ほとんどの期間、土木作業員、鉄道建設現場の重労働として働いていた。
- ・ひと握りの運のいい同僚が、いくらかでも暖房のきいた診療棟で紙の包帯を作っていた間、道路の地下に下水用暗渠を掘っていた。
6 暗渠掘りの私にとっての重要な意味
- 「実績」が認められ、1944年のクリスマスの少し前に、褒状(ほうじょう)を2枚もらった。
- ・建築会社は、被収容者ひとり一日いくらという所定の料金を納め、奴隷労働者として買っていたが、褒状(ほうじょう)は会社が出すものだった。
- ・褒状(ほうじょう)1枚520ペニヒ。数週間遅れはざらだったが、収容所内で6本の煙草に形を変えて支給された。
- 私は、煙草12本を手に入れ、物々交換の元手になった。
- ・12本の煙草=12杯のスープ、さしあたり2週間は餓死の危険から命を守るという意味。
7 煙草を煙草として吸える人
- 毎週2枚の褒状(ほうじょう)をもらえるカポー
- 収容所の作業場や倉庫の責任者
7 ふつうの被収容者が、褒状(ほうじょう)、つまり生命を危険にさらしてよぶんに働いた功績によって手に入れた煙草を吸うことは
- 食糧交換を断念し、生き延びることを断念したこと
- 捨て鉢になり、人生最後の日々を思いのままに「楽しむ」ということ
- 仲間が煙草を吸い始めると、私たちは行き詰ったな、と察した。そういう人は生き続けられなかった。
7 このような本を書くのか、その意味
- 心理学の立場から解明する
- その意義は、強制収容所での生活を自ら経験と知っている読者とそうではない読者にとってでは異なる。
7 強制収容所での生活を自ら経験と知っている読者の意義とは
- 彼らが身をもって経験したことが、こんにちの科学で解き明かされること
8 そうではない読者にとっての意義とは
- 部外者でも被収容者の経験を、理解可能になるということ。
- ・ひいてはほんの数%の生き延びた元被収容者と、彼らの特異で、心理学的に見てまったく新しい人生観への理解を助けることが、ここでの眼目。(理解されずらいものだから。)
8 収容所生活体験者は、体験のさなか、彼自身を観察する暇(いとま)などあったのだろうか。部外者は距離をとっていたし、取り過ぎていた。
- 経験の激流から遠く離れていた部外者は、妥当なことを言える立場にはない。
- 「まっただか」にいた者は、客観的に判断をくだすには、距離がなさすぎる。
- ・経験者の物差しはゆがんでいるが、度外視できない。よってプライヴェートなことはできるだけ触れない。(必要な場合だけ記述する)ことが重要。
- ・個人的な調子でばく、かたよった色合いをおびないため。
- 没個人的なものまで蒸留し、主観的な抄録(しょうろく)を客観的な理論へ結晶させるのは他の人にゆだねる。
9 抄録(しょうろく)
9 ここで展開する心理学的論考
- 拘禁にかんする心理学や精神病理学に寄与するもの
9 第一次世界大戦のころから成果をあげtた研究
10 匿名ではなく名前を公表して発表する価値
- 価値を高める
- 告白